2020年5 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境


1. 市場テーマ   2020年4月30日時点

市場の価格発見機能

現在のような環境で株式市場に値段を付けるのは極めて困難です。今回は株価の下落やその後の回復が前代未聞の速さで、あたかも1年分のリターンのような株価変動が連日発生しました。P (株価) と同様、PERのE (収益) も、新型コロナウイルスによる経済活動の停止がいつまで続くか、そして危機後の環境がどのようになるか見通せないため、将来の収益を正確に予測することができません。1-3月期決算がその手掛かりとして参考になり、S&P500のEPS (1株当たり利益)は15%近い落ち込みを示しています。こうした環境では勝ち組と負け組の明暗が鮮明となり、テクノロジーやコミュニケーション・セクターが底堅く推移する一方、エネルギーや資本財など景気により敏感なセクターはコロナ危機に直撃されました。これまでの危機に比べて、今回の危機は常識破りで、回復のスピードも型破りかもしれません。今までと大きく異なる可能性があるのは勝ち組と負け組の顔ぶれで、異常な世界に直面しそうな企業に対して「正常な」収益を前提にどのくらいの価格が設定されているかに注目することがこれまで以上に大切になるでしょう。

FRBは流動性リスクを鎮火させたが、ソルベンシー・リスクがくすぶる

世界各国の中央銀行は景気の落ち込みや広範な流動性不足に対処するため、異例の金融政策を実施しました。米連邦準備理事会 (FRB) はコマーシャルペーパー (CP)、米国債、地方債、住宅ローン担保証券 (MBS)、短期金融商品セクターを安定させるために、大規模な貸し出しや資産購入プログラムを数度にわたり打ち出しました。最も直接的な支援策は、事業規模が大きすぎて財務省の給与保護プログラム (PPP) に参加できない中小企業に対しFRBがその銀行ネットワーク経由で資金を直接供給する「メインストリート融資プログラム」 を通じて行われるでしょう。こうした融資は返済の必要がありますが、PPP貸付はその資金が従業員の賃金に直接使われる場合、助成金になるという違いがあります。FRBのこうした行動により必要な流動性が大量に供給されますが、これらの企業は最終的には自立を迫られます。コロナ危機後の世界では、多くの業界の将来は不確実なため、市場の関心がソルベンシー (支払能力)リスクに移りそうな半面、一部の企業は持続的な債務返済が危ぶまれるほど収益力が悪化する可能性もあります。

足元の弱さの先を見据えて

1-3月期の世界のGDPは2008年以降で最大の縮小を示しており、米国は前期比-1.2% (年率-4.8%)、ユーロ圏は-3.3%のマイナス成長となりました。このような急激な景気の落ち込みは、新型コロナウイルス対策として世界中で実施された広範なロックダウン (都市封鎖) が主因で、それまで底堅かった個人消費を直撃し、エンターテインメント、ヘルスケア、食品などの業界に大きな打撃を与えました。1-3月期の数字が反映しているのは3月第2週頃から始まった経済封鎖の影響であり、4月以降のロックダウンの影響を完全に反映する4-6月期の数字がそれよりはるかに悪くなるのは確実です。経済成長、失業、製造業のデータは警戒すべき水準ですが、世界の株式市場は「経済が再開されれば、近い将来に回復する」との期待から足元の景気の悪化を一時的なものとして無視しています。4-6月期の米国のGDPは年率40%落ち込むとの予想もあり、市場が引き続きネガティブな指標の先を見据えて動くのか、それとも実体経済の悪さに反応し始めるのか注目されます。

 

 

 

2. 各国・地域の経済環境

 

 ポジティブネガティブ
米国金融・財政政策による未曾有の緊急経済対策
危機前は家計のバランスシートは健全
貿易戦争の激化一服
医療インフラは大半の国よりも強固
長期的優位性を有する企業 (クラウド・コンピューティング、 ネット通販など) の割合が他の国より多い
米国は国土が広く、移動も自由なため、新型ウイルスの感染が続く可能性が比較的高い
経済再開に関する政策は州によって異なる
危機前から企業債務は高水準
サービス業が経済に占めるシェアが高いため、社会的距離政策の経済的影響も大きくなる
危機前から企業の利益率に下押し圧力
高水準の政府債務


欧州待望の財政刺激策がようやく登場
金融政策が引き続き非常に緩和的
欧州株も急落し、割安だったバリュエーションがさらに割安に


危機前から景気の足取りが弱かった
欧州中央銀行 (ECB) の景気刺激余地は限られる
財政政策の権限は各国にあるため、財政面の対応が遅れる
危機前から銀行セクターは厳しい状況が続いていた
危機により政治的緊張が高まった


中国新型コロナ対策として大規模な政策支援を行っており、今後も継続される見通し
テクノロジー関連セクターを支える「新インフラ」を焦点にインフラ投資が増える可能性が高い
新型コロナの感染拡大が抑え込まれているため、中国株は底堅く推移している。米中貿易摩擦の再燃でA株の行方に注目

新型コロナウイルスの発生源を巡る米中の対立が深まり、米中貿易摩擦が再燃
世界経済の活動が次第に再開されても、短期的には発注がキャンセルされる可能性が高いため、貿易活動は引き続き低調
政策支援はあるものの、経済活動に数ヶ月遅行する倒産は増える可能性がある


日本過去最大規模の経済対策と日本銀行の極端な緩和スタンスが景気回復へのしっかりした足場を提供
長期的視点に立つ投資家は、魅力的なバリュエーションや、業績予想がまだ良好な内需株に対する需要が低いことから恩恵を受ける可能性がある
日本円は今後も危機時の「安全な逃避先」となる可能性がある


日本は新型ウイルス感染拡大の封じ込めにおいて他のアジア諸国に遅れを取っているため、経済再開の目途が立ちにくい
世界貿易の明確な回復が見込みづらいため、企業は減配や自社株買いの縮小などで株主還元を減らす可能性がある
貿易摩擦の再燃で円高になる可能性がある


オーストラリア政府とオーストラリア準備銀行 (RBA) が政策対応を迅速かつ積極的に実施。オーストラリアの財政は他の国より盤石で、最近の政策支援の長期的リスクは軽減される
オーストラリア株がグローバル市場をアンダーパフォームしているのはウイルス封じ込めなどの同国の危機対応が原因ではなく、更なる上昇も起こり得る
ロックダウン規制が緩和されれば、その間に溜まったペントアップ需要や在庫補充の必要性が追い風となる可能性がある


経済が再開された後でも、移民、観光、出張、教育サービスに関する問題が経済に構造的リスクをもたらす
業績予想はまだ大幅な下方修正の必要がある。配当も引き下げられる可能性があり、オーストラリア株特有の魅力が低下する。バリュエーションも歴史的な高水準にある
米中貿易摩擦がエスカレートすると、オーストラリアは中国からの報復の影響を受ける可能性がある


新興国中国は新型コロナの感染拡大が抑え込まれた模様
中国は大規模な政策対応を実施
国民の年齢が若いため、新型ウイルスに感染しにくいと思われる
FRBの緩和で新興国の中銀は利下げに動きやすくなった
貿易面の緊張が和らぐ
株式のバリュエーションは先進国より魅力的


多くの地域で医療体制が脆弱
中国以外の新興国は財政刺激策を行う能力が限られる
世界の鉱工業生産や貿易の動向に非常に敏感
コモディティ価格に引き続き下押し圧力
主要新興国の不安定な状態がセンチメントを圧迫する可能性も
通貨のボラティリティが高まる可能性がある


 

 

3. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

 

 

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