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2020年3月 / インサイト

FRBの流動性対策に続き、強力な財政措置が必要

サマリー

  • 中央銀行の大胆な行動でも株式市場の急落やクレジット市場の悪化に歯止めがかからず、これは投資家がまだ十分な措置が講じられてないと懸念していることを示している。
  • 中銀は流動性問題を是正すべく積極的に行動しているが、今度は政府が効果的な財政政策を打つ必要がある。
  • 金融市場の安定には、極めて厳しい新型コロナウイルス対策を打ち出した国が成功を収め、その他の国も正しい行動を取っていることを示す明確な証拠が必要である。


世界各国の中央銀行は、新型コロナウイルスの感染拡大による市場の混乱を鎮めるため相次いで積極的な行動を取りましたが、株式市場やクレジット市場の動揺は収まらず、政府に対して財政面からより断固たる危機対応を迫る圧力が強まっています。

米連邦準備理事会(FRB)や他の中銀の行動は大胆なものでしたが、悪材料が続く市場の流れを断ち切るには不十分で、かえって中銀が単独でできることには限界があるという印象を強める結果となりました。金融市場の安定回復には、対応が後手に回っている国の参考として、一部の国においてコロナ対策が奏功している証拠が得られることが必要と思われます。一方、米国の政策金利がマイナスになる可能性は低そうですが、安全資産に対する投資家の需要が引き続き強ければ、米国債利回りがゼロを下回ることも考えられます。


過去数日で一体何が起きたのか?


FRBが3月15日 (日) にFFレート誘導目標の1%引き下げと最低7,000億ドルの資産購入を発表したのに続き、翌16日には日本銀行が上場投資信託 (ETF) の購入目標を12兆円に倍増すると発表しました。

これらの措置は世界金融危機以降、例を見ないほど大胆なものでしたが、この間もコロナ関連の悪材料が続き、週明けの株式市場は急落しました。このことは、投資家が中銀は打てる手段がほぼなくなり、需要ショックに対しては財政面から強力な対応が必要だが状況は依然予断を許さないと懸念していることを示しています。


FRBの発表の詳細は以下の通りです。

  • 3月3日にFFレート誘導目標を急遽0.5%引き下げたのに続き、同目標をさらに1%引き下げて2015年以来の低水準である0~0.25%とした。

  • 米国債5,000億ドルと住宅ローン担保証券 (MBS) 2,000億ドルの計7,000億ドル以上の資産購入。

  • 金融機関がFRBの割引窓口 (ディスカウント・ウインドウ) から借り入れをする際の金利である公定歩合を1.50%引き下げて0.25%とし、最長90日間の借り入れを受けられるようにした。 従来、金融市場のストレスが強い時、金融機関は割引窓口からしか借りられないことが多く、同制度の利用は不名誉とされていた。このため、FRBは窓口貸出の悪いイメージを払拭する措置も導入した。我々はまだ今回の発表の詳細を分析中だが、当初の印象としては、90日間利用できるようになったことは中小企業向け融資に重要な好影響を及ぼすと思われる。コロナ封じ込めに必要な社会的措置の経済的な打撃を最も受けるのは中小企業であるため、これは極めて重要な意味を持つ。

  • 家計や企業の資金需要を支えるため、金融機関の預金準備率を0%に引き下げた。

  • FRBはまた、ユーロ圏、日本、カナダ、英国、スイスの主要5中銀と米ドルを融通し合う「通貨スワップ協定」の枠組みを強化することで合意した。この制度は2008年の金融危機の際に導入されたもので、ドルの国際的な供給を支援するため外貨による米ドル借り入れを可能にする。今回は借入条件の調整によって、スワップ費用を0.25%引き下げ、借入期間も7日から84日に延長することで合意した。

それ以外では、日銀がETFの年間購入目標を12兆円に倍増したほか、ニュージーランド準備銀行が政策金利を0.25%へ0.75%下げ、 カナダ銀行も0.75%へ0.50%引き下げました。


なぜ中銀はこれほど劇的な措置を取ったのか?


