著者  Matthew Lawton, CFA, Ellen O'Doherty, CFA
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真のインパクトを促進するサステナブルボンドのフレームワーク

2025年8 月, From the Field

サマリー
  • 当社のサステナブルボンドのフレームワークは、プロジェクトの妥当性とアディショナリティ(追加性)を精査し、グリーンウォッシングのリスクを軽減することで、高いインパクトが見込まれる投資を促進する。
  • 運用チームは、このフレームワークを用いてラベル付き債券の発行体に対するエンゲージメントを積極的に行い、資金を提供した活動が最も重要な問題に取り組む可能性を高める。
  • 今回当社が行ったフレームワークの更新は、規制変更や発行の複雑さの増大など最近の市場の変化を反映し、これらのメリットをより効率的に活用可能。

インパクト投資市場は、過去数年にわたり、その複雑さや幅広さ、そして定義さえも大きく進化してしてきました。そのため、この分野におけるアクティブ運用者は、これらの変化に応じて迅速に行動し、適応するとともに、インパクト評価フレームワークの妥当性を維持する必要があります。

ティー・ロウ・プライスは、強固なフレームワークの必要性を早くから認識しており、2020年にサステナブルボンド・フレームワークを導入しました。当フレームワークは、インパクトの観点からサステナブルボンドのインテンショナリティ(意図)、アディショナリティ(追加性)、メジャラビリティ(測定可能性) を正確に評価するために、4つの主要な要素を採用しています。具体的には、「発行体のESGプロファイル」、「基準とガバナンス」、「調達資金の使途」、「起債後の報告」です。当フレームワークは、これら4つの側面のスコアを加重平均して総合評価を行います。スコアは信号機になぞらえ3色で表示され、銘柄選定プロセスに組み込まれます。

このフレームワークによって、発行前および発行後のあらゆるタイミングにおいて、財務戦略・サステナビリティ戦略両面について企業とエンゲージメントする機会に活用され、各ラベル付き債券の有効性をより明確に把握できます。また、ラベル付き債券の予想パフォーマンスを評価するのにも役立ちます。なぜなら、信頼性のある構造を持つラベル付き債券は、影響力が潜在的に欠ける債券よりも、良好なパフォーマンスを示すと考えるからです。

グリーンボンドによる調達資金の使途は多様

 

インパクト投資の進化

過去数年にわたり、インパクト投資市場には、いくつかの変化が見られます。

  • 規制当局によるインパクトの定義の変化。当局がインパクト投資と認定する対象は、時間の経過とともに変化しています。投資可能市場が変化することから、投資家が投資機会を正確に評価することが難しくなっています。
  • 発行の複雑化。発行体によるサステナブルボンドの活用方法は、インパクトのテーマと証券構造の双方において複雑さを増しています。最近の革新的なラベル付き債券として、ブルーボンドとオレンジボンドが挙げられます。これらの債券は、それぞれ水関連プロジェクトとジェンダー平等戦略に資金を提供します。例えば、DP Worldは、海上輸送や海洋汚染、港湾インフラに重点を置いたプロジェクトの資金調達のため、2024年12月に1億米ドルのブルーボンドを発行しました。これまで、サステナブルボンド発行の大半は、再生可能エネルギー、グリーン・ビルディング、クリーン輸送に関するものでした。

    また、債券構造も多様化しています。新たなラベル付き証券化商品、サステナビリティ連動ローン担保債券、プロジェクトのインパクトに関する成果と投資リターンを結び付けるアウトカムボンドなどが挙げられます。
  • ミスラベリングやグリーンウォッシングに対する懸念。サステナブルデット市場が拡大するなか、一部の証券が、目に映るほどには社会的インパクトを与えていない、あるいはそのラベルの意図に即していないのではないかという懸念につながっています。監査法人のEY1によると、機関投資家の約85%は、過去5年間にわたりグリーンウォッシングがより大きな問題となったと回答しています。また、モルガン・スタンレーの2024年12月の調査では、規制ガイダンスの変化とグリーンウォッシングがサステナブル投資に対する3つの主要課題のうちの2つであることを示しています2。加えて、発行体は、単に資金調達手段としてではなく、金融市場やサステナビリティにおける革新者として市場や顧客からの注目を集めるために、ラベル付き債券を発行しているようです。
     

フレームワークの微調整

当社は、これらの変化等に照らして、急速に変化している現在の市場動向により良く適合するため、既存のサステナブルボンドのフレームワークを強化しています。具体的には、フレームワークにおける比重が大きい(それぞれ45%と25%)「調達資金の使途」と「起債後の報告」の側面に焦点を当てています。

  • 特定のソーシャルボンドやグリーンボンドのプロジェクトにおけるカテゴリーの信頼性を評価するガイドラインを更新し、市場の分類や国連の持続可能な開発目標(SDGs)や気候ボンド基準(Climate Bonds Standards)と整合させました。
  • 当フレームワークは、資本支出、事業運営費(opex)、買収費用などの異なる資金使途について、インパクトの指標になり得るという考えに基づいて、調達資金の使途のタイプを評価するよう更新しました。例えば、調達資金を電気自動車の生産能力拡大に充当する自動車メーカーは、構造上では長期の増産能力を維持費に配分する場合と比較して、長期的なインパクトが大きいと考えています。
  • また、リファイナンスに配分された調達資金の割合を考慮します。発行体が調達資金の大半を新規プロジェクトに充当している場合と比べて、旧式のテクノロジーにリファイナンスすると、アディショナリティ(追加性)が低くなることが示唆されます。
  • 当フレームワークは、インパクト指標に関して実施された外部監査も評価します。これは、発行体が資金配分やインパクトに関するデータに対する監査を要請しているか否かを評価すること等によって、調達資金の使途から生じる測定可能なインパクトを確認することに役立つと考えています。
     

ラベル付き債券への積極的なアプローチ

ラベル付き債券市場が成熟し拡大し続けるなかで、投資家は、独自の評価フレームワークを用いて債券を評価するばかりでなく、市場の進歩に応じてフレームワークを調整・向上させる姿勢が求められます。

今回の更新は、新たな市場ガイドラインおよび調達資金の使途や発行後の報告動向に関する経験を踏まえ、当社フレームワークを現在のサステナブル市場に適応させることを目指すものです。これにより、取引のライフサイクルを通して発行体へのエンゲージメントを促進する手段を提供するというフレームワークの既存のメリットを補完・強化します。当社は引き続き、市場の変化に応じてフレームワークを継続的に見直していきます。

サステナブルボンド・フレームワークにおける2025年の更新
サステナブルボンド・フレームワークの適用例
Matthew Lawton, CFA 債券インパクト投資部門責任者 Ellen O'Doherty, CFA インパクト・アナリスト

1 EY 2024年 機関投資家調査、EY、2024年12月10日。

2 サステナビリティ・シグナル、モルガン・スタンレー、2024年12月3日。

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