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2022年6 月 / インサイト

成長路線の初期段階にある企業への投資

長期にわたる力強い成長ポテンシャルのある企業に注目

サマリー

  • 一部のグローバル・テクノロジー企業は、長きにわたって2桁の成長率を持続するという近年まれに見る快挙を達成した。
  • 我々は多角的に見て、各分野で競争優位にある企業に長期での高い成長に対する投資機会を探している。
  • 足元ではボラティリティが高まっているが、投資家は最終的には強力な長期の収益ポテンシャルのある企業に戻ってくると我々は見ている。

直近の過去20年は、投資家にとって魅力的な発展が進んできました。景気が全般に低迷する中でも、巨大企業を含む多くのテクノロジー企業は、利益と売上の2桁の成長を持続してきました。我々はこの現象を「長期成長の滑走路」と呼び、特に成長余地を多く持つ企業を調査しています。

昨年、米連邦準備理事会(FRB)がタカ派に転換して以来、投資家は金利上昇を受けて、将来の収益ポテンシャルの大きさより短期的にキャッシュフローを創出している企業を好むようになり、あらゆるセクターで多くの急成長企業の株価は軒並み反落しました。新型コロナウイルスとロックダウンがもたらした多くのオンライン関連企業への追い風が弱まり、投資家は利益成長の伸びが鈍化することを警戒しています。また、2022年の業績は好調だった昨年と比較されるため、基調的かつ構造的に高い成長率を実現するのはより難しいかもしれません。

我々はこうした逆風を承知の上で、慎重なファンダメンタル・リサーチと、混乱期を忍耐強く乗り切る意思の2つを基本とした投資アプローチを堅持しています。今回、私がポートフォリオ・マネジャーを務めるグローバル・テクノロジー株式運用戦略の上位保有8銘柄1が我々の投資プロセスをどう反映しているかを説明します。当運用戦略のコンポジットの短期的なパフォーマンスは低迷していますが、長期的な視点に立つことができる投資家にとって、これらの企業は引き続き魅力的だと確信しています。

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製品や技術だけでなく、実行力も優れた企業を追求

アトラシアンはテクノロジー・セクター内の企業に特に認知されている業界のトップ企業です。同社のアプリケーション開発ソフト「Jira」は巨大データプールを戦略的資産として運用する企業やそのプログラマーには不可欠なツールとなっています。

アトラシアンは、従来の営業組織による販売に依拠せず、代わりに口コミなど波状的なマーケティングで製品販売するユニークな企業向けソフトウェアのビジネスモデルの草分けです。さらに、同社はコラボレーション・ツール(Confluence、Trello)や情報技術管理ソフト(Jira Service Management)を軸に幅広い製品群を有しています。私はソフトウェア・アナリスト時代、2015年後半に上場する前から同社をカバーし、設備投資や事業遂行に対する経営陣の規律あるアプローチを一貫して高く評価してきました。アトラシアンのケースのように、企業を上場前から深く理解し確信を積み上げることこそが、我々の投資アプローチを支える徹底的なファンダメンタルズの精査プロセスの真骨頂です。

 有望かつ開拓途上の市場をターゲットとする企業に着目

ハブスポットもあまり馴染みのない企業かもしれませんが、同社は、企業のウェブサイトのプレゼンス構築担当や顧客誘導管理(CRM)担当などマーケティング関連従事者の間で注目されている企業です。同社のサービスは従業員数名の零細企業から数千人規模の企業まで幅広い顧客に対し、ウェブサイトへ訪問者を誘導し、顧客化を支援するサービスを提供しています。中小企業は、企業間競争が激しく、予算的にも限界があり厳しい市場ですが、ハブスポットは効率的に市場に参入する方法を支援しています。また、同社は、多くの中小企業やその顧客にとって困難だった電子決済への対応を簡単に行える決済ツール「HubSpot Payments」を昨年秋に開始しました。

バリュエーションは重要だが、適切と判断した時は買いを検討

テスラは今さら紹介するまでもないですが、2008年に初の電気自動車(EV) 「Roadster」を発売する前から投資家の注目を集めていました。当運用戦略は上場後すぐに同社に投資しましたが、その後、バリュエーションが極端に高すぎると判断して一部売却し、最終的には全売却しました。近年、EV市場の競争は激化していますが、当社リサーチでは、同社は顧客が最も懸念するコスト面で最も優位な立場にあると判断し、再度組み入れを実施、最近では組入上位に位置しています。同社は世界各地で大規模生産のため工場を建設しています。また、テスラの車体と搭載バッテリーは家庭用エネルギー市場で重要な役割を果たす可能性も見込まれます。最高経営責任者Elon Musk氏の自動運転車に関する構想は着実に前進しています。

