T. Rowe Price

2019年7 月 / INVESTMENT INSIGHTS

急激に変化する世界において革新的企業はいかにして圧倒的な優位性を確立したのか?

テクノロジーがキャパシティを解き放つ中、市場における勝者の見極めが肝心

サマリー

  • 空前のカネ余りや新たなテクノロジーの出現が追い風となり、創造的破壊のトレンドは引き続き加速し、業界や経済を大きく変えている。
  • こうしたトレンドの影響により、現在のような低成長環境では利益が一握りの成功した企業に集中するようになり、投資家のリターンに影響が出ている。
  • このため、変革の波に乗る企業を発掘するためのアクティブな投資アプローチが求められる。

私たちは急激な変化の時代に生きています。現在は創造的破壊が随所に見られ、低金利とカネ余りがこれを加速しています。しばしばそれは先に動いた者が獲物の大部分を獲得する「勝者独り勝ち」の構図となりがちです。また、それは爆発的なスピードで進展することもあり、特に、イノベーションが熱狂的な消費者の需要と結び付いて、既存の市場を一変させる大ヒット商品が生まれる時はそうです。コストやクオリティの面で競争力の強い新規参入者が登場すると、古いビジネスモデルは一蹴されてしまいます。一方、初期のアイデアを確立されたビジネスに育てるのに必要な時間が大幅に短縮され、既存企業がそれに対応することが難しくなっています。

投資家には、こうした変化の経済や市場への影響を理解することが必要不可欠です。個別銘柄レベルでは、変革の波に乗る企業とそれに翻弄される企業のリターン格差が非常に大きく、この傾向は今後も続くと思われるため、創造的破壊のインパクトを理解することはさらに重要です。
 

テクノロジーがキャパシティを解き放っている

- David Eiswert

イノベーションと自然独占により業績に大きな差が出る

創造的破壊の結果、幅広い業界にわたって企業業績に大きな差が生じており、それまで市場を支配してきた多くの企業がその犠牲になっています。被害者には、動きの遅い実店舗小売企業、減少するユーザーと広告収入に依存する伝統的メディア企業、長年確立されたブランドの独占的優位性が失われている消費財メーカーなどがあります。

歯磨き粉のようなシンプルな商品のメーカーでさえ適応と競争に苦労しています。既存の日用品メーカーは、販売方法や購入形態を規定してきたモデルが根本的に変わり、苦戦を強いられています。eコマース(電子商取引)は棚スペースが無限にある一方、スーパーの売り場には限りがあります。広告や顧客エンゲージメント(商品やサービスを提供する企業と顧客の間の関係)のパターンも変わりました。伝統的なテレビ広告や活字広告は、即時購入・翌日配達が可能なInstagramやYouTube上の近代的な販売促進手法にシェアを奪われています。

eコマースとソーシャル・メディアが広告の参入障壁を引き 下げ、予測不能な消費者嗜好の変化に拍車が掛かる

- David Eiswert

 

家庭用娯楽作品のストリーミングおよびウェブ配信におけるイノベーションの結果、娯楽コンテンツの配信と制作の両方においてオンディマンド・サービスが伝統的なCATV会社に挑めるようなりました。ウェブを通じてサービスを提供している会社はグローバルな事業展開に成功し、視聴者ニーズを分析する際、かつてないほど膨大なデータにアクセスできるようになりました。対照的に、一括契約型チャネルに依存する伝統的なCATV会社やコンテンツ制作会社は苦境に立たされています。決定的に重要なことは、創造的破壊の勝者が圧倒的な勝利を収める一方、敗者は惨敗していることです(図表1)。

これらはすべて、現在の低成長・低金利環境において入手可能な流動性と余剰資金の量によって増幅されています。投資家は低利で調達した資金を、利回りを求めて、こうした創造的破壊をもたらす革新的企業へさらに注ぎ込んでいます。
 

 

地域間でも大きな差が出現

社会政策、金融状況、産業ダイナミクスなどの各地域のファクターによる影響も見られます。この結果、テクノロジー革命の勝者の多くが米国と中国に集中する一方、欧州などの地域では動きの遅い企業がその犠牲になっています。

図表2は欧州がこの点でいかに遅れているかを示しており、新たなテクノロジー・セクターにおける「国家/地域」的なチャンピオン企業の育成に欧州が参加していないことの表れです。なぜこのような差が生まれたのでしょうか? それはイノベーションの多くは先発者に有利に働くからです。つまり、先発者はいち早く競争優位を確立し、グローバルな事業展開や圧倒的な財務力を兼ね備えた独占体制を築くことができます。

