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2023年8 月 / インサイト

米国中小型株に千載一遇の好機

静観することで投資タイミングを逸するリスクも検討

サマリー

  • 過去10年の米国株式市場は、時価総額上位銘柄への資金の集中度を強めてきたが、中小型株のバリュエーションはここ数十年で最も魅力的な水準にある。
  • 過去を振り返ると、S&P500指数への資金の集中度が解消し始めると、中小型株がアウトパフォームする新たなサイクルが始まる傾向が見られた。
  • 米国経済のサービス業の成長や設備投資の伸びといったトレンド変化も内需中心の中小型株には好材料であり、高い利益成長をもたらす機会となる可能性がある。

景気、消費者信頼感、企業収益がいずれも想定以上に底堅く、今の株式市場は慎重な見方を有しつつも全体としては前向きな様子です。しかし、懸念材料の一つは、投資家が一握りのバリュエーションが高い超大型株に殺到した結果、時価総額上位銘柄への資金の集中度が高まっていることです。対照的に、時価総額が相対的に小さい中小型株のバリュエーションはここ数十年で最も魅力的な水準にあります。この結果、長期的に大きな利益成長が期待できる質の高いグロース株を割安に組み入れる絶好の機会が生まれています。従って、静観することで投資タイミングを逸するリスクも併せて検討する必要があります。

 

大型株への集中リスクに注意

10年以上にわたり米国株式市場のパフォーマンスがごく少数の超大型グロース株によって支配されてきました。この結果、米国株式市場では時価総額全体に占める上位銘柄の割合が極端に高くなり、バリュエーションを正当化するのがますます難しくなっています。

重要なことは、過去を振り返ると、S&P500指数への資金の集中度が解消し始めると、中小型株がアウトパフォームする新たなサイクルが始まる傾向があるという点です。資金が一握りの割高な銘柄から再配分される時、次の投資先を探す必要がありますが、その有力候補先が時価総額が相対的に小さくバリュエーションが魅力的な中小型株なのです。

しかも、中小型株が大きく値上がりするのに巨額の資金が流入する必要はありません。2023年6月30日現在、S&P500指数の上位5銘柄だけで、中小型株全体を代表するRussell2000指数の3.3倍の時価総額規模になります。従って、大型株から少しでも中小型株に資金が振り向けられれば、インパクトは絶大なものとなる可能性があります。

 

中小型株のバリュエーションは魅力的

中小型株はリスク・リターンが相対的に高いため、大型株よりもリスクプレミアムが上乗せされて取引される傾向があります。しかし、このバリュエーションのトレンドが近年逆転しており、中小型株は大型株に対し割安な水準で取引されているだけでなく、そのディスカウント幅は過去最高水準で、長期の平均レンジからも大きく乖離しています。過去50年で中小型株のディスカウント幅がここまで広がったのは、1999–2000年のITバブルと1973年のオイルショックの2回だけです。

バリュエーションの絶対水準で見ても、中小型株は長期平均を下回る水準で取引されています。その背景には、短期的な経済環境がより厳しくなり、中小型株は景気の浮き沈みに左右されやすいことなどがあります。しかし、現在のバリュエーション水準は米景気後退が長期化する可能性を織り込んでいるようです。このシナリオは弱気すぎると思われ、現段階では様々な情報から判断してその可能性は低そうです。

 

利益成長が中小型株の上昇を牽引

問題は、何が米国中小型株浮上のきっかけとなるかです。その答えは単純で、利益成長と言えます。そして、米国中小型株の見通しは明るく、2つのトレンド変化がその流れをサポートすると考えています。

1. サービス業の成長:中小型企業は米国内需向けのビジネスが中心のため、米国経済で進行しているトレンド変化の恩恵を受ける好位置にあります。米国の個人消費は軸足がモノからサービスへとシフトしており、このトレンドはとりわけ中小型企業の業績を下支えすると思われます。コロナ禍下では、モノの経済が総じて好調な半面、サービス経済はすべてロックダウンにより閉ざされていました。最近はこの流れが逆転し始めており、中小型企業の利益はサービス関連が大きな割合を占めるため、利益成長の強力な追い風となる見通しです。

2. 設備投資の伸び:コロナ禍後に加速しているもう一つのトレンド変化は、米国内における設備投資の増加です。中小型企業はビジネスの大半を国内で営んでいるため、その利益成長は米国内の設備投資と連動性が高いのが特徴です。それを後押しするのがサプライチェーンの再構築に伴う製造業の国内回帰です。政府は国内製造を支援する大規模なインセンティブを提供しており、これは2022年に「CHIPS法」として法制化されました。同じく、2021年と2022年に成立した「インフラ投資・雇用法」と「インフレ抑制法」もさらなる追い風となります。

米国中小型株の相対バリュエーションは過去最低水準

 

中小型株「ゾンビ銘柄」には注意が必要

上位銘柄への集中度の加速が米国株式市場の特徴となる一方、中小型株ユニバースは質の悪化も顕著です。Russell 2000指数に含まれるいわゆる「ゾンビ銘柄」(負債の金利負担ができない、あるいは苦境にある企業)の数や割合が過去最高水準に達しています。現在は金利上昇で企業の利払いが増えているため、この点は特に注意が必要です。

不採算企業がすべて悪い投資対象とは限りません。多くの中小型企業、特にスタートアップ段階や黎明期の企業は、事業が軌道に乗り、消費者の認知度が高まり、商品・サービスの需要が増えるまで赤字決算になるのは珍しいことではありません。しかし、中小型株のゾンビ銘柄は増加傾向にあります。そのため、中小型株に投資する場合は、長期における事業の成長性、質、発展性を見極める慎重なリサーチ・アプローチが必要になります。

中小型株投資では、アセットクラスとしての配分よりも、保有する個別銘柄の中身が重要です。例えば、2022年12月31日時点で、Russell2000指数に含まれるゾンビ銘柄の比率は約11%と、2017年からのわずか5年でほぼ倍増しています。中小型株にパッシブで配分する投資家は、意図せずしてゾンビ銘柄の比率が高くなるため、投資をする前によく検討する必要があります。

私たちは、米国中小型株の投資妙味はますます高まっていると考えています。バリュエーションは数十年に一度の低水準にあり、このダイナミックで多様性に富み、成長性の高い株式セグメントに投資できる千載一遇の好機です。バリュエーションの魅力以外に、米経済のトレンド変化も中小型企業には有利に働き、長期にわたる利益成長の機会となる可能性があります。中小型企業は、経済や市場心理の変化に敏感です。こうした状況で投資するにはアクティブな運用アプローチが不可欠であり、米国中小型株の長期見通しが大変明るいことを示す材料にも事欠きません。従って、静観してタイミングを逸するリスクも併せて検討する必要があると考えています。

中小型株はゾンビ銘柄の比率が高まっているためアクティブな運用アプローチが求められる

 

 

 

 

当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。

 

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