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2023年3月 / インサイト

賛成?反対?株主提案2022

環境・社会関連の株主提案が注目を集める中、個々の議案に関する知見が賛否を判断するカギを握る

エグゼクティブ・サマリー

3回目の発行となる当レポートでも、環境・社会問題に関する株主提案に対して当社が行った議決権行使結果を報告します。2021年は株主提案に比較的多くの支持をしましたが、2022年は試行的な提案の増加が見られました。提案件数の大幅な増加、採決に持ち込まれる議題の種類の拡大、提案者数の増加だけでなく、提案の質が全体的に低下していることがわかりました。

この種の株主提案については、引き続き会社ごとに検討し、投票方法を決定していくことにしています。株主提案の傾向は毎年変化していますが、環境、社会、ガバナンスのパフォーマンスに対する説明責任は、取締役会レベルで適用するのが最善であるというのが当社の考えです。私たちは、2022年の投票実績がこの原則を明確に示していると考えています。

社会的な課題に対応した事業展開が民間企業に求められる中、株主提案は、投資家と企業のリーダーとの対話を促すメカニズムとして多く利用されるようになってきました。私たちは、このような株主提案に対し、十分に検証されたフレームワークの中で、最終的な行使結果に細心の注意を払いながら、アプローチを続けています。

受託者責任の一環としての議決権行使

顧客のために行う議決権行使は、スチュワードシップ責任(責任ある機関投資家が負うべき受託者責任)において重要な役割を果たしています。当社は、議決権行使を、株式保有に伴う権利であると共に、責任として捉えています。コーポレート・ガバナンスの基本原則と企業固有の状況を踏まえ、投資の観点から熟慮して議決権を顧客に代わり行使しています。ESGスペシャリストや当該企業を担当する運用プロフェッショナルとともに総合的に行使の判断を下します。議決権行使の最終的な目的は、企業とその投資家が長期的かつ持続可能な経済パフォーマンスを達成するような議案を支持することです。

議決権は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ(TRPA)のそれぞれの戦略に投資していただいている全てのお客様に帰属する権利です。言い換えれば、ポートフォリオ・マネジャーが担当する戦略にて投資している企業の議決権行使について最終責任を負うことを意味します。この責任を果たすために、ポートフォリオ・マネジャーは以下のような幅広い内外のリソースから議決権行使に係る推奨や情報を得ています。

  • TRPAのESGコミッティー
  • 世界各地のセクター・アナリスト
  • コーポレート・ガバナンスや責任投資調査部門からなるESGスペシャリスト
  • 独自の責任投資モデル(RIIM)から得られる知見
  • 議決権行使助言会社であるInstitutional Shareholder Services(ISS)による分析・推奨

影響力を慎重に行使

当社では議決権行使は、投資先企業と関係を築くための一手段であると考えています。議決権による影響力の行使は、投資先企業との関係におけるその他の側面を補完する手段と位置付けています。具体的には、議決権行使以外に以下の手段を用いて影響力を行使しています。

  • 定期的かつ継続的な投資先企業の精査
  • 投資先企業の経営陣とのESG問題に関する建設的な対話
  • 投資先企業の経営陣と面談し、率直な意見を表明
  • 投資先企業の取締役会メンバーとの面談
  • 投資比率の増減を決定
  • 新規投資または全売却の決定
  • 状況により、長期的な観点から企業の最善の利益につながるよう経営陣を支持したり、経営陣に方針変更を促す公式声明を出す

表1は、気候変動に焦点を当てたエンゲージメント事例です。

 

(表1)気候変動リスク予防措置に関する株主提案(TRPA)

どれだけ会社提案に反対したかによって、運用会社などの大手機関投資家が評価されるケースが散見されますが、ティー・ロウ・プライスは議決権行使を通じて投資先企業と対立する意図はありません。むしろ、先に挙げた数々の方法を通じて働きかけた結果、投資先企業の株価が他社より相対的に良好に推移し、顧客の投資目標が達成されることを目標としています。

議決権は株主の重要な権利ですが、行使できるのは定時株主総会がある年1回に限定されます。当社では、長年の熟考によって培われ、日々において行使する影響力が重要であると考えています。

規制や制約の度合いは市場により異なる

世界の主要市場にて、株主には定時株主総会にて議案を提出する権利が与えられています。しかし、こうした株主提案には様々な度合いの規制や制約が課されます。市場によっては、株主が株主提案を提出する資格を得るために、大量の株式を長期間保有することを要求されることがあり、結果として、株主提案の提出は比較的少なく、あったとしても機関投資家が提出する程度です。

