2020年4 月 / インサイト

オイル・ショック時に求められる巧みな投資手腕

サマリー

  • 今後12~24ヶ月にわたり、原油価格とエネルギー株は、景気循環に反して力強く上昇する可能性がある。
  •  継続的な生産性の向上を背景に、原油市場では構造的な弱気相場が長期にわたり持続すると予想する。
  • エネルギー・セクターの中で景気感応度の高い、原油価格の動きに敏感な銘柄に選別的な投資機会を見出している。


世界の原油消費の約3分の1に相当する前例のない規模の需要崩壊が原油価格を暴落させ、一時的にマイナスの領域まで押し下げました。エネルギー株も低迷しています。

株式と債券の投資家は、この暴落がエネルギー株への魅力的な投資機会を生み出しているのか、または回避すべきセクターの循環的な破綻なのか否か問われています。グローバル天然資源株式運用戦略のポートフォリオ・マネジャーであるShawn Driscollは、原油価格とエネルギー株の景気循環に反した力強い上昇が12~24ヶ月続く可能性があるとみています。

しかし、原油およびエネルギー・セクターに関する長期見通しについては、引き続きあまり楽観的ではありません。米国のシェール油田における自動化および油層管理技術の改善による継続的な生産性の向上は、その他の要因とともに、引き続き石油・ガスの抽出を容易にし、コストを低下させると見込まれます。そのため、原油は構造的な弱気相場から抜け出せない可能性が高いと考えられます。

エネルギー・セクターへの投資において成功するには、原油に関する短期と長期の見通しを考慮し、質を犠牲にすることなく、反発する可能性が高いと考えられる銘柄に注目する必要があり、銘柄選択が重要になります。一部のエネルギー企業は、今回の危機を乗り切ることができないでしょう。一方、乗り切った企業でも、体力が弱まり、競争力を失う可能性があります。
 

痛みが治癒をもたらす

マイナスの原油価格は、エネルギー業界が供給と需要を合致させるために劇的な行動をとる必要性を示唆しています。Driscolは、生産者が産出量を「過剰に削減」し、貯蔵タンクに空きが生じ、その後供給過剰が解消する可能性が高いと考えています。コロナウイルスの感染拡大を抑制するために実施された行動制限の解除も、需要を押し上げ、在庫縮小に寄与するでしょう。

Driscollは、石油・ガス業界における設備投資の不足が、石油・ガスの減産を(特に、油井がより急激な減少ペースを示す傾向のある米国のシェール分野において)加速させ、原油価格を新規油井への投資を促す水準にまで押し上げるというシナリオを予測しています。「ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は、来年までに1バレル当たり45ドルから50ドルを付ける」とDriscollは予想しています。

 

 

 

資本が少ないほど、規律が高まる

原油価格が過去5年間で2度目に暴落した後のエネルギー・セクターの混乱に対し、資本市場は、今回は前回より支援に消極的な姿勢を示すと予想されます。クレジット・オポチュニティーズ運用戦略およびハイイールド債運用戦略のポートフォリオ・マネジャーであるRodney Rayburnは、「5年前に破綻したハイイールド債を組み入れた投資家の多くが多額の損失を被ったため、同じ過ちを繰り返す可能性は低い」とみています。

Driscolは、投資家や経営陣が被った損失は、エネルギー企業の資本配分における規律向上に繋がると考えています。原油の構造的な弱気相場が続く中で、営業活動によるキャッシュフローを上回る支出は、エネルギー価格に対して相対的に高い感応度を示す傾向がある石油サービス会社や石油開発・生産(E&P)会社にとって「過去のもの」になると考えられます。

E&P会社の場合、この変化が、よりバランスのとれた生産とフリー・キャッシュフローの関係に繋がるでしょう。Driscollが景気感応度の高いコモディティ生産者には不適切と考えている自社株買戻しは打ち切られる可能性が高く、一方で、より適切な代替手段として特別配当が浮上する可能性があります。

業界再編の可能性もあり、米国シェール分野における存在感の拡大を目指す大手総合石油会社は、テキサス州西部で原油埋蔵量の豊富なパーミアン盆地において戦略的買収を追求すると予想されます。シェールオイル分野は、油層管理技術の利用によりシェール層から価値を生み出し、回収率(現在の石油回収率は7%-8%)を高めるためには、大手石油会社の先進技術やプロジェクト管理経験が必要とされる段階にあるとDriscollは考えています。
 

エネルギー・セクターにおける投資機会

Driscollは、エネルギーセクターの見通しについて、今後1-2年は「循環的に楽観的」、長期的には「構造的に弱気」と説明しています。割安なバリュエーションおよび原油価格が景気循環に反して上昇する可能性が、優良銘柄の魅力的なリスク・リターン特性に繋がっており、大手総合石油会社に加え、E&P会社や石油サービス会社の一部に投資機会を見出しています。

