2025年8 月, From the Field
市場見通し
資産別ポジショニング
市場テーマ
なおプレッシャーは続く
8月1日の関税延期の期限が過ぎ、プレッシャーが掛かった各国は米国との交渉を急いできました。トランプ大統領が世界に相互関税を発表した4月2日の「解放の日」以降、当初は複数のディールの可能性に関して不透明感がありましたが、第2次トランプ政権の決意が次第に明らかになり、米国が二国間交渉で大方の予想以上に有利な条件や譲歩を勝ち取る合意が成立しています(図表1)。その最たる例が欧州です。欧州は米国のエネルギーの7,500億米ドル分の購入に加え、米国への6,000億米ドル以上の投資を約束し、15%の関税で合意しました。他の国も摩擦がさらにエスカレートした場合の影響を考えたため、日本や韓国から同様の譲歩を得られました。米国は主要貿易相手国の大半とディールが成立し、最後は最も手ごわい中国との合意の行方に焦点が移ってきました。マーケットはこうしたディールの進展にポジティブに反応してきましたが、長期的な影響は依然不透明です。
米国の雇用に要注意
8月初めに発表された米国の雇用統計では、7月の非農業部門雇用者数が予想を下回る7.3万人増にとどまったほか、5月、6月分合わせて25.8万人の大幅下方修正となり、雇用環境の悪化がにわかに危ぶまれるようになってきました(図表2)。同じく懸念されるのは、雇用が増えたのが主に教育や医療など景気の影響を受けにくい分野だったことです。労働市場は新型コロナ禍からの回復以降、驚くほどの底堅さを保っており、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに慎重な主な理由となってきました。最近の弱さは、市場が突然の雇用悪化に見舞われた昨夏のパターンを彷彿とさせます。当時はFRBが後手に回ったのではないかとの懸念が高まり、その後、FRBは最初の利下げに踏み切りました。現在は関税によるインフレ上昇を依然として警戒しているFRBですが、労働市場が見た目ほど健全ではないことを示す初期の兆候を見逃さないか注視が必要です。
参院選と関税合意を受けて
日本株の主要指数が最高値更新を続けています。日米関税交渉での合意成立を受け、過度な先行き悲観論が後退したほか、やはり主要指数の最高値更新が続く米株にけん引されています。最近の上昇ピッチにはやや過熱感も否めませんが、金利環境の正常化による金融株の利益率の改善や、日本企業のガバナンス改善といった長期の投資テーマに加え、緩和的な金融環境も株価の押し上げ要因として無視できません。主要国の中央銀行の「実質政策金利*」の水準を比較すると、日本は今年6月現在で-2.8%と突出した緩和状態となっており、株価などの下支えとなっています(図表3)。一方、米国の実質政策金利は1.7%と相対的に高いものの、トランプ大統領の圧力も手伝って今後の利下げ期待が根強く、これが米国の財政支出やAI関連支出増加の恩恵と相まって米株高を支えていると考えられます。他方で円債は、前述の非常に緩和的な実質政策金利水準が生み出す日本のインフレ長期化への懸念と利上げ継続観測、7月の参院選での与党敗退を受けた財政拡大観測などから、当面は金利上昇圧力が続きやすいと考えています。
アセットクラス・ポジショニング
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