2023年5 月 / インサイト

クレジットへの分散投資による安定的なパフォーマンスの追求

ダイナミック・クレジット運用戦略は柔軟かつ差別化されたアプローチを提供

サマリー

  • ダイナミック・クレジット運用戦略は、クレジット市場の投資機会に乗じながら、比較的安定したパフォーマンスを追求したい投資家に適した戦略の一つ。
  • アルファ獲得のため銘柄選択とセクター・ローテーションに重点を置きつつ、デュレーションやクレジット・ベータのアクティブ・コントロールも組み合わせる。
  • ダイナミック・クレジット運用戦略コンポジットは、クレジット市場にとって歴史的に困難な年であった2022年でも概ね横ばいと健闘し、そのアプローチの有効性を証明。

ダイナミック・クレジット運用戦略は、様々な市場環境において多様なアルファ1の源泉を発掘することにより、クレジット市場に投資しながらも、投資家に比較的安定したパフォーマンスを提供することを目指します。当戦略は、グローバル・マルチアセット・クレジット(MAC)ユニバースを構成するハイイールド債、投資適格社債、エマージング債券、証券化商品、ディストレスト債、地方債、転換社債、バンクローンなどクレジット市場全般での銘柄選択とセクター・ローテーションに重点を置いています。

当戦略は、ティー・ロウ・プライスのグローバル・マルチセクター・リサーチ・プラットフォーム全体の知見を活用し、ポートフォリオをロング・バイアスのポジション2でアクティブかつ柔軟に運用します。加えて、超過収益の源泉の約80%を占めるロング・ポジションに、アクティブなクレジット・ショート3やデュレーション・コントロール4を活用することで、更なるアルファの獲得とボラティリティの抑制を目指します。

当戦略はクレジット価格形成の歪みを発見することを重視し、トータルリターンの観点から、差別化されたポートフォリオの構築を目指しており、これは戦略の設計やプロセスに反映されています。

差別化されたリターンの主な源泉

広範なクレジット市場全般におけるアルファの追求という目標に加え、当戦略はクレジット・ベータやデュレーション・リスクの抑制に努めています。こうしたポートフォリオ構築のアプローチにより、魅力的で一貫性のあるクレジット配分を実現し、その差別化されたリターンによって、他のクレジット戦略を補完することができると考えています。当戦略はクレジット・ベータが低いため、信用スプレッド5の拡大局面にも耐えられると同時に、金利上昇局面ではデュレーションの短さがプラスに作用することが期待されます。

smoothing-the-ride-for-credit-allocations
smoothing-the-ride-for-credit-allocations
smoothing-the-ride-for-credit-allocations

 

3つの主なクレジット評価ファクター

クレジット・アナリストと協働し、ポートフォリオにロングまたはショート・ポジションとして組み入れる潜在的な個別クレジットを評価する際、我々は以下の3つの質問をします。

  • クレジットがアウトパフォームするカタリスト(要因、きっかけ)はあるのか?クレジットの種類によって、社債の格上げや格下げの可能性など様々な要因が存在。自動車ローンを担保とする資産担保証券(ABS)など消費者関連クレジットの場合、消費者の支払いトレンドの好転が該当。
  • 新たなポジションは、既存の保有銘柄のパフォーマンスと正相関と逆相関のどちらか7?逆相関が大きい場合、当該ポジションは他のエクスポージャーに損失が発生する時に利益を生むことで分散効果を発揮する可能性がある。
  • リターンの非対称性はどうか?基本的に、プラスの結果から生じる恩恵は、マイナスの結果から生じる損失を上回るか、またその逆の場合はどうか?これは保有銘柄がサイズ、分散、アルファ創出の観点で、当該銘柄が戦略全体のポジションニングとどう適合するかに影響します。

これら3つの要因の検討に加えて、我々の運用プロセスでは各ポジションのクレジット・ベータ8、ボラティリティ、流動性に対して確実に対価を得られるように努めています。

我々のダイナミックかつ柔軟なアルファ志向のアプローチは、伝統的なクレジット・セクターが急激な金利上昇で苦戦した2022年のような厳しい市場環境においても、底堅いパフォーマンスを提供することができたと考えています。