Driscollは、E&P会社のなかでは、引き続き財務体質が強固で、優良な掘削井を多く保有する低コストの運営会社に注目しています。多くの石油メジャーの強固な財務体質を評価しているものの、同業界において選別的な姿勢を強めており、戦略変更が経営陣の混乱と収益低下を招く可能性がある銘柄を回避しています。

また、石油サービス会社の中で選別的な投資機会を見出しています。同セクターにおける破産増加の可能性と業界からの労働者離れにより、生き残った会社は長年来で初めて価格引上げを達成できる可能性があります。更に、E&P会社が原油価格の暴落に対応して設備投資を削減する状況下、原油価格および経済活動の回復に応じて、サービスへの支出が回復する可能性があると見ています。
 

バリュー投資家の視点

米国大型バリュー株式運用戦略のアソシエイト・ポートフォリオ・マネジャーであるRyan Hedrickは、現在のパンデミックに起因する景気後退の前に公益事業株を選好していました。現在、公益企業には、以下に挙げる構造的な追い風の一部を背景に、設備投資を通じ料金基盤および利益を増大させる機会が豊富に存在すると見ています。

■     石炭火力発電から天然ガスおよび再生可能エネルギーによる発電への転換

■     それに伴い送配電インフラを近代化する使命

■     安全性を高め、中断時間を短縮するために古いインフラに投資する必要性

■     これらの必要不可欠なシステムの山火事、ハリケーン、その他の自然災害に対する防御の強化

底堅いキャッシュフローおよび配当利回りにより公益セクターはディフェンシブ性を備えており、利益成長見通しが当セクターのリスク調整後リターンの魅力を高めています。

Hedrickは、エネルギー株においても、パイプラインやその他のエネルギー関連インフラを保有し、同業他社より持続可能なキャッシュフローを生み出すとみられる一部のミッドストリーム銘柄を含め、魅力的な配当利回りを提供する投資機会を見出しています。大手総合石油会社も、ある程度この特性を備えています。

バリュー志向のHedrickは、Driscollと同様に、エネルギー・セクターの中で景気感応度の高い分野、特にE&P会社や石油サービス会社への投資機会が生じていると見ています。これらの業種における潜在的な投資機会を評価する上で、Hedrickは、高水準のコストで借り入れを行うことによって、自社の持ち分を株主から債権者に移転する必要があると思われる企業を回避するため、財務内容および目先のキャッシュフローに係る状況を注視しています。また、厳しい長期見通しを踏まえ、適度な株価収益率および景気の踊り場におけるエネルギー・コモディティの合理的な価格を想定して、分析を行っています。
 

ハイイールド債エネルギーセクターにおいて少ない投資機会

Rayburnは、クオリティの懸念から、投資対象のハイイールド債において投資機会が少ないことを指摘しています。今回の景気後退局面においてエネルギー銘柄がデフォルトした場合の予想回収率の水準、および小規模のE&P会社や石油サービス会社における低格付け銘柄の増加を挙げて、慎重姿勢を維持しています。Rayburnは、ハイイールド債のエネルギーセクターにおいて相当程度の破産やデフォルトが生じると予想しています。

Rayburnは、株式ポートフォリオ・マネジャーと同様に、エネルギーセクターの長期見通しが厳しいため、クオリティを重視しています。相対的にレバレッジが低い大手E&P会社に加え、相対的に安定したキャッシュフローを生み出しており、多様かつ安定した顧客層にサービスを提供している格付けの高いミッドストリーム運営会社を選好しています。

Rayburnは、投資適格の発行体が格下げによりハイイールド債ユニバースに組み込まれる際に、エネルギー・セクターにおいて魅力的な投資機会が生じる可能性があると考えています。これらの「フォールン・エンジェル」は、多くの場合、投資対象を投資適格銘柄に限定している投資家からの強制的な売り圧力を受けます。

Rayburnは、この戦略は原油価格が暴落した2015-2016年に奏功したと指摘しています。一部のフォールン・エンジェルは、最終的に「ライジング・スター」として急上昇し、財務内容を改善させた後に再び投資適格格付けを取得する可能性があります。
 

次の注目点

ティー・ロウ・プライスでは、環境、社会、ガバナンス(ESG)要因を考慮する投資戦略への関心の高まりとそのエネルギー株への影響を引き続き注視しています。一部の投資家が石油埋蔵量の長期的価値を割り引くことから、ESG要因を考慮した投資戦略への関心が引き続き株価収益率を押し下げる可能性があると認識しています。ティー・ロウ・プライスでは、こういったトレンドおよびESG要因をボトムアップの調査および意思決定において考慮しています。ただし、ESG要因が想定投資期間にわたり原油市場のファンダメンタルズに著しい影響を及ぼすとは予想していません。

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