2025年6 月, From the Field
低い手数料と堅調な市場リターンが、米国株式の分散型ポートフォリオのコアとなる運用手法として、パッシブ運用戦略の魅力を高めてきました。
S&P500指数に連動する4大ETFが、昨年、米国株式型カテゴリーへの資金流入の3分の1以上を占めたことは、驚きではありません1。
インフレ動向、変化する政策、AI革命など、次なる展開や方向性が見通しにくく市場のボラティリティが高まっており、企業間のファンダメンタルズの乖離が拡大する可能性を示唆しています。
長期の投資目的を達成するために、広範な市場の上げ下げの方向性に依拠し過ぎることを懸念しながら、過大なアクティブ・リスクを回避したい投資家には、どのような選択肢が存在するでしょうか?
S&P500を代替するハイブリッド戦略
アクティブ型エンハンスト・インデックス運用戦略2 は、適切な設計に基づいて適切に実行されれば、多様な市場環境において、市場と同程度のリスクで市場を上回るリターンを生み出す可能性があります。
その鍵を握るのは、パッシブ運用とアクティブ運用の利点を周到に組み合わせることだと考えます。
ポートフォリオを指数のリスク特性に近似させることは、アウトパフォームする機会を短期的に制約してしまう場合があります。しかし、見方を変えれば、ベンチマークを大幅に下回る可能性も低減できることになります。
こうした厳格な管理のもとで、銘柄選択によって相対的な付加価値を一貫して生み出せれば、短期的には少額な超過リターンであっても、長期的にはその累積効果を十分に享受することができます。
ファンダメンタルズ重視で付加価値を生み出す
綿密なファンダメンタル・リサーチを重視するティー・ロウ・プライスのアクティブ型エンハンスト・インデックス運用戦略は、不確実な市場環境や相場動向が変化する局面において優位性が際立つ可能性があります。
時価総額加重指数をベンチマークとする運用戦略の銘柄選択やポジション調整は、企業の過去の実績を反映したものになりがちで、将来の動向を予測するものではありません。
経験豊富なアナリストを、それぞれの専門分野における銘柄選定責任*を委任すれば、よりダイナミックなポートフォリオを構築でき、企業の将来見通しやリスク/リターンプロファイルが時間とともにどのように変化するかをより適切に捉えられる可能性があります。
ティー・ロウ・プライスの世界の各地域、セクター、資産クラスに展開するアナリスト間の協働は、脱グローバル化やAIの台頭といった急速に変化するトレンドの影響を把握し、これらの不確実性を乗り越える上で最も有利な立場にある企業を特定する上で、強固な見解を導き出すことができます。
市場全体、セクター、あるいは個別銘柄がピークまたはボトムにあるか否かを関知せず、アナリストは個別企業や担当セクターへの深い洞察により、不確実性が高い局面であっても自信を持ってポジションを削減または追加することができます。
また、担当分野に造詣の深いアナリストに銘柄選定責任を委任することで、ポートフォリオ全体では多様なアイデアや投資スタイルをもたらし、単一マネジャー運用に伴いがちなバイアスや盲点の軽減にも役立ちます。
こうしたリスク管理およびリサーチ主体のアプローチによって、一握りの巨大企業が指数のパフォーマンス状況を左右する局面であっても、アウトパフォームの可能性は、多様なセクター、業種、および個別企業に分散されることになります。
セクター・アナリストの調査事例
ファンダメンタル・リサーチは、銘柄間のパフォーマンス格差が顕著に大きい相場局面で付加価値を発揮します。当運用に参画する3名のアナリストが、潜在的な長期の投資価値を注視しつつ、昨今の変動する経済環境や市場局面をどのように判断し、乗り切ろうとしているかについて解説します。
目先は慎重さを保ちつつ、選択的に楽観的な長期見通しを維持
Chris Graff
米国インターネット・アナリスト
優位性の評価:メガキャップの消費者向けインターネット企業は、しばしば独自の資産クラスとして一括りにされます。しかし、これらの企業は独自のビジネスモデルを有しており、相対的なリスク/リターンプロファイルを評価するためには、細やかな分析が不可欠です。グローバルなテクノロジーアナリストの深い知識を有するチームと、これらの企業を長年追跡してきたポートフォリオマネジャーと密接に連携することで、活発な議論が生まれ、差別化された洞察を得ることができます。
懸念ポイント:主要な消費者向け巨大インターネット企業の市場占有率は成熟段階にあり、景気悪化に対して以前より敏感になっています。例えば、2022年に見られたように、経済や消費者のマインドに懸念が生じると、オンライン広告支出は比較的容易に削減されてしまいます。長期的なリスクについて言えば、オンライン検索企業は、生成AIモデルの普及による圧力に直面しています。目先は慎重さと選別眼が必要です。
魅力的な分野:長期的に見ると、大手消費者向けインターネット企業は、その膨大なユーザー層、大量の有益なデータ、演算能力のおかげで、一般的にAI革命から恩恵を受ける優位な立場にあると思われます。オンライン広告は、AIが顧客満足を促進し、マーケティング・キャンペーンの有効性の改善に寄与してきたため、主たる活用事例として浮上してきました。大手クラウド・サービス・プロバイダーも、AI関連ビジネスの増加で恩恵を受けるでしょう。ただし、AIのイノベーションが高速で進むため、適応能力面で潜在的な混乱に警戒が必要です。有望な企業は、成長見通しを悪化させることなく、コストの削減余地が他社より大きいと思われます。
注目分野:AIを取り巻く環境は急速に変化しています。市場が一時的に発生した逆風が持続するものと誤認する場合があります。どの企業がAIの台頭から持続的に恩恵を受ける最適な立場にあるかを長期的視点で見極められれば、こうした短期的な逆風を確信もって投資機会として捉えることができます。
企業のファンダメンタルズとバリュエーションに留意
