著者   Jessica Sclafani, CAIA®, Andrew Jacobs Van Merlen, CFA
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DCプランにおけるプライベート・アセット:これまでの変化と今後の展望

2026年5月, From the Field

サマリー
  • プライベート・アセットの投資構造とDCプランの運営上のニーズが一段と合致することで、プライベート市場へのアクセス機会が拡大している。
  • リターンの向上と分散がプライベート・アセットへの関心を高めているが、手数料や流動性、訴訟リスクへの十分な対応が必要である。
  • 専門家が運用するマルチアセット・ソリューションは、ガバナンスの中央集権化と流動性の管理により、プライベート市場への慎重な投資方法を提供できる。

確定拠出型年金(DC)プランにおける投資能力は、進化の次の段階に入りつつあります。プライベート市場におけるイノベーションが加速し、政策変更がより支援的な規制環境を示唆しているなかで、DCプラン・スポンサーおよびそのアドバイザーは、プライベート・アセットの導入が可能かどうかではなく、それが実践的かつ慎重なものであり、加入者の目標と合致しているかどうかをますます問い掛けています。

特定のプライベート・アセット・クラスを含む広範な投資ユニバースは、特に適正に構築され、専門家が運用するマルチアセット・ソリューションを通じてアクセスすれば、プラン加入者により良い成果をもたらすことができると考えています。しかし、投資価値や運営面を考慮して、プライベート・アセットへの投資機会を適切に評価するには、足元の環境および次に起こり得る状況を深く理解する必要があります。
 

変わっていないもの
 

退職後に備えた資産形成に対する持続的な逆風

DCプラン投資の主な課題は変わっていません。それは加入者が数十年続く可能性がある退職後の生活に自信を持つことができる十分な資産を積み上げるように支援することです。不十分な貯蓄率、長寿化の経済的影響、購買力の持続的な悪化など、退職後の生活に向けて資産形成を行う個人投資家が直面している構造的な圧力は、弱まっていません。むしろ強まっています(図表1)。

退職後に備えた資産形成の課題

これらの現実は、加入者が老後資産形成の目標を達成するために、投資戦略による支援がますます必要になることを意味します。
 

マルチアセット運用能力の進化

マルチアセット・リタイアメント・ポートフォリオの進化は、 この永続的な課題を反映しています。ターゲット・デート・ソリューションは、主要な適格デフォルト商品(QDIA)となって以来、その基盤である株式と債券への配分を優に超えて拡大してきました。ポートフォリオの構築は、追加の資産クラス、改良されたグライド・パス、より幅広いリスク調整後リターンの源泉を組み入れて、さらに高度化しており、様々な市場環境にわたり分散を高め、耐久性を向上させることができます(図表2)。

ターゲット・デートや他のマルチアセット・ソリューションにおけるビルディング・ブロックとしてプライベート・アセットを組み入れることで、この伝統を継続することができます。 成長、分散、賢明なリスク管理の必要性は変わっていません。これらの目的を追求するために利用できる投資機会は、これまで進化しており、今後も進化し続けると見込まれます。
 

実証可能な価値の必要性

DCプランにおけるプライベート・アセットの適合性は、幾度も論じられてきました。しかし、基本的な価値命題は一貫しており、分散とリターンを向上させる可能性があることです。

最終的に、プライベート・アセットは、DCプラン・ポートフォリオにおいてその地位を勝ち取らなければなりません。いかなる配分も、パブリックかプライベートかを問わず、固有の手数料控除後利益を広範なポートフォリオにもたらすことを実証しなければならないと考えています。組み入れは、流動性管理、手数料に関する規律、受託者責任を阻害することなく、測定可能な方法で、加入者の期待リターンを向上させなければなりません。

マルチアセット戦略における分散は進化し続ける

 

変化したもの
 

投資環境の変化

現在のパブリック市場は、一世代前とは様相が異なっています。株価指数は集中度が高まっており、少数の大型企業によって左右されるリターンの度合いが大きくなっています。それと同時に、多くの企業が伝統的な取引所以外で資本にアクセスし、長期にわたり未公開のままでいることを選択してきたことから、上場企業数は減少しています(図表3a)。債券市場も、機関投資家の需要動向や、従来型の債券セクター以外でカスタマイズされた資金調達が利用できることにより、構造的な変化を遂げています。

一方、プライベート市場は規模と範囲が拡大しています(図表3b)。プライベート・エクイティ、プライベート・クレジット、プライベート・インフラストラクチャー、ダイレクト・プライベート不動産は、今やグローバルな投資可能ユニバースに占める割合が20年前より大幅に上昇しています。長期投資家にとって、この変化は重要な戦略的疑問を提起します。それは、プライベート市場を除外すると有意な経済成長分野へのアクセスが制限されるかどうかです。
 

