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2019年10 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境(2019年9月)


1. 市場テーマ

イージー・マネー再び

貿易摩擦の激化や地政学的な不確実性が経済成長を圧迫する中、今年は金融政策が劇的にハト派に転換しています。これまで21の中央銀行が本格的な緩和モードに転じており、世界経済の安定化や景気後退懸念の軽減につながると見られています。しかし、金融政策は異例の出発点にあります。過去10年にわたり世界中で景気を刺激すべく前代未聞の金融緩和が実施された結果、金利は既に歴史的な低水準にあり、その一方でインフレは相変わらず低位にとどまっているため、金融緩和の効果を疑問視する声も聞かれます。各国中銀は追加利下げを行う用意があると引き続き強調していますが、政策対応は抑制されており、これまでのところ総じて後手に回っているため、貿易交渉がマクロ見通しを左右する状況となっています。
 

株式市場のリード役交代は本物か?


8月末から9月初めにかけて、株式市場ではモメンタム主導のグロース株から景気敏感のバリュー株への急激なローテーションが起こりました。世界的に低成長が続く中、景気敏感株が投資家にずっと敬遠される一方、ディフェンシブなグロース株が株価上昇をリードしてきたので、これは市場の牽引役の大逆転でした。債券市場も転換の兆しを見せ、金利は低下トレンドが反転し、8月の急激な低下の大半を取り戻しました。これは大きく高まったグロース株のバリュエーションや、金利を過去最低の水準まで押し下げた過度に悲観的なセンチメントの巻き戻しなのでしょうか? それとも、市場は景気が利益成長と景気敏感株の復活を持続させるのに十分なほど持ち直すと本気で信じているのでしょうか?

ユーロ圏経済は要警戒レベル


ユーロ圏ではサービス業の景況感が依然底堅く推移する一方、製造業の景況感は約7年ぶりの低水準に落ち込んでいます。景況感の悪化はユーロ圏最大の経済大国であるドイツの弱さが主因であり、欧州は景気後退に向かっているとの懸念が強まっています。英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感、米中貿易摩擦、自動車業界の問題がすべてユーロ圏経済の重石となっています。金融政策担当者は既に景気下支えに前向きな姿勢を示しており、緊縮財政が数年続けられてきた欧州では財政出動を期待される国が増えています。 問題は依然として、政策担当者が過去10年で3度目のユーロ圏の景気後退を阻止できるほど十分に景気を下支えられるかということです。

 



2.  各国・地域の経済環境
 

 ポジティブ
ネガティブ
米国
  • 米連邦準備理事会 (FRB)の金融緩和と物価安定
  • 健全な個人消費、好調な雇用、賃金の改善
  • 金利低下が住宅部門を下支え
  • 貿易戦争の激化懸念一服
  • 長期的優位性を有する企業(クラウド・コンピューティング、ネット通販など)の割合が他の国より多い
  • 政治的不透明感
  • 大型減税効果の剥落に伴う成長鈍化
  • 目先の収益期待が低下
  • 設備投資の鈍化と景況感の悪化
  • 景気サイクル終盤の懸念: 労働需給の逼迫、賃金の上昇、企業利益率に下押し圧力
  • 高水準の企業および政府債務
欧州
  • 金融政策が引き続き非常に緩和的
  • 中国の景気対策の間接的な恩恵を受ける
  • ユーロ圏のサービス業はなお底堅い
  • 配当利回りが依然として高い
  • 景気が低迷しており、特に製造業の弱さが目立つ
  • 欧州中央銀行 (ECB) の景気刺激余地は限られる
  • 輸出は弱く、貿易問題や中国経済の行方に左右される
  • 銀行セクターは厳しい状況が続いている
  • 英国のEU離脱を巡る不透明感が景況感を圧迫している
     
中国
  • 経済データが追加的な政策サポートの余地を与えており、たとえそれが慎重かつターゲットを絞ったものであっても目先的に追加の景気刺激策が打ち出される可能性が高まった
  • 市場の見方が一方向に傾いていないため、人民元は引き続きレンジ内で推移する可能性が高い。人民元がこの水準だと、輸出主導型の中国経済は一息つける見通し
  • 企業収益が改善しているほか、コーポレート・ガバナンスは正しい方向に向かっており、バリュエーションは引き続き魅力的。こうした要因はいずれも中期的に中国株を支える見込み。
     
  • 信用の伸びが勢いを失う一方、債務圧縮の動きが続いているため、意図された景気刺激効果が弱まっている
  • 現在の景気対策の目標は景気を従来の成長軌道に戻すことよりむしろ、景気の下降トレンドに歯止めを掛けることだ
  • 貿易摩擦に伴う不透明感が市場心理を圧迫しているため、アジア資産の反発は限定的
  • 人民元安を受け、デフォルトが既に高水準にあるタイミングで、対外債務の返済に対する懸念が浮上してきた
     
日本
  • 低調な外需を尻目に内需は好調を保っている。小売売上高、賃金上昇、サービス業PMIはいずれもポジティブな材料
  • 日銀は政策余地が限られているとしても、世界的な金融緩和の流れに追随するとの見方が強まっている
  • 日本株は割安感が強い。一方、自社株買いや自己資本利益率 (ROE) を通じたガバナンス改善、スタートアップ企業の増加などは引き続き過小評価されている
     
  • 消費税引き上げをきっかけとするリスク資産の急落に伴う円高が日本株にとって引き続き最大のリスク
  • 円はバリュエーションの安さ、不安定なリスク・センチメント、対米金利差縮小などから上昇する可能性が高い。円高は将来の業績に対する懸念を高める
  • 製造業や輸出のデータを見ると、景気の勢いは依然として弱い
オーストラリア
  • 景気は底堅さを見せており、企業景況感、消費者信頼感は安定し、住宅関連の指標は回復している
  • 低インフレ、労働市場の余力、世界的な金融緩和トレンドが続いているため、オーストラリア準備銀行 (RBA) は緩和サイクルを続けることができる。財政刺激策も景気を支える見通し
  • 豪ドルは過去に比べて割安な水準にあり、これが外需主導セクターを下支えている
  • 低金利環境では高配当株に対する需要が続く見通し
  • RBAや新政権に対する楽観的な見通しはすでに株価に織り込まれている
  • 低調なグローバル貿易統計が引き続き収益を圧迫しているが、政策サポートがあるため、テール・リスクは比較的低い。収益見通しに基づくと、バリュエーションは割高感がある
  • 豪ドルは魅力的なバリュエーションや対米金利差の縮小から反発する可能性がある
新興国
  • インフレ沈静 (しかしながら上昇傾向) やFRBのハト派姿勢強化により新興国の中銀に金融を緩和できる柔軟性が生まれた
  • 株式のバリュエーションは先進国より魅力的
  • テクノロジー・セクターの重要性が高まり、コモディティ・サイクルの影響を受けにくくなった
  • 中国の景気対策の恩恵を受ける
  •  
  • 輸出主導の経済は貿易摩擦激化の悪影響を受けやすい
  • トルコ、アルゼンチン、ブラジルなどの主要新興国は不安定な状態が続く可能性がある
  • 中国経済の長期成長軌道には依然逆風が吹いている
  • 中国の景気対策はより慎重なもので、国内に重点

 

3.  アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング
 


 

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