日本、北米、北欧などの地域では、提出要件が緩やかです。そのため、これらの地域では、個人投資家や社会貢献団体から提出される株主提案がほとんどであることが一般的です。本レポートで取り上げる株主提案のうち、7割は米国企業に対して提出されたものです。

米国以外では、特にヨーロッパ、中東及びアフリカやオーストラリアにおいて、異なる変化が議決権行使に影響を及ぼしています。経営陣が株主にその取り組みの賛否を問う自発的な気候変動関連の決議案、通称「セイ・オン・クライメート」が広がりはじめています。こうした議案の目的は、中長期的な気候変動対策の戦略と報告の詳細を投資家に示し、賛同を得ることです。しかし、日本をはじめとする「セイ・オン・クライメート」の概念が普及していない市場において、株主総会で環境に関する株主提案決議が行われ、注目を浴びたのはごく僅かでした。一方、「セイ・オン・クライメート」の概念が普及している市場では、経営陣が支持する決議案が、株主が要求する追加ディスクロージャーと微妙に折り合わないような事例も見られます。今回の報告期間では、TRPAのグローバル株式投資先企業において、45件におよぶ「セイ・オン・クライメート」に関する決議案が提出され、そのうち97%に賛成しました。

(図1)環境・社会関連提案の詳細分析

TRPAは2022年に1,464件の株主提案に対し議決権を行使しました。うち583件は取締役の指名や関連提案でした。401件は企業に特定のコーポレート・ガバナンス慣行の採用を求めるものでした。本レポートでは残り480件の環境・社会課題への対応を求める株主提案を取り上げます。図1では、これらの提案を5つに分類しました。

議決権行使のフレームワーク:原則主義か個別判断か?

議決権行使においては、原則に基づいて行使するか個別判断とするか、どちらのアプローチが最適かという議論があります。問題を個別に考察し、企業の事情を考慮すべきか、それともすべての会社に対し一律に原則を適用すべきでしょうか?実際、私たちはどちらも正解だと考えています。

議決権行使では原則に基づくアプローチを効果的に導入できる分野が多く存在します。例えば、当社の議決権行使ガイドラインは、適切な水準の取締役会の独立性や確固たる株主の権利、役員報酬と企業業績の連動を推進することを目的としています。しかし、ガイドラインと投票結果の整合性を維持する上でケース・バイ・ケースのアプローチが必要な場合もあり、これが特に当てはまるのが株主提案です。

株主提案に原則主義のアプローチを適用するのが困難なのは、これらには他のカテゴリーと比べ微妙な判断が必要になるからです。例えば、私たちは取締役の独立性を判断する目安として一連の客観的指標を用います。既存の取締役の選任に反対票を投じ、会社側に独立した取締役会メンバーとの交代を提案できれば話は簡単です。しかし、株主提案においては、取締役の交代だけでなく、そのための具体的な手法についても含まれています。また、環境・社会面の開示は不十分との意見に賛同することはしばしばあるものの、要求されている開示内容に必ずしも同意するとは限りません。

米国におけるESG推進に反対する動きは、2022年の私たちの意思決定の枠組みに複雑さを加えることになりました。私たちは、ESGインテグレーションやインパクト投資を重視する多くのグローバル顧客からフィードバックを得るための複数の手段を構築していますが、そのような問題に対して見解を持たない顧客も同じくらい多くいることを認識しています。中には、ESGを重視することによって投資成果や地域経済に与える影響に対して否定的な意見を持つ顧客もいます。2023年の最優先課題は、多くの顧客やステークホルダーと対話を行い、ESGに関する顧客の優先順位や考え方をバランスよく把握することです。

議決権行使をめぐる劇的な変化

2022年の議決権行使において注目すべきは、株主提案件数が増加したことです。昨年、ティー・ロウ・プライス全体で行使した社会・環境問題に関する株主提案は323件でした。今年は49%増の480件となりました。この増加にはいくつかの理由があります。一つ目は、社会・環境問題に対する投資家の関心が世界的に高まっていることです。もう一つの理由は、米国証券取引委員会(SEC)が、議決権行使に加えることができる株主提案の種類についての解釈を変更したことです。SECは、幅広い社会や環境テーマについて、より多くの提案が出されることを許可しました。しかし、こうした提案数の増加は、全体的なクオリティの低下に繋がっていると当社は見ています。2022年の株主提案は、不正確なものが目立ち、整合性に欠け、重要でない課題に対処する提案が多く見られました。実際、最も件数が増えたのは「ESG推進に反対する提案」で、企業が環境・社会改善への投資を取りやめるよう求めるものでした。昨年、TRPAはこの株主提案に9件しか投票しませんでしたが、今年は46件でした。

