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2023年5 月 / インサイト

変化を醸成するインパクト投資

投資リターンとともに社会と環境へのインパクトを追求

サマリー

  • ティー・ロウ・プライスのインパクト投資は、投資リターンを追求しながら、プラスのインパクトをもたらす企業の特定という2つの使命を持つ。こうした企業は、長期的により大きく売上高を伸ばす可能性が高い。
  • ティー・ロウ・プライスは、業界の先駆けとなり、かつポジティブな結果に向けた動きを加速させる企業を特定し、投資することを目指している。
  • 投資リターンと測定可能なインパクトの両方が実現可能であれば、大半の投資家は両方の実現を選択すると考える。つまり、インパクトをもたらすための投資に目を向ける投資家が増え、ティー・ロウ・プライスに追随する企業が増えることを意味する。

近年、より価値観を重視した運用アプローチに対する投資家ニーズへの対応として、インパクト投資が勢いを増しています。当社のインパクト投資戦略を担当する3人のポートフォリオ・マネジャーが、インパクト投資の台頭について、セクターの進化に対する見解を交えながら議論します。

なぜインパクト投資は重要なのでしょうか。インパクト投資の定義は何ですか。

David Rowlett(以下、「DR」):私は以前から、投資とは社会において重要な役割を担うものだと考えてきました。教育費や退職後の生活資金など、お客様が将来必要とするものに対して、長期的な運用パフォーマンスを創出することで支えるといった役割を果たすものです。環境や社会に関する世界の重要課題に取り組んでいる企業に振り分ける資金を増やすことによって、配分される資本の重要性が一層高まるでしょう。

これを実現するために、当社では国連の持続可能な開発目標(SDGs)を指針としています。SDGsでは、すべての人にとってより良い持続可能な未来を築くための17の目標が掲げられています。インパクト投資戦略における投資先の要件として、これらの目標のうち少なくとも1つは達成を目指すことが求められます(巻末の図1を参照)。

Matthew Lawton(以下、「ML」):国連の試算によると、SDGsを実現するために2030年まで年間5兆~7兆米ドルの投資が必要であり、2050年までに公益事業や自動車などのセクター全体でエネルギー消費量がネットゼロに移行していることが求められます。私たちはインパクト投資家として、こうしたプラスの変化をもたらす企業やプロジェクトに資金を配分していかなければなりません。

Hari Balkrishna(以下、「HB」):インパクト投資の運用プロセスと、その定義ですが、当社は、投資リターンに加え、環境や社会にプラスのインパクトを与えることができる戦略をインパクト投資戦略として定義しています。

その運用プロセスの最初のステップとして、まずは当社のインパクト憲章に基づいて進められます。各企業の収益または利益を用いてインパクトを定義し、それらの収益または利益がビジネスモデルに重要なインパクトをもたらしており、当社のインパクト投資の柱や小分類のうち少なくとも1つに沿ったものか重要性を評価します。

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次に測定可能性の基準を確認します。当社の明確に定義されたフレームワーク(インパクトの5つの側面)を用いて、投資先が今後もたらすであろう将来的なインパクトを測定し、実現したインパクトの合計を毎年検証します。

その後、追加性を確認します。当社の関与によって変化をもたらすことができるかという点です。関与とは主にステークホルダーとのエンゲージメントやインパクトの実現をめぐる議論に影響を与えるような企業との協働を意味します。例えば、当社はこれまで多様な業界の企業と連携し、M&A資金を前向きなインパクト創出活動に向かわせる方法や、水道インフラ企業と水の安全に関する目標の導入について議論してきました。

プロセスの最終段階として、強靱性の観点から、特定したインパクトが持続するよう働きかけます。

インパクトを実現するために 投資リターンが犠牲になることは ありますか。

DR:現在世界が直面している課題解決に取り組む適切な企業への投資には、固有の追い風が吹くと考えています。しかし、インパクト投資に適合する銘柄が必ずしも優れた投資成果を生むとは限りません。適切な産業に属していても、優れたビジネスモデルを持たないため、期待する投資リターンを得られない企業も多く存在すると考えられます。

ティー・ロウ・プライスのインパクト投資は、投資リターンを追求しながら、プラスのインパクトをもたらす企業を特定するという2つの使命があります。こうした企業は、長期的により売上高を伸ばす見込みが高いと考えられます。当社は、業界の先駆けとなり、かつポジティブな結果に向けた動きを加速させる企業を特定し、投資することを目指しています。当社にはそのために必要な企業規模やリソース、専門知識があり、こうした企業の発掘において他社より秀でていると信じています。

