2025年12 月, From the Field
AIは、世界経済の生産性を高めるうえで、電気以来最大の原動力となる道を着実に進んでいると考えています。
わずか3年で与えてきた経済的な影響がインターネットを上回ったことを考えると、驚くべき主張でもないように思われます。
2025年現在、当社はAIテーマに関して、1年前よりも強気の見通しを持っています。この楽観的な見方の背景には、主に2つの根拠があります。第一に、ChatGPTのユーザー数がわずか2ヵ月で1億人に達したという実績から見て取れる、AIの極めて急速な普及。第二に、変革をもたらすアプリケーションが早期に登場していることです。2025年における重要な進展は「推論能力の進化」です。これにより、AIアルゴリズムには問題に答える前に「思考する」時間が与えられるようになります。テクノロジーの進化とともに、有望な活用事例が増加しています。一部から批判もありますが、より多くのリソースやCPU集約型の「演算能力」をAI開発に投入することが、明らかに成果につながっています。
AIは世界経済にとって最適な時期に登場
AIは、世界経済にとってまさに最適なタイミングで登場したのかもしれません。AIがなければ、世界の経済成長は著しく減速していた可能性が高いでしょう。経済学の基礎や、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・ソローの経済成長モデルに立ち返ると、経済成長は資本、労働、生産性という3つの要素に依存します。資本の面では、世界金融危機以降の低い貯蓄率(その結果としての投資不足)により、資本ストックの拡大は以前よりも鈍化しています。同時に、多くの国で高齢化が労働供給の制約要因となっています。そのため、世界経済は2007年以来、実質的に低成長局面に陥っています。
経済成長を加速させる鍵は生産性の向上であり、AIはその最良の機会を提供しています。AIは、いずれ生産性のトレンド成長率をここ数十年では見られなかった水準まで引き上げると期待されています。また、AIは多くの職種で労働力を代替し、高齢化による労働供給の減少を十分に補える可能性があります。一方で、AIが労働を補完する分野も存在し、今はまだ想像するしかないような新たな雇用の創出も見込まれます。
ITバブルの再来ではない
AIには投機的なリスクが伴うことを認識していますが、ITバブル時代に見られた状況とは重要な違いがあると考えています。第1に、1990年代の「作れば客はおのずとやってくる」という発想とは異なり、多くのAIアプリケーションは直ちに収益やプラスの投資リターンを生み出しています。第2に、現在のバリュエーションは概ね合理的な水準です。たとえば2025年9月30日時点で主要なAI関連銘柄のバリュエーションを見ると、大半が20倍から30倍の24ヵ月先予想PER(株価収益率)で取引されています。一方、ITバブル時代の超大型テクノロジー銘柄は、35倍から100倍というPERで取引されていました。
AI関連銘柄が主導する株価上昇の現段階は、1996年から1997年のITバブル期と類似していると言えるでしょう。つまり、現在は明らかに数年続くサイクルの比較的初期段階にあり、競争が激化しているものの、収益性は今のところ維持されています(図表2)。さらに重要なのは、超大型テクノロジー企業がインフラ投資の資金を主にキャッシュフローによる自己資金で賄っており、借入れには依存していない点です。
潜在的なAIバブルを乗り切る
グローバル・テクノロジーの投資家として、当社は数年にわたり高い絶対リターンが期待できる企業への投資を目指しています。しかし、潜在的に高いリターンは、高いボラティリティや過剰な熱狂によるバブル発生のリスクを伴うことを謙虚に認識しています。この点を踏まえ、警戒を怠らず、どのようなバブル局面においても投資家価値の最大化を図る必要があると考えています。ダイナミックな投資機会が存在する限り、資産クラスに内在するボラティリティを積極的に活用するため、ポートフォリオを時間の経過とともに変化させるダイナミックな運用を行う方針です。
AIを今後数十年にわたる大きな転換をもたらす存在と捉えています。その上で、時間の経過とともに拡大する可能性のある投機的リスクを管理しつつ、潜在的な利益を確実に捉えるためには、規律ある運用が不可欠であると考えています。当社は、AI関連リスクを適切に管理するために、4つの安全規律を順守することを目指しています(図表3)。
まとめ
2022年11月にChatGPTが登場してから、まだ3年しか経過していません。メディアでは「1999年の再来」といった警告が取り上げられるかもしれませんが、現在のAI関連銘柄主導の株価上昇を牽引しているのは、史上最も収益性の高い企業群です。1990年代後半のITバブル期には、インターネットバブルにより極端なバリュエーションが見られましたが、グローバル・テクノロジー・セクターの現在のバリュエーションは、当時ほど高くありません。「マグニフィセント・セブン」を含む大型テクノロジー企業が大きな利益成長を達成していることからも、テクノロジー・セクターの現在のバリュエーションは、より妥当であると考えられます。
株式市場およびテクノロジー分野の見通しは概ね良好です。2026年には追加の米国財政刺激策が実施されると予想されており、FRBによるさらなる利下げも見込まれています。
テクノロジー・セクターにおいては、業界専門家が今後5年間でAI半導体市場が指数関数的に拡大すると予測しています。具体的には、2023年の市場規模がわずか450億米ドルから、2028年には5,000億米ドル、2030年には1兆米ドルに達すると見込まれています¹。
市場規模が非常に大きいため、超大型銘柄に限らず、多くの勝ち組企業が生まれる余地があると考えています。
AI主導の技術は、ワークフローのデジタル化に注力する企業が増加する中で、経済のさまざまなセクターで引き続きシェアを拡大していくと見込まれます。当社が投資しているグローバル・テクノロジー企業の多くは、今後の道のりが必ずしも平坦ではなくとも、長期的に有益と考えられる事業戦略や取り組みを着実に実行していくでしょう。
グローバル・テクノロジー分野はAIだけにとどまらないことを、投資家は改めて認識すべきです。AIのほかにも、サイバーセキュリティ、企業向けソフトウェア、eコマース、新興国市場におけるテクノロジー投資の増加など、前向きで投資可能な多くのトレンドが存在します。サイバー攻撃の脅威が増加し続ける中で、大手サイバーセキュリティ・ベンダー間で業界再編が進むと予想しています。また、デジタル・コマースやフィンテックが引き続き成長する一方、デジタル広告はAIや機械学習の進歩による恩恵を受けるでしょう。
1 出所:AMD「ファイナンシャル・アナリスト・デイ 2025」。AIデータセンター・チップの獲得可能な最大市場規模(TAM)の推定値を掲載しています。TAMは、製品またはサービスの潜在的市場全体を指します。予想(AMDの予想、2025年11月)が実現する保証はなく、実際の結果は大きく異なる場合があります。
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