2025年9 月, From the Field
高格付け国債は従来、ポートフォリオの安定化を図る資産とみなされ、安定したインカムの提供とボラティリティを抑制する機能を有し、リスク資産との負の相関により分散効果をもたらしてきました。しかし、現在の市場環境は、これらの前提が変わりつつあります。
過去20年にわたり、主要中央銀行は、量的緩和により金利を低く抑え、債券市場全般にわたりボラティリティを抑制しました。これが低利回り・低分散の環境を生み出し、多くの場合で国債に対する市場平均のエクスポージャーで十分との考えに繋がりました。
しかし、今では潮流が変化しています。ソブリン債は、債券セクターのなかで最も変動が激しい資産の一つになっており、利回りは予想外のインフレや財政悪化、地政学的リスクに反応しやすくなっています。また、リスク資産との相関は不安定になっており、その分散効果を弱めています。その結果、長く続いたポートフォリオの安定化という国債の魅力は失われています。
こうした環境下、ソブリン債におけるアクティブ運用の重要性がますます高まっています。アクティブ運用は、ボラティリティを管理し、ばらつきを活用し、リスク資産とのより安定した負の相関を取り戻すことで、投資家がポートフォリオにおけるソブリン債がディフェンシブな役割を再び確立することにおいて役立ちます。
マクロ環境の潮流が移り変わるなか試される国債の伝統的な役割
ソブリン債市場では新たな環境に突入しており、投資家はこれまで取ってきたアプローチを再考する必要性が生じています。国債のボラティリティは、過去20年で見られなかった水準に達しています。G7諸国のソブリン債の平均ボラティリティは3.25%にも達し、新型コロナウイルス流行後は5%に上昇、2022年には長期平均の2倍を超える7%弱でピークまで上昇しました。この持続的な高ボラティリティがポートフォリオ全体のリスクに大きく影響しています。金利ボラティリティが高止まりすると見込まれるなかで、ソブリン債エクスポージャーをより慎重かつアクティブに管理する必要性があると考えています。
ソブリン債とリスク資産の相関関係もこれまでとは変化し始めています。足元では、市場がストレスにさらされる局面では国債と株式の値動きが連動する局面が見られます。長期債が短期間で大きな変動を見せており、米国30年債は4月にわずか2日間で10%近く下落しました。同時間内に、米国株式(S&P500)は7~10%下落し、伝統的な分散効果が働かなくなっていることを強調するとともに、投資家が国債に期待するダウンサイド・リスク管理の特性が弱まっています。
一方で、市場間のばらつきは再び広がりつつあります。主要ソブリン債市場における利回りの推移は、各地のインフレ傾向、財政状態、政治的リスクに反応して、ますます乖離しています。欧州連合(EU)が財政拡大を発表するなかでドイツ国債利回りが高騰した一方、米国債利回りは国内の財政懸念を背景に低下しました。このようにばらつきが再び広がったことは、より広範かつダイナミックな投資機会をもたらしており、選別的かつアクティブなポジショニングが有効になります。
こうした変化は、過去に長く期待されてきたポートフォリオにおけるソブリン債の役割を考え直す必要があることを示唆しています。ボラティリティが上昇し、相関が不安定となり、ばらつきが広がるなかで、金利リスクをアクティブに管理する必要があります。ポートフォリオの構築において、これはパッシブな配分を見直し、アクティブ運用がいかに分散ポートフォリオにおける国債の戦略的価値を再構築することができるかを検討するよい機会になります。
当社のソリューション:柔軟かつ戦術的な国債運用アプローチ
ボラティリティやばらつき、不確実性が高まる環境において、柔軟性が不可欠になっています。当社のグローバル国債ハイクオリティ運用戦略は、安定したリターンを達成し、ポートフォリオ全体のボラティリティを引き下げ、リスク資産との負の相関により分散効果を提供することを目指して、金利リスクと通貨リスクをアクティブに管理するために設計されています。
当戦略は、先進国のソブリン債と通貨のみに投資し、クレジットやエマージング市場へのエクスポージャーを持たず、市場ストレス時にディフェンシブな役割を発揮するように運用されています。
その決定的な特徴は、デュレーション・レンジが広いことにあります。そのため、利回り上昇時に金利リスクを軽減し、利回り低下時にデュレーションを長期化することが可能です。両局面におけるデュレーション管理は重要ですが、特に債券下落時は対ベンチマークで影響を軽減させるためにデュレーションを排除可能な点は有効になります。これは、ダウンサイド・リスク管理をソブリン債への配分に依存している投資家にとって極めて重要です。