さらに、杓子定規な要求が顕著に上昇しました。株主提案は、ESG問題に関する追加報告を求めるような開示要求から、企業の具体的なコミットメントや資本投資、構造改革を求める行動ベースの要求へと急速に移行しています。同時に、提案者は、株主提案前に企業(発行体)との交渉によって解決を目指そうとする傾向が低下しました。

このような状況の劇的な変化により、私たちは、これらの議案に対する投票を企業ごとに行うという姿勢をより強く打ち出しました。これらの議案に対する投票を決定する前に、企業の全体的な状況、開示レベル、業績、重要なESGリスクについて理解することがこれまで以上に重要となっています。

議決権行使結果とその理由
議決権行使結果とその理由
議決権行使結果とその理由
議決権行使結果とその理由
議決権行使結果とその理由

 

TRPAの議決権行使指針策定プロセス

社会・環境に関する株主提案に対する私たちの取り組みは、議決権行使に関連した責任のごく一部です。これらの株主提案に対する取り組み姿勢は、規制の変更、開示の改善、ステークホルダーによる動き、企業固有のイベント、これらの問題に対する当社の運用プロフェッショナルの見解を反映し、企業を取り巻く環境とともに進化し続けます。

TRPAのESGコミッティーは、アナリストやポートフォリオ・マネジャーを含む株式、債券、マルチアセット部門の経験豊富な運用プロフェッショナルと各部門の責任者で構成され、社内弁護士、並びに営業やオペレーション部門の責任者も含まれます。コーポレート・ガバナンス責任者と責任投資調査部門ディレクターが同コミッティーの共同議長を務めます。ESGコミッティーは毎年初めの会合で前年の議決権行使結果を検証し、議決権行使ガイドラインを見直し、ガイドラインへの追加や修正を検討します。

ESGパフォーマンスの説明責任を果たすための様々な手段

TRPAの議決権行使プログラムにおいて、社会・環境関連の要素に対する私たちの見解が表明されるのは、株主総会決議だけに留まりません。世界中のほぼすべての会社の株主総会の定例議案の中で、取締役が再任されています。私たちは、取締役の再任を決議する前に、再任される取締役のパフォーマンスを、社会・環境関連の要素を含む様々な側面から評価します。

2022年、私たちはTRPAの議決権行使ガイドラインを3つの方針で対応し、ESGの懸念によって取締役選任を反対する基準の引き上げを行いました。これらの方針は次の通りです:

  • 気候変動取り組みへの透明性:温室効果ガスの高排出産業に属する企業について、投資家がリスクを評価するのに十分な排出量データを開示していない場合は、原則として、取締役の選任に反対します。
  • 取締役会の多様性:取締役会の性別の多様性について、全世界で最低基準を設定し、規制や市場基準がある地域にはより高い基準を適用しています。
  • 株主の権利:3年任期で取締役の改選時期をずらして、取締役の過半数の交替をしにくくする仕組みをとっている米国の伝統的企業に対しては、投資家に対する説明責任を低下させるとして、原則として反対します。

2022年、これら3つの方針で対応した結果、TRPAは以前と比較して、取締役選任に対する反対件数は1,000件以上増加しました。

 

賛否を決定する要素
賛否を決定する要素
賛否を決定する要素

議決権行使ガイドラインを毎年見直す際は、(a)方針に反する決定の分析など前年の議決権行使行動パターンの検証や、(b)当社のリサーチや、議決権行使助言会社、当社の加入団体、株主提案の提出者からの外部情報に基づく今後注目を集めそうなESG問題の分析が行われます。議決権行使ガイドラインをグローバルなESG動向の変化を反映した適切なものにするため、毎年、活発な議論が繰り広げられます。

TRPAの議決権行使のモニタリングとESGに対する取組み

議決権行使はティー・ロウ・プライスの運用部門が担う機能です。これは、運用会社としてのサービスの一環であり、当社の各運用エンティティの総称であるティー・ロウ・プライス・アドバイザーズに置かれた各取締役会が監督責任を担っています。また、ティー・ロウ・プライス・アドバイザーズはフィデューシャリー・デューティを担っています。取締役会は、受託者として長期投資を行う上で重要な要因を考慮し、顧客の利益の追求のみを目的に議決権を行使する責務を負います。