膨大な潜在市場を持つ企業に関心

データ量が増加する一方、それを保管するハードウェアのコストが大きく下がる中、膨大なデータベースの検索や処理に必要なソフトウェアやサービスに注目が集まっています。モンゴDBは、開発者が大量のデータを使ってアプリを構築する際の柔軟性向上やスピードアップに役立つ非リレーショナル・データベースのトップ企業として頭角を現しました。この新市場でのモンゴDBの主な優位性の一つは、クラウドの拡張可能データベース・サービス事業に早い段階から参入したことで、あらゆる規模の企業が多額の前金を支払うことなく必要に応じたサービスの購入を可能にしている点です。データベース・クラウド・サービスの潜在市場は非常に大きく、モンゴDBはAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureのような既存の大手企業に伍して自らの事業領域を開拓できると見ています。

 同様に、カナダのショッピファイは独立系販売業者向けオムニチャンネル・コマース・プラットフォームのトップ企業の一つです。このクラウドベースのセルフサービス型製品は、十分なサービスを受けられていない小規模業者の市場を開拓するものです。同社はこのプラットフォームを活用して、広範で複雑な業者とグローバル市場を結びつけるサービスの開拓に乗り出しています。ショッピファイは膨大で増え続ける提携代理店とアプリを結び、さらに習得したデータがビジネスを支援するというエコシステムの構築が可能になると見ています。足元の株式市場では、同社の物流施設への新規設備投資に伴う費用負担に対して悲観的に反応し、株価は下落していますが、投資家のこうした警戒的な反応は、膨大なグローバル小売市場において、物流施設だけでなく、決済や広告など様々な側面支援を通じて付加価値を創出するショッピファイの長期成長ポテンシャルを過小評価していると見ています。

一つの市場での強みを他市場でも生かせる企業を選好

エヌビディアはわずか数年でビデオゲーム向け半導体メーカーから幅広い半導体開発の最先端を走る企業へと変貌を遂げました。その理由の一つは、同社の画像処理半導体(GPU)が人工知能(AI)や機械学習(ML)に求められる膨大な計算量の処理に高度に適していることが背景でした。我々は、同社がAIやMLにおいて半導体やソフトウェアの専門知識を活用し、この重要な新分野で性能向上を目指す企業が様々な方法で利用できるデータセンターのエコシステムを構築し続けるかに注目しています。

変化の最前線にある企業を重視

もしこの世の中に一部の特定企業が存在しなかったら、テクノロジー・セクターや世界経済は今と大きく違っていたでしょう。

我々の見方では、台湾セミコンダクター(TSMC)はそうした企業の1つであり、当運用戦略の組入銘柄として長期にわたり上位に位置してきました。2017年、TSMCは最先端半導体の製造でIntel から首位を奪い、線幅7ナノメートル(nm)の半導体の生産を始めました。これはプロセスの微細化、つまりシリコンウエハー上にトランジスターをどれだけ細かく焼き付けられるか、従って一定サイズの半導体チップにどれだけ多くのトランジスターを搭載できるかを表す数値です。それ以降、TSMCは5nmや4nmプロセスのレースでもトップを走り、今年中に 3nm半導体を発表する見通しです。iPhoneやラップトップに使われるアップルの「Bionic」やM1半導体を含む今最もパワフルなプロセッサーは、TSMCの製造技術なしには大量生産できなかったでしょう。我々はTSMCを世界的な技術進歩を支える基軸企業の一つと考えています。

次の成長段階に進む成熟企業を追求

サービスナウは、社員のワークフローをデジタル的に管理するクラウドベースのソフトウェアを提供しています。同社はこの分野において競争優位に立つ先導的な企業に成長しました。今後もこの中核市場においてシェア拡大が見込まれる一方で、パンデミック時に加速した企業の業務やマーケティングのデジタル化が一層進む可能性があり、ITサービス・マネジメント関連以外の分野への業務拡大も可能と見ています。サービスナウは現在、従業員、顧客、クリエイターのワークフローを管理する幅広いソフトを提供していますが、今後は人事や顧客サービス部門へのサービス拡大が見込まれます。

