2026年6月, 株式
バリュー株投資はもはや復活を待つ局面ではありません。欧州、日本、その他の海外市場では、金利上昇、コモディティ市況の改善、ならびにキャッシュフローやバリュエーションへの投資家の関心の高まりを背景に、バリュー株は堅調に推移しています。一方で、米国市場は例外的な動きを見せており、少数の大型テクノロジー企業が引き続き市場リターンをけん引してきました。しかし、物色対象が徐々に広がり始めていることに加え、大手テクノロジー企業の成長ストーリーがより大規模な設備投資を必要とするものへと変化していることから、米国でもバリュー株への追い風が強まりつつあります。
現在の投資環境は、根強いインフレ、高水準の財政支出、逼迫した労働市場、構造的に強いコモディティ需要、ならびに地政学的分断の進行によって形作られています。これらは単なる短期的な景気循環要因ではありません。市場の動きやリターンの源泉が変化する転換点となる可能性を示しています。このような環境下で、バリュー株投資はもはや単なる逆張りの投資戦略ではありません。次の上昇局面における市場のけん引役としてますます重要になりつつあると私たちは考えています。
バリュー株の世界的な再評価は米国テクノロジー企業主導の相場によって目立ちにくくなっている
市場の中でもバリュー色の強い市場、とりわけ欧州と日本では、より良好なマクロ環境を背景に相対的に高いリターンを示しています(図表1)。2022年以降、米国を除く主要市場では、構造的な経済要因の影響がより顕著となる中で、バリュー株が堅調に推移しています。これらの地域では、実体経済に関連するセクター、とりわけ工業活動やコモディティと結び付きの強いセクターが市場パフォーマンスをけん引しています。一方、米国市場では、特にAI関連を中心とした少数の大型テクノロジー企業への資金集中によって、こうした広範な市場トレンドが目立ちにくくなってきました。この乖離は重要です。バリュー株投資を支える要因はすでに世界的に整いつつある一方、米国では一部のグロース株への資金集中によって、その流れが一時的に目立ちにくくなっていることを示唆しています。
米国におけるバリュー株投資の見直し
バリュー株は米国外の多くの地域で堅調に推移していますが、年初来のリターンでは、米国でもバリュー株投資を見直す動きが広がりつつあります(図表1)。主な要因は、近年の市場パフォーマンスをけん引してきた大型テクノロジー企業の果たす役割が変化していることです。これらの企業への投資妙味は依然として高いものの、新たなフェーズに入りつつあると思われます。これらの企業を支えてきた構造的な成長要因(デジタル広告の拡大、クラウド化の進展、ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)の普及)は、成熟しつつあります。
それと同時に、AIの台頭により、巨額の資本投資を必要とする新たな局面が生まれています。AIインフラの構築・維持に必要な投資規模は拡大しており、フリー・キャッシュフロー創出への圧力や利益率低下につながる可能性があります(図表2)。収益化の不確実性、競争環境、新規参入リスクを巡る問題も依然として残っています。これにより、大型テクノロジー企業だけが市場リターンをけん引する構図は、今後、徐々に弱まっていく可能性を示唆しています。
マクロ経済環境の変化
こうした市場のけん引役の転換は、マクロ経済環境の大幅な変化も要因となっています。市場はもはや、低インフレや低金利が継続する前提に立っていません。代わりに、より根強いインフレと高水準の財政支出が続く世界へと適応しつつあります。金利見通しも「高金利が長期化する」環境へと変化しています。割引率の上昇は、長期成長期待に支えられたグロース資産のバリュエーションに逆風となる一方、足元で安定的にキャッシュフローを生み出す企業の相対的な魅力を高めます。このような環境では、財務基盤の健全性、利益の安定性、ならびに規律あるバリュエーションが評価されやすくな ると考えられます。
回復局面からリバランスへ
一部の投資家はバリュー株へのシフトの持続性を疑問視するかもしれませんが、他の投資家は回復に乗り遅れたのではないかと懸念しています。しかし、実際にはより広範なリバランスが進んでいるとみられます。市場の集中度は依然として過去と比べて高いものの、資金はより多額の投資を必要とするセクターに一段と振り向けられています。同時に、世界的な経済活動は、実物資産やインフラなど、伝統的にバリュー志向の強い分野との関連性が高まっています。
さらに、コモディティ、鉱工業生産、物理的インフラの重要性が高まっていることは、市場リターンを生み出す源泉として実体経済が再び存在感を高めていることを示しています。
AIは、この移行において2つの役割を果たします。1つ目は、投資、イノベーション、生産性向上を促す強力な原動力となっています。もう一方では、特に米国において、少数の企業へのリターンの集中に寄与しています。この結果、AIはバリュー株への広範なシフトを目立ちにくくする一方で、最終的にはバリュー色の強いセクターを下支えする設備投資需要を加速させる要因にもなっています。AIの導入が産業全体に広がるなかで、その影響はテクノロジー・セクター以外にも及び、市場のけん引役の広範なリバランスを強めることが見込まれます。
バリュー株とグロース株:ともに果たすべき役割がある
現在の市場環境は、相場をけん引する銘柄がより幅広い分野へ広がりつつあることを示しています。リターンの源泉は多様化しつつあり、バリュエーションの規律がますます重要になっています。最近のセクター別パフォーマンスが示すように、グロース株とバリュー株の双方がリターンに大きく寄与しています(図表3)。これは、構造的要因がバリュー株を下支えする一方、イノベーションの恩恵を受ける分野では、グロース株も引き続き重要な投資対象であることを示しています。バリュー株は、多額の投資を必要とする分野、高金利環境の恩恵を受ける分野、ならびに実体経済の恩恵を受けるセクターへの投資機会を提供する一方、グロース株は長期的なイノベーションや生産性向上の恩恵を享受する機会を提供します。このようなよりバランスの取れた市場では、投資成果はスタイル配分よりも、規律ある銘柄選択に左右されると考えられます。
投資リスク
バリュー投資アプローチは、市場が銘柄の長期的な本源的価値を認識しないリスクや、割安と判断した銘柄が実際には適正に評価されているリスクを伴います。
グロース株は、株式投資において一般的なボラティリティの影響を受け、その株価は、インカム志向の株式より大幅に変動する可能性があります。テクノロジー株への投資は、パフォーマンスのばらつきが大きい可能性や一般的に価格変動幅が大きいことなど、固有のリスクを伴います。
グローバル投資は、為替レートの影響、市場構造や流動性の違い、特定の国・地域・経済における動向により、国内投資よりもリスクが高くなる可能性があります。一般的に、新興国市場への投資は、これらのリスクがさらに高まります。
金融サービス企業は、金利の急激な上昇時に損失を被る可能性があり、急速なインフレにも脆弱です。天然資源関連企業は、景気循環の影響を受けやすく、株価や収益成長率が不規則に推移する傾向があります。
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