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2025年4 月, From the Field
気候変動ならびにネットゼロ1への移行は、金融市場における大きな体系的変化であり、一部の学術的研究2では、この移行が長期的にほぼすべての証券と資産クラスに影響を与える可能性が高いことが示唆されています。投資家がこの複雑かつ困難な移行を巧みに舵取りできるよう、ティー・ロウ・プライスでは、 従来の「バイ・アンド・メインテイン」を行う社債戦略に、ネットゼロ・トランジション・フレームワークを含む様々なソリューションを策定・適用し、「バイ・アンド・アライン」運用戦略へ発展させています。「バイ・アンド・アライン」運用戦略は、ネットゼロへの移行を促進しつつ、投資リターンの創出とリスク管理を目指すものです。
「バイ・アンド・メインテイン」から「バイ・アンド・アライン」へ
巨大なグローバル投資適格社債市場は、投資家に幅広い投資機会をもたらします。過去数年において、この資産クラスでは、長期投資および低い売買回転率に重点を置くバイ・アンド・メインテイン・アプローチが最も一般的に選択されてきました。
債券利回りが金融危機後の大半の期間と比べて高水準にある現在の状況下で、前述のアプローチを取り巻く環境は、特に良好な水準で安定したインカムを追求する投資家にとって、引き続き魅力的であると考えています。
同時に、一部のアセット・オーナーや投資家は、気候変動に関する要素をポートフォリオ運用に取り入れる方法を探っています。
このような関心は、様々な理由で今後高まると見ています。具体的には、独自の気候変動に関する目標を設定している、気候リスクを投資パフォーマンスに関連するリスクとリターンに影響を与え得る要素として捉えている、投資資本を脱炭素化に振り向けたいという意図があるなどが挙げられます。
こうした背景から、ティー・ロウ・プライスは、従来型のバイ・アンド・メインテインの特性を取り入れながら、気候変動に関する目標を組み込んだ「バイ・アンド・アライン」アプローチを構築しました。
ネットゼロ・トランジション・フレームワーク3
バイ・アンド・アライン戦略は、投資パフォーマンスとネットゼロ整合に関わる2つの目標の達成を目指す、ティー・ロウ・プライス独自のネットゼロ・トランジション・フレームワークを用いて構築されています。このフレームワークには重要な要素が4つあります。
1. 投資パフォーマンスに関わる目標
このフレームワークは、ネットゼロへの積極的な移行という視点に立った社債への投資により投資リターンの実現を目指します。
2. ネットゼロ状況に関わる目標
1.5℃目標4に沿って、2030年、2040年、2050年におけるネットゼロ・ステータスに関する明確な目標を設定します。
3. ネットゼロ・スチュワードシップ
ネットゼロ整合目標の達成を支援するため、エンゲージメント活動や議決権行使を含むその他のアクティブ・オーナーシップ手法を活用します。
4. 気候変動に関する報告
ネットゼロ整合目標に向けた進捗を証明するため、気候変動に関する四半期報告書を提供します。報告書には、ポートフォリオのネットゼロとの整合性、直近のカーボン・フットプリント、温室効果ガス排出量の中長期的な変化が盛り込まれています。加えて、ネットゼロのエンゲージメント活動に関する統計値やケース・スタディも取り上げます。
ネットゼロ・トランジション・フレームワークの実行
発行体のネットゼロ整合性の独自評価
当フレームワークは、業界標準のパリ協定に整合する投資イニシアチブ(PAII)5に基づき、発行体のネットゼロ・ステータスを独自に評価します。これには、 2050年ネットゼロ目標の裏付けが信頼できる短期・中期・長期の移行計画によって支えらえれ、「科学に基づく温室効果ガス削減目標」(SBT)に基づく国際イニシアチブにより検証されているかどうかを評価することが含まれます。
要件の充足状況に応じて、発行体/企業を以下に掲げるネットゼロ整合性の5つのカテゴリーのいずれかに分類します。
ティー・ロウ・プライスにおける専門の責任投資チームは、発行体がどのネットゼロ整合性カテゴリーに分類されるかを判断するための分析を行います。その分析結果は、当社独自のツールである責任投資モデル(RIIM)に組み込まれており、当モデルの活用は、ESGファクターの積極的かつ体系的な分析に役立ちます。ネットゼロ分析は、専門の社債アナリストが行うリサーチを基盤としています。当該リサーチは、企業がエネルギー移行と物理的適応の両面で、どのように気候変動に対応しているかを考慮します。投資先企業がどのように気候変動と関わっているかを評価し、長期的な事業戦略計画の策定に環境面のサステナビリティをどのように組み込んでいるかを理解することが当社の受託者としての責任の一環であると考えています。
ポートフォリオ全体に対する割合でネットゼロ整合目標を設定
当社のフレームワークにあるもう一つの特徴は、ネットゼロ整合目標をポートフォリオ全体に対する割合で設定していることです。PAIIおよび1.5°C目標に準じて、右記のとおり、2030年、2040年、2050年のネットゼロ整合目標 6 を設定しています。
エンゲージメント活動
