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2020年10 月 / インサイト

サステナビリティがコロナ後の世界における成功を左右

優れた会社を選ぶ上でESGがかつてないほど重要度を増している

サマリー

  • 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によりESG(環境・社会・企業統治)のトレンドがわずか数ヶ月間で数年分、前倒しで進んだ。
  • 社会的圧力が前例のない変革を主導しており、政府や企業は真の解決策を模索している。
  • 現在の環境では、サステナビリティ(持続可能性)を長期事業戦略に組み入れることが企業にとってかつてないほど重要になっている。


危機は変化をもたらします。我々はこれを人間として、また経験豊かなグローバル投資家として認識しています。2008年の世界金融危機によって、ビジネス、特に金融サービス業のあり方が改めて問われました。世界金融危機の結果、受託者責任が再定義され、顧客・株主重視へと流れが変わりました。政府による救済策、新たな規制、株主アクティビズム(投資家が、企業の経営政策やガバナンス・ルールに影響を与えて株主価値を向上させようとする行動)がこうした流れに拍車をかけ、危機の結果、金融業界における透明性が高まり、本質的な変化が(殆どの面において良い方向に)もたらされました。

世界金融危機から数年後、世界経済に地殻変動が起きました。具体的には、テクノロジーがあらゆるセクターや業界に浸透し、企業の効率性や潜在能力が飛躍的に高まりました。ある意味、テクノロジーが強力かつ民主的な推進力となった面もあり、権力、知識、高性能ツールが多くの人々の間に広まりました。その半面、テクノロジーは凄まじい破壊力を有しており、効率性が劇的に高まった結果、雇用が失われ、業界が丸ごと消滅したケースもあります。

一方、優勝劣敗が鮮明となり、富の集中や自然独占が発生し、それに伴って社会的、政治的な緊張が高まっています。

新型コロナウイルスのパンデミックにより多くの創造的破壊のトレンドが驚異的な規模で広まっています。ソーシャル・ディスタンスや実店舗・工場閉鎖などコロナ対策の影響で、ビデオ会議などのコミュニケーション手段やeコマース(電子商取引)の普及が数年分、加速しました。企業はテクノロジーを活用して従業員の在宅勤務を推進しており、こうした流れはパンデミック収束後も定着する可能性があります。


世界各国は雇用を創出・確保するために金融・財政面から空前の規模の経済対策を実施していますが、同時に高まる社会的圧力への対応に苦しんでいます。

新型コロナがもたらした大きな変化の一つは、社会的、経済的不平等の様々な側面にどう対処すべきかという議論が活発になったことです。

現在の環境では、サステナビリティを長期事業戦略に組み入れることが企業にとってかつてないほど重要になっています。これは、良いガバナンス(企業統治)やコーポレート・シチズンシップ(企業の社会的貢献)のことではなく、環境・社会的変化を乗り切れる強固な事業戦略の策定を指します。サステナビリティは時代を先取りする発想、規律あるリーダーシップ(特に、危機時)、社会的変化の波に乗ること、他者のニーズへの貢献と本質的に結びついています。

影響力が強まると、責任も高まる

世界金融危機が金融機関にとって大きな転機となったのと同様に、現在のコロナ危機はテクノロジー・セクターにとっての一大転機です。Apple、Amazon、Netflixなど巨大テクノロジー企業はESGの議論と無縁ではありません。これらの企業のビジネスモデルはコミュニケーション、ショッピング、動画視聴における大きな変化を主導すると同時に、その恩恵を受けています。こうした社会的変革は売上の伸びを加速する一方、業務運営リスクも高めます。

変革への対応が会社の命運を左右することもあるため、多くのテクノロジー企業は人的資本管理や倫理分野(海外での納税拡大をサポートする要因)におけるESG問題へのアプローチを根本的に見直しています。

Amazonの最高経営責任者(CEO)、Jeff Bezos氏は2020年の株主向け年次書簡で、同社が顧客の生活において極めて大きな役割を果たしていることを認め、「顧客は日常生活において我が社を頼りにしている。Amazonはポジティブな影響を及ぼし、進歩への推進力になれる」と述べました。また、同氏は増加する需要への対策としての物流網への投資、雇用や従業員の生活の質を確保し、梱包廃棄物を削減し、将来世代の多様性やスキルを支援するための計画を詳細に説明しました。これらはいずれも持続可能性の高いビジネスを構築するための中核的要素です。世界で最も影響力のある巨大企業のCEOの一人であるBezos氏がこれらの要素に焦点を当てる姿勢を示したことは、サステナビリティが単なるお題目ではなく、企業戦略において考慮すべき重要な要素となりつつあることを物語っています。


日常生活の支援や改善における自らの重要性を認識しているのは大企業に限りません。新型コロナウイルスの発生以降、中小企業も自身が人々が困難な環境を乗り越えるのに貢献していることを認識しています。eコマース・プラットフォームは中小企業がオフラインからオンラインへ移行するのを助ける上で重大な役割を果たしています。ヘルスケア業界では、正確な検査、血清学研究、ワクチン開発などでの優位性を武器に新型コロナウイルスとの闘いの最前線で活躍するバイオテクノロジー分野のニッチ企業も少なくありません。このように世界が一丸となって一つの問題に取り組んだ例はこれまでになく、この難局において共通の目標に向かう一体感が社会全体に生まれることが期待されます。

我々はこうした変化の余波を目の当たりにしています。企業はESGのテーマについて議論を始め、綿密な計画を策定しています。これまでは、投資家である我々が議論を開始することがより一般的でした。ESG要因は長期的な企業の改善に資するものであることから、ESGに関する議論は我々にとって常に大切です。当社は社会や企業の変化に影響を及ぼすため、アナリストのコメント、公式な書簡やコミュニケーション、直接的なエンゲージメント(投資家が投資先企業に対して行う建設的な対話)、公式見解など様々なツールを用います。また、良いESG慣行がより持続可能かつ耐久力のあるビジネスを生むことが多いことも理解しています。

ESGを投資にどう取り入れるか?

