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2020年9 月 / インサイト

テクノロジー株の乱高下により銘柄選択の重要性を再認識

テクノロジー・セクターの長期成長ストーリーは不変

サマリー

  • テクノロジー株の最近の反落は、株価急騰でバリュエーションが上昇した結果、利益確定売りが出たことによるものである。
  • テクノロジー・セクターにおいて価値を創出している長期的成長トレンドは健在であり、新型コロナウイルスの影響が広がる中、むしろ加速している。
  • 市場のボラティリティが今後さらに高まると、個別テクノロジー企業やそのビジネスモデルについて深い知識を有するアクティブ運用会社に有利に働く可能性がある。


テクノロジー株の最近の反落は、株価急騰を受けた利益確定の売りによるものであると見ています。幅広い銘柄が売られたことで市場では不安感が高まりましたが、テクノロジー・セクターの最も魅力的な長期成長ストーリーを支えているパワフルな成長トレンドは健在です。経済のデジタル化は、eコマース(電子商取引)、オンライン広告、動画ストリーミング配信、クラウドベース・ソフトウェアの普及から、自動車をはじめ様々な産業分野での半導体利用の拡大へと、加速の兆しが見られます。

経済のデジタル化は加速の兆しを見せている...

好パフォーマンスが利益確定の売りを誘発

過去8ヶ月のパフォーマンス(8月31日時点)を見ると、ITセクターはS&P500指数や他の10セクターを大きくアウトパフォームしています。

S&P500指数構成銘柄の時価総額上位5社—Apple、Microsoft、Amazon.com、Facebook、Alphabet(Googleの親会社)—はとりわけパフォーマンスが好調で、この間のS&P500指数のリターンのうち800bps以上がこれら5銘柄によるものです。

成長ストーリーがよく理解されているテクノロジー企業の多くは、直近実績や今後12ヶ月予想ベースのバリュエーションがかなり割高な水準にまで到達していました。急成長している企業向けソフトウェア企業は特に投資家の期待が高かったようです。 

バリュエーションへの懸念や、新型コロナウイルスや米大統領選に関する不透明感から、「強気相場は不安の壁を登る」という相場格言通りの状況が続くにつれて、投資家はテクノロジー株の上値余地について考慮し始めるようになりました。

個別銘柄が1日で大きく値上がりすると、テクノロジー・セクターや広範な市場における潜在的バブルへの懸念も高まります。予想より好調な決算を受け株価が急騰することもあり、そうした予想外の好決算は、アナリスト予想が低かったことや、一部テクノロジーの普及を加速させたコロナ下のダイナミックな経済環境を反映しています。一方、一部の人気銘柄の急騰は、本来、業績見通しとは無関係の株式分割などが引き金となったようです。

そして現在、投資家はこれまでの株高の持続性を疑問視し始め、テクノロジー株が底入れするまでにどの程度下げるのか見極めようとしています。
 

ファンダメンタルズを重視

テクノロジー株の短期見通しに対する投資家の懸念を理解しつつも、私がポートフォリオ・マネジャーを務めるグローバル・テクノロジー株式運用戦略では、長期的な価値創出につながる成長トレンドを重視しています。ボラティリティが高い時は特に、個別企業やビジネスモデルを深く理解することにより、魅力的な投資機会の発掘において他社との差別化ができていると考えています。

足元のテクノロジー株の過熱感は20年前のITバブルの際とは比べ物になりません。20年前は、高値で取引されるテクノロジー株は我々から見ると見せかけだけで何ら本質的な価値を提供していませんでした。現在、テクノロジー主導の変化はその持続性や規模について議論はあるものの、それが経済全般で起きていることは広く認識されています。

圧倒的優位のオンライン・ソーシャル・メディア、eコマース、クラウド・サービス・プラットフォーム企業はビジネスモデルの持続性が証明されています。クラウドベースでソリューションを提供するSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)モデルも同様です。SaaSの利用により顧客はより柔軟にITインフラやサポートを低コストで利用できます。また、永久ライセンスのソフトウェアをパッケージ販売し、業績が景気の波に左右される従来型ソフトウェア企業に比べると、SaaS企業はキャッシュフローが安定しています。

コロナ禍により既存の分野と普及が遅れていた食品・飲料など規模の大きい市場の双方でeコマースの普及が加速しています。このような消費行動の変化は米国のみならず世界的に持続的なものと思われます。この影響は大手ソーシャル・メディア企業が提供するターゲット広告にも波及しており、ダイレクト・レスポンス広告に対する根強い需要は、こうしたオンライン・プラットフォームが景気回復局面においてより多額のマーケティング予算を獲得する可能性を示唆しています。

長期的には、企業が事業継続性を改善し、効率性や競争力を高める過程でクラウドへのシフトが加速すると考えています。また、経済のデジタル化の進展がデータセクター、人工知能(AI)、自動車など工業分野での最先端半導体の需要拡大につながると予想されることから、半導体業界も長期的な投資機会がある分野です。

アクティブ運用のポートフォリオはテクノロジー株のボラティリティに対する特効薬ではない。しかし、当社のグローバルな調査体制は投資機会の発掘において有効である...


テクノロジー・セクターにおけるアクティブ運用

アクティブ運用のポートフォリオはテクノロジー株のボラティリティに対する万能薬ではありません。しかし、当社のグローバルな調査体制により、リスク/リターン特性が非常に魅力的な銘柄の発掘において他社と差別化ができ、市場の短期的な混乱を有効に活用することができると考えています。

例えば、ソフトウェア業界では近年、短期のバリュエーションはレンジ上限に近づく傾向があります。それは、SaaSのビジネスモデルの魅力や、企業のクラウドへのシフトに伴い旧来型企業から市場シェアを奪う革新的企業の潜在成長性を反映しています。

一方で、バリュエーションの高さは期待の高さの表れであることから、持続成長企業が予想外に悪い決算を発表したり、短期的に物色の矛先が持続成長銘柄から景気敏感銘柄に移った場合は、期待が高かった分だけ下落幅が増幅される可能性があることは認識しています。

しかし、たとえ売上に対する企業価値(株式+債務)の比率が同じで、売上の伸びが同程度だからといって個々のソフトウェア企業を一律に扱うわけにはいきません。このような時こそ、我々のボトムアップ・アプローチと、個別企業のビジネスモデルや業界動向に対する深い知識が真価を発揮します。それにより、市場がまだその中核事業の持続性や、成長ストーリー強化に向けた様々な動き、利益率拡大の見通しを正当に評価していない企業を発掘できるからです。

今後の注目ポイント

コロナ禍によりeコマースやクラウドベース・ソフトウェアなどの分野で大規模な需要が前倒しで発生しました。こうしたトレンドの持続性に疑問が生じ、目先の追い風により来年の期待が高まるリスクが警戒されています。当運用では、保有銘柄や潜在的な投資先の成長ストーリーの持続性を常に再評価し、独自の見解により先行きに対する確信を抱く分野への傾斜を強める一方で、成長の持続性に懸念がある銘柄を回避するよう努めています。

 

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

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当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

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