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2023年9 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2023年9月号

作成基準日:2023年8月31日

1. 市場見通し

  • インフレ圧力や中央銀行の金融政策が国・地域によって乖離し始めており、世界経済の成長見通しは強弱まちまち。米国と日本の景気は比較的底堅いものの、米国では雇用に冷え込みの兆しも。欧州は、緩やかな景気後退と、和らぎつつも依然として高いインフレなど、全域でぜい弱な状態。中国は景気刺激策を打ち出すも、不動産セクターをめぐる懸念の高まりなどにより材料は強弱入り混じる。
  • 中央銀行の金融引き締めは世界的にピークを向かえつつあるも、インフレ鎮静化の軌道や程度は国・地域によって異なるため、今後の金融政策の足並みは揃わない可能性。
  • グローバル市場のリスクは、予想を上回る景気減速、中央銀行の政策ミス、インフレ再加速、中国経済の見通し、地政学的緊張など。

2. 市場テーマ

労働需要の軟化を受けソフトランディングの観測強まる

米国の7月の求人労働移動調査(JOLT)では、求人件数が大幅に低下し、2021年3月以来の低水準となりました(図表1)。また、退職も減少し、レイオフ(一時解雇)も概ね横ばいにとどまりました。これは、労働需要が落ち着き始めたうえ、失業率が顕著に上昇することなく労働市場の均衡と賃金上昇圧力の鎮静化が実現できる可能性を示しており、米連邦準備制度理事会(FRB)には歓迎すべき兆候で、景気のソフトランディング期待を高めるものでもあります。但し、その後発表された8月の雇用統計では、賃金上昇率は高水準ながらも鈍化したものの、失業者1人当たりの求人数は依然として高く、失業率も3.8%と、労働市場は過去に比べれば依然としてひっ迫しています。労働市場や賃金のさらなる落ち着きにより、インフレがFRBの目標とする2%まで低下するには道半ばです。

明暗分かれるエマージング市場

年初のエマージング株式は好調なスタートを切りましたが、足もとは低調なパフォーマンスとなっています(図表2)。南米がインフレ抑制に成功し、メキシコは米国による中国からのニアショアリング(近隣国への事業拠点の移転)の恩恵を受け、インドも成長率が上振れするなどの明るい兆候が見られるものの、新興国全体では中国の経済成長への懸念が重くのしかかっているからです。中国では、債務問題が厳しさを増す不動産セクターへの懸念が再燃し、家計の信頼感や消費意欲を損なっています。同時に、失業率は上昇し、同国を輸出主導型から持続可能な消費・内需主導型の経済へと転換するための中国政府の取り組みを難しいものとしています。政策当局は不動産バブルの再来を避けつつ、こうした問題に対処するため、不動産開発会社への流動性供給、住宅規制の一部緩和、政策金利の段階的引き下げといった小刻みな対策を実施しています。エマージング市場には投資機会もありますが、全体の行方は中国の回復力が国内及び世界で信頼を取り戻せるかに大きく左右されそうです。

インフレ再燃への備えはなおも必要

予想外の暖冬や世界的な景気後退への警戒感、中国の不動産市況の悪化などによる需要低迷を背景に、一次産品主導のインフレ圧力が緩和し、コモディティ関連の株価も足元はこの18年半で最も低迷した水準にあります(図表3)。しかし、米国の底堅い景気や中国の景気下支え策(需要増要因)、ロシアの穀物輸出停止やOPECプラスの原油減産継続(供給減要因)はコモディティ価格を再び上昇させ、インフレの持続的低下を妨げる可能性があります。中長期的にも、エネルギーや鉱物などの天然資源は脱炭素化要請も影響しての投資減退や生産性低下、住宅等の施設・不動産は供給不足など、構造的にインフレが高止まりしやすい要因が存在します。市場ではインフレへの警戒心が薄れているとみられる中で、インフレ再燃のリスクや実物資産関連株式のアウトパフォームの可能性に備えておく意義は高いと考えられます。

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3. 各国・地域の経済環境

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4. ポートフォリオ・ポジショニング

  • 株式を小幅アンダーウェイトとし、キャッシュを選好。株式は成長見通しがそれほど悲観的でなく、中央銀行の金融引き締め政策のピークアウトが期待される中、バリュエーションは高止まりしているため、リスクに対するバランスを考慮。債券は根強いインフレに対する中央銀行の追加的な金融引き締め姿勢を警戒。一方、キャッシュは流動性と安定性を提供。
  • 株式では、リスク調整の観点から香港やオーストラリアの中国経済に対するエクスポージャーを抑制するため、欧州株式のアンダーウェイトの一部を、その他先進国のアンダーウェイトに振り替え。また、インフレが中央銀行の目標を今後も上回ることや、設備投資の減少や生産性トレンドの鈍化を反映して中期的にコモディティ価格が上昇する可能性があることから、それらに対するヘッジとして実物資産関連株式への配分を拡大。その原資として、新興国株式のオーバーウェイトを解消。経済再開によるインバウンドや旅行需要回復などが期待される日本株については、バリュエーションが魅力的としてオーバーウェイト継続。
  • 債券では、グローバル・ハイイールド社債のオーバーウェイト継続によりインカムを追求しつつ、不透明なマクロ環境継続によるリスクヘッジの観点から、米国長期国債のオーバーウェイトを継続。但し、日本を除く先進国の大半で金融引き締めサイクルが終わりに近づいている可能性が高いものの、長期金利のボラティリティは高止まりが想定されることから、米国長期国債(円ヘッジ付)の一部を、日銀のYCC修正を受けて利回り水準が改善した国内債券に移すことでデュレーション・リスクを分散化。

5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

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