長期収益力のモデル化

株式市場はここ数ヵ月、企業の将来の潜在的な収益性の道筋の先を見据える傾向が薄れています。つまり、足元の業績を重視する短期志向が強まっていると見ています。

こうした傾向の主因は明らかに昨年11月の米連邦準備理事会(FRB)のタカ派転換であり、金利が急上昇し、それに呼応するように高成長株がアンダーパフォームしました。

こうした株価変動の激しい中であっても、当運用戦略が保有する銘柄の企業ファンダメンタルズは概ね安定しており、保有銘柄に対する確信を再確認し、長期見通し重視の投資方針を堅持しています。我々が運用で用いている株価目標や収益モデルは決して、低金利時代が永きに続くことを前提としたものではありません。実際、多くのテクノロジー企業が、企業と顧客のコスト軽減に貢献しており、当運用戦略の上位保有銘柄の多くは今のインフレ環境であっても、好業績が期待できると見ています。例えば、我々が投資するソフトウェア企業の多くは、効率性向上においてクライアント企業に高く評価される革新的ソリューションを提供しています。そしてこの効率性向上はクライアント企業に生産性向上とコスト削減をもたらします。

今後の見通しの手掛かりとして、2000年のITバブルを思い起こす向きもありますが、当時の動向と現在は大きく異なると考えています。後で振り返れば、バブル期に高株価だった一部テクノロジー企業のビジネスモデルは根本的に欠陥があったため、その後業績が好転することはありませんでした。対照的に、我々が現在追求する企業の特徴は、実績のあるビジネスモデルと、利益と成長のバランスを取る慎重さがある点です。テクノロジー・セクターの一部企業は既に高収益で、他の企業はそうではありません。滑走路の遠く先を見据え、将来的に高い投下資本利益率が見込まれる場合、経営陣があえて当期の利益計上を抑え、事業への投資を優先することもあります。つまり、こうした企業は強固な意志や立場から事業運営を行っているとみなすこともできます。

また、当運用では、金利や他のマクロ変数を過度に意識することなく、企業の利益成長が最大のリターン決定要因であると意識し、それを見極めるため、より長期の視点で企業を評価します。我々は

ポートフォリオに組み入れている銘柄について、強固なファンダメンタルや高い成長ポテンシャルに確信を維持しており、こうした長期見通しが再び報われることになるだろうと考えています。

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リスク–当ポートフォリオに大きく関連するリスクは次のとおりです:

カントリー・リスク(中国)-中国への投資は、国内の市場構造を理由として、流動性リスク、通貨リスク、規制リスク、法律リスクなどがより高くなる可能性があります。

発行体集中リスク-ポートフォリオの資産が特定の発行体に集中する場合、その発行体に影響を及ぼす事業、産業、経済、金融、市場情勢により、運用実績がより大きな影響を受ける場合があります。

セクター集中リスク-ポートフォリオの資産が集中する特定のセクターに影響を及ぼす事業、産業、経済、金融、市場情勢により、運用実績がより大きな影響を受ける場合があります。

中小型株リスク-中小企業の株価は、大規模企業の株価よりも変動が大きくなる場合があります。

ストック・コネクト・リスク-ストック・コネクトは、規制リスク、資産保管リスク、デフォルト・リスクが高くなることに加え、流動性リスクや割当制限があります。

運用スタイル・リスク-市場環境や投資家心理によって運用スタイルの人気、不人気が変動し、運用実績に影響を及ぼす場合があります。

一般的なポートフォリオ・リスク

株式リスク-株式は様々な理由で急速にその価値を失い、無期限に低位に留まる場合があります。

ESG及びサステナビリティ・リスク-ポートフォリオの投資価値や運用実績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

地理的集中リスク-ポートフォリオの資産が集中する国や地域に影響を及ぼす社会、政治、経済、環境、市場情勢により、運用実績がより大きな影響を受ける場合があります。

ヘッジ・リスク-ヘッジにはコストがかかり、その効果が不完全、不適切、又は完全に失敗する可能性があります。

投資ポートフォリオ・リスク-ポートフォリオに投資する場合は、市場に直接投資する場合とは異なる特定のリスクが生じます。

運用リスク-運用マネジャーの義務に関連し、利益が相反する可能性があります。

市場リスク-市場に関する様々な要素の予期せぬ変更により、ポートフォリオが損失を被る場合があります。

オペレーション・リスク-担当者、システム、プロセスなどによって生じるオペレーション上の事象により、損失が生じる場合があります。

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

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