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2020年7 月 / 市場見通し

危機を乗り切る

市場環境見通しを左右する4つのテーマ

サマリー

  • 株式市場とクレジット市場の上昇が持続可能か否かは、新型コロナウイルスの先行きと景気回復の力強さに依存する。
  • コロナ禍は大手テクノロジープラットフォーム企業の成長とその市場支配力の増大を少なくとも数年加速させていると見受けられる。
  • 債券投資家にとって社債は最も魅力的な投資機会をもたらす可能性が高いものの、リターンのばらつきが広がることから銘柄選択が重要になる。
  • コロナ禍は一部の国で政治リスクを増幅させ、企業の財務とサプライチェーンの大幅な見直しをもたらす可能性があると考える。


新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大して以来、資本市場では財政・金融刺激策により、最悪の事態の回避に成功したようです。しかし、経済活動が段階的に再開される中、経済の持続的な回復は、2020年後半およびそれ以降、新型コロナウイルスを抑制できるかどうかに依存する部分が大きいと考えます。

「投資家は、経済活動の再開に応じて、感染の第2 波が発生するか否かに細心の注意を払わなければならない」とグループ最高運用責任者(CIO) 兼運用部門統括責任者のRobert W. Sharps は警告します。ワクチンが比較的早期に開発・投与されるという期待は過度に楽観的と思われるとSharps は付け加えます。有効な治療薬がいつ利用できるようになるかも明らかではなく、「治療薬等に関する見通しはかなり不明瞭な状況だ」(Sharps)。

不透明な状況の中で、国、セクター、産業および企業の資産リターンがまちまちな状況は続くと予想されます。

この状況は、戦略的投資アプローチによって付加価値を獲得する可能性を生み出すものの、投資機会を見極め、リスクを管理するために慎重な分析が必要になります。「投資家は各市場レベルで復活の兆しを見出すために深く掘り下げた調査を行う必要がある」と債券部門CIO のMark Vaselkiv は指摘します。

こうした環境下、バリュエーション指標の解釈は特に難しいと株式部門CIO のJustin Thomson は警告します。「変化から恩恵を受ける企業と変化に取り残される企業の二極化が顕著で、市場全体のバリュエーションは、かつてないほど無意味である」(Thomson)。

「これは20 年前に経験したテクノロジー・ブームとはかなり異なる」とThomson は主張します。「現在の勝ち組は、優れたキャッシュフローと豊富な手元資金に支えられている」(Thomson)。

回復への道

新型コロナウイルスの世界的流行は世界経済に大打撃を与えたものの、株式市場およびクレジット市場は、6 月半ばまでの第2 四半期に劇的に上昇しました。Sharps によれば、今考えるべき点は、これが上昇の先取りか否かです。

「景気後退期にはいつも、市場が回復を織り込み始める時点がくる」とSharpsは指摘します。「ウイルスの感染拡大が収まってきたと見受けられ、多くの企業が活動を再開していることから、市場が底入れしてもそれほど驚きではない」(Sharps)。

経済が徐々に回復する中で米国の雇用が予想より急速な回復を示しているという最近の兆候が、米10 年国債と30 年国債の利回りを緩やかに押し上げているとVaselkiv は指摘します。

ただし、目先の企業利益については、まだ暗い見通しです。Thomson によれば、世界経済の成長率のコンセンサス予想は、年初のプラス約3% から現在はマイナス3% に低下しています。営業レバレッジを考慮すると、企業利益は全体で50%-60% の減益となる可能性があります。

「我々は回復のごく初期の段階におり、4-6月期の経済活動と収益は最も厳しいものになるだろう」とSharps は警告します。

Sharps によれば、重要な問題は、景気回復が予想されるように急速または順調に進まないリスクに見合うリターンを投資家にもたらしつつ、企業が現在のバリュエーション水準を正当化できる十分な収益力を取り戻すまでに、どれだけ時間がかかるかです。

景気刺激策だけでは不十分

リスク資産の上昇は、2008-2009 年の世界金融危機時さえも大幅に上回る大規模な財政・金融刺激策の投入によるところが大いにあります。その結果、豊富な流動性と収益の落込みの間でのせめぎ合いとなっており、市場のボラティリティがさらに高まる可能性があるとThomson は警告します。

財政・金融刺激策はグローバル市場を押し上げていますが、政府が景気回復を持続させるためにできることには限度があります。

  • Vaselkivによれば、米国で4月に中低所得層に直接支払われた給付金の大部分は、貯蓄に回されたようです。これは、概して米GDP の約70% を占める個人消費の回復を阻害する可能性があります。

  • フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相は、EU 全域の財政支出を賄う欧州復興基金を提案しましたが、基金設立にはEU 加盟国すべての合意が必要となるとThomson は指摘します。

  • 多くの新興国には大規模な財政刺激策を講じる経済力・財政力がないとThomson は付け加えます。

Sharps によれば、景気刺激策がもたらすと想定される効果の多くはリスク資産の価格に既に織り込まれているため、広範な市場がさらに上昇するには、経済ファンダメンタルズの改善が必要です。「今後の先行きは厳しいと考える」(Sharps)。

