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2021年3月 / インサイト

FRBは債券利回りの急騰を容認することでタカ派に転じたのか

金融状況の逼迫を敢えて静観する模様

米国債利回りの急騰は、金融市場の状況を逼迫させていますが、米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長と連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの反応は無関心と言えるほど穏やかです。先週開催されたウォール・ストリート・ジャーナル主催のイベント「ジョブズ・サミット」での講演において、パウエル議長が債券市場の下落について懸念を表明せず、今後の政策変更を示唆しなかったことを受けて、米国長期債と株式は急落しました。

何が起きているのでしょうか。パウエル議長はタカ派に転じたのでしょうか。

パウエル議長がタカ派に転じたとは考えていませんが、FOMCが近い将来、債券市場を落ち着かせるために口先介入を行ったり、何らかの行動をとるとも予想していません。その理由は4つあります。

第1に、ワクチンの普及と大型の財政支援によって経済成長見通しが大幅に改善しています。過去9カ月にわたる耐久財への需要の増大を踏まえ、FOMCは金融状況のわずかな逼迫を適切とみなすでしょう。

第2に、大型の財政刺激策に要する資金を賄うため、米財務省は、FRBにて保有する極めて大量の資金を引き下ろし始めています。

この大量の資金引出しは、今後数ヵ月にわたり、約1兆ドルの量的緩和と同程度の影響を及ぼすでしょう。加えて、経済成長見通しの改善を考慮すると、FOMCが金融状況の逼迫を懸念する可能性は低いと考えます。

第3に、2013年のテーパー・タントラム(量的緩和の縮小による金融市場の混乱)は、FOMCのメンバーに深い傷跡を残しました。その結果、FOMCは、いずれ政策の変更を決定する際に再び混乱を引き起こすことに対して依然として極めて神経質です。仮に、債券利回りが経済成長見通しの改善を織り込むことを回避するためにFOMCが介入すると、債券市場にバリュエーション・バブルを生み出す可能性があり、後にFRB主導のテーパー・タントラムが生じるリスクは急激に高まります。当然ながら、それよりも債券市場が早期に調整するほうが望ましいと思われます。

第4に、これまでのところ、FRBは世界金融危機時とほぼ同じように新型コロナ危機に対処してきました。しかしながら、2つの危機の間には根本的な違いがあります。世界金融危機は銀行の破綻に端を発した危機であり、米国の家計の10年にわたる債務削減を引き起こすとともに、金融政策による支援を異例の長期にわたり維持する必要がありました。一方で新型コロナウイルスの感染拡大によるショックは深刻ですが、危機前の米国経済は不況を招くような是正を必要とする重大な不均衡を抱えておらず、その影響は遥かに短期間で終わると見込まれます。ワクチンの普及に応じて、FRBはこの現実に適応し始めています。

最後に、経済成長が加速しており、米財務省が景気刺激策を通じて膨大な資金を経済に注入する態勢にあることから、おそらく今は実際にFRBが債券利回りの上昇による調整を容認する絶好のタイミングでしょう。金融市場とリスク資産市場は、これらの要因が引き続き十分な下支えとなるため、無秩序に下落する可能性は低いでしょう。もちろん、無秩序な調整へと転じれば、パウエル議長および当局は、市場を落ち着かせる発言を行う用意があり、必要に応じて政策行動を取る可能性が高いでしょう。

 

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