2019年12 月 / インサイト

日本の未来は生産性がカギを握る

少子高齢化、人手不足への対応が新たな革新的ソリューションを牽引

サマリー

  • 少子高齢化やそれに伴う人手不足など日本が直面する人口動態面の課題は、長期成長見通しに対する最大のリスクの一つである。
  • しかし、注目すべきは、日本がこうした試練に対処すべく行動を起こし、官民を挙げて生産性の向上に積極的に取り組んでいることである。
  • 必要に迫られて起こした行動が日本における生産性の向上をもたらす新たな革新的ソリューションを生み出しており、今日実現可能なことの領域が広がっている。 


経済成長の基本要素は、人口、特に生産年齢人口の伸びと生産性の改善です。 日本の場合、少子高齢化に伴う人口減少や人手不足が長期成長見通しの最大のリスクであることは知られています。しかし、注目すべきは、日本がこの試練に対処すべく行動を起こしていることです。そして、魔法の言葉は「生産性」です。

人口動態面でこうした厳しい現実に直面しているのは日本だけではありませんが、日本は先進国の中でもその傾向が特に顕著で、今すぐ行動を起こす必要に迫られています。従って、日本は結果的に生産性向上のための新たな革新的ソリューションの開発において先頭を走っています。

日本では官民を挙げて生産性の向上に積極的に取り組んでいます。公的セクターでは広範な構造改革に焦点が当てられ、より柔軟かつダイナミックな労働環境の創出、労働参加率の向上などの目標が掲げられています。民間セクターも世界的な競争力を保つには生産性の向上が不可欠なことを十分理解しており、よりスマートかつより効率的な労働慣行の実現を目指して新たなテクノロジーやシステムに投資しています。
 

労働市場改革は基礎工事が終わった


アベノミクスの「三本の矢」の一つは、効率性を高め、投資資金の流入を円滑にするための日本の企業環境の全面的な整備でした。これに関してはガバナンス基準の改善や規制強化の新たな枠組みなどの点で大きな進展が見られました。同時に政府はインフラ投資を促進する新たな法律・政策や、企業向けの金融インセンティブなど広範な施策を打ち出しました。これらはいずれも日本の労働市場をより包括的かつダイナミックなものにすることを目指したものです。

日本の生産性が過去数十年にわたり外国に後れを取ってきた一因は、日本の労働市場の硬直性にあります。かつては伝統的にも文化的にも終身雇用が当たり前と考えられ、競争や進歩の機会は限られ、転職の誘因はほとんどありませんでした。こうした柔軟性の欠如は以下のように、3つの形で生産性に悪影響を及ぼします。

1. 過剰人員や労働効率の低下につながり、経営が苦しくなっても必要な人員整理が難しくなる。

2. 企業間の社員の移動が限られ、ベスト・プラクティスの定期的共有の重要な機能が失われる。

3. 転職の誘因がほとんどないため、社員がキャリアを通じて継続的に新たなスキルを磨く可能性が低くなる。


しかし、当たり前だった終身雇用制はもはやほとんど崩れています。長年刻み込まれた一社に一生勤めるという「サラリーマン」精神が消えるには時間がかかるでしょうが、自由かつオープンな転職の恩恵は既に明らかで、仕事に対する競争が高まるにつれ、企業間のベスト・プラクティスの共有、社員のスキルアップなどの動きが見られるようになってきました。企業も一時雇用や契約ベースの採用を増やしており、昔より労働力の柔軟性や効率性が高まっています。
 

「女性の活躍」が経済成長のカギ


一方、安倍首相は労働力として女性の活躍を推進する「ウーマノミクス」を経済成長戦略の一つの柱として強調しています。 日本の女性の多くは第一子出産に伴い退社した後、フルタイムの雇用に復帰できていないのが現状です。この問題に対処するため、政府は以下のような政策を打ち出しました。

  1. 有給育児休暇の拡大
  2. 保育園や幼稚園の増設など保育サービスの拡充
  3. 2020年までに女性管理職比率を15%に高める

図表1は、こうした政策が実を結び、女性が労働市場に戻っていることを示しています。生産年齢の女性の就業率は2019年9月に過去最高の72%に達し、米国の67%を上回っています。そして、この差は過去5年で著しく開いています。