大まかに言うと、中銀は市場参加者からの現金需要の急増に対応しています。資金需要の変動への対応こそが中銀の基本的な存在意義であり、いま行動を起こしているのはそのためです。

もっと具体的に言うと、以下の2つの理由からFRBはあえて日曜に行動を起こさざるを得ないと判断したのだと思います。

1. 新型コロナによる需要激減に、原油価格暴落が重なり、景気回復シナリオが崩れ、2020年前半のリセッション (景気後退) が濃厚になった。

2. 社債や国債を含む債券市場の流動性がここ数週間は極端に細っていた。企業が短期資金の調達に使うコマーシャルペーパー (CP) も流動性の逼迫に直面していた。緊急時対応の一環としての職場の移動などで、トレーディングデスクが機能しにくかったこともその一因。しかし、流動性の逼迫は、証券ディーラーにリスク資産の圧縮を促した銀行の自己資本強化など世界金融危機以降導入された規制で拍車が掛かった面がある。そうした措置は米国債市場の取引の足かせとなり、特に非指標銘柄の流動性に影響を及ぼした。


それに対する市場の反応は?


中銀による大胆な行動も、週末の間に発生した数々の悪材料を相殺するのに十分ではありませんでした。欧州は実質的に国境を閉ざし (市場はそれを米国も追随する兆候と受け止めた)、中国では予想を大きく下回る経済指標が相次いで発表されました。米国債市場は中銀の行動にポジティブに反応し、株価急落時に安全資産として買いが殺到しました。これは、米国債が株式と一緒に大きく売られる異例の展開となった3月9日の週の数日とは対照的でした。投資家が利下げに反応するにつれ、米国債利回りは幅広い年限で低下しました (債券の価格と利回りは逆の動きをします)。


なぜ市場はFRBの行動を好感しなかったのか?

中銀の行動後に株価が急落したことから、投資家が中銀は今回の危機において市場を支える手段をほぼ使い果たしたと不安に思っていることがうかがえます。週末のFRBの行動は大胆なもので、最悪の事態として想定される短期金融市場の崩壊を防ぐためにさらなる措置を講じる可能性があります。FRBの行動の本当の影響は、今後数日から数週間で明らかになってくるでしょう。

しかし、結局、これは公衆衛生上の危機であるため、金融政策にできることには限界があります。金融状況を緩和し、市場の歪みを正す中銀の行動は必要なものですが、現在のような時に投資家にリスク資産の保有を促すには不十分です。金融機関は自らの力で景気を浮揚させることはできません。

それは、市場の動揺を鎮めるため最終的に政府が投資家を納得させられる財政対応に踏み切るかどうかにかかっていることを意味します。財政政策でさえも、目先的には強制的な経済活動停止時期の企業や家計への経済的ダメージを和らげる以外のことはあまり期待できないかもしれません。これは明らかに重要ですが、財政措置の乗数効果は低い傾向があるので、すぐに市場を落ち着かせるのは難しいかもしれません。


目先的に市場が落ち着きを取り戻すには何が必要か?

以下の2つが市場の安定に寄与すると思います。

1. コロナ封じ込めで最も厳しい措置を取った地域から、そのアプローチが奏功し、新規感染者数が抑えられているという十分な証拠が得られること。

2. コロナ封じ込め対応が遅れている米国などの地域で十分な措置が実施されている証拠が得られ、ウイルス感染が収束に向かう希望が持てるようになること。


米国でマイナス金利政策が行われるのか?

我々はFFレートがマイナスになる可能性は低いと考えています。FRBはユーロ圏や日本のマイナス金利政策が景気やインフレの上昇につながっていない点を指摘し、マイナス金利を回避する姿勢を引き続き繰り返しています。さらに、マイナス金利は、米経済がうまく機能する上で他の国より格段と重要な短期金融市場の動きを阻害する可能性が高いと思われます。

しかし、安全資産に対する投資家の需要が引き続き強ければ、米国債利回りがゼロを下回ることも考えられます。


今後の展開は?

現時点における最大の問題は、このウイルス自体のライフサイクルや行動、それが個人や企業のリスク許容度にどんな影響を及ぼすかに関する不透明感が非常に強いことです。現在、金融問題の解決は健康問題の解決より優先順位が低いため、中銀がどんな行動を取っても経済的ダメージを抑制する程度のことしかできません。FRBは週末に大幅な緊急利下げを実施しましたが、できることには限界があります。

各国経済の行方は、セーフティネットを提供する政府が中銀からバトンを引き継ぎ、非常に広範囲の民間セクターのリスクをどのくらい引き受けられるかにより大きく左右されます。これが財政の悪化につながるのは明らかで、最終的に40年にわたる国債の強気相場の真の終焉を告げることになるかもしれません。しかし、現時点でそう判断するのは早計で、投資家は世界金融危機以来見たことがないほどの真剣さで引き続き流動性と投資元本の確保を優先しそうです。
 

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