2025年1 月 / インサイト
先手を打つコンセンサスはひとえにコンセンサス -逆張り派の戦略的シナリオ
サマリー
- 戦術的な逆張り投資は、自己増幅する傾向のあるコンセンサス予想に逆行して市場の変動を活用できる。
- 「引き続き米国の一人勝ち」が現在の市場のコンセンサスだが、アクティブ・マネジャーは米国以外の国の成長から恩恵を受ける逆張り戦略を採用可能。
- 米国のインフレが再び厄介な水準まで上昇するという逆張りシナリオでは、債券市場の変動が金融環境の大幅なタイト化をもたらす公算。
当社ではグローバル債券ポートフォリオ・マネジャーとアナリストが毎月一堂に会してミーティングを行っており、直近では12月半ばに実施されました。この時期には毎年、各方面から翌年の経済・市場見通しが共有され、2024年も同様でしたが、結論としては、総じて意見は同様のものでした。投資妙味のある資産の予想には多少の違いがあるものの、「緩和的な金融環境、ハト派的な米連邦準備制度理事会(FRB)、おそらく講じられる新たな財政刺激策を背景に米経済が好調さを持続する」との見方で一致しており、支配的です。
自己増幅するコンセンサス
コンセンサス予想の構成要素の一部は、明確に一方向に偏っているようにみえます。全体的にインフレの上昇が潜在的なリスクと認識されていますが、このリスクを深刻に受け止めている市場関係者はほとんどいません。現在は、あらゆる角度からみて米国経済が今後も他国よりも好調に推移するとの見方が圧倒的で、市場関係者がこれとは異なる見方を支持しなくなればなるほど、コンセンサスは自己増幅し、その意味合いを強めていきます。米国以外では、欧州経済は引き続き苦戦し、中国の試練は続くという見方がコンセンサスです。これまでと同様、コンセンサスはひとえにコンセンサスなのです。
一方向に偏るコンセンサスから恩恵を受ける3つの戦略
このように強力なコンセンサスが存在する局面では、これに乗じる方法が大きく分けて3つあると考えます。
1. 逆張り
コンセンサスとは逆の方向性に基づいて投資する方法です。非常に大きな利益を得られる可能性がある半面、多くの場合、大失敗に終わりかねません。結局、多くの賢明な人々が反対の意見を有している形になるのです。
2. 戦術的行動
最終的には現実化するかもしれませんが、そこに至る過程は一直線ではないだろう、というものです。予想通り強気相場が到来したとしても、波乱なくピークにたどり着くことはほとんどありません。そこで大切なのは規律を守ることです。目的地が分かっていれば、上値を追い過ぎる、あるいは長居し過ぎることは避けられます。しかし、FRBが今後の経済指標を見極める過程で、あるいは米国の次期大統領就任後に騒動やソーシャルメディア上の攻撃、誇張、政治的駆け引きが繰り広げられるにつれて、より割安な水準で投資する機会が訪れると見込まれます。
3. より大きな規模で長期投資
また、コンセンサスに追随するアプローチもあります。これは株式において成功事例の多い戦略です。しばらくの間、「マグニフィセント・セブン」に関して犯し得る間違いは、単純にそれらについて十分な量を保有しないことや他の銘柄を保有しようと考えることくらいでした。これは必ずしも正しくないかもしれませんが、私の意図するところは理解していただけるかと思います。
では、債券市場の観点から、このような戦略をどのようにしたらより幅広く応用できるか考えてみます。例えば、米国経済が、ソフトランディングではなく力強く成長に向けて再加速したらどうでしょう?また、欧州に関するコンセンサスが正しいとした場合、欧州中央銀行(ECB)はなぜゼロ金利政策を再び導入しないのでしょうか?12月に開催された当社の会議で、欧州チーフ・マクロ・ストラテジストであるTomasz Wieladekは、ECBが主要政策金利を0%まで引き下げる可能性は20%程度との見方を示しました。スイスは既にこの方向に動いており、ユーロ圏もさほど遅れずに追随しています。12月中旬の時点で、債券市場において欧州の金利の最終到達点が2%弱であること1が織り込まれていた点を踏まえると、より低いユーロ圏の金利を想定したポジションを積極的に取ることに前向きな投資家には多くの好機があるとみられます。
シンプルな逆張りシナリオ
しかしながら、正直なところ、私は根本的に逆張り派です。そのため、個人的には1の逆張りを好んでおり、以下の点から勝算があると考えています。第1に私は、米国に関する市場のコンセンサスであるゴルディロックス(適温)シナリオには極めて懐疑的で、インフレは市場が現在織り込んでいる以上に手に負えなくなる公算が大きいと考えています。米国のインフレが再び厄介な水準まで高まると、債券市場が最終的な決定権を持つ形となり、金融環境は著しくタイト化するでしょう。財政拡張を受けて米国の長期国債利回りが急上昇する場合はなおさらです。第2に、欧州経済が上振れするという、シンプルなシナリオも想定できます。例えば、ウクライナの戦争が平和裏に解決し、安価な石油と天然ガスが再び欧州に供給されるようになったらどうなるでしょうか?さらに、ドイツが債務ブレーキルールを変更し、持続的な財政刺激策を打ち出すと想像してみましょう。最後に、これらのシナリオがいずれも現実となり、(おそらく米国が新たな関税をかける結果として)中国が待望の大型景気対策を打ち出せば、状況は大きく変わるでしょう。これらはありえないような、突飛なシナリオでは決してありません。
アクティブ・マネージャーは 3つの戦略すべてを採用可能
私の個人的な意見として言うならば、投資家が2025年に成功を収めるには、先に述べた3つの戦略をすべて採用することが賢明でしょう。またそうしたことを望む投資家にとって、アクティブ・マネジャーは、このように強力なコンセンサスが存在する状況において、好パフォーマンスを生み出す優位な立場にあると考えています。
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