構造的な障壁の減少

規制や投資商品を取り巻く環境も変化しています。プライベート・アセットは、多くのDCプランにおいて、株式公開前の企業に戦術的に投資する株式戦略などを通じて、長く役割を担ってきました。しかし、規制上の解釈を巡る不確実性や潜在的な訴訟リスクが、プライベート・アセットの幅広い導入を抑制してきました。

より最近の政策の動きや業界関係者との対話は、これらの障壁に取り組む意欲の高まりを示しています。定期的な流動性やプライベート市場への長期エクスポージャーを提供するエバーグリーン・ファンドなどの構造的なイノベーションにより、プライベート・アセットの導入は、日次バリュエーションや加入者取引など、運営面でDCの要件との整合性が高まっています。

プライベート・アセットは急速に拡大

これらの展開が合わさって、実行可能性に関する論点が変化しています。DC業界は、現実的な実行にますます重点を置いており、分散された専門家が運用するマルチアセット・ソリューションの中で、プライベート・アセットがいかに適合できるかを慎重に評価しています。
 

プライベート・アセットの投資価値

ターゲット・デート・ポートフォリオにおけるプライベート・アセットへの配分は、分散やリターンの向上という目的を追求する追加的な手段を提供します。

プライベート・エクイティ、プライベート・クレジット、プライベート・インフラストラクチャー、プライベート不動産は、それぞれ異なるリターンの源泉をもたらします。

  • プライベート・エクイティは、企業が株式を公開する前にしばしば生じる価値創造を捉える機会を提供することが期待されます。
  • プライベート・クレジットは、従来型の債券とは構造的に異なる、相対取引に基づくインカム収益を提供することが期待されます。
  • プライベート・インフラストラクチャーは、景気に左右されにくい安定したインカムおよび潜在的なインフレヘッジ効果をもたらすことが期待されます。
  • プライベート不動産は、インカム創出力を高め、インフレの影響の緩和することが期待されます。

これらのエクスポージャーをパブリック市場の株式や債券と慎重に組み合わせると、経済的要因や市場ダイナミクスの違いのため、分散効果を高めることが期待されます。

投資機会の理解

 

今後の展望

運用会社およびDCプラン・スポンサーによる評価は、厳格でなければなりません。資産の査定に基づくバリュエーションは、プライベート市場におけるボラティリティ(評価ベース)を平準化することができますが、運用会社は、足元の経済リスクを認識し、特にストレス環境における真の相関を理解しなければなりません。さらに、プライベート市場における運用会社のパフォーマンス格差は際立っており、熟練したアクティブ運用や規律あるデュー・デリジェンスが結果を左右します。

ターゲット・デート・ソリューションにおいては、プロバイダーが通常、組み入れ基準を満たすプライベート市場への配分およびプライベート・アセットの運用会社を選択する責任を負う一方、ターゲット・デート・プロバイダーを選択する責任は、DCプラン・スポンサー/受託者およびそのコンサルタントやアドバイザーにあります。
 

DCプラン・スポンサーの関心はプランの規模によって異なる

当社の調査データや業界関係者との対話は、プライベート・アセットへの関心が高いものの、控えめであることを示唆しています(図表5)。DCプラン・スポンサーおよびコンサルタントは、プライベート・アセット戦略の評価に際し、一貫して分散とリターンの向上を主たる目的として掲げています。それと同時に、実行意欲は、異なるプライベート市場エクスポージャーやプランの規模によって異なります。

当社の調査によると、実行される可能性が最も高いプライベート・アセットとして、DCプラン・スポンサー回答者の43%がプライベート・クレジットを選択しました。

  • 現在、プライベート・クレジットを巡るヘッドライン・リスクが高まっているものの、当社のターゲット・デート戦略チームは、多くのDCプラン・スポンサーと同様に、プライベート・クレジットへの構造的な配分は、パブリック市場の代替資産よりボラティリティの低いインカム源として魅力があると考えています。
  • さらに、プライベート・クレジットは、通常、コンサルタントやDCプラン・スポンサーから、DCプランにプライベート市場エクスポージャーを組み入れる合理的な出発点としてみなされています。

しかし、DCプラン・スポンサーをプラン資産規模で区分すると、違いが見られます。

  • 資産規模10億米ドル未満のプランは、10億米ドル以上のプランより、プライベート・エクイティの組み入れを見込む傾向が強く、その他のオルタナティブ資産についても限定的に検討する傾向がうかがえます。ただし、暗号資産については、DCプランにおけるオルタナティブ投資の文脈で広く議論されている一方で、ティー・ロウ・プライスのターゲット・デート戦略チームは、ターゲット・デート・ポートフォリオにおいて実際に採用される可能性は最も低いとみています。
  • 一方、資産規模10億米ドル以上のプランは、プライベート・クレジットや実物不動産を組み入れる可能性を高く見積もっています。
  • 実物不動産については、すでに超大型プラン市場において、特にカスタム・ターゲット・デート戦略のなかで実行しています。

