著者  Matthew Lawton, CFA, Ellen O'Doherty, CFA
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インパクトと革新のための提携:インパクト・アウトカム・ボンドの詳細

2025年6 月, From the Field

サマリー
  • 国際機関との提携は、革新的なインパクト・アウトカム・ボンドのディールに参加するうえで重要な役割を果たす可能性があります。
  • 国際機関、仕組債の組成を担う投資銀行、プロジェクト開発者との定期的なエンゲージメントは、プロジェクトを特定し、資金が不足している持続可能な開発目標に沿ったインパクト・テーマを提案する機会を創出します。
  • 各インパクト・アウトカム・ボンドのインパクトと財務特性は、それぞれ大きく異なる場合があります。

イノベーションはインパクト投資の要です。ティー・ロウ・プライスは、財務リターンと測定可能でインパクトのある成果(アウトカム)を結び付けるインパクト・アウトカム・ボンドという形で、複数の意義深いイノベーション事例に関与しています。国際機関や国際開発金融機関と提携する能力は、革新的なディールに参加するうえで重要な役割を果たします。インパクト・アウトカム・ボンドは、インパクト戦略と従来の債券戦略の両方に恩恵をもたらすと考えられますが、適切なストラクチャーを有する魅力的なディールを特定するためのプロセスを整備することが重要です。
 

インパクトをもたらす戦略的なアライアンスの構築

当社は、独自のインパクト・ファイナンス・ソリューションに関して、特定の国際機関と強固な関係を築くことが、将来における同様のディールの基盤を整備し、投資機会を生み出すことに役立つと考えています。

当社は、世界銀行(国際復興開発銀行)と協力して、野生生物保護債(別名:ライノ・ボンド)、プラスチック廃棄物削減連動債、さらに最近ではアマゾン森林再生連動債など、複数の魅力的なディールに参画してきました。世界銀行などの国際機関は、資本市場における地位を活かし、世界でも特に差し迫った問題に対処するための先駆的な資金調達ソリューションを創出することができる最適な立場にあります。

インパクト・アウトカム・ボンドのディールに何を求めるか?
従来の債券戦略がインパクト・アウトカム・ボンドのディールからどのように恩恵を受けるか

また、当社は世界銀行グループのメンバーである国際金融公社(IFC*)と提携し、現在のブルー・エコノミーの資金不足に起因する地球規模のリスクや社会リスクに対処するため、ブルー・ボンド市場の拡大に取り組んでいます。

当社が新たなパートナーシップを検討する際には、SDGs14目標(海の豊かさを守ろう)やSDGs15目標(陸の豊かさも守ろう)など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の中で最も資金が不足している目標を支援している組織を探します。当社が提携する組織は、徹底した環境及び社会リスクの評価プロセスを導入しており、負の外部性(外部不経済)を回避するためのプロジェクトに重点を置いておく必要があります。1

世界銀行は、クオリティの高いサステナブル債券を発行してきた実績があります。同行はサステナブル債券市場の構築において重要な役割を果たしてきました。また、資金調達が必要な環境及び社会的プロジェクトに参加可能であり、インパクト報告を支えるインフラを整備しています。
 

強力なコラボレーションがイノベーションを促進する

コラボレーションは、3つの重要な方法でイノベーションを促進します。

  1. インパクト投資機会の増加:国際機関と協力することで、本来なら投資家がアクセスできないインパクト・プロジェクトを支援する機会を提供できます。また、独自の債券ストラクチャーにアクセスすることも可能です。

  2. 最も重要な環境及び社会的目標に資本を直接提供する道を開く:国際機関、仕組債の組成を担う投資銀行、プロジェクト開発者との定期的なエンゲージメントは、今後のプロジェクトを特定し、資金が不足しているSDGsに沿ったインパクト・テーマを提案する機会を創出します。

  3. 財務リターンとインパクトの整合性の向上:インパクト・アウトカム・ボンドの組成には数ヵ月を要する場合があります。この期間中、資産運用会社は市場のステークホルダーと協力して、インパクトと財務リターンの双方の観点から、投資家にとって取引が適切であるかどうかを確認することができます。プロジェクトについて議論するために国際機関とエンゲージメントを実施する場合、資産運用会社は、具体的なインパクトに関する主要業績評価指標(PAI)と、その測定及びモニタリング方法に関するフィードバックとガイダンスを提供することができます。財務面では、資産運用会社は、従来の債券戦略で運用を開始するために必要な価格設定やその他の考慮事項に関するフィードバックやガイダンスを提供します。
ティー・ロウ・プライスがインパクト・アウトカム・ボンドのディールに至るまでのステップ

