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2023年8 月 / インサイト

引き締めサイクルにおける米国債利回りの推移は4つの局面に分けられる

ポートフォリオ・マネジャーは協働を通じて、デュレーションのポジショニングを判断

7月下旬時点で、債券ポートフォリオ・マネジャーが直面した最大の問題の一つが、米国のデュレーション戦略において、どのタイミングでロング・ポジションを取るかです。米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年3月に利上げを開始して以降、米国金利は急激に上昇し、高止まりしてきました。これが反転する場合、米国債のロング・ポジショニングはパフォーマンスを大きく押し上げる可能性があります。

しかし、現状の米国債利回りは短期が長期を上回る逆イールドであるため、ネガティブ・キャリーが発生することから、早期のデュレーションの長期化はコストが高くつきます。現在、米10年国債の利回りは2年債よりも約1%低く、米長期国債がネガティブ・キャリーを相殺するほど金利低下により値上がりしない限り、10年債のロング・ポジションは利回りを大きく犠牲にすることになります。実際、3ヵ月物の短期国債のような現金同等の債券を保有するだけで米長期国債よりはるかに高い利回りが得ることが可能です。

1980年代初頭以降のFRBによる金融引き締めサイクルにおける米10年国債利回りの動きについて、当社のポートフォリオ・マネジャーSaurabh Sudを中心に分析しました。その結果、利回りの動きには通常、3つの明白な局面とその後に利回りが低下する第4の局面があることが分かりました。これらの局面はFRBの行動や市場環境の他の要因により多少変化しますが、すべての引き締めサイクルを通じて確認できました。

過去の引き締めサイクルにおける米国債利回りの局面

局面1:FRBの引き締めによる強力な利回り上昇トレンド

局面2:市場が引き締めサイクルのターミナルレート(利上げの最終到達点)の水準を見極めようとすることで、利回りは長期横ばい基調に

局面3:FRBの最終利上げ前後、最後の瞬間的な利回りの急上昇

局面4:本格的な利回り低下

7月初旬に米10年国債利回りが4%を大きく上回った後に急低下した動きは局面3に該当するのでしょうか?利回りが直近のピークだった2022年10月の4.25%に達するかどうかはまだ分かりませんが、一部のポートフォリオ・マネジャーは局面4への移行を見越し、デュレーションをロングにするシグナルと解釈した可能性があります。

ティー・ロウ・プライスの債券部門では、ポートフォリオ・マネジャーやアナリストが幅広く協働しており、各自が最良の投資判断を下すために同僚の意見を考慮し、自身の見解に取り入れ、投資判断を行います。一方で、ティー・ロウ・プライスにハウスビュー(統一見解)はなく、ポートフォリオ・マネジャーは各自のマンデートや見通しに従って投資戦略を運用する裁量が与えられています。実際、当社のポートフォリオ・マネジャーは米国のデュレーションに関して異なる戦略的ポジションを取っています。

強気派

米国債券ポートフォリオ・マネジャーのSteve Bartoliniは、米国債のポジショニングについて目先は慎重ながら、7月初旬の利回り上昇を局面3の可能性があると捉え、利回りが大きく低下する局面4に向けた決定的なブレイクアウト(レンジの脱出)につながると考えています。Bartoliniは米国のデュレーションに関して中長期的にポジティブな見方をしており、米国の成長鈍化、インフレ鈍化、FRBの引き締め政策の組み合わせが利回り低下につながり、 2023年末にかけてイールドカーブはスティープ化すると予想しています。

弱気派

一方、グローバル債券ポートフォリオ・マネジャーのKen Orchard は、7月初旬の米10年国債利回り急騰を局面4につながる瞬間的な上昇ではなく、長期化する局面3の一部と見ています。エネルギー価格高騰など、中期的な見通しにおける景気後退の引き金となる要因は見当たらないと考えており、米国債利回りの上昇を想定してOrchardはポートフォリオにおける米国債のデュレーションを相対的に短くしています。

他の債券ポートフォリオ・マネジャーは、米国債のデュレーションに関する戦略的及び戦術的見解を異なる組み合わせで運用しているかもしれません。また、各自の戦略における見通しをもとに、デュレーションのポジショニング以外にも、通貨ポジション、他国のソブリン債への配分などをポジションとして活用する場合もあります。

債券運用部門全体で見解を共有することで、情報に基づくより適切な投資判断につながると考えています。そうした投資判断は、最終的に個々のポートフォリオ・マネジャーに委ねられています。これはアクティブ債券ポートフォリオ運用の中核となる強みでもあります。つまり、ポートフォリオ・マネジャーが他の運用者と協働し、変化する市場環境に適応し、それに応じてポートフォリオを調整する能力が重要となるのです。

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