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2020年9 月 / インサイト

所得格差拡大による社会・経済的影響

所得格差が世界の商品・サービスの需要の変化を促進

サマリー

  • 所得格差は現代を代表する社会・経済問題の一つであり、世界の様々な分野でその影響が及んでいる。
  • 所得格差の拡大は、経済成長を阻害し、投資機会を奪い、ポピュリストの台頭や社会の分断を引き起こすという点で投資家にとって重要な意味を持つ。
  • 手頃な商品・サービスへのアクセス拡大を迫る動きが政策の変更を招き、投資機会の創出に繋がる。

所得格差は現代を代表する社会・経済問題の一つです。所得格差の水準は国・地域によって大幅に異なりますが、所得の分配と格差を測定するジニ係数は、世界各国で所得格差が拡大していることを示しています。この状況が続いた場合、負債の増加、イールドカーブのスティープ化、インフレ、法人税の増税、貿易制限の厳格化につながる可能性が高いでしょう。一方、消費パターンの変化や、割安な商品・サービスへの需要の高まりによって、セクターによっては好機が生じると考えられます。

所得格差の拡大には複数の要因があります。要因の一つは、税免除に係る規制の厳格化や、上位1%の富裕層の税率低下によって、税金と所得移転による再分配効果が薄れたことです。もう一つの要因は、多くの業界で集中度が増し、少数の企業に経済力が集中する構造になっていることです。

低技能労働の自動化、パートタイム労働や短期労働の増加といった労働市場の変化も所得格差の拡大に寄与しています。先進国では、低賃金国への製造委託もこうした労働市場の変化をさらに強める一因になっています。

 

賃金格差がポピュリズムを加速

所得格差は経済成長を阻害するため、投資家にとって重要な意味を持ちます。国際通貨基金によれば、富裕層が現状より1%豊かになるとその国はその後5年間にわたりGDP成長率が0.08%低下する一方、貧困層や中所得層が現状より1%豊かになるとGDP成長率は0.38%上昇します。所得格差は、低所得者層から健康や教育に投資する機会を奪い、機会の不平等を生み出しています。

所得の不均衡は政府の資源をめぐる争いを引き起こします。その結果、政治的な安定が損なわれ、ポピュリストの台頭を煽り、社会の分断が深まります。先進国のブルーカラー労働者の間では閉鎖経済への支持が高まっています。こうした労働者は、自分たちがグローバル化による恩恵を受けていないと感じていますが、彼らの主張にはある程度の正当性があります。一方、中央銀行が目指してきた投資促進を目指した環境整備の恩恵が社会全体に及んでおらず、中央銀行の独立性が脅かされています。

政治的に不安定な状況下では、一般的に右派と左派双方のポピュリストが社会の流動性と平等性を高めることを要求するため、財政支出の増加につながります。これは通常、負債の増加、イールドカーブのスティープ化、より緩和的な金融政策、インフレ期待の上昇を引き起こします。また、格差が貿易への反感を生むことから、多国籍企業は規制と課税の強化に直面するとみられます。

 

消費行動の変化が一部のセクターにて好機を生みだす

所得格差の拡大は、高級品メーカーにはマイナスの影響を及ぼしますが、その他の分野では事業機会を生むでしょう。例えば、潜在的な社会移動と雇用機会がより限定されると、格安なレジャーに対する需要が増大し、旅行・レジャー業界のイノベーションにつながるであろうと考えています。同時に、成長中の都市圏の宿泊費の高さに対し、解決策を提示できる企業にとっては好機を意味します。ほとんどの低所得者層にとって、収入を増やせる可能性が最も高い方法は教育です。そのため、高水準で手頃な価格の教育を提供する企業である、南アフリカで独立系学校ネットワークを運営するCurro(クーロ)にとって、潜在的な市場は非常に大きいと考えられます。同様に、革新的なヘルスケア・プロバイダーも多くの事業好機を見いだすでしょう。

新興国では金融サービスへのアクセスを求める人が増えており、ロシアのTinkoffBank(ティンコフ銀行)や、ケニアに本社を置くモバイル送金会社M-Pesa(Mペサ)など、テクノロジーを通じて低所得層の顧客による家計管理を支援する企業も好機を迎えています。

 

所得格差が投資判断に及ぼす影響

ティー・ロウ・プライスでは、社内のESGスペシャリストが投資プロセス全般にわたりソブリン債投資チームをサポートしています。 当社独自に開発した責任 投資モデルを活用し、ソブリン債の長期的なパフォーマンスに重要な影響を与える可能性が高いESG ファクターを特定、分析、投資判断に統合しています。所得格差はESGの「社会」要素における重要な検討事項であり、ソブリン債の投資判断においては重要な要素となっています。

 

今後の注目点

各国政府が手頃な商品・サービスへのアクセス拡大を求める動きに継続的に対応することで、さらなる政策の変化が見込まれます。企業がこうした変化に対応する中で、各セクターにおける事業機会も引き続き生まれるとみられます。当社は顧客の投資パフォーマンスを最大化するため、今後も世界各地の所得格差をモニタリングし、分析に取り入れていきます。

重要情報 

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

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