現状を一変させるイノベーションの多くは米国と中国の特定の分野に集中しています。シリコンバレー(やシアトル)は、 Microsoft、 Amazon、Apple、Alphabet、Facebookの巨大テクノロジー/プラットフォーム企業5社だけで4兆ドル以上の時価総額を生み出しました。この驚異的な成長は、これらの企業の世界的な事業展開とイノベーションへの投資によって達成されました。

 


中国もこの現象からとてつもなく大きな恩恵を受けており、それを牽引するのは同国が誇るチャンピオン企業です。これらの創造的破壊者の成長を手助けしたのが、外国のウェブ・プラットフォームを排除する同国の決定(Google の検索エンジンは2010年に中国においてブロックされた)です。中国政府は規制、税基盤、インターネット・セキュリティに対するコントロールを維持するという目的も達成しました。

それだけにとどまらず、中国の巨大インターネット企業は米ライバル企業の進化を追い越す好機を捉え、技術革新の最も重要な要素を取り入れ、それを新たなレベルに引き上げることに成功しました。Alibaba は多くのウェブベース・イノベーションの集合体となり、米国のPayPal、Amazon、 Facebook、YouTube、 Instagram、Google の機能を実質的に1社で兼ね備えています。こうした業務範囲の広さが同社にその顧客基盤に対する並外れた知見を与え、同社が提供するサービスや事業の売上や利益を大きく伸ばすことを可能にしています。

これに対し、欧州は、政策決定の不統一、インターネット規制の不備、プライベート・エクイティによる資金調達や域内イノベーションの欠如など対応すべき問題が山積みです。この結果、欧州はテクノロジーの域内チャンピオン企業が不足しており、 地域別MSCI インデックスに占める 「破壊的テクノロジー」分野のウェイトは約5%と中国の40%弱や米国の約33%を大きく下回っています(図表3)1

もちろん、金融(18%)、生活必需品(15%)、ヘルスケア(13%)、コモディティ(16%)分野を好む向きには欧州は投資先が豊富にあります。しかし、これらのセクターの域内チャンピオン企業は、低成長、価格決定力の弱さ、中国の脱工業化などの試練に直面しています。欧州の政策当局は成長率やインフレ率を高めるため財政・金融面の刺激策に焦点を当ててきましたが、急激な技術革新は我々が「デフレの進行」と呼ぶ現象を引き起きしています。石油・ガス供給から金融サービス、電気自動車に至るあらゆる分野のキャパシティを解き放つことは、インフレ圧力が抑制されることを意味します。供給能力の拡大はモノやサービス価格の低迷や下落を意味すると同時に、業界が変化する中で大手既存企業が市場シェアを失うことも意味します。

 

バリュー株の大半は変革の波に翻弄されている

バリュー株は過去10年の大半を通じてグロース株をアンダーパフォームしてきました。バリュー株に入れ替えるべき時が来たと考えるべきでしょうか、またはこのトレンドの背景には何らかの要因が存在するのでしょうか?

大半のグロース株はバリュエーション面で市場や過去の水準と比べてまだ妥当な水準にあります。バリュエーションを考慮する際には、経済成長やインフレに依存した割安な銘柄は、消費やメディアセクターにおける破壊的創造の犠牲となっている銘柄と同様に、通常、変化の間違った側にいる企業である点を認識する必要があります。また、バリュー株の中には、急速なペースで消耗している企業が存在することから、急激な技術面の変化が企業の長期的な潜在性に及ぼす微妙に異なる影響を特定することが重要です。

こうした変革の波に乗るには、投資家はテクノロジー革命の微妙に異なる影響についてのより深い知見が求められる

- David Eiswert

 

明日の変革を常に警戒

変革の原動力である要因を理解し、勝者と敗者を見極め、大きなポジションを取るべき時期やリスクが潜在的なリターンを上回る時を判断するのは難しく、複雑な作業です。しかし、変革に関する知見や、それが企業や業界にとって何を意味するのか想像力を働かせることは、銘柄選びの腕が一番問われるところです。勝者と敗者の明暗が鮮明になっている現在、変革の波に乗ることがかつてないほど重要になっています。

創造的破壊は国境を越えて起きるため、グローバルな視点に立つことが大切です。バリュエーションに着目した参入ポイントが重要で、投資家は市場の混乱時にベストアイデアに投資する勇気もある程度必要です。時に難しい選択が必要ですが、そういう時こそスキルや経験、そして将来のリターン機会に関する知見が役に立ちます。

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