T. Rowe Price

2019年9 月 / インサイト

米中休戦が世界経済の回復を後押しする可能性がある

世界経済の運命は米中貿易交渉の進展にかかっている

6月のG20サミットの際に行われた米中首脳会談では米国が対中制裁関税第4弾の発動を先送りする形で一時休戦となりました。これはおそらく望みうる限り最善の結果だと思います。貿易協議が今後どのように進展するのかは不透明で、米中の間にはまだ解決すべき厄介な問題が残っていますが、双方が引き続きテーブルに着き、さらなる進展があれば、世界経済は回復へ向かう可能性があると考えています。

多くの市場参加者が差し迫るリセッション(景気後退)を心配している時に、私がこのように比較的楽観的な見方をしているのは、リセッションの前提条件が揃っていないと考えているからです。世界経済が立て続けにショックに見舞われ、過去18ヶ月は資本形成が鈍っているため、製造業セクターはリセッションの様相を呈しています。しかし、過剰な投資ブームや消費ブームなど、不況によって一掃されるべき経済の不均衡は見られません。社債の発行残高は増えていますが、これは利益率の上昇や安定により相殺されており、低金利とタイトな信用スプレッドのおかげで債務返済コストは低水準にとどまっています。

米国債のイールドカーブが一時、逆イールドとなり、リセッションの警戒信号が灯りましたが、イールドカーブ単独のメッセージにそこまで強い意味があるとは思えません。
さらに、中央銀行がこれまで実施してきた量的緩和の影響でイールドカーブが歪められている点にも留意する必要があります。私にとって、イールドカーブは経済の全体像を写す鏡というより、それを構成する要素の一つに過ぎません。

景気後退の明白な契機や兆しは見られず、回復の種は、①金融政策の超緩和型へのシフト、②不確実性の低下--という2つの要素にあると考えています。①はすでに起きており、米連邦準備理事会(FRB)、中国人民銀行、欧州中央銀行(ECB)などが緩和姿勢を強めています。米中貿易戦争の休戦が続けば、②の不確実性の点においても進展が見られるでしょう。

しかし、多くは米中貿易協議次第です。先のG20での協議が決裂していたら、追加関税や輸出禁止に発展し、金融状況が急速に悪化して世界的なリセッションが間近に迫っていたでしょう。

向こう数年の世界経済の運命は米中貿易協議の結果にかかっていると言っても過言ではなく、引き続き微妙な均衡状態にあります。米中貿易戦争は2つの大きな要素に分解できると考えています。第1の要素は差し迫った貿易の問題で、第2の要素は米中の政治関係が長期的にいかにして形成されるかという遥かに深い問題です。

第1の要素では進展していると考えています。解決策を見出すことが明らかに米中双方の利益になり、中国の習近平国家主席とトランプ米大統領のどちらにも適切な譲歩をするのに必要な国内政策の余地があるからです。従って、貿易協議が何らかの形で決着することは十分あり得ると考えています。

両国の長期的な野望は概ね相容れないものであるため、第2の要素はもっと複雑です。中国は一党独裁体制を維持しつつ、インド太平洋地域における支配的地位の確立を目指しています。

一方、米国の政治システムは民主主義の普及を支援することを目指しています。米中両国は政治や経済の分野での利害を巡る長期戦に引きずり込まれそうです。事実、米国が世界の安全保障にとって脅威と考える中国の通信機器大手 Huawei を巡る厄介な問題が示すように、この戦いはすでに始まっています。

しかし、投資ホライズンの範囲内で、そして米中休戦が続くと仮定すれば、世界経済はやがて改善の兆しを見せると考えています。大幅な景気減速の最も良い点は、それによって回復の余地が生まれることです。景気低迷時に鬱積した資本財に対する需要がある程度累積する可能性が高く、目先の景気後退を回避できれば、現在の減速は次の拡大の寿命を延ばすのに寄与するでしょう。全体的に見て、私はリスク資産にとって好ましい環境が整いつつあると考えており、リスク資産の中では社債などクレジット商品よりもエマージング市場資産や株式に投資妙味があると思います。

 

201909-944635
 

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