2026年8月, Fixed Income
約6ヵ月前に示した2026年見通しを振り返ると、米国経済に対する私たちの基本的に強気な見方は依然として変わっていません。この間、市場に大きな影響を与えた想定外の出来事として、中東紛争が発生しました。しかし、この出来事が米国の需要を大きく押し下げることはありませんでした。
他方、2026年1月に私たちは米ドルに対して長期的に弱気な見方を示しました。その主な根拠は、米政権の経済政策がますます内向き(孤立主義的)な方向へ傾斜しており、その結果、世界の基軸通貨としての米ドルの優位性が徐々に損なわれると考えたためです。
新FRB議長に対する市場の見方が米ドルを下支え
米ドルに対する長期的な見方は引き続き弱気です。一方、今後数ヵ月間は短期的な要因が米ドルを下支えする可能性があります。第一に、ケビン・ウォーシュ氏が連邦準備制度理事会(FRB)議長に就任して以降の政策運営は、これまでのところ米ドルにとって追い風となっています。市場では、同氏のスタンスが概ねタカ派的と受け止められ、年内の利上げを織り込み始めています。他の条件が一定であれば、こうした利上げ観測は米ドルの支援材料となります。
私たちは、ウォーシュ議長に対する市場のタカ派的な解釈に必ずしも同意していません。同氏はハト派的なメッセージを発していないものの、それだけでタカ派的な姿勢を示唆しているとは言えないと考えています。
また、金融政策の方向性を判断するうえでは、FRB議長個人のスタンスよりも、連邦公開市場委員会(FOMC)メンバー全体の投票行動の方が、有益な判断材料になると考えています。それにもかかわらず、市場はウォーシュ議長をタカ派とみなす見方に基づいて動いてきました。将来の政策方針に関するフォワードガイダンスが縮小するなか、市場のFRBに対する期待はより変動しやすくなり、経済指標の発表内容に左右される傾向が強まるとみています。しかし残念ながら、それらの経済指標自体も変動性が高まっており、データの質が低下する可能性にも留意が必要です。
第二に、継続する米国の拡張的な財政政策も、米国経済と米ドルの強さを支える重要な要因です。米政権は2026年11月の中間選挙に向けて景気の勢いを維持したいと考えていますが、こうした拡張的な財政政策による効果はいずれ弱まっていくとみています。その際、設備投資がその不足分を補えるかどうかが焦点となります。
米国経済への強気な見方を表現する手段としては、米ドルよりも金利市場が有効
その一方で、米国経済に対する短期的な強気見通しを表現するポジションとしては、米ドルをオーバーウェイトするよりも、より適した方法があると考えています。例えば金利市場では、堅調な米国の経済成長と継続的な財政支出の拡大が相まって、長期債の利回りを押し上げると予想しています。そのため、特に米国10年国債および30年国債のショートポジションは恩恵を受ける可能性があるとみています。
中間選挙後は、米ドルの長期的な逆風が優勢となる可能性
2026年後半以降を見据えると、2026年1月頃から続く米ドルの力強い上昇局面は、米国の拡張的な財政政策の効果が薄れるにつれて勢いを失うと予想しています。当社の債券運用チーム内には、米ドルの長期見通しについてより強気な見方もあります。その主な理由は、米国を中心に進行している人工知能(AI)関連の設備投資ブームが今後も継続し、米国への資金流入を促し続けると見込んでいるためです。
しかし私たちは、中間選挙前の拡張的な財政政策によって、米ドルが直面する長期的な逆風が一時的に見えにくくなっているにすぎないと考えています。その逆風には、基軸通貨としての米ドルへの依存を低減しようとする世界的な外貨準備の分散化の流れも含まれます。例えば、米国以外の一部の中央銀行は、外貨準備の分散を目的に金を購入しています。
また、現在の米国の政策の方向性も、米ドルに対する長期的な見通しに影響を与えています。移民政策や貿易政策が恒常的に制限を強める方向へシフトした場合、高度な技能を持つ人材や起業家精神に富む人材を米国へ呼び込む力が長期的に低下する可能性があります。その結果、生産性や経済成長の長期的な見通しに悪影響が及べば、世界の投資家にとっての米国資産の魅力も徐々に低下する可能性があり、米ドルにとっての逆風となり得ます。
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