T. Rowe Price

2019年9 月 / インサイト

アセット・アロケーション担当者が直面する3つの新たな問題

資産配分に関する長年の前提がもはや通用しない

サマリー

  • 次のリセッション(景気後退)がいつ訪れるのかに関してコンセンサスがないことがアセット・アロケーション(資産配分)担当者に難しい問題を突きつけている。
  • その仕事をさらに難しくしているのが、資産配分に関する長年の前提がかつてほど信頼できなくなってきた事実である。
  • 来るべき景気後退に備えてポートフォリオを調整しようとするアセット・アロケーション担当者には、アクティブな国別/セクター配分やデュレーション管理に基づく異なるアプローチが有効かもしれない。

世界経済は拡大期の最終局面にあり、リセッションがそろそろ訪れるというのが一般的な見解です。しかし、景気後退がいつ来るのかに関してはコンセンサスがなく、このことがアセット・アロケーション担当者に難しい問題を突きつけています。彼らには、来るべきリセッションに備えてポートフォリオのポジションを調整すると同時に、その間進行する市場の上昇を取り逃がさないという絶妙のバランス感覚が求められています。
その仕事をさらに難しくしているのが、資産配分に関する長年の前提のいくつかが従来ほど信頼できなくなってきたことです。古い慣習はなかなか変えられず、難しい問題に直面した時は、実証済みの旧来の手法に頼りたくなるかもしれません。しかし、将来に備えてポートフォリオを効果的に調整するには、アセット・アロケーションに関するその核となる信念のいくつかを考え直すべき時かもしれません。以下に、アセット・アロケーションに対する伝統的アプローチに関する3つの大きな問題を示しました。

1. 平均的な相関係数はあまり参考にならない

アセット・アロケーション担当者がポートフォリオの異なる各要素が互いに対してどう動くのか予測しようとする時、過去の平均的な相関係数を使うのが普通です。しかし、最近のデータは確率分布のレフトテール(ダウンサイド)とライトテール(アップサイド)、つまり株式市場が非常に好調な時と非常に不調な時の相関関係が従来と大きく変わったことを示唆しています。おおまかに言うと、正相関であることが有益な(株式のパフォーマンスが非常に良い)時は実際には逆相関となることが多く、逆相関であることが有益な(株式のパフォーマンスか非常に悪い)時は正相関となることが多いのが現実です。

より正確に言うと、いかなる時でも相関が正相関か逆相関かを決める重要な要因は、その時点で市場に支配的な影響を及ぼすものが景気サイクルと金融政策のどちらかという点です。

景気サイクルが市場の支配的要因である時、逆相関となる傾向があります。リセッションに突入しようとする時、株価が下落する一方、債券価格は上昇します。リセッションから脱しようとする時は、株価が上昇する一方、債券価格は下落します。しかし、資産価格が景気サイクルよりインフレや中央銀行の行動のような要因の影響を多く受ける時、株価と債券価格が正相関となる傾向があり、例えば、高インフレ時は株式と債券がともに下落し、中央銀行による緩和政策が予想される時はどちらも上昇します。

こうした点から、特定の環境では平均的な相関係数を使うことが効果的でないことや、相関関係の変化に対する理解を深め、ポートフォリオを適宜調整することがより良いアプローチとなり得ることが容易に理解できます。例えば、リセッション懸念が資産価格を圧迫すると思われる場合、投資家は債券をオーバーウェイトにする一方、株式をアンダーウェイトにするでしょう。しかし、資産価格に大きな影響を及ぼすのが中央銀行の金利である場合、投資家は両資産への配分を減らすかもしれません。相関度の変動要因に対するより洗練されたアプローチの開発は、シンプルな相関係数を使うよりはるかに複雑ですが、長期的には報われると思います。
 

2. (変動要因ではなく)分類を使ってポートフォリオを構築する際の問題

伝統的に、マルチアセットの投資家は資産を株式、債券、オルタナティブという3つの広範なカテゴリーに分けます。しかし、時間の経過とともに、それぞれのカテゴリーの中でも新たな分類が増えてきました。
株式は国や地域ごとに分けられ、債券にはソブリン債(国債)、投資適格債、ハイイールド債、現地通貨建てエマージング債券の区分があり、 オルタナティブはヘッジファンドとプロパティ(不動産)ファンドに大別されます。しかしながら、ハイイールド債やエマージング債券など債券の新たなカテゴリーは、国債よりも株式との相関が高いのが特徴です。

株式のような動きをする資産が債券への配分の中に含まれると、ポートフォリオ全体のパフォーマンスに歪みが生じるため、これは問題となります。 例えば、伝統的な株式60%/債券40%を基本配分とするファンド・マネジャーがハイイールド債に多く投資している場合、実質的に株式60%のポートフォリオよりリスクがかなり高いポートフォリオを運営していることになり、株式が上昇するとアウトパフォームする半面、株式が急落するとアンダーパフォームする可能性が高くなります。

これを避けるには、株式、債券、オルタナティブという伝統的な区分に囚われず、「グロース」、「ディフェンシブ」、「無相関」などのように、資産がどのような動きをするのかに焦点を当てた新たな区分を採用する必要があるかもしれません(図表1)。「グロース資産」には日本株、欧州株、米国株、ハイイールド債、現地通貨建てエマージング債券が含まれ、「ディフェンシブ資産」には主要国国債や投資適格債が含まれ、「無相関資産」には株式ロング/ショートやその他ヘッジファンド戦略が含まれます。
 

 

3. 債券はあなたが思っているものと違うかもしれない

アセット・アロケーション担当者にとって最後の難関は、ソブリン債のような伝統的な債券資産でさえもはやかつてのような動きをしないかもしれない点です。従来、先進国国債は全体のリターンがかなり低い半面、デュレーション(金利変動への感応度)が低く、株式や株式的な動きをする資産よりボラティリティが低いのが特徴でした。しかし、最近はデュレーションが高まるとともに、債券利回りが急低下しています。現在の利回りやデュレーション水準を使って、過去30年のソブリン債のパフォーマンスを再計算すると、 この資産クラスのボラティリティは30~40%高くなります。

デュレーションが低い時は、利回りが5%変化しても、債券価格への影響は限定的です。 現在はデュレーションがはるかに高いため、同程度の利回り変化は債券価格へ非常に大きな影響を及ぼすでしょう。このことはソブリン債はかつてよりリスクが格段に高くなったことを意味しますが、現在の高いデュレーション水準を反映していないシンプルなモデルではこれは特定できないでしょう。
 

より洗練されたアプローチを採用すべき

来るべき世界的な景気後退に備えポートフォリオを調整しようとするアセット・アロケーション担当者には、伝統的な前提の一部を捨て去り、アクティブな国別/セクター配分やデュレーション管理に基づく異なるアプローチが有効かもしれません。世界各国が金利サイクルの異なる局面にある現在のような時は、様々な国や市場に分散し、低相関資産で構成されるポートフォリオを構築する好機だと思います。こうしたアプローチは、今後ボラティリティが高まりそうな市場環境を乗り切る上で最も効率的な方法だと考えています。

 

201909-942198

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