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2023年9 月 / インサイト

人工知能を活用した運用プロセスの強化

人間の意思決定強化に向けてAIツールを活用した計画的なイノベーションを推進

サマリー

  • 6年前に設立したニューヨーク技術開発センターでは、顧客の成果向上を図る人工知能(AI)ツールを開発してきた。
  • 当社のアプローチは「知能増幅」、すなわち、運用プロフェッショナルの知見を深化させることを目的とするAIに重点を置く。
  • 当社のデータ・インサイト・グループは、アナリストやポートフォリオ・マネジャーが内外の膨大なデータベースから知見を得ることに資する、大規模言語モデルを取り入れるソリューションを開発している。

2022年11月、ChatGPTの公開は重要な分岐点となり、生成AIとその可能性に対する関心の巨大な波を引き起こしました。今や、世界中のほぼすべての業界のリーダーが、AIによる自社の事業に対する影響について試算しており、それは資産運用業界も例外ではありません。

AI人気の高まりは比較的新しい一方で、ティー・ロウ・プライスにおける技術への知見はそれよりも以前から始まりました。6年前より、当社のビジネスを支え、お客様の成果を向上させるためのデータ・サイエンスや機械学習に関する技術に投資してきたのです。この投資を通して私たちは、数十年におよぶファンダメンタル・リサーチや研究のうえに成り立っている多様な知見と運用プロフェッショナルを結びつけるために、AIをどのように活用するべきか模索してきました。

その答えが、当社のアプローチとなる「知能増幅(Intelligent Augumentation)」です。意思決定を自動化するのではなく、意思決定者に追加的なデータと知見を与えることで、既存の運用プロセス内で新たな視点をもたらすことを支援するものです。このアプローチによって、私たちの働き方を転換し、お客様に届ける成果を向上させる可能性があると考えています。

生成AIがもたらす利点に加えて、当社の強力かつ協働をもとにするリサーチ・アプローチは、学習プロセスを加速させることに資すると考えています。なぜなら、真に協調的な方法で、シニア・リーダー、ポートフォリオ・マネジャー、アナリスト、データ・サイエンティスト、ソフトウェア・エンジニア、UXデザイナーなど、様々な立場にいる人々の統合を実現するからです。集団的学習を支えることで、AI技術の急速に変化する環境を有効に乗り切るためのサポートになります。

知能増幅モデル

最近、当社のデータ・インサイト・グループは、ポートフォリオ・マネジャーやアナリストへのデータおよび知見の提供を改善するため、大規模言語モデル(LLM)の可能性に重点を置いてきました。ChatGPTが最も有名な例であるLLMは、膨大な量のテキストを学習し、質問や指示などの入力(プロンプト)に対して人間のような回答を生み出す電脳言語モデルです。

膨大な量のデータを即時に分析するLLMは、非常に有益であると実証されるでしょう。私たちが分析すべき潜在的な投資先に関する取得可能な情報量は膨大で、増加し続けています。一般公開されている大量のリサーチ情報と当社のリサーチから得られた豊富な知見を考慮すると、アナリストが情報を検索・抽出するために、自然言語処理(NLP)などのテクノロジーが必要になっています。

この課題に対応するため、当社のデータ・インサイト・グループは、ソリューション開発に取り組んでいます。それは、当社が長年にわたり蓄積してきたすべてのデータやリサーチを取り入れ、その情報を適切な運用アドバイザーによりアクセス・検索可能にするものです。

そして、LLMを活用し、アナリストやポートフォリオ・マネジャーのニーズに合わせて加工されたソリューションには、3つのCと呼ばれる使用方法が存在します。

消費(Consumption):消費は分析を目的としたデータおよび知見の抽出方法に関連するもので、短中期的に最も大きな生産性向上をもたらす可能性があります。LLMによって、統合された情報源全体の分析・要約が迅速化され、これらへのアクセスを容易にすることで、アナリストは、潜在的な投資先についてより多くの情報を得ることが可能になります。

またアナリストは、LLMとのやり取りを繰り返すことで、要求を洗練することができます。これにより、アナリストは、個別企業の分析により多くの時間を費やすことが可能になります。ファンダメンタルズ分析、ファクター分析、または経営陣との面談による知見を通じ、優れた長期投資対象となり得る差別化要因の評価に注力することができるでしょう。

特徴づけ(Characterization):テキストや画像などの非構造化データを分析し、通常であれば特定が困難な複雑かつ有益なパターンを発見するAIの能力を指します。例えば、データ・サイエンスの分野では、長年にわたり10-K(年次報告書)で用いられた言語が分析されてきました。その結果、それらの報告書に存在する否定的または肯定的な用語の微妙な変化とその後の株式リターンの間にある相関が発見されました。同様に、株式に対するセンチメントが時間の経過に伴いどのように変化したかを即時に確認し、複数のデータソースと比較するAIの能力には、大きな可能性があると考えています。

作成(Creation):知見、運用アップデート、面談記録、その他の書面による資料を含むコンテンツの作成にLLMが使用されることを指します。以前はマニュアルで行われていたコンテンツ作成が自動化されることで、アナリストがより付加価値のある分析や意思決定に専念できることを意味します。

人間の意思決定の置換ではなく強化

AI搭載ツールは、作業を自動化し、ポートフォリオ・マネジャーやアナリストの知見を強める大きな可能性がある一方、潜在的なリスクや人々がそれらを監視・管理する必要性があることも認識しています。

一つの重要なリスクはバイアスです。AIは膨大な量の情報にアクセスするなかで、それぞれの情報の信頼性を判断することはできません。AI搭載ツールが利用するデータにバイアスがある場合、当該データを利用して創造されたアルゴリズムにもバイアスが発生します。「プロンプト」として知られるAIツールに質問を提示する方法でさえ、行動バイアスをもたらす可能性があります。例えば、「私の論文の欠陥を見つけよ」といったネガティブ・プロンプトは、事実による裏付けがないネガティブ・バイアスの回答を生み出すリスクを高めます。

バイアスの他に、透明性に関するリスクも挙げられます。AIモデルは、複雑かつ不透明なため、回答の根拠の追跡が困難になる可能性があります。この点は、機能が進化するに応じて、明らかに規制当局による監視の対象となるでしょう。また、大量のデータがAIモデルの学習および利用に消費されるため、プライバシーやセキュリティのリスクが存在することも認識しています。

そうしたリスクは、当社チームがAIの潜在性を追求すると同時に、採用とアウトプットの適用に慎重になるに値する理由となります。

最終的に、AIにより増強された運用プロセスにおいても、アクティブ運用が成功するためには、人間による監督とガバナンスが必要になると考えています。

私たちが目指す道筋は、AIを活用することで、人間の意思決定を改善させ、より効率的なプロセスを生み出し、主要部門の担当者が価値を最大化する作業に専念できるようにすることです。データ・サイエンティストや運用担当者の協働チームとともに6年前に始めた取り組みが、この急速に変化する環境の巨大な潜在性の活用を可能にするのです。

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