不安定なクレジット環境に適した債券アプローチ

アルファの追求とリスクの考慮を同時に行う当戦略のアプローチは、様々な市場環境に適していますが、現在のような不安定なクレジット環境ではより一層投資妙味があると考えられます。ティー・ロウ・プライスのグローバル・リサーチ・プラットフォームは、セクターの広範な専門知識を活用し、将来を見据えた知見を提供してくれます。そうした知見を基にした我々のファンダメンタル・クレジット分析は、市場より先に非効率性を特定し、投資機会の獲得に繋げることができると考えています。

リスク–当ポートフォリオに大きく関連するリスクは次のとおりです:

ABS及びMBSリスク―資産担保証券(ABS)や住宅ローン担保証券(MBS)は他の債券よりも、流動性リスク、信用リスク、債務不履行リスク、金利リスクが高い場合があります。多くの場合、繰上償還延期リスク及び繰上償還リスクがあります。

中国銀行間債券市場リスク―中国銀行間債券市場において特定の債券の取引量が少ないことを理由とした市場のボラティリティや流動性の欠如により、同市場で取引される特定の債券価格が大幅に変動する可能性があります。

偶発転換社債リスク―偶発転換社債には、とりわけ資本構成の反転、トリガー・イベント、利払い停止、繰上償還延期、イールド/バリュエーション、株式への転換、元本削減、業種の集中及び流動性に関連する追加のリスクがあります。

カントリー・リスク(中国)―中国に対するすべての投資は他のエマージング市場への投資と同様のリスクにさらされます。加えて、適格外国機関投資家(QFII)ライセンスまたはストック・コネクト制度に従って購入または保有されている証券には追加のリスクが生じる可能性があります。

カントリー・リスク(ロシア及びウクライナ)―ロシア及びウクライナへの投資は、資金保管リスク、カウンターパーティ・リスク、流動性リスク、市場の混乱に伴うリスクが高くなる可能性に加え、強力な又は突然の政治リスクに見舞われる可能性があります。

信用リスク―発行体の財務健全性が悪化する場合や、発行体がポートフォリオに対する財務上の義務を履行しない場合があります。

通貨リスク―為替レートの変動によって投資利益の縮小又は投資損失の拡大の可能性があります。

デフォルト・リスク―債券の発行体が債券を償還できない場合や、発行体にその意思がない場合があります。

デリバティブ・リスク―デリバティブはレバレッジを作り出すために用いられ、ボラティリティが高くなったり、デリバティブ費用を大きく上回る損失が生じたりする場合があります。

ディストレスト債およびデフォルト債リスクーディストレスト債やデフォルト債は、回収、流動性、評価に関連するリスクがかなり高くなる場合があります。

エマージング市場リスク―エマージング市場は先進国市場ほど確立されていないため、リスクが高くなります。

フロンティア市場リスク―フロンティア市場はエマージング市場ほど成熟しておらず、投資可能性や流動性が限定的であることを含め、リスクが高くなります。

ハイイールド債リスク―ハイイールド債は一般的に、発行体の債務再編リスクやデフォルト・リスク、流動性リスク、市場環境への感応度が高くなります。

金利リスク―予期せぬ金利変動により、投資債券に損失が生じる場合があります。

発行体集中リスク―ポートフォリオの資産が特定の発行体に集中する場合、その発行体に影響を及ぼす事業、産業、経済、金融、市場情勢により、運用実績がより大きな影響を受ける場合があります。

流動性リスク―希望する時間及び公正価格での証券の評価や取引が困難になる場合があります。

繰上償還及び繰上償還延期リスク― MBSやABSを組み入れた場合、予期せぬ金利変動への感応度が高くなる場合があります。

セクター集中リスク―ポートフォリオの資産が集中する特定のセクターに影響を及ぼす事業、産業、経済、金融、市場情勢により、運用実績がより大きな影響を受ける場合があります。

トータル・リターン・スワップ・リスク―トータル・リターン・スワップ契約により、市場リスク、カウンターパーティ・リスク、オペレーション・リスク、担保の取り決めに関連した追加のリスクにさらされる場合があります。

 

一般的なポートフォリオ・リスク

カウンターパーティ・リスク―相手方企業にポートフォリオに対する義務を履行する意思がない、または履行できない場合にリスクとして顕在化する場合があります。

ESG及びサステナビリティ・リスク―ポートフォリオの投資価値や運用実績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