エンゲージメント活動は、ネットゼロ整合目標を支援するために活用する重要なツールです。当社は発行体のパートナーとなり、環境に関する様々な問題に関して定期的にエンゲージメント活動を行うことで、その移行計画の理解を深めるよう努めます。当社のリサーチ体制とRIIMツールは、発行体のネットゼロ実現に向けた目標達成の進捗を分析することに役立ち、なかでも排出量が極端に多い発行体を優先的にエンゲージメント対象としています。最終的に、エンゲージメント活動を通じて収集された情報は、ネットゼロ分析のためにフィードバックされ、独自のツールに統合されます。
フレームワークの利点
ネットゼロ・トランジション・フレームワークは、複数の利点をもたらします。このフレームワークは、気候変動に関する移行には多くに時間を要することを加味し、先見的視点に立っています。さらに、単に炭素排出量の多いセクターを投資ユニバースから除外するのではなく、発行体の長期的なネットゼロ移行計画に焦点をあてています。炭素排出量の多い企業を除外することは容易であり、投資家に対して説明が容易かもしれません。しかし、それでは今後の気候変動に関する目標に重要な変化をもたらす潜在性を有する企業へのエンゲージメント活動の機会を自ら放棄することになると考えています。要するに、除外方針を無差別に適用することで「ポートフォリオの脱炭素化」を達成するかもしれませんが、そうしたアプローチは、最終的に実世界の炭素排出量の削減を支援する点では不十分とみています。
ティー・ロウ・プライスのフレームワークは、ネットゼロへの移行に向けてバランスの取れた思慮深いアプローチを推進し、実世界の炭素排出量の削減を支援します。
当社の役割は、気候変動がポートフォリオに与える影響を判断し、投資家のニーズを満たすソリューションを提供することです。ティー・ロウ・プライスのネットゼロ・トランジション・フレームワークとバイ・アンド・メインテイン社債戦略を組み合わせた「バイ・アンド・アライン」戦略は、投資戦略の一環として、投資リターンの実現とともに気候変動に関する移行目標を同時に達成したいと考える顧客の支援につながると考えています。
次の注目分野
ネットゼロとハイイールド債 – ハイイールド債発行企業のネットゼロへの対応については、依然としてデータの質が十分に担保されていないものの、改善の兆しが見られます。ティー・ロウ・プライスは引き続きこの分野におけるソリューションを探っており、当社の見解やベストプラクティスを強化する主要ツールとして、企業へのエンゲージメント活動を活用しています。
主なポイント
タイムライン
1 ネットゼロとは、大気中の温室効果ガスの排出量が削減量(森林吸収、二酸化炭素の回収・貯留など)と等しい状態をいいます。
2 Quigley, E., 2020. 「Universal Ownership in Practice: A Practical Investment Framework for Asset Owners」、Winner of Best Paper for Potential Impact on Sustainable Finance Practices 、 The Global Research Alliance for Sustainable Finance and Investment (GRASFI)
3 ティー・ロウ・プライスにおいて、環境・社会・ガバナンス(ECB)ファクターの考慮は全体の投資意思決定プロセスの一部であり、投資機会を特定し、投資リスクを管理することに繋がると考えています。これを「ESGインテグレーション」と呼んでいます。ESG分析には、キャッシュや通貨ポジション、特定のデリバティブを含みますが、データが入手できないなどの理由によりこの分析ができない場合があります。ESGファクターの考慮がリサーチ・プロセスに組み込まれている場合、ESGファクターより他のファクターが優先されて投資の意思決定がなされる場合があります。当社では、ラインナップの一部として、特定のESG目標や特性を備えた戦略の提供も行っております。
4「1.5°C目標」とは、地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5°C以内に抑えるという努力目標を言います。
5 出所:気候変動対応を目指す国際機関投資家団体( Institutional Investors Group on Climate Change , IIGCC)
6 これらの目標は、スコープ1と2の排出量に基づいて設定されています。
当資料は、情報提供のみを目的としており、特定の投資行動に関する投資助言や推奨を意図したものではありません。
重要情報
当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。
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当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。
「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。
ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社
金融商品取引業者関東財務局長(金商)第3043号
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