T. Rowe Price

2019年7 月 / インサイト

米ヘルスケア業界のクオリティ企業は目先の逆風に耐えられる

大統領選が近づくにつれ、米医療保険制度改革を巡る思惑がヘルスケア・セクターを圧迫している

サマリー

  • 米大統領選挙まで1年以上あるが、医療保険制度改革はすでに2020年選挙の主な争点の一つになりつつある。
  • 共和党と民主党の大統領候補が医療保険制度について非常に異なる考えを持っているため、それに関する不透明感が2019年はヘルスケア・セクターを圧迫しており、同セクターは米市場全体を大きくアンダーパフォームしている。
  • ヘルスケア・セクターのボラティリティは当面高止まりしそうだが、我々は長期パフォーマンスを決定するのは企業のファンダメンタルなクオリティであると考えている

米国では大統領選が次第に関心を集める中、2019年は医療保険制度改革を巡る思惑がヘルスケア・セクターを圧迫し、同セクターはボラティリティが高まっています。大統領選まで1年以上ありますが、医療保険制度改革は2020年選挙の大きな争点の一つになりつつあります。同セクターのボラティリティは当面高止まりしそうですが、我々は長期パフォーマンスを決定するのは企業のファンダメンタルなクオリティであると考えています。

 

US Healthcare Volatility Insight


ヘルスケア・セクターにおけるボラティリティの原因は?

2020年米大統領選挙の民主党候補は、医療保険に関して実現手法には意見の違いがありますが、総じて国民皆保険制度を好みます。単一支払者(single-payer)制度を支持する向きがある一方、 政府が運営する医療保険と民間の医療保険の組み合わせを提唱する向きもあります。共和党は全般に単一支払者制度には反対で、医療保険制度改革については政府の干渉を最小限に抑える自由市場的アプローチを好みます。2019年は医療保険制度を巡る政治的不透明感がヘルスケア・セクターを圧迫しており、大統領選の帰趨が判明するまで、こうした状況が続きそうです。
 

目先の懸念材料を長期的な視点から考える


ヘルスケア株の投資家にとって最大の懸念は、民主党のバーニー・サンダース上院議員が支持する「メディケア・フォー・オール(国民皆保険)」法案です。単一支払者制による医療保険制度では、政府が保険料を徴収し、医療費を支払います。この抜本的改革案は過激すぎると受け止められるかもしれませんが、同氏が2020年11月の大統領選で勝つ場合、それが実現する可能性は否定できません。

我々はこのような結果になる可能性は非常に低いと考えていますが、大規模改革が話題になるだけでも短期見通しに不透明感が強まり、ヘルスケア・セクター全般に対する株式のリスク・プレミアムが上昇しています。

しかし、長期見通しについては大局的に考える必要があります。サンダース氏の法案が実現するには、超えなくてはならない大きなハードルがいくつもあります。まず、同氏は民主党の予備選を勝ち抜き、そして共和党候補との本番も制し、大統領にならなければなりません。

次に、大統領に就任した後も、その過激な医療保険制度改革案を成立させるには、民主党が上下両院で過半数の議席を獲得する必要があります。最後に、財源の確保には、副大統領が約32兆ドル1の追加的医療支出を予算中立ベースで承認する必要があります。従って、追加支出の分だけ他の項目の費用を削らなければなりません。

こうしたハードルをすべてクリアできる可能性は極めて低いと思います。しかし、今後12-18ヶ月の間に選挙戦が次第に本格化するにつれ、このセクターにはある程度のリスクが常に織り込まれると予想されます。


マネージドケア企業に関する不透明感が最も強い


単一支払者制による国民皆保険制度が導入された場合、マネージドケア(管理型医療システム)企業はそのビジネスモデル全体が必要なくなるため、最も大きな悪影響を受けるでしょう。 従って、このシナリオが実現する可能性は低いものの、2019年はマネージドケア・サブセクターの値動きが最も激しくなっています。

現行の医療保険制度では、個々のマネージドケア企業が顧客に代わりより安い処方薬を含め、交渉によって医療費の削減に努めます。提案されている単一支払者制によるメディケア・フォー・オール制度では米連邦政府が直接、すべてのアメリカ国民に代わり交渉します。これは、購入価格を決定できるほど独占的な購買力を持つ単一支払者を誕生させることになります。英国では国民医療制度(NHS)がそうした制度の持つ潜在的な力をまざまざと見せつけており、処方薬価格がどの先進国よりも安くなっています。それは消費者にとっては朗報ですが、より安い製品価格を受け入れざるを得ない製薬会社にとっては悪い知らせです。
 

