2026年7月, ESG
アクティブ運用において、投資適格債券を対象とするクレジット運用戦略の基盤は、十分に確立されています。分散投資、規律ある発行体の選定、厳格な分析、慎重なポートフォリオ構築は、優れた投資適格債への資産配分を行う際に、まず投資家が求める要素です。そうした枠組みのなかで、インパクトの視点は新たな分析軸を加えることができます。
規律あるプロセスが支える強固な運用戦略
優れたクレジット運用戦略は、厳格なボトムアップによる発行体調査、慎重な発行体の選定、そして信用力およびリスクに関する規律あるファンダメンタル分析を基盤とします。
これはインパクト・クレジット運用戦略にも当てはまります。伝統的なポートフォリオ構築においては、戦略的配分を中核に据えつつ、相対的に高いリスク・リターン特性を有する資産とディフェンシブな資産を組み合わせることが基本となっています。これらの配分比率は、市場環境や投資家のクレジット・リスク許容度に応じて柔軟に調整されます。実務上は、ボトムアップによるインパクト分析とファンダメンタルなクレジット分析を、マクロ経済環境やクレジット・セクター間の相対価値といったトップダウンの視点と組み合わせることを意味します。また、リスク管理は個別発行体レベルとポートフォリオ全体レベルの双方で行うべきであると考えています。
アクティブ運用、柔軟性、発行体とのエンゲージメント
積極的なエンゲージメント、個別企業の詳細な分析、継続的なモニタリングは、従来の債券投資と同様に、優れたインパクト・クレジット運用戦略の中核を成します。インパクト・クレジット・ポートフォリオは、信用格付け、デュレーション、ベータに関する要件を含む、さまざまなリスク・リターン目標や制約に応じて柔軟に設計することが可能です。一般的なクレジット・ポートフォリオと同様に、運用会社は、個別の運用目標や市場の見通しに基づき、リスクの水準と源泉の双方を意図的にコントロールすることができます。さらに、アクティブ運用は、発行体の機動的な入替えやイールドカーブおよびスプレッドのポジショニングを通じて、ベンチマーク対比でアルファの獲得を目指す柔軟性を提供するとともに、相対価値に着目した投資機会にも迅速に対応することを可能にします。
インパクト・クレジット運用戦略の大きな特徴は、インパクトの測定と報告に加え、エンゲージメントと案件組成を一体的に行う点にあります。発行体との継続的なエンゲージメントは、企業戦略や情報開示の改善を後押しし、投資家がグリーンボンドやブルーボンドなどのインパクト志向の金融商品の発行を促すことにつながります。このアプローチは、投資目標とインパクト目標双方の実現を目指すものです。当運用チームは、こうしたエンゲージメントの進捗状況を投資期間を通じ、特定のマイルストーンやKPIに照らして、体系的に測定・モニタリングすべきと考えています。ティー・ロウ・プライスでは、独自のインパクト・ピラー・フレームワークを活用し、すべての投資がインパクト・ピラーやサブピラーの一つ、そして少なくとも一つの国際連合の持続可能な開発目標(SDG)に整合するように運用しています。
ラベル付き債券以外への投資機会の拡大
分散投資は優れたクレジット運用戦略の基本です。強固なポートフォリオは、異なるセクター、発行体、地域にわたって分散され、投資家がボラティリティを抑制しながら、魅力的なリターンの追求を可能にします。同じ考え方は、インパクトの視点を投資に組み込む場合にも当てはまります。
投資適格クレジット市場全体に広がる幅広い投資機会を活用することで、環境面や社会面でポジティブなインパクトの創出を目指す発行体を発掘できるだけでなく、優れたクレジット・ポートフォリオに求められる分散効果を備えたポートフォリオの構築にもつながります。
環境・社会・ガバナンス(ESG)ラベル付き債券は、バランスの取れたインパクト・クレジット運用戦略の中心的な構成要素と考えています。これらは調達資金の使途が明確であり、その成果を継続的に報告できるからです。しかし、ラベルなし債券を投資対象に含めることで、投資機会はさらに広がります。多くの企業は、自社の製品、サービスや事業活動を通じてポジティブなインパクトの創出に取り組んでおり、それらの取り組みについて、従来の社債を通じて資金調達を行っています1。
ESGラベル付き債券市場は成熟が進み、市場規模も拡大してきましたが、(図表3)、市場の構成は依然として世界の債券市場全体とは大きく異なります。政府関連の発行体が占める割合が高い一方で、産業などのセクターの構成比率は相対的に低くなっています(図表4)。そのため、ラベル付き債券以外に目を向けることは、投資ユニバースを広げ、分散効果の向上にもつながり、ポジティブなインパクトの創出と財務目標の双方を達成する投資機会の発掘につながる可能性があります。
