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2020年4 月 / インサイト

信用危機の4局面におけるリスクとチャンス

第3局面では「フォールン・エンジェル」を含む有望な割安銘柄を探す

サマリー

  • 現在の危機は感染症のパンデミック (世界的大流行) が引き金という特異なものであるが、我々は過去の危機と同様、社債市場は今回も4つの局面をたどると考えている。
  • 信用危機の最初の局面では、市場参加者はショックの度合いを見極める。第2局面では、ハイイールド債の一部の投資家が現金確保のため売却に走る。
  • 第3局面では、当社のポートフォリオ・マネジャーは、センチメントが突然改善する第4局面で大きなトータルリターンが期待できる銘柄の発掘に全力を注ぐ。


新型コロナウイルスのパンデミックは、社債を含む金融市場全体に強烈な下押し圧力をもたらす経済危機を引き起こしました。新型ウイルスのインパクトの大きさに加え、原油暴落が重なり、経済成長見通しは徐々に引き下げられました。しかも、ここ数週間は債券市場全般にわたり流動性が極度にひっ迫しています。市場はこれまでにも危機を経験し、それに耐えてきましたが、今回の下げはその深さと速度においてほとんど前例のないものです。

現在の危機は感染症の世界的拡大が引き金という点で特異かもしれませんが、我々は過去の危機と同様、社債市場は今回も回復に至る4つの局面をたどると考えています。現在は投資家が現金確保や株式への資金移動に走り社債は見境なく売られています。社債市場が落ち着き始めれば、当社のポートフォリオ・マネジャーは今後数年で高いトータルリターンを期待できる銘柄に狙いを絞って選別的にリスクを取ることができます。これは、パッシブ・ファンドが不利な価格での売却を迫られるのを尻目に、アクティブ運用者が有望な銘柄を極端に割安な価格で買うことができる理想的な環境です。
 

フェーズ1: ショックの度合いを見極める

信用危機の最初の局面では、市場参加者はショックの度合いを見極め、とりあえず認識するリスクに応じて社債を売却します。危機の最終的な進展やパンデミックの影響についてまだ不透明感が強い状況ですが、投資家が世界的なリセッション (景気後退)を織り込む中、年初から3月20日までの間に JPモルガン・グローバル・ハイイールド債インデックスの信用スプレッド1は700 ベーシスポイント (bps)2 以上も拡大しました。

3月初旬、サウジアラビアが大幅な価格引き下げと増産を決定したことから原油が暴落し、エネルギー関連企業の社債はとりわけ激しい下げに見舞われました。エネルギー関連の発行体は米国ハイイールド債ベンチマークの約15%を占めていました。エネルギー企業の社債スプレッドはサウジの発表後最初の取引日である3月9日にその日だけで約300bpsも拡大し、3月20日までに2,300bpsを突破しました。
 

フェーズ2: 流動性を管理する

信用危機の第2局面では、ハイイールド債の一部の投資家は現金確保のため売却に動き、それが第1局面からの売り圧力を増幅します。ティー・ロウ・プライスではハイイールド債ポートフォリオ (やすべての債券戦略) について、危機の際にポートフォリオ・マネジャーが現金需要を満たすため魅力的な長期保有銘柄を手放さなくて済むようにバッファーとして一定のキャッシュを維持したり、私募債など流動性の低い資産の保有を最小限にとどめる管理をしています。我々は厳しい下落を想定してポートフォリオのストレステストを定期的に行い、キャッシュ・バッファーのサイズを決定します。
 

フェーズ3: 長期的な投資機会を探す

第3局面では、当社のポートフォリオ・マネジャーは中長期的に大きなトータルリターンを期待できる銘柄の発掘に全力を注ぎます。ポートフォリオ・マネジャーは各セクターの専門家である世界各地の当社クレジット・アナリストと密接に協力し、ファンダメンタルズとかけ離れた極端に割安な価格で取引されている債券を探します。

今回の危機は、新型コロナのパンデミック (需要減要因) とサウジの増産決定 (供給増要因) という2羽の「ブラックスワン」 (めったに起きないが、起きると甚大な影響を及ぼす事象) が飛来したエネルギー・セクターに通常より多くの投資機会をもたらすかもしれません。信用力の低いエネルギー企業の社債はデフォルト (債務不履行) や債務再編が増える見込みですが、投資適格級から非投資適格級に格下げされる「フォールン・エンジェル」も増えるでしょう。

投資適格社債しか保有できない機関投資家はこうしたフォールン・エンジェルの売却を迫られ、非投資適格債に特化した投資家には魅力的な投資機会が生まれる可能性があります。当社のエネルギー担当クレジット・アナリストは同セクター担当の株式アナリストと密接に協働し、今後数年で大きなトータルリターンを期待できる銘柄の発掘に努めています。
 

フェーズ4: スプレッドの突然の縮小

第4局面では、センチメントの改善に伴ってスプレッドが突然縮小に転じるタイミングがあり、それを予測するのは至難の業です。センチメントの底入れとスプレッドの縮小開始のタイミングを正確に予測するのはほぼ不可能なため、我々は市場がまだ混乱している第3局面から投資機会の発掘に全力を尽くします。とはいえ、過去のパターンでは、ハイイールド債のスプレッドが800 bpsに達した時点で購入すると、投資家はその後12-24ヶ月に好成績を上げる傾向があります。3月20日時点のスプレッドは1,000bpsを超えており、この資産クラスは中長期的に大変魅力的になった可能性があります3

我々はよくハイイールド債市場の参加者を「観光客」と「永住者」に例えます。観光客は幅広い資産クラスに投資でき、非投資適格債市場やその発行体の分析に特化していない投資家です。これに対し、永住者は価格形成の歪みを特定できるハイイールド債に特化した投資家です。新型コロナと原油暴落の2大ショックに見舞われて観光客が逃げ出してしまったハイイールド債市場には現在、永住者にとって中長期的に魅力的な投資機会が生まれていると思います。
 

今後の注目点

中央銀行が流動性の問題を解決するために様々な措置を講じる中、新型コロナウイルスの経済的な影響の軽減を目的とした財政刺激策の強化へ向けた動きに注目しています。世界各国の政府は積極的な財政措置の承認に向けて動き始めましたが、政治的な問題によりそのプロセスが遅れ、市場のボラティリティがさらに高まる可能性もあります。

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当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

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