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2020年11 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

1. 市場テーマ2020年10月31日時点

ブルーウェーブではなく、青いさざ波?
執筆時点では米国大統領・議会選挙の最終確定前ではありますが、民主党バイデン候補が大統領選挙で勝利宣言を行う一方で、上院は共和党が過半数を維持する可能性が高まっています。事前の世論調査では、大統領、上院、下院すべてを民主党が制する「ブルーウェーブ」の可能性が高く、その結果、増税と大規模な財政支出が予想されていました。集計作業が進むにつれ、上院を共和党、下院を民主党が過半数を占める「ねじれ議会」を市場は織り込みつつあり、どちらかの政党が強引な政策を行う可能性が薄れ、両党が歩み寄る結果となる可能性を歓迎しているようです。注目される分野のうちのひとつは、テクノロジー企業への規制強化であり、これについてはどちらの党も前向きな姿勢を示しています。可能性が高まっているねじれ議会が現実化し、よりバランスの取れた政治環境になれば、市場のボラティリティは低下し(図表1)、リスク資産には好ましい環境となる可能性があります。

「株安に対する保険」が効かない
米国大統領選挙を前に株式が急落してボラティリティが高まる場面が見られた一方、米国債利回りはレンジ内からやや上昇気味(債券価格は下落方向)に推移しています(図表2)。株式と債券の相関性は長期的には変化しますが、投資家が安全資産である米国債に逃避するようなリスク資産の急落局面では、歴史的に株式と債券は逆相関の関係にあります。ところが今回、投資家はボラティリティが上昇する中で、米国債が「株安に備えた保険」として想定通り動かないことに注目しました。株式が米国大統領選挙の結果が出ず、混乱が生じる短期的なリスクを織り込む一方、債券は選挙後に予想される財政支出による金利上昇の可能性を見据えているようです。利回りが歴史的低水準で推移している中で、金利が上昇した場合、投資家はデュレーション・リスクに見合うリターンを得られないかもしれません。投資家は株式へのエクスポージャーのヘッジ方法を再考する可能性がありますが、米国債は現在の水準から上値余地が乏しいとしても、ポートフォリオ内でバランスをとる役割を担い、国債にプレミアムが付く環境では流動性供給という、より重要な役割を果たします。

二極化する不動産市場
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による大混乱の中、不動産市場は全面的に前例のない規模の影響を受けています。住居用住宅市場は低金利や消費の底堅さを背景に引き続き好調です。いくつかの大企業がコロナ対策で在宅勤務を延長する中、多くの住宅購入者がより広いスペースを求めて大都市を離れつつあります。しかし、これとは全く対照的に、商業用不動産、特に小売り、オフィス、ホテル用不動産は引き続き逆風を受けています(図表3)。実店舗からオンラインへの移行といった新型コロナウイルス流行前に定着し始めていたトレンドは、パンデミックによりその勢いが一層強まっています。同様に、在宅勤務が永続的なものとして定着するにつれ、オフィス需要は今後も減少していく可能性があります。こうしたトレンドが持続すれば、オフィスや小売りREIT(不動産投資信託)などの商業用不動産の分野にとっては今後も厳しい環境が続くでしょう。

コロナ禍再燃の中、安定性が際立つ日本の株式市場で注目すべきは?
最終結果は確定していないものの、米国の大統領選挙が終了したことで、市場の関心は再び北半球で急拡大するコロナ感染に回帰しています。そして、欧米で部分的なロックダウンが再導入される中、(増加しているとはいえ)欧米との比較では感染者がケタ違いに少なく、日常生活もほぼ滞りなく行われている日本社会の相対的な安定性が浮き彫りになっています。特に、(人数制限があるとはいえ)野球などのスポーツの有観客試合が行われていることや、「Go To キャンペーン」のような消費・旅行喚起策が継続されていることは、海外の投資家の関心を集めています。ただし、国内の消費関連のデータは、改善を示すものも増えてきましたが、全体は依然として低迷したままです。一方で、中国など東アジアの回復選好を背景に、外需関連の統計には「V字」型回復の様子がはっきりと見え始めており(図表4)、資本財や部品関連銘柄の出遅れ修正につながる可能性があります。
 