ESGコミッティーはすべてのファンド(米国ミューチュアル・ファンド、SICAV、信託、OEIC)の取締役会に毎年報告書を提出します。その中では、行使パターンの前年からの変化、議決権行使ガイドラインの修正、潜在的な利益相反の管理に関する議論などを詳しく示します。社会・環境問題に関する議決権行使の詳細な分析も含まれます。

ティー・ロウ・プライス・アドバイザーズに対して直接的な監視を行うファンドの取締役会に加え、ティー・ロウ・プライス・グループ・インクは上場会社としての取締役会を擁しています。グループの取締役会も ESG戦略、環境フットプリント、人材管理、リスク管理などを監視する立場上、ESG問題に関心を持っています。

ティー・ロウ・プライス・アドバイザーズのESGへの対応はグループの取締役会にとって戦略的関心事であるため、TRPAのESG責任者がグループ取締役会に年次報告を行っています。報告で重視されるのはテクノロジー関連リソース、人材、ツール、トレーニング、ESGフレームワーク下で管理される商品など、ESGへの対応を改善させるためのTRPAにおける各種投資です。議決権行使活動に対する監視はファンドの取締役会の責任であり、通常、グループの取締役会では議論されません。

気候変動リスクに対するグループと資産運用会社の視点の整合性レビュー

2022年、ティー・ロウ・プライス・グループ・インク取締役会の要請に基づき、気候変動に関するグループの方針、見解および声明と、当社の資産運用会社による議決権行使活動について比較を更新しました。

レビュー手法や指摘事項など、今件に関する詳細な情報は、本レ ポートの補足資料をご確認ください(補足資料:気候変動リスク 整合性レビュー)。

結論

ティー・ロウ・プライス・アドバイザーズは、ESGの専門知識や知見の構築に多大なリソースを投資しています。戦略的な投資アプローチと同様、ESGに関する議決権への賛否は、企業毎に特定のESGリスク、成長機会、開示などを考慮し、ケース・バイ・ケースの分析に基づいて判断されます。

ESGファクターを議決権行使を含む運用プロセスに組み入れるTRPAのフレームワークは独自のリサーチを中心としており、アナリストやポートフォリオ・マネジャーなど運用チームに投資の知見を提供することを目的としています。ティー・ロウ・プライスはグローバルな資産運用会社として、視点、考え方、時間軸、投資目的が異なる多様な顧客への受託者責任を担っています。従って、私たちの目的は、特定の価値観に基づく投資戦略の構築ではなく、様々な視点(環境、社会、倫理、ガバナンス)から、ポートフォリオの保有銘柄について理解を深めることです。

ESG課題に関する株主提案の質、意図、効用は非常に多岐にわたっているのが現状です。適切な目標が設定された提案は企業に特定のリスク管理の強化を促す上で有効で、投資家にとって最良の結果につながります。一方、提案者の目的が経済的成果を重視する長期投資家の目的にそぐわない提案は効果を期待できず、有害な場合さえあります。従って、株主提案への最も責任あるアプローチは、投資に焦点を当てた思慮深いフレームワークを適用することだと考えています。

 

補足資料:気候変動リスク整合性レビュー

2021年、ティー・ロウ・プライス・グループ・インク取締役会の要請を受け、気候変動に関するグループの方針、見解および声明と、当社の資産運用会社による議決権行使活動について初めて比較を行いました。2022年も同様の分析を行いました。本レポートで「企業活動」と言う場合、それはグループ取締役会の監視下でのティー・ロウ・プライス・グループ・インクによる活動を指します。「運用活動」とは、顧客の代理として助言や資産管理を行うために設置されたティー・ロウ・プライス・グループ傘下の資産運用会社の様々な活動を指します。これには、当社の米国ミューチュアル・ファンドやその他のファンド、他の形態にて資産を受託している顧客全てを含みます。

当社の運用エンティティは総称して「ティー・ロウ・プライス・アドバイザーズ」と呼ばれ、それぞれの取締役会の監視を受け、各取締役会に対する説明責任を負っています。

ティー・ロウ・プライス・グループ・インクとその取締役会には、傘下の運用会社における議決権行使活動を監視する責任はありません。このような活動は各運用会社の取締役会の監視の下にて行われています。グループと傘下運用会社の株主やステークホルダーは明確に区別され、その利害も異なる場合があります。こうした状況を踏まえてもなお、ティー・ロウ・プライス・アドバイザーズの議決権行使実績とティー・ロウ・プライス・グループ・インクの方針の間に非整合的な点があるかを検証しました。

分析にあたっては、以下の文書にある気候関連の記述を比較しました。

 