Greg Locraft
ポートフォリオ・マネジャー兼保険アナリスト
優位性の評価:保険銘柄に特化した長い調査経験から、業界の異なる分野や個別企業で起きている事象について、よりきめ細かい見解を見いだすことができます。こうした洞察は、企業のファンダメンタルズに改善が見込まれる局面、バリュエーション評価が有効な局面、経営陣が賢明な資本投下により付加価値を生み出すと見込まれる局面を特定するのに役立ちます。また、これら3つの事象が悪化していると思われる状況を回避する上でも役立ちます。
魅力的な分野:経営状態が良好な損害保険会社や保険ブローカーは、保険商品が生活必需品のため、相対的にディフェンシブなビジネス・モデルに類されます。また、これらの企業は、金利上昇局面では、満期を迎える債券をより高利回りの証券に置き換えることで、投資収益を押し上げることができるため、長期にわたる低金利環境の終焉から恩恵を受ける傾向があります。
しかし、選別眼が投資家には不可欠です。商業保険(企業向け保険)における保険料の上昇サイクルは7年目を迎え、その勢いが衰える兆候が見られるため、バリュエーションが魅力的でクオリティの高い銘柄に重点を置くことがより重要です。一方、個人保険(消費者向け保険)は、住宅保険を始めとして継続的な保険料の上昇が続いておりバリュエーションが適正な企業の魅力を高めています。
懸念ポイント:生命保険に対しては、景気後退リスクが高まっているため、高度な選択的アプローチが必要でしょう。生命保険のビジネス・モデルは、株式市場やクレジット市場動向に加え、金利の変動に対してもより敏感な点も注意が必要です。
注目分野:厳格なバリュエーション評価はもとより、企業ごとの事業構成や、上振れ期待や下振れリスクといった個別要因を深く理解することが、この不安定な経済環境において一層重要となります。
持続的な成長を追求しつつ、混乱を回避
Ari Weisband
ポートフォリオ・マネジャー兼決済関連企業アナリスト
優位性の評価:異なる企業規模や多様なセクターの非上場企業と上場企業の決済関連会社を分析することは、イノベーションが一部の企業に課題をもたらし、他の企業に収益機会を生み出している仕組みを理解する上で非常に役立ちます。
魅力的な分野:一部の有望な取引決済企業は、安定した成長で合理的な株価成長が見込まれます。そういった企業は比較的安定した事業を展開しており、最も重要な点として、株主価値の創造につながる効率的な資本配分を実行しています。
懸念ポイント:伝統的な給与計算処理企業は、クラウドベースのソフトウエアソリューション企業からの価格競争と市場シェアの圧力を受けやすい状況にあります。労働市場の潜在的な弱さも、この分野における慎重な見極めと銘柄選択の必要性を示唆しています。eコマース決済の分野では、大手テクノロジー・ソリューション企業やモバイル決済ソリューション企業が台頭し、競争が激化しています。こうした状況は既存企業の一部にとって長期的な逆風となり得ます。
注目分野:長期的に優位な立場にあると思われるものの、景気循環の影響を受けて目先的に逆風に直面する可能性があり、マクロ経済の不確実性や市場のボラティリティは、投資に好機をもたらす可能性があります。
給与計算処理業界は、破壊的イノベーションが起こり得る分野として注目するべき分野の一つの可能性があります。
1 2024年12月31日時点。 出所:ブルームバーグ・ファイナンス・エルピー。
2 アクティブ型エンハンスト・インデックス運用戦略の詳細について、 2024年7月発行「アクティブ運用とパッシブ運用の長所を組み合わせた運用戦略」をご覧ください。
*リサーチ・アナリストはポートフォリオ・マネジャーの監督と裁量の下で銘柄選定を行います。
リスク –当運用戦略に関連するリスクは次のとおりです。
- セクター集中リスク -ポートフォリオの資産が集中する特定のセクターに影響を及ぼす事業、産業、経済、金融、市場情勢により、運用実績がより大きな影響を受ける場合があります
一 般的なポートフォリオ・リスク
- 株式リスク - 株式は様々な理由で急速にその価値を失い、無期限に低位に留まる場合があります。
- ESG及びサステナビリティのリスク - 投資元本及びポートフォリオのパフォーマンスに大きなマイナスの影響を与える場合があります。
- 株式リスク - 株式は一般に債券やマネー・マーケット商品よりもリスクが高くなります。
- 地理的集中リスク - ポートフォリオが特定の地域にその資産の大部分を投資する場合、そのパフォーマンスはその地域で生じる事象の影響をより大きく受けることになります。
- ヘッジ・リスク - ヘッジを通して特定のリスクを軽減又は排除しようとする試みが、意図したとおりに機能しない場合があります。
- 投資ポートフォリオ・リスク - ポートフォリオに投資する場合は、市場に直接投資する場合とは異なる特定のリスクが生じます。
- 運用リスク - 運用会社又は運用会社が指名する者にとって、あるポートフォリオに対する義務と他の運用ポートフォリオに対する義務とが時として相反する場合があります(ただし、このような場合はすべてのポートフォリオが公正に取り扱われます)。
- オペレーショナル・リスク - オペレーション上の過誤によって、ポートフォリオのバリュエーション、運用報告、取引執行などに影響が及んだり、金銭的損失が生じる可能性があります。
重要情報
当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。
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当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。
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