Skip to main content

2021年5 月 / インサイト

パンデミック収束後のダイナミックなトレーディング環境に関する見解

ポートフォリオのポジショニングに役立つトレーディング・チームの知見

サマリー

  • 当社のグローバル債券トレーディング・チームは、債券ポートフォリオのポジショニングに役立つ有益な知見を提供する。
  • 今後の発行動向、需要トレンド、ディーラーのバランスシート、および流動性状況に関する見解は、様々な形でポートフォリオのポジション形成に役立つ。
  • また、トレーディング・チームは、必要に応じてポートフォリオのポジションを効率的に調整する当社の能力に影響を与え得る流動性の問題に関して、ポートフォリオ・マネジャーに継続的に情報を提供する。
     

景気回復が進む中、当社のグローバル債券トレーディング・チームは、トータル・リターン債券運用戦略を含む債券ポートフォリオのポジショニングに役立つ、今後の発行動向、需要トレンド、債券ディーラーのバランスシート、および流動性状況に関する有益な知見を引き続き提供しています。米国債から投資適格社債や資産担保証券に至る様々なセクターを専門とするトレーダーは、これらのセクターの相対価値やボラティリティに影響を与え得るトレンドおよびシグナルを見極めることができます。トレーディング・チームは、債券投資の特殊な課題に照らし、必要に応じてポートフォリオのポジションを効率的に調整する当社の能力に影響を与え得る流動性の問題についても、ポートフォリオ・マネジャーに継続的に情報を提供しています。

レバレッジ付き1ヘッジファンドに関連した大量の保有株式の売却が引き起こした株式市場のボラティリティ上昇に関心が集まり、一部の投資家は同様の事象が債券市場において発生する可能性を懸念しています。我々は債券市場におけるレバレッジはこのような重大事象を引き起こすほど高くはないと見ています。債券ディーラーが抱えるリスク・エクスポージャーはそれ程大きくなく、大手投資家が大量のポジションを解消する必要性が生じるとしても、債券ディーラーは引き続き顧客の資金フローを効率的に管理することができると見ています。

景気回復に応じた幅広いポジション調整は終了した模様
投資適格社債市場の2021年年初における広範なトレンドを見ると、市場参加者は、2020年11月の米国大統領選挙以降に始まった景気回復に応じたポジション調整を継続しているようでした。

景気感応度の高いセクターのポジションの引き上げは、2021年1-3月期の中盤に終了した模様で、ほとんどの市場参加者は、この数週間にわたり比較的安定した投資適格社債のポジションを維持しています。一部の市場参加者は、映画館チェーンなど、より全面的な経済活動の再開を想定して大幅に上昇した個別銘柄を売却して利益を確定しています。

健全な需要や発行ペースの鈍化が投資適格社債を下支え
2021年4月23日までの年初来の米ドル建て投資適格社債発行額は、パンデミックの発生を受けて企業が資金調達に殺到したため発行が急増した前年同期の水準を約18%下回りました2。新発債の約40%が5年以内に満期を迎えることから、発行される債券のデュレーション3は相対的に短く、年初来の発行額の半分以上は、相対的に格付けの高い金融セクターの債券です。そのため、供給がより広範な市場に及ぼす影響は限定的です。

一方、2021年後半に買収・合併が増加する可能性があります。企業が買収資金を賄うために新発債を発行し、供給が増加することから、買収・合併の増加は需給動向にリスクをもたらします。ただし、多くの企業が2020年に大量の資金を調達したことで、新発債発行の必要性が低下した可能性があります。

また、需要は引き続き旺盛で、新規発行を十分に吸収できると確信しています。特にアジアと欧州の投資家は、米国投資適格社債の購入に意欲的です。米ドル建て投資適格社債は、為替リスクをヘッジした際に相対的に魅力的な利回りを提供するからです。

加えて、金利上昇により年金基金や保険会社の長期債務が増大したため、これらの投資家による新たな投資適格債に対する需要が増加しています。

ハイイールド債発行の大部分は既存債のリファイナンスが目的
投資適格社債市場とは異なり、ハイイールド債市場における2021年の発行額は、発行企業が低金利での新たな資金の確保に殺到したことから、昨年同期の水準を大きく上回っています。ハイイールド債の新規発行の大部分は、エネルギー関連業種やパンデミックの影響を最も受けた業種のCCC格企業によるものです。

一部の投資家はこれをレバレッジおよび信用リスクが増大している兆候と捉えていますが、2021年年初来のハイイールド債発行の大半は、既存債のリファイナンスを目的としています。そのため、市場に及ぼす実質的な効果は供給総額が示唆するものより遥かに小幅なものに留まります。苦境に陥った業種の企業を含め、企業は資本市場への容易なアクセスを活用して満期を延長し、バランスシートの流動性を高めており、これがデフォルト・リスクの抑制に役立っています。

クレジット・デリバティブにおける流動性の向上
日々売買されている社債は豊富な流動性を有しますが、あまり一般的に売買されていない銘柄の流動性は低下しています。このような流動性の制約に照らし、クレジット・デリバティブは、クレジット市場へアクセスする上でより流動性の高い方法を提供します。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)4は、裏付けとなる現物債券より流動性が著しく高い傾向があります。

CDXとして知られるクレジット・デフォルト・スワップのインデックスは、裏付けとなる社債に係る信用スプレッド5の変化から恩恵を受けるポジションをとるために一般的に利用されるようになってきた金融商品です。現物債券インデックスとデリバティブの間のわずかな価格差を捉えようとするヘッジファンドおよびその他の市場参加者によるCDXへの資金流入は、これらの金融商品の価格を現在の水準近くに留める可能性が高いと我々は見ています。

ポートフォリオのポジショニングに活用されるトレーディング・チームの知見
トレーディング・チームによるこれらの情報は、当社の債券戦略全般のポートフォリオ・マネジャーが、一見して明らかではないものの、より広範な市場に影響を与え得るトレンドを見極めるのに役立ちます。これは戦略的または戦術的な様々な方法でポートフォリオのポジションを形成するのに役立ちます。例えば、社債の信用スプレッドは過去の基準と比べ縮小しているものの、トータル・リターン債券運用戦略では高水準の社債保有を維持しています。このポジションはファンダメンタル分析のみならず、トレーディング・チームによる明確な需給見通しに基づきます。



今後の注目ポイント
歴史的に、相対的に高いクーポンを提供することが主因となり、非投資適格債券は投資適格債券と比べて金利上昇が債券価格に及ぼすマイナス効果への感応度が歴史的に低い傾向にあります。ただし、債券ディーラーによると、市場参加者は、ハイイールド債が今は過去の通常時より金利上昇の影響を受けやすいと想定しています。その一因は、発行体が債券をリファイナンスする中で、クーポンが低下してきたためです。

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳・補記したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。

投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

投資一任契約は、お客様から金融商品に対する投資判断、及び投資に必要な権限を投資運用業者に一任いただき、その権限に基づき投資運用業者がお客様の資産を運用する契約です。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。

 

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社

金融商品取引業者関東財務局長(金商)第3043号

加入協会:一般社団法人日本投資顧問業協会/一般社団法人投資信託協会

前の記事

2021年5 月 / インサイト

最初の100日間、バイデン米大統領は経済を大きく変化させる施策を計画
次の記事

2021年5 月 / GLOBAL ASSET ALLOCATION

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
202105 -1646943

こちらは機関投資家様向けのページです

こちらのページの内容は機関投資家様向けのものになります。機関投資家様かどうかボタンにてご確認いただきますようお願いいたします。

いいえ