ML:環境・社会面における世界的な課題を解決に導こうとする企業は、資金調達、競争、延いては経済的なリターンの点で他社より優れているという共通認識を持っています。

インパクト投資が責任投資、サステナブル投資、ESG投資と 異なる点は何ですか。

ML:ESG(環境、社会、ガバナンス)という言葉はすでに広く使われていますが、考えているほど理解は広がっていないように感じます。ESG自体は運用スタイルではなく、あくまで性質を表すものです。ESGの要素を考慮するだけでなく、地球や社会に有害とみなされる特定のセクターまたは企業をポートフォリオから除外する、排除型アプローチとしても用いられています。ポジティブ・ティルトなどのサステナブル投資では、ポートフォリオの一部にサステナブル銘柄を組み込むためにこうした除外条件を適用しています。

インパクト投資の特徴は、投資リターンに加えて、社会や環境への測定可能かつポジティブなインパクトを追求することを目標としている点です。これら2つの目標の重要性に差はありません。さらに私たちはインパクト投資戦略の運用者として、投資先として適切だと確信する企業に投資しながら、インパクトを重視した重要業績評価指標(KPI)を用いて各投資案件を測定するよう徹底しています。このKPIは当社が長期で進捗状況を記録し測定しているものです。

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HB:補足させていただくと責任投資、ESG投資、サステナブル投資は、より内向きなアプローチを採用して企業活動を評価しているのが一般的です。例えば、ESGを重視する投資家は、企業内部の二酸化炭素排出量や従業員への待遇に着目し、その企業が「持続可能」であるかどうかを判断します。一方、インパクト投資家は、企業が生産する製品やサービス、そしてそれらの事業が地球や社会に与える外部への影響に重きを置きます。

インパクトの議論においてパブリック市場とプライベート市場はどのように比較されていますか。

HB:株式および債券のパブリック市場は、世界が直面する課題の解決に欠かせない存在です。前述の通り、国連の試算では、SDGsの達成に年間5兆~7兆米ドルの投資が必要とされています。上場する大企業の関与がなければ、こうした目標の達成は困難を極めることは明らかです。

パブリック市場かプライベート市場かという議論では、上場企業の方が規模が明らかに大きいため、通常では潜在的インパクトの規模は比較されません。主な焦点は、アディショナリティ(追加性)であり、インパクト投資の運用者である私たちが投資先企業の創出するインパクトを向上できるかどうかという点なのです。最終的には、変化を生み出すと確信度が高い企業に資金提供することを目指しています。同時に、上場企業との深く戦略的なエンゲージメントを通じてインパクトを最優先課題にするよう務めており、議決権行使によって、これを推進しています。

ML:これまで、インパクト創出の取り組みを始めて間もない企業と連携し、関連する重要評価指標(KPI)を用いてインパクトをもたらすプロジェクトの特定を支援してきました。また、最大限のインパクト創出を促すソーシャル・ボンドの組成方法についての指針も提供してきました。こうした事例は、パブリックな債券市場を通じてインパクトを生み出す実行可能手段の証明でもあります。

DR:パブリック市場とプライベート市場は 競い合うものではなく、どちらもアディショナリティ(追加性)を提供し、環境及び社会の目標を達成するにはあらゆる種類の投資資本が必要なのです。

最近のインパクト投資、ESG投資、サステナブル投資に対する不信感にどう対応していますか。企業のインパクト認証に向けられる目が厳しくなっていますが、「グリーン・ウォッシング」や「グリーン・ハッシング」への懸念はありますか。

DR:ESGをめぐる不信感が増すにつれ、インパクト投資がそうした議論に誤って巻き込まれるようになってきています。さらに、ESGが何を意味するかについての混乱や、ESGの果たす役割についての誤解が広まっています。ESGはよくグリーン投資の一手段だと誤解されますが、実際のところ、ESG要素を考慮しているに過ぎません。 

これに対して、インパクト投資の定義は極めて明確です。結果を重視し、国連の17の持続可能な開発目標のうち1つ以上の達成を目指して取り組んでいる企業を投資対象とするのがインパクト投資です。この基準を満たさなければ、当社のインパクト実現の投資対象には該当しません。

