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2024年1 月 / インサイト

社債のジレンマ:利回りは魅力的だがスプレッドはタイト

昨年末の債券ラリーを経ても、多くのクレジット・セクターの利回りは数十年ぶりの高水準に近く、ポートフォリオ・マネジャーとしては利回りを最大化するべくクレジット・セクターをオーバーウェイトしたくなるところです。しかし、クレジット・スプレッドは比較的タイトで、景気後退や金融市場が混乱するリスクにもさらされているため、クレジット・セクターをアンダーウェイトする選択肢も取り得ます。

ポートフォリオを構築する上で、こうしたジレンマにどのように対処するべきでしょうか。私はこのジレンマに対処するために、当社グローバル・クレジット・アナリスト・チームの力を最大限に活用し、ファンダメンタルズにおけるクレジット・クオリティに見合った魅力的なスプレッドと利回りを提供する選りすぐりのポジションを見つけ出すことが肝要だと考えています。

デフォルト率が低くても油断は禁物

2008-2009年の世界金融危機以降、デフォルト率はずっとゼロ近辺にあっため、クレジット・リスクの低さに惹かれて社債を購入した投資家もいるかもしれません。

2020年に新型コロナウイルスにより世界経済が大混乱に陥った時でさえ、各国政府が企業を資金面で財政支援したため、デフォルト率が大きく跳ね上がることはありませんでした。それでも私は2024年に世界的な景気後退が起きる可能性はまだ残っていると考えており、その場合はデフォルト件数が大幅に増加すると考えています。

多くの社債発行体は、2020年の低金利に乗じて高金利の条件から借り換えることができました。しかし、それから約4年が経過し、一部の企業は社債の償還を迎えるため、リファイナンスが障壁となる可能性があります。そのため、私は景気後退よりも金融市場が混乱する可能性の方がリスクが高いと考えています。その場合はクレジット・スプレッドが拡大し、新規調達コストの上昇により企業の債務負担は高まるでしょう。

ハイイールド債やバンクローンを選好

社債セクターを大局的に見ると、ハイイールド債やバンクローンに投資妙味を見出しています。世界金融危機の前から、ハイイールド債の発行体の信用力は着実に改善して来ており、世界のハイイールド債市場に占めるBB格の割合は、2004年初めの38%から2023年11月時点の53%まで高まっています1

ハイイールド債のクレジット・スプレッドは過去の水準に比べてタイトではあるものの、信用力の改善と魅力的な利回りによって、クレジット・リスクを取るには好ましい投資対象であると考えます。とは言え、世界経済の成長が鈍化する中で、包括的なクレジット分析で投資対象を慎重に吟味する必要があります。

一方で、我々は短期の投資適格社債にも投資機会を見出しています。投資適格社債の短期ゾーンの利回りは、長期ゾーンの利回りに近づきつつあり、満期までの期間が短いため、信用リスクと金利リスクを低減しつつも魅力的なキャリーを提供しています。投資適格社債の長期ゾーン、特に米国の長期投資適格社債については、この分野をあえて購入する必要のない投資家にとっては魅力が低いと思われます。

ファンダメンタルズ・クレジット分析が個別ポジションの原動力

こうしたクレジット・セクター内でのポジショニング(社債 vs. 国債、投資適格社債 vs. ハイイールド債)については、当社のクレジット・アナリストやESG(環境、社会、ガバナンス)スペシャリスト2で構成されるグローバル・クレジット・アナリスト・チームの分析に依拠しています。発行体ごとのファンダメンタルズ分析により個別クレジット・ポジションを決定します。当社の債券ポートフォリオ・マネジャーはクレジット・アナリストと緊密に連携し、同一サブセクターもしくはインダストリー内の他の銘柄と比較して価値が見出される銘柄と、保有するべきではない銘柄を選別します。

新たなクレジット・セグメント: ブルーボンド

ここでは、我々が新たなクレジット投資の一分野として注目する「ブルーボンド」を紹介します。ブルーボンドは海洋汚染対策や水資源管理プロジェクトの資金調達のために発行する債券で、海洋及び内陸における水のエコシステムの保全や再生において極めてニーズが高いものです。ソブリン、世界銀行等の国際開発金融機関、準ソブリン、企業を問わず、いずれの発行体も水関連の環境的恩恵を追求するプロジェクトの資金不足を穴埋めするためにブルーボンドを発行することができます。

ブルーボンドがグローバル債券市場に占める割合は足元ではまだ少ないですが、ブルーエコノミー(海洋関連セクター)の規模の大きさやそれが直面する問題を踏まえると、ブルーボンド市場は将来的に大きく成長する可能性があります。国連環境計画・金融イニシアティブの推計では、海洋関連セクターはグローバル経済に2.5兆米ドル寄与しており、3,000万人以上の雇用をサポートしています。世界的な水の需要が拡大すると共に、供給に関する問題も増加しており、約20億にのぼる人々が水資源の確保に苦労しています。こうしたデータを踏まえると、クレジット市場の新たなセグメントとして、この分野に選別的に投資することは不可欠であると考えています。

 

 

 

1 JPモルガン・グローバル・ハイイールド債券インデックス。

2  投資機会を特定し、投資リスクを管理するために、ESG要素を考慮するプロセスを投資意思決定の一部として組み込んでいます。ティー・ロウ・プライスではこれをESGインテグレーションと呼んでいます。また、商品ラインナップの一環として、特定のESG目標や特徴を持つ商品も提供しています。

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