過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
出所: ブルームバーグ・ファイナンスLP、ブルームバーグ・サービス・リミテッド、スタンダード・アンド・プアーズ、NAREIT/FTSE。追加ディスクロージャー参照。
図表1:VIX指数はCBOE ボラティリティ・インデックス。図表2:グレーの網掛け部分はS&P500指数の直近の急落局面。図表3:住宅市場指数は全米住宅建設業者協会 (NAHB) の住宅市場指数。小売りREITインデックスはFTSE NAREIT 小売り不動産セクター指数。

 

2. 各国・地域の経済環境

 ポジティブネガティブ
米国
  • 金融・財政政策による未曾有の緊急経済対策
  • 長期的優位性を有する企業 (クラウド・コンピューティング、 eコマースなど) の割合が他の国より多い
  • 危機前は家計のバランスシートは健全
  • 新型コロナウイルス感染の第3波が形成
  • 危機前から企業債務は高水準
  • 高水準の政府債務
  • 米ドル高圧力が弱まる
欧州
  • 欧州復興基金は重要な財政刺激策を生み出すとともに、財政統合への最初の一歩
  • 金融政策は引き続き非常に緩和的
  • 欧州株のバリュエーションは割安
  • 長期的にユーロ高の見通し
  • 新型コロナウイルス感染第3波により再ロックダウン
  • 追加財政刺激策の実施に向けたプロセス長期化
  • ブレグジットが貿易に悪影響を及ぼす可能性
  • 趨勢的に優位な企業の割合が低い
  • マイナス金利により銀行セクターは弱体化
  • 欧州中央銀行(ECB)の景気刺激余地は限られる
中国
  • 経済は概ね正常化。足元で小売り売上高は持ち直し、内需とサービスセクターが更なる成長要因となる可能性
  • 人民元は引き続き堅調で、世界的な低利回りの環境下で海外投資家への参入規制緩和を考慮すると、中国国債も依然魅力を維持すると予想
  • 技術進歩や再生可能エネルギーは直近に発表された政策の長期的な恩恵を受けると予想
  • 経済回復の兆しが見え始め、財政刺激策の効果は薄れ始めた
  • MSCI中国株指数は足元で最高値を更新するも、中国株は一部銘柄への集中やスタイル乖離リスクに直面
  • 人民元高が目先的に輸出企業の競争力に悪影響を及ぼす可能性がある
日本
  • スムーズな政権移行は改革の継続を示唆しており、特にガバナンスやデジタル化の分野での改革が期待される
  • 海外投資家は日本株を引き続きアンダーウェイトとしている。  日本株は保守的な業績見通しの下、引き続き比較的割安で、世界経済回復の恩恵を受ける
  • 新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込みつつあり、国内観光需要喚起を目的とした「Go To トラベル」キャンペーンの実施により、経済指標は改善している。
  • 景気回復の足取りは他の先進国より鈍い
  • 小型株は個人投資家の買いを背景に高値を更新
  • 市場指標は円高を示唆しており、日本企業の競争力や収益力が損なわれる可能性がある
オーストラリア
  • 小売売上高、住宅、雇用、現金残高などのデータが堅調なことから、個人消費は上振れする可能性がある
  • 財政・金融政策によるサポートは包括的かつ大規模
  • オーストラリア株と豪ドルは世界景気回復の恩恵を受ける。 業績予想の上方修正やコモディティ価格の上昇は両資産が上昇トレンドにあることを示唆している
  • 財政刺激策の縮小タイミングが性急に過ぎるリスクがあり、財政支出が停止されると、その影響は長引くかもしれない
  • 現時点では新型コロナウイルスの感染を抑え込んでおり、オーストラリア市場は他の市場よりワクチン開発に関する朗報への反応は鈍くなるかもしれない
  • 投資家が豪ドルをややオーバーウェイトとしているため、リスクオフの動きが強まると、ダウンサイド・リスクが高まる
新興国
  • 中国経済は概ね回復
  • 米ドル高圧力が弱まる
  • 長期的優位性を有する企業(クラウド・コンピューティング、eコマースなど)の割合が比較的高い
  • 株式のバリュエーションは先進国より魅力的
  • 中国を除く新興国は財政刺激策を行う能力が限られる
  • 世界の鉱工業生産や貿易の動向に非常に敏感。どちらも改善したものの、低位に留まる

 

3. アセット・アロケーション・コミッティのポジショ二ング

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