HB:私は、インパクト投資がESGに関する意向を表明する手段として極めて優れているという意見に賛成です。従来のESGは、リスクの観点から環境、社会、ガバナンスの問題を検討するものですが、インパクト投資はさらに踏み込んで検証し、かつ的を絞っています。これまでにはデータの質の低さという課題も生じており、企業や、目的に必ずしも沿っていると思えないESGファンドの資産運用会社が虚偽の主張をしているケースも見受けられるようになってきています。こうした企業を避けるために、アクティブなインパクト投資や深く掘り下げるファンダメンタルズ調査が有効であり、投資家が求める基準を満たすうえで役立つでしょう。つまるところ、当社のインパクト投資戦略の使命は、プラスの投資リターンの創出可能性を有する銘柄に投資しながら、持続可能な開発目標の達成を実現させることです。投資家がグロース、バリュー、配当利回りなどの市場のサブセットに投資するのと同様に、インパクト投資自体を1つのカテゴリーとしてとらえるべきだと当社は考えています。

ML:グリーン・ウォッシングについては、発行体と資産運用会社の双方にとって残念な問題です。例えば、事業がSDGsの17項目のうち16項目に沿ったものと主張するエネルギー会社が存在する場合、精査は避けられないでしょう。資産運用会社からすれば、マーケティング目的で「ESG」を謳うファンドが浮き彫りになるため、精査の強化は歓迎すべきです。一方で、あまりにも厳しすぎる規制が作られると、意図せぬ結果につながりかねません。例えば、何がサステナブル投資に該当し、何が該当しないかという規定が制定されると、あまりにも窮屈でしょう。また、予期せぬリスクも伴う可能性があり、企業がグリーン・ウォッシングとの非難を受けることを恐れ、サステナビリティの導入を躊躇してしまう可能性があります。 

パブリック市場かプライベート市場かという議論では、上場企業の方が規模が明らかに大きいため、通常では潜在的インパクトの規模は比較されません。主な焦点は、アディショナリティ(追加性)であり、インパクト投資の運用者である私たちが投資先企業の創出するインパクトを向上できるかどうかという点なのです。最終的には、変化を生み出すと確信度が高い企業に資金提供することを目指しています。同時に、上場企業との深く戦略的なエンゲージメントを通じてインパクトを最優先課題にするよう務めており、議決権行使によって、これを推進しています。

ML:これまで、インパクト創出の取り組みを始めて間もない企業と連携し、関連する重要評価指標(KPI)を用いてインパクトをもたらすプロジェクトの特定を支援してきました。また、最大限のインパクト創出を促すソーシャル・ボンドの組成方法についての指針も提供してきました。こうした事例は、パブリックな債券市場を通じてインパクトを生み出す実行可能手段の証明でもあります。

DR:パブリック市場とプライベート市場は 競い合うものではなく、どちらもアディショナリティ(追加性)を提供し、環境及び社会の目標を達成するにはあらゆる種類の投資資本が必要なのです。

最近のインパクト投資、ESG投資、サステナブル投資に対する不信感にどう対応していますか。 企業のインパクト認証に向けられる目が厳しくなっていますが、「グリーン・ウォッシング」や「グリーン・ハッシング」への懸念はありますか。

DR:ESGをめぐる不信感が増すにつれ、インパクト投資がそうした議論に誤って巻き込まれるようになってきています。さらに、ESGが何を意味するかについての混乱や、ESGの果たす役割についての誤解が広まっています。ESGはよくグリーン投資の一手段だと誤解されますが、実際のところ、ESG要素を考慮しているに過ぎません。 

HB:将来的には、2つの段階に分けて成功がもたらされると考えられます。より多くの投資家に、プラスの投資リターンに加えてポジティブなインパクトをもたらすというインパクト投資の価値とメリットが理解されると、インパクト投資分野への資金流入も拡大することでしょう。また、企業がインパクト投資家と同様の考えを持つようになり、より持続可能で大きなインパクトをもたらす事業活動が促されることで、企業の目標が明確になることを期待しています。

DR:ティー・ロウ・プライスは、より優れたインパクト投資のモデル及びアプローチを開発することで最前線に立つことを心がけています。投資リターンと測定可能なインパクトをもたらすことができれば、インパクト投資というカテゴリーの飛躍的な成長が期待できると信じています。つまり、インパクトをもたらすための投資に目を向ける投資家が増え、当社に追随する企業が増えるということです。

これが好循環を生み、現在私たちが直面している大規模で差し迫った環境・社会問題に企業を引きつけるという、当社の目標達成に向けたさらなる前進が期待できます。ミッションを達成できれば、インパクト投資を1つのカテゴリーとして確立し、より多くの投資家に参加を呼びかけられるようになるはずです。投資リターンと測定可能なインパクトの両方が実現可能であれば、大半の投資家は両方の実現を選択すると考えています。

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当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。

 

1 出所:S&Pグローバル・レーティング(追加ディスクロージャーを参照)。2023年3月31日時点

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