T. Rowe Price

2019年9 月 / ポリシー・インサイト

米ドルに関する5つの注目テーマ

米経済は減速しているものの、米ドルは堅調に推移している

サマリー

  • 利下げをすると、通常、その国の通貨は下落するが、米ドルに関しては必ずしもそうとは限らない。
  • 米ドルの価値を決定する主な要因は、米景気が他の国に比べてどう推移するかである。
  • 安全な逃避先としての米ドルの地位はなお揺らいでいない。

米景気の減速にもかかわらず、米ドルは堅調に推移しています。グローバル債券運用チームは直近の会合で、ドルの変動要因について議論しました。ポートフォリオ・マネジャー兼グローバル債券運用チームのメンバーのQuentin Fitzsimmons が以下に、投資家が注目すべき5つの主なテーマを簡単に紹介します。

1. 利下げが必ずしもドル安につながるとは限らない


米連邦準備理事会(FRB)は7月に、世界金融危機以降で初の利下げに踏み切りました。多くの市場参加者はこの動きを緩和サイクルのスタートと考えています。利下げは通常、通貨安につながりますが、米ドルに関しては必ずしもそうではありません。実際、過去4回の米利下げ局面においてドルが下落したのは1回だけです(図表1)。この点を踏まえると、FRBが利下げをするからといってドルをアンダーウェイトにするのは危険な賭けとなる可能性があります。他にも考慮すべき多くの要因があります。


 

2. 米景気よりも他国との成長格差の方が米ドルに大きな影響を及ぼす

米景気が減速する中でも、今年、ドルは堅調に推移しています。なぜなら、米景気そのものの成長率以上に米景気が他国に比べてどう推移しているかの方がドルに大きな影響を及ぼすからです。2019年はこれまで欧州景気が米景気以上に予想より悪化しています。例えば、4-6月はイタリア経済が低迷、英国はマイナス成長となりました。おそらくより重要なことは、米中貿易戦争による輸出需要低下の影響で、欧州最大の経済大国であるドイツの製造業セクターが不況に直面していることでしょう。米国と欧州の成長格差が反転しない限り、ドルがユーロに対して大きく下落するとは考えにくい状況です。
 

3.  米ドルはキャリーの観点からなお魅力的


投資家は米ドルから先進国トップクラスの高いキャリー金利を得ることができます。FRBの7月の利下げが緩和サイクルの始まりだとしても、米国の金利はマイナス金利の日本やスイスに比べるとはるかに高いため、米ドルはキャリーの観点から引き続き魅力的だと思われます。とはいえ、ヘッジコストを考慮すると、米ドルベースの資産は海外投資家にとって魅力が低下します。 例えば、表面的には、米10年国債利回りは独10年国債より格段に魅力的に見えますが、ドルをユーロにヘッジするコストを考慮に入れると、利回り面の優位性は実質的に消滅します。
 

4. 関税と貿易戦争が通貨のボラティリティを高めるが、方向性は変わらない


関税の通貨への影響は評価が困難です。保護主義はその国の経済にとってプラスに働きますが、効率的な市場は関税による交易条件への影響を単に相殺し、時には保護された国の通貨の上昇を促すこともあります。実際、これはトランプ米大統領の戦略の意図せざる結果となるかもしれません。

貿易協議の難航を受け、中国は人民元の下落を容認し、その結果、元は対ドルで約11年ぶりの安値を付けましたが、他の通貨のバスケットに対しては概ね横ばいに推移しています。通貨が政治的な道具として使われる場面が増えており、米中貿易協議が続く中、通貨が政治的な目的で使われるのはこれが最後ではないかもしれません。こうした状況を背景に、ボラティリティが高まると予想され、この恩恵を受ける最良の方法は通貨オプションを使うことだと思います。
 

5. 「安全な逃避先」としての米ドルの地位はなお揺らがない


市場の混乱時は、投資家は「安全な逃避先」と認識されている米ドルに殺到する傾向があり、これは当面変わりそうにありません。米ドルは現在の低金利環境では流動性が集中する場所になります。こうしたトレンドは米国債イールドカーブの逆イールド化によって増幅されており、その背景には短期金融商品にキャッシュを滞留させることが現在は格段に魅力的になっていることがあります。不透明感が強まる中、スイス・フランや日本円が今年は買われていますが、安全な逃避先を求める投資家にとって米ドルは王座を維持しています。

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

資料内に記載されている個別銘柄につき、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンド等における保有・非保有および将来の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.242%(消費税8%込み、10%への変更後は1.265%)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ ロウ・プライス・グループ・インクの商標または登録商標です。

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社

〒100-6607 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー7F

電話番号 03-6758-3820(代表)

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第3043号

加入協会: 一般社団法人日本投資顧問業協会/一般社団法人投資信託協会

前の記事

2019年9 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境(2019年8月)
次の記事

2019年9 月 / インサイト

中国は長期的な投資先として引き続き大変魅力的