地理的集中リスク―ポートフォリオの資産が集中する国や地域に影響を及ぼす社会、政治、経済、環境、市場情勢により、運用実績がより大きな影響を受ける場合があります。

ヘッジ・リスク―ヘッジにはコストがかかり、その効果が不完全、不適切、または完全に失敗する可能性があります。

投資ポートフォリオ―リスク-ポートフォリオに投資する場合は、市場に直接投資する場合とは異なる特定のリスクが生じます。

運用リスク―運用マネジャーの義務に関連し、利益が相反する可能性があります。

市場リスク―市場に関する様々な要素の予期せぬ変更により、ポートフォリオが損失を被る場合があります。

オペレーション・リスク―担当者、システム、プロセスなどによって生じるオペレーション上の事象により、損失が生じる場合があります。

smoothing-the-ride-for-credit-allocations

1 報酬控除後のリターンは、報酬料率を0.81%として計算しています。これは、全コンポジットに適用される最も高い報酬料率です。過去の実績は、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。

2 2019年1月31日から2019年12月31日まで。

3 2021年5月1日付けで、ベンチマークをICEバンクオブアメリカ3ヵ月米国国債インデックスに変更しました。それ以前のベンチマークは、3ヵ月米ドルLIBORでした。ベンチマークの変更は、新ベンチマークが当コンポジットの投資戦略をより適切に表すとの判断によるものです。過去のベンチマーク分は書き換えておりません。

4 速報値であり、変更される可能性があります。

ティー・ロウ・プライス(以下「TRP」)は、グローバル投資パフォーマンス基準(GIPS®)を順守しており、同GIPS基準に準拠してこの報告書を作成しました。TRPは2022年6月30日までの26年間についてKPMG LLPによる検証を受けています。この検証に関する資料はご要望に応じてご提供致します。GIPS基準を順守する企業は、適用されるGIPS基準のすべての要件を順守するための方針及び手続を定める必要があります。検証は、コンポジット及び合同運用ファンドの維持に関連した企業の方針及び手続、並びに運用実績の計算、表示及び配分がGIPS基準に準拠して立案されており、企業全体に導入されていることを保証するものです。検証は特定のコンポジット資料の正確性を保証するものではありません。TRPは米国登録の資産運用会社であり、米証券取引委員会、英国金融サービス機構と他の国々におけるその他規制機関に対し、様々な投資アドバイザーとして登録を行っており、見込み顧客に対してもGIPS目的で情報の提供を行っています。また、TRPは米国、インターナショナル、グローバル運用戦略などを含む様々な運用戦略(プライベート・アセット・マネジメント・グループを除く)に関し、主に機関投資家にサービスを行っている、GIPSで投資一任会社と定義される運用会社です。2022年10月1日現在、コンポジットに含まれる最低投資金額はありません。2022年10月以前はコンポジットに含まれる株式ポートフォリオの最低投資金額は500万米ドルでした。2002年1月以前はコンポジットに含まれる最低投資金額は100万米ドルでした。コンポジットに含まれる債券ポートフォリオの最低投資金額は1,000万米ドルでした。2004年10月以前はコンポジットに含まれるポートフォリオの最低投資金額は500万米ドル、そして2002年1月以前はコンポジットに含まれるポートフォリオの最低投資金額は100万米ドルでした。バリュエーションとパフォーマンスは米ドルで計算されています。

報酬控除前パフォーマンスは、運用報酬及びその他フィーの控除前ですが、取引コスト控除後で提示しています。報酬控除後パフォーマンスは、全コンポジットに適用される最も高い報酬料率控除後で提示しています。報酬控除前パフォーマンスには配当金の再投資が考慮され、還付されない源泉税を控除して算出しています。報酬控除前のパフォーマンスは提示されているリスク測定の計算に用いています。2013年6月30日より、保有する有価証券の各市場での終値に基づきポートフォリオの時価総額と会社全体の運用資産総額を計算しています。それ以前の外国証券を含むポートフォリオの時価総額については、市場の取引時間終了後の動きが反映されている場合があります。パフォーマンス結果の算出方法と報告に関する会社の方針とプロセスについての追加情報はご要望に応じて提供致します。分散は通年のコンポジットの資産額加重リターンの標準偏差で計測されます。コンポジット内のポートフォリオ数が5本以下の場合には分散は計算されません。

