T. Rowe Price

2019年8 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境(2019年7月)

1. 市場テーマ

予防的利下げでは終わらない可能性も

米連邦準備理事会(FRB)は予想通り、景気減速への予防的措置として政策金利であるFFレートの誘導目標を2008年以来初めて引き下げ、保有資産の圧縮についても2ヶ月前倒しで終了しました。今回の0.25%の利下げは、一部専門家の期待を下回り、パウエルFRB議長が「これは緩和サイクルの始まりではなく、『サイクル半ばでの調整』」と発言したことから、市場では「タカ派的」と受け止められました。しかし、歴史は「予防的利下げ」がしばしば利下げサイクルの起点となることを示しています。トランプ大統領が翌日ほぼすべての中国製品に追加関税を課す「対中制裁第4弾」の9月1日発動を発表したため、さらなる利下げが必要となりそうです。この報を受けて、米10年国債利回りは2016年以来の水準まで低下しており、次の利下げはすぐ近くに迫っているかもしれません。
 

EUは新英首相の強硬路線に屈するのか?

英与党・保守党の党首選では予想通り、ボリス・ジョンソン氏が党首に選ばれ、英首相に就任しました。就任後、ジョンソン氏は欧州連合(EU)離脱への支持集めに奔走しており、メイ前首相がEUと合意した離脱協定案の再交渉を引き続き目指しています。ジョンソン氏はEUが強くこだわるアイルランド国境問題に関するバックストップ(安全策)の削除を求めており、「合意の有無にかかわらず、10月31日にEUを離脱する」と明言し、交渉相手のEUへの圧力を強めています。双方の主張に隔たりが大きく、期限まで3ヶ月もないため、「合意なき離脱」の可能性が危険なほど高まっています。こうした不透明感を背景に英ポンドは2年ぶりの安値に沈んでおり、合意なき離脱が現実となる場合は一段安となるのは必至でしょう。英議会は与党が過半数を辛うじて上回る状況で、新EU派が提出する内閣不信任案が可決される可能性もありますが、仮に総選挙が実施されたとしても、強硬離脱の阻止に十分な議席を単独で獲得できる政党があるかどうかは不透明です。


米多国籍企業は逆風下の減益決算


米主要企業の2019年4-6月期決算発表も終わりに近づき、予想を上回る企業が多かったため、結局、前期比で若干の増益となりそうで、収益落ち込みへの懸念は和らぎました。しかし、米多国籍企業には世界経済の減速、ドル高、貿易摩擦が逆風となっており、特に、売上の海外比率が50%を超える企業は2ケタの減益となりました。対照的に、売上の国内比率が高い企業は堅調な個人消費に支えられ、 1ケタ半ばの増益を記録しました。ただ、トランプ大統領が発表した対中制裁第4弾の追加関税の対象は玩具、衣料品、スマートフォンなど消費財が多いため、これが個人消費の減少につながり、内需型企業にも悪影響が出始めるかもしれません。

 

 

2. 各国・地域の経済環境

 

 ポジティブ
ネガティブ
米国
  • FRBの金融緩和と物価安定
  • 健全な個人消費、好調な雇用、賃金の改善
  • 金利低下を受け、住宅部門が持ち直し
  • 長期的優位性を有する企業(クラウド・コンピューティング、ネット通販など)の割合が他の国より多
  • 貿易協議は米中が依然として対立
  • 大型減税効果の剥落に伴う成長鈍化
  • 目先の収益期待が低下
  • 設備投資の鈍化と企業景況感の悪化
  • 景気サイクル終盤の懸念: 労働需給の逼迫、賃金の上昇、利益率の頭打ち
  • 高水準の企業および政府債務
欧州
  • 金融政策が一段と緩和的になっている
  • 中国の景気対策の間接的な恩恵を受ける
  • 景気安定の兆しが見られる
  • 配当利回りが依然として高い
  • ユーロ圏経済は低迷
  • ECBの対応余地は限られる
  • 地政学リスクが依然として高い(ブレグジット等)
  • 輸出は弱く、貿易問題や中国経済の行方に左右される
  • 銀行セクターは厳しい状況が続いている
中国
  • 景気対策の効果はまだ見られない。最近のデータはまちまちだが、成長軌道の底入れを宣言するのは尚早
  • 金融政策は慎重な対応と言えるが、中小企業や銀行向けなど特定の問題を抱えている分野に対処するため、新たな予防的措置が講じられる可能性がある
  • 人民元安が景気を当面下支える見込み
  • 米中貿易戦争の影響はまだ完全に顕在化しておらず、特に、設備投資計画、サプライチェーン、貿易への影響が懸念される
  • 米国に対する強硬な政治スタンスは中期的に好ましくない結果を招く恐れがある
  • 食品などコモディティ価格の上昇によるインフレ・リスクが一段の利回り上昇を招き、景気対策の効果を損ないかねない
日本
  • 景気失速により景気や企業業績に対する期待が大きく低下し、ポジティブ・サプライズが生じる可能性も
  • 最近のデータはまちまちだが、一部に成長鈍化が底入れした兆しも見られる
  • 日本株は割安感が強い。一方、自社株買いや自己資本利益率(ROE)を通じたガバナンス改善、スタートアップ企業の増加などは引き続き過小評価されている
  • 企業業績は世界経済の動向に非常に敏感で、世界経済は現在せいぜい潜在成長率を下回る水準で安定している程度
  • 日銀は超緩和政策を継続しているが、景気が突然悪化した場合の追加緩和の余地は小さい
  • 日本円はバリュエーションの安さ、不安定なリスク・センチメント、対米金利差縮小などから上昇する可能性が高い。109円を超える円高・ドル安は業績に対する懸念を高める
  • 韓国との貿易関係の悪化により新たな不透明感が台頭
オーストラリア
  • 景気は底堅さを見せており、企業景況感は安定し、住宅関連の下振れリスクも後退してきた
  • オーストラリア準備銀行(RBA) は予想通り利下げに踏み切り、金融状況が緩和された。財政刺激策も景気を下支える見通し
  • 豪ドルは過去に比べて割安な水準にあり、これが外需主導セクターを支えている
  • 最近の堅調な株価は潜在成長率より低い経済成長と違和感があり、RBAや先の総選挙で勝利した政権に対する過度な期待を反映している可能性がある
  • 特定分野の供給障害も着実に解消されているため、コモディティ価格は頭打ちになりそうだ
  • 豪ドルは対米金利差の縮小から目先反発する可能性がある
新興国
  • インフレ沈静やFRBのハト派姿勢強化により新興国の中央銀行に金融を緩和できる柔軟性が生まれた
  • 中国の景気対策の恩恵を受ける
  • 株式のバリュエーションは先進国より魅力的
  • テクノロジー・セクターの重要性が高まり、コモディティ・サイクルの影響を受けにくくなった
  • 輸出主導の経済は貿易摩擦激化による悪影響を受けやすい
  • トルコ、アルゼンチン、ブラジルなどの主要新興国は不安定な状態が続く可能性がある
  • 中国経済の長期成長軌道には依然逆風が吹いている
  • 中国の景気対策はより慎重なもので、国内に重点

 

3. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

 

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.242%(消費税8%込み、10%への変更後は1.265%)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ ロウ・プライス・グループ・インクの商標または登録商標です。

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社

〒100-6607 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー7F

電話番号 03-6758-3820(代表)

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第3043号

加入協会: 一般社団法人日本投資顧問業協会/一般社団法人投資信託協会

前の記事

2019年8 月 / インサイト

心地悪さを苦にしない
次の記事

2019年8 月 / インサイト

大型株の投資家は景気減速にどう適応できるのか?