一般的にポートフォリオの安定化を提供することが期待されているソブリン債への投資において、上場局面でアウトパフォームすることよりも、債券市場の下落局面における元本の保全が重要だと考えています。
いざという時に優れた分散効果
株式とソブリン債の負の相関は当たり前のものだと長年認識されており、株式市場のストレスに対する信頼できるヘッジの役割が備わっていると考えられてきました。しかし、近年、その関係が崩れており、国債が株式に連動し、そのディフェンシブな役割を発揮しない局面が見られます。
当戦略は、金利リスクのアクティブな管理と必要に応じたデュレーションの調整が可能であることから、本来期待される分散効果の発揮を図ります。2019年9月の設定以来、当戦略はグローバル株式(MSCIワールド・インデックス(ネットトータルリターン、米ドル))と負の相関(-0.15)を維持しており、一方、FTSE世界国債インデックス(米ドル・ヘッジ)との相関は+0.46で、2021年以来持続的に正の相関を示しています。
株式市場の下落時と利回り上昇時の底堅さ
当戦略は、株式市場の下落局面で分散効果を提供しつつ、利回り上昇時にキャピタル・ロスを抑制することで、幅広い市場状況にわたり一貫した底堅い成果の達成を目指します。
株価下落時、ベンチマークよりもディフェンシブに
利回り上昇環境における対ベンチマークでのキャピタル・ロス抑制
アクティブなデュレーション管理によりポートフォリオ全体のパフォーマンス改善を追求
当戦略は運用開始来、ストレス局面においてソブリン債ベンチマークよりも低いボラティリティを実現してきました。幅広いデュレーション管理によってトラッキング・エラーが高まる可能性があるものの、この柔軟性を活用し、デュレーションをアクティブに調整し、時には排除することで、より優れた金利リスクの管理を行い、最も必要とされる局面においてポートフォリオ全体のボラティリティを引き下げる役割を果たすことに繋がります。当戦略のボラティリティは、2025年初頭に一時的に上昇しましたが、これは確信度の高いポジショニングに基づいた戦略的な運用を反映したものであり、同期間にベンチマークを大きく上回るパフォーマンスに寄与しました。
当戦略をポートフォリオに組み入れることで、ポートフォリオ全体の分散効果を高めることに寄与する可能性があります。当戦略を用いた60/40ポートフォリオは、ベンチマークを用いた伝統的な60/40ポートフォリオと比べて、下落時の耐性が強く、より高いリターンとリスク調整後リターンを示しています。
ボラティリティが高く、相関が不安定な現在の環境において、ソブリン債エクスポージャーは、動的な管理が求められています。ティー・ロウ・プライス・グローバル国債ハイクオリティ運用戦略は、この新たなマクロ環境の潮流に合わせて設計されており、デュレーション・リスクを管理し、分散を保ち、変化する市場環境を乗り越えるための柔軟性を有しています。金利、イールドカーブ、通貨にわたるアクティブなポジショニングを通じて、伝統的な債券ベンチマークより安定した成果を達成し、ポートフォリオでよりディフェンシブな役割を果たすことを目指す戦略です。
世界金融危機後の低利回りで安定した分散の時代は過ぎました。金利ボラティリティの高止まりが続くと見込まれるなか、それに応じて債券への配分を見直す必要性が高まっています。ポートフォリオにおいて本来債券が発揮すべき重要な役割を果たすためには、アクティブ運用が重要になります。
目的およびリスク
ティー・ロウ・プライス グローバル国債ハイクオリティ運用戦略
目的
グローバル国債ハイクオリティ運用戦略は、主に、世界の高格付け国債、政府関連債、政府機関債並びに世界の通貨への投資を通じ、キャピタル・ゲインとインカム・ゲインの獲得を目指します。広範なマクロ経済リサーチ・プロセスを駆使し、グローバル債券市場全体で魅力的なリスク調整後リターンの実現を目指します。(2019年9月設定)
リスク – 当ポートフォリオに大きく関連するリスクは次のとおりです:
一般的なポートフォリオ・リスク
追加ディスクロージャー
代表口座である当ポートフォリオはコンポジットに含まれており、同戦略の運用スタイルを最もよく表している口座と考えています。当ポートフォリオの選定にあたっては、パフォーマンスは考慮されておりません。当ポートフォリオの特性は同戦略を構成するその他の口座とは異なる場合があります。コンポジットに関する追加情報は「GIPS®コンポジット・レポート」をご覧ください。
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