当運用戦略では、主に当戦略の目的に関わる市場リスクをヘッジし、特定の市場についてディレクショナル型の運用機会を明確にし、流動性を円滑に管理するため、記載の運用商品すべてについて、為替フォワード、金利先物、金利スワップ、クレジット・デフォルト・スワップ、シンセティック・インデックス、オプションなどの種々のデリバティブ商品(これらに限られない)を定期的に利用しています。

ベンチマークは公表されているデータを使用していますが、コンポジットによって使用データとの計算手法、プライシング・タイム、為替データソースが違うことがあります。

コンポジット組成ポリシーにより、口座において時価総額の15%以上の資金流出入が見られた場合には、当該口座を一時的にコンポジットより除いています。この一時的な取り扱いは資金流出入がみられた計測期間の初日に行われ、資金流出入がみられた月の最終日に再度コンポジットへ組み込まれています。資金流出入にかかる詳細な情報が必要な場合はお問い合わせ下さい。

全コンポジットの一覧表及び内容記述、私募合同運用ファンドの一覧表及び内容記述、並びに公募合同運用ファンドの一覧表及び内容記述はご要望に応じて提供致します。「GIPS®」は、CFA Instituteの登録商標です。CFA Instituteは当運用を承認または販売促進するものではなく、また本稿に記載される内容の正確性または品質を保証するものでもありません。

追加ディスクロージャー

「CFA®」および「Chartered Financial Analyst®」は、CFA Instituteの登録商標です

引用した個別銘柄等につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。

「Bloomberg®」及びブルームバーグ・インデックスは、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.及びインデックスの管理者であるブルームバーグ・インデックス・サービシズ・リミテッド(「BISL」)を含む関連会社(総称して「ブルームバーグ」)のサービスマークであり、特定⽬的での利⽤のためティー・ロウ・プライスにライセンス供与されています。ブルームバーグはティー・ロウ・プライスの関連会社ではなく、ティー・ロウ・プライスの戦略を承認、⽀持、レビューまたは推奨するものではありません。ブルームバーグは本戦略に関連するデータまたは情報の適時性、正確性または網羅性を保証するものではありません。

著作権はS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス(及び適宜その関連会社)に帰属します。関係者による書面による事前承諾がない限り、いかなる形式においても、信用格付けを含むいずれの情報、データまたは資料(「情報」)の複製は禁じられます。S&P、その関連会社およびサプライヤー(「情報提供者」)は、情報の正確性、適切性、完全性、適時性または可用性の保証はせず、原因の如何に関わらず誤りや不備(過失その他の如何を問わず)に対する責任は負わず、また情報の利用から生じた結果に対して責任を負いません。情報提供者は、いかなる場合も、情報の利用に関連するいかなる損害、経費、費用、弁護士費用または損失(損失利益や機会費用を含む)に対して責任を負いません。情報の一部として特定の投資運用や証券、信用格付け、または投資運用に関する所見を参照している場合、それは当該投資運用や証券の売買または保有を推奨するものではなく、投資運用または証券の適合性について述べてはおらず、投資アドバイスとして依拠されるべきではありません。

ICEの出所:ICE Data Indices, LLC(「ICEデータ」)のデータは許可を得て使用しています。ICEデータ、その関連会社および第三者サプライヤーは、インデックス、インデックス・データおよびそれらに含まれ、それらに関連し、またはそれらから派生するデータの特定の使用目的における商品性または適合性の保証を含め、明示的にも黙示的にもいかなる保証および表明もしません。ICEデータ、その関連会社および第三者サプライヤーは、インデックス、インデックス・データまたはその構成要素の妥当性、正確性、適時性または完全性に関するいかなる損害または責任も負いません。インデックス・データおよびそのすべての構成要素は「現状有姿」で提供され、利用者自身の責任において利用されます。ICEデータ、その関連会社および第三者サプライヤーは、ティー・ロウ・プライスまたはその製品もしくはサービスに対する出資、承認または推薦はしません。

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.265%(消費税10%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。

 

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社

金融商品取引業者関東財務局長(金商)第3043号

加入協会:一般社団法人日本投資顧問業協会/一般社団法人投資信託協会

前の記事

2023年5 月 / インサイト

ティー・ロウ・プライス:債券クレジット・セクター見通し
次の記事

2023年6 月 / インサイト

世界から注目を集めるジャパン・ストーリー
202305-2923229

こちらは機関投資家様向けのページです

こちらのページの内容は機関投資家様向けのものになります。機関投資家様かどうかボタンにてご確認いただきますようお願いいたします。

いいえ