T. Rowe Price

2019年12 月 / MULTI-ASSET STRATEGY

アクティブ運用の新時代がやがて到来?

パッシブ運用への追い風が止まる時

サマリー

  • 2008年の金融危機以降、パッシブ戦略は中央銀行の量的緩和 (QE) のおかげで好成績を残してきたが、そうした時期は終わろうとしているように思われる。
  • QEの効果が薄れるにつれ、リターンは低下し、セクター間のボラティリティが再び高まりそうだ。
  • 資産クラス内または資産クラス間のローテーションに乗じるには、ポートフォリオのコアにアクティブ戦略を据えることが有効かもしれない。


金融危機以降で市場における最も顕著な動きの一つは、パッシブ戦略の人気が急激に高まったことです。これに伴い、インデックス追随型のパッシブ戦略に比べたアクティブ戦略のメリットについて活発に議論されました。しかし、こうした議論ではパッシブ戦略の資産成長の背景やこれらに関する特定のリスクが無視されがちです。世界経済が次の局面に移行するにつれ、投資家はパッシブ戦略の使い方やどの程度のリターンを得られるか再評価を迫られるかもしれません。

なぜパッシブ戦略がここまで人気を博するようになったのか理解するのは難しくありません。一つには、パッシブ戦略はリサーチ、銘柄選択、運用会社の取捨選択などが必要なく、運用が比較的簡単だからです。パッシブ商品には運用手数料がアクティブ商品より安いという強みもあります。大口投資家なら、運用会社との交渉でアクティブ商品の手数料をパッシブ商品並みに下げられる場合もありますが、これはあくまで例外です。また、パッシブ戦略はインデックスに追随するので、アンダーパフォームするリスクがアクティブ戦略より低いという利点もあります。そして、おそらく最も重要なのは、金融危機以降は資産価格が軒並み大幅に上昇し、パッシブ戦略が過去10年以上にわたり高リターンを提供してきたことです。

 

中銀の景気刺激策がパッシブ運用にとって理想的な環境を創出


金融危機以降のパッシブ戦略の好成績は中央銀行に負うところが大きいと言えます。2008年以降は超低金利と利下げに加え、数兆ドルものQEがバリュエーションの大幅な上昇をもたらしました (図表1)。この間、パッシブ戦略の基盤となる市場リターン (ベータ) がアクティブ戦略の超過リターン (アルファ) を大きく上回りました。しかし、こうした時代が終わったのはほぼ確実だと思います。中銀がこれ以上QEを行うには限界があり、その影響も疑問視され、そして現在のバリュエーションを考慮すると、株式や債券の期待リターンは低下しており、少なくとも2009年以降の市場リターンを大幅に下回るからです。

 

さらなるQEが発表されたとしても、10年国債利回りがこれまでと同じように低下する可能性は低いと思います。ベータ・リターンが10%の時、2%のアルファはボーナスのようなもので、どうしても必要なものではありませんでした。しかし、ベータ・リターンが5%の時、2%のアルファは極めて重要な意味を持ちます。こうした環境では、投資家はより低いリターンを受け入れるか、それともこれまで同様高リターンを追求するため別の戦略を採用するかの選択に直面することになるでしょう。

QEの影響が薄れるにつれ、セクター間のボラティリティ (異なるセクターや証券間のパフォーマンス格差) も再び高まりそうです。緩和マネーが市場に溢れている時は大半の資産が値上がりするため、インデックス投資により実質的に「市場をまるごと買う」ことで値上がり益を享受できるので、銘柄選択の重要性は低下します。ところが、市場リターンが正常な状況に戻ると、セクターや証券間のリターンのばらつきが再び大きくなり、運用会社にとってアウトパフォームする資産を買い、アンダーパフォームする資産を回避することで他社との違いを示す腕の見せ所となります。すべての証券が同じ方向に動く極端な状況においては、アクティブ運用によるアルファ獲得は困難です。しかし、証券間のリターン格差が大きくなると、市場と一線を画すアクティブ運用の出番です。今後はアクティブ運用が単に重要になるだけでなく、それによる超過リターンの獲得機会も増えてくると思います。