ESGへの関心が高まる時代に当社が適していると自負する理由の一つは、運用プロセスにESG分析を完全に融合していることです。耐久力やポジティブな変化が注目される中、ティー・ロウ・プライスでは十分な情報に基づき、ESGへの取り組みの次のステージにおいて、正しい変化の方向にある企業に投資することを目指しています。当社の責任投資チームは業界や個別企業についてESG問題の分析を提供し、運用チームはそれを個別企業や投資テーマの分析に反映します。また、ESG特性を理解し、特定のESG要素の上昇を察知するために、独自の責任投資モデル(RIIM)を使ってポートフォリオ全体をスクリーニングします。

今日の世界を見渡すと、サステナビリティやポジティブな変化が大いに期待できるセクターがいくつかあります。クオリティの高い企業を重視する投資家はこうした大転換の恩恵を受けることができるでしょう。

素材:ここ数年の記録的な暑さや壊滅的な自然災害(森林火災、ハリケーン、洪水)が気候変動の現実を示しています。我々は、二酸化炭素の回収・貯留、持続可能な包装や、カーボン・フットプリント(温室効果ガス排出量)を積極的に削減するよりクリーンな環境対策などを通じて気候変動へ取り組む企業を探しています。例えば、紙・梱包材メーカーはプラスチックからより持続可能な素材へのシフトの恩恵を受けます。また、より環境にやさしい代替燃料となる産業用ガスを生産する会社にも注目しています。

公益:大規模なインフラ、持続可能な収益構造、社会にとって極めて重要なエネルギー転換を支援する再生可能エネルギーへの投資能力を考えると、このセクターの企業は環境面の持続可能性の改善において中心的な役割を果たすでしょう。我々は再生可能エネルギー・インフラに経営資源を積極的に投入する質の高い、経営状態の優れた公益企業を探しています。

ヘルスケア:医療サービスへの需要とコストが高まる時代にコロナ危機が起こったことで、この業界は優勝劣敗が鮮明になっています。我々はイノベーションに着目し、コロナ危機の前からバイオ医薬品メーカーを選好していました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、この種のビジネスの重要性が浮き彫りになりました。パンデミックはまた遠隔診療のトレンドを数年前倒しにし、こうした企業はサービスが急速に普及する一方、患者が安全に医師と不可欠なコミュニケーションを図るのに役立っています。

情報技術:業界に関わらず大規模かつ急激な成長は「成長の痛み」を伴いますが、テクノロジー・セクターも例外ではありません。同セクターには厳しい監視の目が向けられており、同セクターは経済的利益と従業員や社会に対する責任のバランスを取ろうと努力しています。

政治的・社会的な監視圧力の高まりを受け、テクノロジー企業は、短期的な利益を犠牲にしてでも、サステナビリティの良き実践者としての責任を急速に受け入れようとしています。Amazonは需要急増に対処するために採用と投資を大幅に増やすと同時に従業員の安全確保を図っています。同社は、長期的な持続可能性と、評判や社会的容認に依存する中核ビジネスモデルの保護に力を入れる企業の好例です。

ティー・ロウ・プライスでは投資先企業にESGへの取り組みを促し、可能な限りその意思決定に影響を及ぼすために、多くの大手テクノロジー企業と積極的にエンゲージメントを行っています。当社は運用資産規模やテクノロジー・セクターへの投資額が大きいため、著名な経営陣と面談する機会に恵まれ、巨大企業の変化への取り組みに直接影響を及ぼすこともあります。

ESGを考慮することが優れた成長企業を発掘する上で極めて重要

テクノロジーを原動力に経済環境が激変し、世界中が大きな創造的破壊に見舞われてます。こうした状況では、社会、企業、投資家、政府が何らかの形で一体となることが経済の安定や成功を持続させる上で非常に重要なことが明らかになりました。新型コロナウイルスの影響でサステナビリティのトレンドが数年早く定着し、その重要性の高まりや、それがどのように投資環境を変えるかを理解することが極めて重要になっています。

ESGはこの新常態を永続的に構成する要素の一つです。企業は自身の事業が業界、人類、ひいては地球に及ぼす影響について注意深く考える必要があります。こうした関係性を理解する企業は多くの場合、現時点と将来の成長を見据えた革新的企業です。我々はこれこそが良い意味での創造的破壊であると考えており、正しい変化の方向にある企業に投資することを目指しています。

 

主なリスク—本資料で取り上げる投資戦略に大きく関連するリスクは以下の通りです。外貨建て証券の取引は投資金額に影響を及ぼしかねない為替レート変動にさらされる可能性があります。ポートフォリオは株式投資特有のボラティリティにさらされ、その価値は債券に投資するポートフォリオより大きく変動する可能性があります。ポートフォリオには新興国の証券取引所に上場される企業の株式への投資が含まれることもあります。

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