 

しかし、この点に関してはやるべきことがまだあります。

例えば、日本は男女の賃金格差が世界で最も大きい国の一つで、この差を解消することが女性の就業継続や職場復帰にとって極めて重要です。また、過去10年で女性の雇用が急激に増えていますが、それはパートタイムまたは非正規ベースで働く女性が増えていることが主因です。高所得世帯に高い税率を課す税体系がこれを促しています。従って、この分野では政策改革により正規雇用の女性が増える可能性があります。

高齢者の就業促進も政府が生産性向上のため優先的に取り組んでいる分野です。政府は2013年、法定定年年齢を2025年までに段階的に60歳から65歳に引き上げることにしました。政府は定年を過ぎた社員を新規または継続して雇用する企業への補助金も導入しました。一方、企業もそれにより貴重なスキルや経験を長く保持できるメリットを認識しています。
 

民間企業の投資も生産性の伸びを牽引


重要なことに、過去何十年も設備投資を抑制した民間セクターも行動を起こし始めています。最近は人的資本や物的資本に投資したり、生産性向上のため新たな革新的ソリューションを開発する企業が増えています。これらの企業は必要に迫られて、今日実現可能なことの領域を広げており、その過程で新たな基準を設定しています。

例えば、日本企業はプロセスの改善や適正化を目指してオートメーションやAI (人工知能) テクノロジーに積極投資しています。これは人手不足の解消、残業からの解放、様々な業界における生産性向上など日本が直面する多くの社会的課題の軽減につながる可能性があります。日本ではこうした創造的破壊のトレンドが始まったばかりですが、大企業も中小企業もインテリジェント機器や自動化技術をますます活用しています。こうしたトレンドが続き、幅広い産業に広がれば、日本の生産性は飛躍的に高まる可能性があります。特に、米国に大きく後れを取っているサービス分野への影響が一番多くなる可能性があります。

 


RPA分野のトップランナー

テクノロジーにおける最もホットな開発分野の一つは、ロボティック・プロセス・オートメーション (RPA: ロボットによる業務自動化) などのサービス産業ソフトウェアです。これは「話す」「聞く」「読む」「取引」の作業を自動的に行い、プロセス型の仕事を自動化できる技術です。これはあらゆる業界でますます使われており、銀行、保険、公益、通信などプロセス主導の業界の企業がこれまでのところ最も積極的に採用しています。RPA ソフトウェアはこれらの企業が人による手続きや反復的な仕事を自動化するのに役立ちます。こうした業界がプロセス主導のこの種の仕事を行うのに何千人もの社員を現在雇っていることを考えると、RPA ソフトが提供する大幅な効率アップの可能性は明白で、膨大な仕事が自動化できることになります。これは生産性の向上という点で日本を大変身させる可能性を秘めています。
 

創造的テクノロジーへの投資
RPA テクノロジーの持つ破壊的かつ生産性向上の可能性を信じている企業の一つは、SoftBank です。同社は2018年11月に自動化テクノロジーに特化する米スタートアップ企業、Automation Anywhere に3億ドルを出資しました。SoftBank はそのビジョン・ファンドを通じた投資により、次世代のイノベーションにつながると確信する創造的破壊をもたらすテクノロジーを有する企業の発掘・投資で最先端を走っています。

アベノミクスは極めて重要な基礎工事を行い、必要な構造改革、雇用創出、投資奨励などを実行しています。しかし、日本が人口動態面の長期的な試練に対応するには、生産性の向上がカギとなります。この目標に向けた労働参加率を高める努力が実を結びつつあり、これは継続中のポジティブなトレンドです。

一方、日本では製造業とサービス業の生産性ギャップの解消も優先課題です。この点に関しては既にポジティブな動きが見られ始め、民間セクターはサービス業の生産性を「スマートに」高める新たなテクノロジーやシステムに投資しています。重要なことは、官民挙げた努力が日本の生産性を大幅に高め、人手不足など少子高齢化の影響を克服し、持続可能な長期成長への道が開かれる可能性があることです。

 

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