パッシブ戦略は創造的破壊の恩恵を受けるのに適していない

パッシブ戦略はリスクが低いという認識も考え直す必要があるかもしれません。パッシブ戦略は投資リスクがないと勘違いする投資家も少なくありませんが、これは間違いです。例えば、大半の株式インデックスは時価総額で加重平均されるため、パッシブ戦略では時価総額の大きい企業をオーバーウェイト、時価総額の小さい企業をアンダーウェイトにすることになります。つまり、インデックスに追随するパッシブ戦略は、今最も成功している企業が今後もそうあり続けることを前提にした投資と言えます。しかし、常にそうとは限りません。 例えば、IBM、Philip Morris、Coca‑Cola、General Electric はいずれも時価総額がかつて S&P500銘柄の中でトップ10に入っていましたが、2019年8月31日までの10年間の累積リターンはインデックスをそれぞれ189%、112%、63%、270%下回っています。

パッシブ戦略はそもそも、創造的破壊がもたらす変革の波に乗るのに適していません。かつてKodak、Nokia、Xerox、Blockbuster、 Yahoo はそれぞれの分野の支配者でしたが、創造的破壊のインパクトを読み誤り、その波に飲み込まれてしまいました。今日の支配者はAppleやAmazon などのデジタル企業です。もちろんこれらの企業は今後10年かそれ以降も好業績が続く可能性はありますが、それを前提とするのは賭けであり、このリスクを認識することが大切です。創造的破壊がもたらす変革を敏感に察知できる腕の良いアクティブ運用マネジャーであれば、それにより壊滅的な打撃を受ける企業を回避するだけでなく、その恩恵を受ける企業に投資する形でポートフォリオを積極的に運用することができます。

債券のパッシブ運用はこれから株式以上に難しくなると思います。ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル・アグリゲート債券インデックスは発行体の発行残高で加重平均されるため、インデックスに追随するパッシブ運用は発行残高が最も多い発行体をオーバーウェイトにすることになります。債券ポートフォリオの約40%を米国債に配分しても問題ないかもしれませんが、日本国債に16%前後配分したり、イタリア国債をオーバーウェイトするのはより大きなリスクを伴います。

 

市場ではボラティリティとリターン分散が再び高まる見込み


中銀による金融緩和の景気刺激効果が薄れるにつれ、金融市場を人為的に支えてきた力が弱まりそうです。そうなると資産は現在の過大なバリュエーションから「真の」価値に戻る可能性が高く、世界経済は今後数年、ボラティリティがかなり高まりそうです。しかも、米中貿易戦争、英国の欧州連合 (EU) 離脱問題、世界各地でのポピュリズム (大衆迎合主義) の台頭など、潜在的な波乱要因は山積みで、セクターや資産クラス内で大きなローテーションが予想されます。こうした環境では、パッシブ戦略は金融危機以降の長きにわたる安定成長期に比べてパフォーマンスが低下しそうです。
 

だからといって、パッシブ戦略への投資が間違っているとか、パッシブ戦略の役割が将来的になくなるというのではありません。パッシブ戦略は投資家のポートフォリオにおいて今後も重要な役割を果たすと思われますが、使われ方がこれまでとは違いそうです。例えば、パッシブ戦略をポートフォリオのコアに据え、アクティブ戦略を「サテライト」投資として使うことがよく推奨されますが、将来的には逆になる可能性があります。つまり、アクティブ戦略をポートフォリオのコアとして積極的に活用し、パッシブ戦略を主にテーマ的なサテライト投資として使うということです。コアのアクティブ戦略は、長期投資の恩恵を受け、キャッシュフロー面の混乱を最小限にするには頻繁に変更しないことが大切で、一方、テーマ的なサテライト投資はより定期的に入れ替えるのが好ましいと思います。

こうした動きが今後数年で鮮明になるでしょう。一方、今後は中銀による景気刺激策の効果が弱まると予想されるため、将来の変化に備えたい投資家は、少なくともポートフォリオにおけるパッシブ戦略の役割の見直しや、高いリターンを確保するためアクティブ戦略をいかに活用するか検討する必要があると思います。

 

次の注目点


中銀が景気刺激策を拡大するのか、それとも縮小するのか引き続き注視してます。QEの影響が次第に薄れるにつれ、金融市場では多くのセクターにおいてリターンが総じて低下し、ボラティリティやリターン分散が再び高まり、インデックス連動戦略の長きにわたる好パフォーマンスの時代が終わる可能性が高いと考えています。既に一部の投資家がアクティブ戦略への傾斜を強めている兆しが見られますが、こうした動きが続くかどうか引き続き注視していきます。
 

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