 

 

 新型コロナウイルスの影響に対する世界各国の景気対策

創造的破壊が加速

コロナ禍が経済と社会に及ぼす影響が、小売り、ソーシャル・メディア、コンテンツのストリーミングおよびリモート会議の分野における大手テクノロジープラットフォーム企業の台頭を加速させているようです。このトレンドは、創造的破壊の恩恵を受ける業種や企業と、創造的破壊の犠牲となる業種や企業の格差を拡大させるでしょう。

ティー・ロウ・プライスのアナリストは、企業を慎重に評価し、コロナ禍を乗り切ることができるだけの財務の健全性を有すると考えられる企業を見極めるとともに、それが株式市場とクレジット市場の回復にどのような影響を与えるかを検討しています。

「過去数ヶ月にわたって生じた働き方や人との付き合い方、楽しみ方の変化が、大手テクノロジープラットフォーム企業のファンダメンタルズを数年進歩させた」(Sharps)。

2020 年最初の5 ヶ月において、S&P500指数のなかで情報技術セクターが最も堅調に推移した一方、エネルギーセクターは需要の落込みとロシアとサウジアラビアの価格戦争による打撃を受けて、最も軟調に推移したとSharps は指摘します。

 

情報技術セクターが嵐を乗り切る一方、エネルギーセクターは低迷

 

Sharps によれば、大手テクノロジー企業は、創造的破壊の加速から恩恵を受ける優位な立場にあります。

  • 米国のテクノロジー企業の時価総額上位5 銘柄(Microsoft、Apple、 Amazon、Facebook、Google)を合わせると、5,000億ドル以上の手元資金を保有しており、資金難の環境にあるスタートアップ企業や新興企業を買収することが可能です。

  • 大手テクノロジープラットフォーム企業は、厳しい経済環境下で引き続き収益とキャッシュフローを増大させることができるばかりでなく、小売店舗など脆弱な競合他社から市場シェアを獲得する機会を有していると考えます。

  • テクノロジー大手は、最も優れたソフトウェア開発者やエンジニア、経営陣を惹きつけることができるとSharpsは主張します。

市場をリードする企業は引き続き限定的

今後、創造的破壊とコロナ禍はともに米国のテクノロジープラットフォーム上位5 社に引き続き有利に働くとSharps は指摘しています。6 月初めにおける当該企業群の時価総額は既にS&P500 指数全体の20% 以上を占め、下位340 社の合計を上回っています。

一方、エネルギー、輸送、金融などバリュー株ユニバースに占める割合の大きいセクターの多くは、危機により深刻なダメージを受けています。「市場の大部分はまだ回復していない」(Thomson)。

6 月初め、予想より良好な経済指標の発表を受けて、グロース株からバリュー株へ、大型株から小型株へ、米国から米国以外の株式へなど、一部の困難な状況に陥ったセクターに資金が戻る動きが見られたものの、より持続的な回帰には、インフレ率の上昇や米ドル安が必要になるとThomson は主張します。
 

信用の質を重視

新型コロナウイルスがもたらした経済的ダメージが債券投資家による国債やその他高格付資産への逃避を招き、2020年前半には信用の質に焦点が当たりました。

信用スプレッドは3 月の市場下落で最も拡大した水準から縮小しているものの、まだ開いており、不安定な状態にあるとVaselkivは指摘します。しかし、グローバル株式市場と同様、パフォーマンスには大きなばらつきがあります。

ハイイールド債市場では、ディフェンシブとみなされているBB 格債のイールド・スプレッドは、危機前の水準まで縮小しています。ただし、一部の「フォールン・エンジェル」(投資適格から非投資適格に最近格下げされた企業)は、財務体質を強化するために9% に達する利回りで債券の発行を余儀なくされています。こうした環境下、投資家は個別銘柄の相対価値を慎重に分析する必要があるとVaselkivは指摘します。

潜在的なデフォルト率を予測する上で、ティー・ロウ・プライスのアナリストは、ハイイールド債ユニバースを3 つの広範なグループに分けています。

  • 航空やクルーズ船のように存続に関わるリスクに直面している業種。これらの発行体の一部は、破産手続きによるか否かを問わず、事業再建を行うと見込まれます。原油価格が1 バレル当たり40 ドル以下に留まれば、多くのエネルギー企業もこのカテゴリーに該当する場合があります。

  • 自動車メーカーや住宅建設などのシクリカル業種は、売上高と利益が急落していますが、新規債券発行が回復までの橋渡しとして役立つ可能性があります。

  • 消費態度の変化から恩恵を受ける優位な立場にあるセクター。一部のメディア企業、ファストフード、スーパーマーケット・チェーンなどのセクターが挙げられます。

多くの債券運用者は、既に優位な立場にあるセクターに目を向けており、今やシクリカル・セクターの保有を慎重に拡大しています。後者のカテゴリーの回復状況によって、ハイイールド債全体のデフォルト率のピークが決まります。全体で10% 近いデフォルト率は妥当と思われるとVaselkivは付け加えます。

信用スプレッドは3月から縮小しているが、まだ開いており不安定

 

