2025年6 月, From the Field
市場見通し
資産別ポジショニング
市場テーマ
刻々と迫る交渉期限
相互関税の90日間停止が発表されて以来、米国との合意に達したのは英国のみで、7月の期限が迫る中でも、中国、欧州連合(EU)、日本など大半の貿易相手国との交渉は進展が不透明なままです(図表1)。期限まで1ヵ月を切り、多くの貿易相手国と合意に達するには様々な課題が残る状況で、市場は米国が貿易交渉において成功することを期待しすぎている感もあります。様々な発言が依然報じられていますが、7月の期限が最終的に関税主導の貿易戦争に決着をつけるか疑問視する声が強まっています。交渉の期限が日に日に迫る中、合意への進展の欠如や期限の延長さえ企業や消費者の悲観心理をさらに悪化させる可能性が高いため、慎重な見通しを維持しています。
金利の転換点?
インフレを考慮した引き締め姿勢が続き、景気への不安が強まる中でも、ムーディーズが米国債の格付けを引き下げたことが示すように、市場の関心が拡大する財政赤字(図表2)に移るにつれ、米長期国債利回りは上昇傾向にあります。政府が現在、歳出拡大と減税を盛り込んだ法案を成立させようとしていることが財政悪化懸念を煽っていますが、他の要因もそれに寄与しています。米国に対するセンチメントがネガティブに転じ、関税が最終的にインフレにつながるとの不安がある中、米国債に対する外国需要の低下が懸念されます。金利の水準はまだ米景気や投資家心理に深刻な悪影響を及ぼすほど高くありませんが、現在からさらに上昇するようであれば、住宅市場や借金の借り換えが必要な企業に悪影響が及ぶ可能性があります。財政支出の抑制や貿易摩擦の緩和が見込めないとなると、金利の転換点に近づいている可能性があるため、株式や長期債に対して慎重姿勢を継続しています。
意外に底堅い日本株
トランプ大統領が追加関税を発表し、日本に対しては24%の相互関税や輸入自動車への25%の追加関税となったことを受け、一時は日経平均株価で3万1000円を割り込むまで急落した日本株も、足元は急落前の水準に戻しています。5月半ばの米中貿易合意以降、関税に対する市場の警戒感が和らいで米株が上昇していることに加え、為替市場で警戒されたほど円高は進んでいません。加えて、需給面では事業法人の自社株買いが安定的に続いているうえ、4月以降は海外投資家が日本株の大幅な買い越しに転じていること(図表3)も、日本株の意外なほどの底堅さにつながっている可能性があります。トランプ政権の政策などを受けた米国からの投資先シフトが市場でささやかれていますが、その一部は、こうして日本株にも及んでいるようです。関税の脅威が去ったわけではありませんが、日本株の先行きを過度に悲観視する必要もなさそうです。
アセットクラス・ポジショニング
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