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2026年10月, Fixed Income
AIに関連する他の話題と同様に、AI向け設備投資の資金調達を目的とした最近の社債発行ラッシュは、金融メディアから大きな注目を集めています。しかし、冷静に見れば、AI関連の設備投資目的で発行される新たな社債も、債券市場における資金調達競争が激化する中で新たに登場したひとつの事例にすぎません。
実際、世界各国の政府はすでに国債の発行を拡大していました。この流れは、2020年初頭に新型コロナウイルスの感染拡大によって世界経済の大部分が停止状態に陥り、それに対応して各国政府が大規模な財政支援策を打ち出したことを契機に始まりました。そのため、企業がAI関連投資の資金調達を目的として相次いで社債を発行している現在、これらの新規発行、特に信用力の高い発行体による債券は、投資家資金の獲得を巡って国債と競合する状況となっています。
このような資金調達需要の急増は、発行量の拡大を通じて、最終的には米国債をはじめとする信用力の高い国債の利回りを押し上げる要因になると考えられます。また、ハイパースケーラー企業やデータセンター関連の債務を含むクレジット資産についても、信用スプレッドが拡大する可能性があります。その結果、これらの債券のオールイン利回り(国債利回りと信用スプレッドを合わせた総利回り)も上昇すると見ています。
こうしたAI関連の社債発行の急増が経済や債券市場全体に与える影響に加え、新規発行債の特徴やリスクをテーマに、当社グローバル投資適格債部門責任者のSteve Boothe、そしてテクノロジー・セクター担当のクレジット・アナリストであるMark Stoddenとの議論をご紹介します。
Husain:AI向け設備投資と、その資金調達を目的とした債券発行は、長期的な経済成長にどのような影響を与えると考えますか。
Boothe: AI向け設備投資は、米国経済にとって重要な追加的成長エンジンとなっています。短期的には、データセンター、半導体、電力設備、および関連インフラへの投資が、設備投資と経済成長を直接的に押し上げています。
より長期的な観点での焦点は、生産性向上による効果や将来のキャッシュフローが、現在投入されている巨額の資本を正当化できるかどうかにあります。もしそれが実現するのであれば、好循環が生まれ、足元の高い株価バリュエーション、タイトな信用スプレッドが正当化できると考えられます。その結果、さらなる成長と資産価値の上昇が促され、高い実質利回りを確保できる可能性があります。一方で、設備投資の収益率が期待を下回ったり、資本コストが上昇したりした場合には、設備投資のペースが急速に鈍化する可能性があります。
Husain:AI関連の社債発行の急増は、企業のクレジットカーブに影響を及ぼしていると見ていますか。
Boothe:間違いなく影響しています。 投資適格債市場における新規発行の増加分のかなりの割合が長期ゾーンに集中しており、その結果、クレジットカーブのスティープ化が進んでいます。年初来の投資適格債発行額の約3分の1が長期ゾーンで発行されており、その中でもAI関連の発行体が大きな割合を占めています。1
私は現時点で、この状況を信用力全般の悪化ではなく、需給と相対価値の問題として捉えています。長期債投資家は、大量の国債発行を吸収しなければならない一方で、ハイパースケーラー企業や他のAI関連企業の大量発行の消化も求められています。こうした長期デュレーション資産に対する需給バランスを反映する形で、市場が許容できる利回り水準は調整を余儀なくされると考えています。
Husain:AI関連債券への投資を増やす際、ポートフォリオをどのように構築すべきでしょうか。
Stodden:ポートフォリオは、AIをテーマとして意図的に配分しなくても、個別に魅力的な投資先を積み上げる中で、結果としてAI関連リスクへのエクスポージャーが大きくなることがあります。重要なのは、AIを絶対額でどれだけ保有するかではなく、ベンチマークに対してどの程度のアクティブなAIリスクを取るべきかです。
ポートフォリオ構築においては、AI関連クレジット市場の拡大ペースがとりわけ重要な意味を持ちます。2029年までを見ると、米ドル建ての広範なクレジット投資機会の拡大分のうち、概ね半分をAI関連が占める可能性があります。だからこそ、AI関連エクスポージャーは意図を持って計画し、リスク予算配分において、バランスを慎重に考える必要があります。
Husain:ハイパースケーラー企業の信用力は今後低下すると予想していますか。
Boothe:いいえ。そのようには考えていません。大半のハイパースケーラー企業は、依然として発行体の中でも最も強固なバランスシートを有しています。私は、これらの企業の社債について、過去に見られたような個別発行体の信用力悪化が起きるより前に、発行増がもたらす需給悪化やデュレーション・リスクの再評価によって価格に下押し圧力が生じる可能性があると見ています。
より興味深いのは、AI投資が現在のように資本集約的な状態であり続けた場合、これらの企業のバランスシートが3年から5年後にどのような姿になっているかという点です。投資家は、開示されている負債だけでなく、設備・供給能力に関するコミットメント、保証、その他の偶発債務についても考慮する必要があります。
Husain:AI関連のクレジット・サイクルにおいて、どのようなリスクがあると考えますか。
Stodden: 短期的には、旺盛なAI需要に対して計算資源の供給が不足する現在の状況が続く可能性が高いと見ています。しかし、AIサイクルの次の局面へ移行するにあたっての主要なリスクは、計算資源がより潤沢になることです。仮に将来的に計算資源の供給が需要を上回る状況となれば、AIの利用自体が引き続き堅調に推移したとしても、インフラ提供企業やテクノロジー供給企業が発行する債券の価値は下落する可能性があります。
Husain:新たに発行されるAI関連債券の中で、どの分野に投資妙味があると見ていますか。
Boothe: 一般的な長期・無担保のハイパースケーラー企業の社債ではなく、投資家が複雑性に対するプレミアムを享受できる、投資適格格付けのデータセンターやインフラ関連のクレジット・ファイナンス案件により魅力的な投資機会を見出しています。もっとも、こうした案件は非常に個別性が高く、一般的な無担保社債とは異なる視点での厳格な信用分析が必要です。当社では、テナントの信用力、契約条件、レバレッジ水準、元本償還構造、建設リスク、電力供給の確保状況、立地条件、そして将来的な借換えリスクなどを重視しています。
Stodden:リスクシナリオとして先ほど述べたように、計算資源能力の供給が需要に追いつく場合であっても、質の高いテナントを抱え、戦略的に重要な立地を有するデータセンター案件の信用力は、なお維持される可能性が高いと考えられます。ただし、このシナリオが現実味を帯びてくると判断した場合には、こうしたポジションの積み増しは見送る可能性が高いでしょう。一方で、追加投資を検討し得る分野の一つが、AIラボが発行する債券です。現時点でのエクスポージャーは限定的ですが、需要が引き続き高水準を維持する中で投入コストが低下するようであれば、ポジションを構築していく可能性があります。
1 2026年8月31日時点。出所:J.P.モルガン
リスク:債券は、信用リスク、流動性リスク、コールリスク、金利リスクの影響を受けます。金利が上昇すると、債券価格は一般的に下落します。テクノロジー企業は、激しい競争、政府による規制、業績の期待外れ、特許保護への依存、技術革新や消費者嗜好の変化に伴う製品・サービスの急速な陳腐化などの影響を受ける可能性があります。
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