とはいえ、ラベルなし債券による資金使途は、通常、ラベル付き債券ほど明確に定義されていません。そのため、この分野で運用を行うアクティブマネジャーは、投資する前に企業が創出しているインパクトを評価するため、厳格なデューデリジェンス体制を整備する必要があります。これにより、発行体の活動に対する理解を深めることができるほか、多様なステークホルダーの視点を取り入れながら、インパクト特性を形成する重要な要素を把握することができます。
ポートフォリオの下支えと長期的な視点
インパクト・クレジット運用戦略にラベルなし債券を組み入れることは、分散効果の向上につながりますが、ラベル付き債券が有するディフェンシブな特性を見過ごすべきではありません。ESGラベル付き社債は、歴史的に見て、一般的な社債市場よりスプレッド変動に対する感応度が低い傾向を示してきました。実際、2019年から2025年にかけて、ESGラベル付き債券のスプレッドの変動幅は社債市場の約74%の水準にとどまっていました(図表5)2。重要なのは、この関係が、「リスクオフ」局面においても持続する傾向があることです。ここでいう「リスクオフ」とは、社債市場においてスプレッドが拡大する局面を指します。
特に、国際機関のラベル付き債券を組み入れることは、リスクオフ局面において、ポートフォリオの下支えとして安定化に寄与することが期待されます。
これらの発行体は格付けが高く、流通市場におけるスプレッドの変動が穏やかな傾向があります。また、通常、社債市場で資金調達されることが少ない公共セクターのプロジェクトへの投資を通じて、インパクト・クレジット投資の幅を広げることができます。例えば、インパクト・アウトカム・ボンドは、財務的リターンを測定可能な開発成果と連動させた債券であり、国際機関により発行されます。これらの債券は、格付けが高い一方で、一定の非流動性プレミアムが期待できることから、魅力的な選択肢であると考えられます3。しかし、期待されるリターンを実現できるかどうかは、あらかじめ設定されたインパクト目標やマイルストーンが達成されるか、あるいは上回るかに依存します。
インパクトがもたらす新たな側面
優れたクレジット運用には、詳細かつ継続的なリサーチ、慎重なポートフォリオ構築、分散投資、そしてアクティブ運用を組み合わせることが重要であると考えています。インパクトの視点を適切に取り入れることで、こうした運用の基本原則を補完することができ、グローバル投資適格債券を対象とし、サステナビリティを重視した優れたクレジット運用戦略を求める投資家にとって適した戦略になります。このように、公開市場における債券投資は、体系的な運用と十分なリソースを備えていれば、財務的リターンと測定可能なポジティブなインパクトを両立させる有力な手段となります。
当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。
1 これらの発行体は、足元の売上高の少なくとも50%がティー・ロウ・プライスが独自に分類するピラー、サブピラー、および国連SDGの少なくとも1つに準拠している発行体として定義しています。
2 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ティー・ロウ・プライスによる分析。2025年12月31日時点。
3 非流動性プレミアムとは、流動性の低い資産への投資において見込まれる追加リターンをいいます。
投資リスク
分散投資は利益を保証するものではなく、市場が下落する局面における損失を回避または軽減することを保証するものでもありません。債券には、信用リスク、流動性リスク、コールリスク、金利リスクが伴います。一般的に金利が上昇すると、債券価格は下落します。
インパクト投資またはサステナブル投資戦略は、必ずしも期待される環境面または社会面でのポジティブなインパクトを創出できるとは限りません。また、いかなる投資目標についても、その達成を保証するものではありません。
追加ディスクロージャー
ベンダー指数の定義やデータソースなどの詳細については、https://www.troweprice.com/en/jp/market-data-disclosures をご参照ください。
重要情報
当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。
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当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。