 

今後の展望 

今後数年間で、より多くのインパクト・アウトカム・ボンドのストラクチャーが市場に登場する可能性があり、この市場の発展について、当社は大きな期待を寄せています。資産運用会社はストラクチャーをケース・バイ・ケースで検討する必要があります。なぜなら、起こりうる案件毎にインパクトと財務リターン特性は大きく異なる可能性があると考えられるためです。当社は、すべての市場のステークホルダーと協力し、起こりうる全ての案件について投資家のニーズを満たす方法で組成するために、インパクトや財務的要素に関するフィードバックを提供することが重要だと考えています。
 

ケーススタディ

インパクト・アウトカム・ボンドは、強固なコラボレーションという要素に支えられています。以下のケーススタディでは、パートナーシップとイノベーションに重点を置いた3つのインパクト・アウトカム・ボンドのディールに焦点を当てています。

野生動物保護債
プラスティック廃棄物削減連動債
アマゾン森林再生連動債
Matthew Lawton, CFA 債券インパクト投資部門責任者 Ellen O'Doherty, CFA インパクト・アナリスト

1 「負の外部性」(外部不経済)とは、財またはサービスの生産/消費という経済活動によって第三者に生じる持続的なマイナスのアウトカム(結果)、またはマイナスの影響を及ぼすアウトカムを指します。

* ティー・ロウ・プライスとIFCに資本関係はありません。

記載された特定の証券は、説明のみを目的としており、ティー・ロウ・プライスの顧客のために購入、売却、または推奨されたすべての証券を表すものではありません。記載された特定の証券への投資が、過去または将来に利益をもたらすという仮定は、一切行わないでください。本資料は、いかなる証券の売買を推奨するものではなく、また、企業の将来の収益性を示すものでもありません。

ケーススタディに提供された情報は2025年5月時点のものであり、変更される可能性があります。インパクト投資は、環境的および/または社会的影響をポジティブに生み出すことを保証するものでも、特定の成果が保証されるものでもありません。債券の債務履行は、発行者の支払能力および第三者保険会社の支払能力に依存します。

無登録格付に関する説明書

格付会社に対しては、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録制が導入されております。これに伴い、投資運用業者や投資助言・代理業者も、例えば、投資一任契約の締結についての勧誘において、無登録格付業者が付与した格付を利用する場合には、金融商品取引法により、➀当該格付を付与した者が登録を受けていない旨、及び➁登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされております。つきましては、同法に基づいた無登録格付業者に関する説明を以下のとおりお知らせいたします。
Ⅰ.登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、➀誠実義務、➁利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、➂格付対象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、➃格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、これらの規制・監督を受けておりません。
Ⅱ.無登録の格付会社について
スタンダード&プアーズ
(1)格付業者グループの呼称等についてS&Pグローバル・レーティング
(2)同グループ内で登録を受けている信用格付会社の名称及び登録番号
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号)(3)信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法についてスタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.standardandpoors.co.jp)の「ライブラリ・規制関連」の「無登録格付け情報」(http://www.standardandpoors.co.jp/unregistered)に掲載されております。(4)信用格付の前提、意義及び限界についてS&Pグローバル・レーティングの信用格付は、発行体または特定の債務の将来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不履行に陥る確率を示した指標ではなく、信用力を保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨するものでなく、債務の市場流動性や流通市場での価格を示すものでもありません。信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因により変動する可能性があります。S&Pグローバル・レーティングは、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達することができるだけの十分な品質および量の情報が備わっていると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、S&Pグローバル・レーティングは、発行体やその他の第三者から提供された情報について、監査、デューデリジェンスまたは独自の検証を行っておらず、また、格付付与に利用した情報や、かかる情報の利用により得られた結果の正確性、完全性、適時性を保証するものではありません。さらに、信用格付によっては、利用可能なヒストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスクが存在する場合もあることに留意する必要があります。

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