重要な点として、手数料、流動性の制約、評価基準の課題、訴訟リスクが実行の主な障壁として特定されています(図表6)。多くのDCプラン・スポンサーは、プライベート・アセットへのエクスポージャーを含むDCプラン投資の提供に潜在的な利点があるとみているものの、これらの側面を明確にしようと努めており、十分な対応がなされることを期待しています。

DCプラン・スポンサーの実行可能性に関する見解
手数料および流動性を引き続き重視

 

最後に:概念から実行へ

プライベート・アセットがDCプランにおいて広く普及すれば、その実行手段が投資価値と同程度に重要となります。最も強いコンセンサスは、専門家が運用するマルチアセット・ソリューション、特にターゲット・デート戦略、そして程度は低いものの、マネージド・アカウントを最も現実的な出発点として挙げています。これらの構造は、ガバナンスを中央集権化し、分散された枠組みのなかで流動性を管理し、単独のオプションに伴う加入者の投資判断上のリスクを低減することが期待されます。

DCプラン・スポンサーにとって、プライベート・アセットの評価は、最終的に受託者責任の基本に回帰します。いかなる配分も、価値命題である加入者の成果に寄与する可能性、そして運営面の実行可能性について評価されなければなりません。流動性管理、運用会社の選択、コストの妥当性、加入者とのコミュニケーションは、いずれも慎重な考慮を必要とします。加えて、ターゲット・デート・ソリューションにおいては、プライベート市場のビルディング・ブロックが担うと期待される役割や、それがグライド・パスを通してどのように変化し、加入者の投資目的および退職までの時間軸に整合するかを理解することが重要です。

政策協議が進展し、投資商品のイノベーションが続くなかで、慎重さが引き続き基本原則です。プライベート・アセットの組み入れを追求する場合は、受託者がDCプランにおいて提供される他の投資手段を評価する場合と同様に、加入者の最善の利益を基盤とする実証調査主体のプロセスを反映しなければなりません。投資機会は魅力的ですが、受託者としての規律に交渉の余地はありません。ポートフォリオの耐久性、流動性管理、コスト規律、ガバナンス基準を徹底しなければなりません。
 

補足:調査手法

ティー・ロウ・プライス DCプラン・スポンサー・リタイアメント・トレンド調査:同調査は2025年10月21日から12月4日にかけて実施されました。データは、自社のDCプランの投資商品について監督および選択する役割を担っている136のDCプラン・スポンサーからの回答を反映しています。調査回答者は、ティー・ロウ・プライスが主催した調査であることを知らず、必ずしもティー・ロウ・プライスの顧客ではありません。

ティー・ロウ・プライス DCコンサルタント調査:同調査は2025年1月13日から3月10日にかけて実施されました。2025年の調査には、自己申告ベースで13万6,000以上のDCプラン・スポンサーを顧客に持ち、約9兆米ドルの助言資産(AUA)を有する36社の主要なコンサルタントおよびアドバイザー(企業タイプの自己認識に基づいてコンサルタント81%、アドバイザー19%)が参加しました。

ティー・ロウ・プライス 老後資産形成に対するグローバル意識調査(GRSS):2025年の調査は、確定拠出型年金(DC)または同様の口座型の職場退職給付制度に拠出している労働者を(年齢、性別、地域に関して)代表する、7,010人の18歳以上の成人を対象としました。米国以外では市場ごとに約1,000人の成人、米国では3,001人の成人を対象としました。すべての国を均等に代表するようにデータを加重しています。

Jessica Sclafani, CAIA® グローバル・リタイアメント・ストラテジスト Andrew Jacobs Van Merlen, CFA ターゲット・デート戦略ポートフォリオ・マネジャー

投資リスク
プライベート投資は、一般に投機的な性質を有し、高い事業リスクおよび財務リスクを伴います。これらの投資では、レバレッジが活用される場合があり、これにより投資損失のリスクが高まるほか、運用実績の変動が大きくなる可能性があります。

定義
Jカーブ効果とは、投資初期において、投資家がコミットした資本の払込み請求(キャピタル・コール)が行われ、投資運用者によって投資に充当される過程で初期的な損失が生じ、その後、投資回収段階において、運用者が事業改善を通じて創出した利益を投資家に分配することにより、徐々に収益が積み上がっていく現象を指します。
追加の金融用語の定義については、troweprice.com/glossary をご参照ください。

追加開示
CAIA®は、Chartered Alternative Investment Analyst Associationが所有し、管理する登録認証マークです。

重要情報

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