米国大型グロース株式運用戦略ではファンダメンタルなクオリティを最重視


運用の観点からは、目先の環境が不透明でもファンダメンタルな企業分析の重要性は変わりません。私がポートフォリオ・マネジャーを務める米国大型グロース株式運用戦略では、企業のクオリティを理解する複雑な作業を出発点として、共和党と民主党のいずれかの候補が大統領になる可能性と、どちらかの政党が上院と下院を制する可能性を考慮した確率のフレームワークを適用します。次に、株価の面で各企業に対してどの程度のディスカウントが適切か、そして実際のディスカウント幅が我々が妥当と考える水準からどの程度乖離しているか判断するため、このようなシナリオを各ヘルスケア企業の価値に重ねて分析します。

確かに、現在の環境ではヘルスケア・セクターに対するエクスポージャーを微調整するのはより難しい状況です。我々は3-5年の期間では同セクターに対して前向きな見方をしていますが、今後12-18ヶ月の間に大統領選の進展に伴い状況が変化するため、この業界を取り巻く環境がどのようになるのか正確に予測するのは至難の業です。


それでも、相対的なポジショニングにおいて先を見越した行動をとることは可能です。ファンダメンタルな企業分析を通じて、我々はどの企業が悪材料を過度に織り込んでいるのか、リスクを十分織り込んでいないのかをある程度把握できます。当運用では、最適な売却タイミングを計ってその後買い戻すのではなく、上記の洞察に基づき、マネージドケア・サブセクターの保有銘柄に相対ベースで優勢順位を付け直します。


特定のマネージドケア企業のファンダメンタルなクオリティについて我々は確信を維持しています。これは、市場で全般に過小評価されている成長ドライバーに関して我々が深い見識を有する分野です。こうした銘柄については長期的にポジティブな見通しを堅持しているため、今後12-18ヶ月の期間におけるボラティリティのある程度の上昇を許容する方針です。
 

長期の趨勢的トレンドの恩恵を受ける企業に投資


ヘルスケア・セクターでは、我々は息の長い趨勢的トレンドの恩恵を大きく受ける企業を探しています。医療機器やロボット技術におけるイノベーションはそうした注目分野の一つです。まだ比較的初期の段階にある手術支援ロボット市場で圧倒的な存在であるIntuitive Surgical はその代表例です。トップシェアを誇る同社の手術支援ロボット「DaVinci」 は、切開部分を最小限にする低侵襲の手術ができるため、人工股関節置換手術から胸部心臓手術、脳神経外科手術に至る分野において臨床転帰や患者の回復時間で圧倒的な成果を残しています。ロボット工学と技術的進歩が患者治療に革命をもたらしており、人間による手術にロボットが正確かつ巧みで安定的なサポートを提供しています。我々はいま歴史に残る大きな変化を目撃しており、米国の一般外科手術の生態系においてロボットの普及が急速に進み、この分野のトップ企業の売上高や利益を押し上げています。

Stryker は、ヘルスケア・セクターにおいて独自のストーリーを持つもう一つの魅力的な企業で、股関節や膝の置換手術に特化している革新的な企業です。同社は股関節や膝の人工代替物の3D印刷におけるトップ企業で、さらに独自のロボット技術を駆使して、Intuitive と同様、患者の治療結果を劇的に改善させています。この結果、同社はライバルから急激な勢いで市場シェアを奪っています。

これら2社は専門性や参入障壁が大変高いビジネスモデルを確立しているため、ヘルスケア・セクターの他の特定分野で現在顕著な政治要因による不確実性にあまり影響されません。例えば、ひとたびロボット機器が病院に導入されて、外科医がその使い方に慣れると、新たな機材や最新設備を別の会社から購入するのは業務に支障をきたし、効率も良くないため、これらの企業は先行者利益を獲得することになります。このような形でIntuitive や Stryker のような企業は最初に導入された技術や設備に必要な消耗品や最新版を継続的に販売することによって業界の一大勢力となっています。

 

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