ステップ1:基本的視点

双方とも、文書の中で気候変動に直接言及しています。グループの企業活動に関する開示資料では、「ティー・ロウ・プライスのマネジメント層は、気候変動が当社のビジネスにもたらすリスクと機会を認識しています。」と述べています。また、「投資家として、長期的な思考と持続可能性は両立すると考えています。」と付け加えています。運用活動に関する開示でも同様に次のように記しています。「気候変動を乗り切るにあたって私たちの投資先がどのような態勢にあるかは、アナリストやポートフォリオ・マネジャーにとって重要な問題です。投資先企業が気候変動の影響をどのように評価し、環境面の持続可能性を長期の戦略立案にどのように組み込んでいるかを理解することは受託者責任の一部であると考えています。」

また、双方とも、気候変動はESG関連情報開示の中で重要なトピックとして取り上げられています。

ステップ2:開示

双方とも、投資家が気候変動リスクの評価とその低減に着手するために企業が取れる最初の重要なステップは、温室効果ガスの排出量とその削減計画の開示であると記載しています。また双方とも、そのような開示に向けた望ましいフレームワークとして気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を挙げています。また、一般的なサステナビリティの開示フレームワークとして、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)を挙げています。

ティー・ロウ・プライス・グループ・インクはTCFDフレームワークを支持しており、2021年ESGアニュアルレポートにTCFDのフレームワークに基づいた開示を盛り込んでいます。開示されたデータの中には、企業の温室効果ガス総排出量の内訳が含まれています。

運用活動においてもTRPA議決権行使ガイドラインの中で、TCFDの提言に沿った報告を求める株主提案に賛成票を投じる方向性を明記しています。ESGアニュアルレポートやその他の文書にも、投資先企業に対するエンゲージメントでは、TCFDフレームワークの採用を推奨することを含め、環境関連開示の向上に向けた働きかけが中心になることが多いと記載しています。

ステップ3:議決権行使

顧客の最善の利益の追求のみを目的に投資先企業に対する議決権を行使する責務を果たすため、傘下の資産運用会社毎にESGコミッティーを設置し、議決権行使プロセスを監視し、議決権行使ガイドラインを策定・管理する独立した機能を持たせています。ガイドラインには、気候変動に対する取り組みが議決権行使の対象になっていると数ヵ所で書かれています。一方、環境・社会に関する株主提案についての具体的なガイドラインはありません。これは、ファンダメンタルズを重視する投資家として、企業固有の状況を踏まえて検討すべきであるとの信念によるものです。

地理的所在地、ビジネスモデル、規制、経営陣、エネルギー移行の 長期的性質などから、企業が受ける気候関連リスクの影響は異なります。企業の開示水準にも、気候変動に敏感な業種に属する大企業がTCFDに完全に則って行う報告から、スコープ1の温室効果ガス排出量の測定すら始めていない中小企業まで、極めて大きな差があります。従って、傘下運用会社の議決権行使ガイドラインでは、環境・社会に関する株主提案をケース・バイ・ケースで分析するアプローチを取っています。

グループの企業活動に関する文書には、議決権行使についての具体的な開示はありませんでした。グループやその取締役会が傘下運用会社の議決権行使やその監視に責任を負っていないことを考えれば、妥当であると考えます。

レビュー結果の概要

上記の文書をレビューした結果、以下のように結論付けました。

  1. 気候変動に関連する投資リスクについての双方の基本的視点は整合的である
  2. 双方ともTCFDやSASBの報告フレームワークを強く支持していることが、その整合性をさらに裏付けており、
  3. 議決権行使に関する双方の開示に不整合な点はない

加えて、傘下の運用会社における2020年、2021年、2022年の議決権行使実績は議決権行使ガイドラインと整合しており、気候関連提案の各々をケース・バイ・ケースで分析していることを強く実証していると結論付けました。

ティー・ロウ・プライスは気候変動におけるさまざまなステークホルダーの利益を投資上の重要な考慮事項であると理解し、投資判断に織り込んでいます。ステークホルダーにはティー・ロウ・プライス・グループ・インクの株主、地域社会、当社社員のほか、資産を受託している顧客など、資産運用におけるステークホルダーも含みます。

当社では、一貫性のある報告を行い、グループと資産運用双方において活動を公平に評価することが重要であると考えています。3年目を迎えた本レポートでは、環境・社会関連の株主提案に対する資産運用を通じ議決権行使について詳細に説明しました。今後も本レポートを年次で発行するほか、全ての投資先企業について議案毎に行使結果を年に2回公表する予定です。

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。

 

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社

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