2025年1 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境
グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境 2025年1月号
作成基準日:2025年1月10日
1. 市場見通し
- 世界経済が引き続き総じて底堅い一方、インフレ率は低下傾向にあり、各国の不確実な金融政策による影響が乖離を生むにつれ、先行きは変わる可能性がある。
- トランプ次期政権の政策がインフレを再燃させる懸念はあるものの、成長促進的な政策を背景に米国経済に対する期待は一段と高まっている。欧州と日本の景気は引き続き低調。中国当局は新年に経済を下支えるための追加的な景気刺激策と改革を掲げる。
- 米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを行いながらも、インフレ懸念を再度表明するなどタカ派的姿勢を示す一方、成長やインフレが鈍化している欧州では、ECBが早めに行動を取る可能性が高い。今後のインフレ指標が利上げを後押しする可能性がある日本では、日本銀行が引き続き他国と異なる方向性の金融政策を進める。
- グローバル市場にとっての主なリスクには、金融政策における高まる不確実性、中銀の政策ミス、地政学的緊張、インフレの再加速などが含まれる。
2. 市場テーマ
中型株式に投資妙味
2024年は中小型株式がアウトパフォームする局面が断続的に訪れました(図表1)。7月にはFRBが非常にハト派的な行動を取ると見込まれたことで中小型株式が大きく上昇したものの、そうしたポジションはすぐに手仕舞われました。米大統領選後は規制緩和や法人減税など成長促進的な政策への期待を背景に中小型株式に注目が集まったものの、またしてもその流れは途切れ、年末にかけて再び大型株式優位の展開となりました。しかし、ここにきて、政策変更、インフレ、金利、それらに対するFRBの対応に関する不透明感が強まるなか、中型株式の投資妙味が際立っています。中型株式はバリュエーションが大型株式に比べて魅力的で、小型株式ほどは金利上昇の悪影響を受けにくく、収益性も高い上、一部のセクターへの偏りも大きくはありません。物色のすそ野が広がった場合に、中型株式はその恩恵を受ける好位置にあると考えられます。
FRBの心変わり
金融政策におけるFRBの重要項目が、減速傾向をたどっているインフレから雇用安定にシフトし始めていたのはわずか数カ月前のことでした。ところが、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、FRBは一転してインフレに一段とタカ派的なトーンを見せるようになりました。「データ次第の政策運営をする」とはいえ、FRBが今回のように方向転換をするにはより顕著なトレンド反転が必要と考えていた市場参加者は、突然の変化に驚かされましたが、おそらくは、11月の米国大統領選挙の結果に市場が即座に反応したように、FRBもトランプ次期政権による政策変更の将来的な影響とリスクを考慮し始めたということでしょう。ただし、これにより金利の先行きが一段と不透明になる可能性が考えられます(図表2)。
米国株に以前より慎重になる理由はここにも
米国株は2025年も世界の株式市場の牽引役を期待され、新政権による政策がマクロ経済成長率の加速と企業業績の押し上げにつながると期待されます。一方で、株価が既にそうした好材料を織り込んでいる可能性があるほか、成長加速の裏返しとして、また関税引き上げや移民の制限による労働力不足が影響してインフレが再燃し、利下げ見通しの後退や財政懸念も手伝って長期金利を上昇させ、株価の圧迫要因となるリスクも考えられます。アナリストの利益予想に基づいた米国大型株(MSCI USA)の加重平均益利回り(=12ヵ月先予想EPS/株価)は12月末に米10年国債利回りと同水準になるまで低下が進みました(図表3)。これは、過去20年余りでも初めてのことです。「悪い利回り上昇」とも解釈できる米国債が魅力的とはいいがたい状況ですが、米国債に対するリスクプレミアムが消失した株式の足元の水準については、従来よりも慎重にとらえる必要もありそうです。

3. 各国・地域の経済環境

4. ポートフォリオ・ポジショニング
- バリュエーションは懸念材料であるものの、株式は若干のオーバーウェイトを継続。
- 米国における足元の景気の底堅さ、当面の利下げ見通しとトランプ次期政権の規制緩和や法人減税への期待などが株価の支援材料。ただし、先行きの不透明感が依然として高いことを踏まえ、米国株式のオーバーウェイト幅を縮小してポートフォリオのベータリスクを抑制。
- 債券はアンダーウェイトを維持。新政権の政策を含めた米国のリフレや財政悪化への警戒からデュレーションには慎重なスタンスを維持。一方、代替としての絶対収益型オルタナティブを含め、待機資金、あるいは市場環境の変化に備えた流動性確保の手段としてキャッシュを引き続きオーバーウェイト。
- 債券資産内の配分ではファンダメンタルズが総じて良好で利回りが魅力的なハイイールド債を引き続き選好。
5. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

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