社債は引き続き主要テーマ

2020 年後半における魅力的な債券への投資機会は比較的限られるとVaselkivは見ています。ディフェンシブな資産は、米国債やその他先進国の国債、AAA 格地方債、そして一部の高格付けの証券化商品セクターさえも割高で、予想より早期の景気回復が現実化し、ワクチンが広く使用可能になった場合、金利のさらなる上昇に対して脆弱です。

Vaselkivによれば、新興国債券市場では、魅力的と思われる特定の投資機会があるものの、セクター全体として、コロナ禍や、ブラジルなど一部の国では拙い政治的リーダーシップという懸念材料が存在しており、国債のデフォルト率は上昇しています。

「現時点では、投資適格社債とハイイールド債の両方を含む社債が引き続き支配的なテーマになる」とVaselkiv は結論づけています。
 

政策、政治、ポピュリズム

2020 年初頭はコロナ危機が政策議題の大部分を占めたものの、2020 年後半においては、投資家はその他多くのリスクを注視する必要があり、その一部はコロナ禍により悪化した可能性があります。これらのリスクとして、米中間で高まる緊張、社会不安、経済の反グローバル化、11 月に予定されている米国大統領選挙が挙げられます。

新型コロナウイルスにより事業が混乱する前から、保護貿易主義者の圧力により、多国籍企業がグローバルな規模の経済を活用することが難しくなっていたとSharpsは指摘します。コロナ禍によるサプライチェーンの大規模な混乱を経験し、企業経営者は、利益率を犠牲にしても、効率性より耐久性を重視すると予想されます。

  • 企業のバランスシートに関して言えば、この変化は、レバレッジの削減、流動性の上昇、より保守的な財務活動を意味すると予想されます。

  • 近年、株価の主な下支えとなってきた自社株買戻しは、削減される可能性があります。

  • 事業面では、労働コストの最も低い市場を探すのではなく、生産拠点をエンド・ユーザー市場またはその近くに置く「ニア・ソーシング」が優先事項になる可能性があります。

グローバル化が生み出す経済的利益に鑑みると、グローバル化の動きが逆行することはないとSharps は主張します。「しかし、継続する米中貿易摩擦を考慮すると、グローバルなサプライチェーンを見直す動きは避けられないと思われる」(Sharps )。

Thomsonは、米中が貿易戦争の激化を回避することで、世界経済の回復に対する潜在的脅威の一つは緩和されるという楽観的な見方を堅持しています。しかし、主要テクノロジーセクターにおける支配的地位を巡る争いが長期化し、両経済大国間の摩擦が継続する可能性が高いと予測しています。

中国の特別行政区である香港は米中関係悪化の影響を受けています。西側諸国は香港への新国家安全法の導入を強行する中国政府を批判していますが、香港の金融センターとしての存続が脅かされることから、中国がその法制度を香港に直接押し付けることはないとThomson は予測します。

経済的不平等が社会不安を増幅

高い失業率、社会的距離政策、そして在宅勤務により職を維持する人々と新型コロナウイルスにより収入を失った人々との間の格差は、いずれも米国やその他の先進国において長く続く所得格差の拡大を増幅する可能性があります。

 

コロナ禍はウォールストリートとメインストリートの間の格差を拡大

 

コロナ禍は、女性や有色人種等が多いサービス部門の低所得労働者に特にダメージを与えているとVaselkivは指摘します。これが人種差別に対する怒りや、警察による暴力の蔓延に関する訴えと重なり、米国の多くの都市において大規模な抗議行動を引き起こしています。

米国大統領選挙も、市場にリスクをもたらすとSharps は警告します。Sharpsによれば、民主党候補のバイデン氏が大統領選に勝利すると、特に民主党が上院においても過半数の議席を確保する場合、法人と個人の両方に対する増税に繋がる可能性があります。バイデン政権の下での規制強化は、エネルギーや金融、一部の製造業にとって重い規制遵守コストの負担を意味する可能性があるとSharps は付け加えます。

戦略的投資アプローチの維持

2020 年後半の見通しについては、投資家は市場を3 月の底値から押し上げたリスク資産の強力な上昇の継続ではなく、より段階的な回復を想定するべきであるとティー・ロウ・プライスの3 名の責任者は指摘します。

「まだ潜在的な投資機会はあるものの、4 月より明らかに魅力が低下している」(Sharps)。

Thomson は、2020 年後半の見通しについて、市場は折に触れて「乱高下」する可能性があるものの、比較的楽観視しています。「経済活動の再開に加えて、景気刺激策の規模と医学的進歩の可能性が、今から年末までの間に株価を押し上げると予想される」(Thomson)。

しかし、状況が急速に変化する環境下、投資家が成功するには、根本的な見通しを策定し、セクター・産業内のすべての投資機会に注目し、最も魅力的な投資機会を優先する必要があるとSharpsは見ています。

長期投資の視点および潜在的なリスクへの細心の注意も重要と言えます。「経済が世界金融危機から完全に回復するまでに10 年を要しており、現在はそれより大きな課題に直面している。そのため、投資家はポートフォリオのリスク・エクスポージャーを慎重に注視するべきである」(Vaselkiv )。

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202007-1236005

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