T. Rowe Price

2019年9 月 / インサイト

中国は長期的な投資先として引き続き大変魅力的

足元の貿易摩擦にもかかわらず、ポジティブなファンダメンタルズが 中国の長期見通しを下支え

サマリー

  • 中国の成長ストーリーは確立されている。世界のGDPに占めるシェアが引き続き大きい一方、経済は好調な内需に支えられ、大半の国を上回るペースで依然として拡大している。
  • 目先的には、米中貿易摩擦が逆風となっている。貿易戦争の長期化はどちらの国にも長期的な利益にならないが、早期解決も期待しにくい状況である。
  • 一方、中国のポジティブな投資テーマは相変わらず健在である。中国の株式市場や社債市場を支えるファンダメンタルズは引き続き大変良好である。

中国の経済成長は過去50年にわたり世界の平均をやすやすと上回ってきました。生産性の急成長、富の増大、旺盛な内需がいずれも中国経済の「奇跡」の原動力となってきました。しかし、近年は成長鈍化、債務拡大、最近は貿易を巡る不透明感が話題を集めています。中国が国内の株式市場や社債市場を開放し、海外投資家にとって巨大な投資機会が新たに生まれようとしているまさにこの時、中国の投資先としての将来性を疑問視する向きも出始めています。しかし、我々は中国について長期的な投資先として引き続き大変魅力的と考えています。
 

マクロ経済について

Chris Kushlis, 新興国ソブリン債アナリスト

中国経済は引き続き世界経済のパワフルなエンジン

中国は長年にわたり世界経済を力強く牽引してきたことから、多くの投資家が同国経済の減速を心配するのも無理はありません。しかし、重要なことに、近年は世界経済に占める中国の割合が増えるにつれ、世界の成長への寄与度も高まっています。中国は現在、3-3.5%の世界全体の成長のうち、約1%に寄与しています。このため、中国の成長率が年6-6.5%に鈍っても、同国は引き続き世界のGDP(国内総生産)成長に大きく貢献しています。

一方、中国は世界の貿易システムに完全に組み込まれ、所得水準は世界平均に迫るまで高まり、今や実質的に中所得国となっています。それでも、世界の富裕国に追いつくのはまだかなり先のことでしょう。このため、世界第2位の経済大国とはいえ、家計所得の改善余地はまだ大きいと言えます。このことを大きな流れの中で考えると、例えば、もし中国の家計所得が米国と肩を並べる水準になれば、その経済規模は米国のおよそ4-5倍に膨らむことになります。

しかし、これほどの大躍進は口で言うほど簡単なことではなく、国民の所得水準が等しく次の高い水準に到達するには、中国は様々な構造的課題を克服しなければなりません。

持続可能な成長へのシフト

中国政府は2006年頃から輸出主導型から内需主導型へ経済の構造転換を図り始め、こうした動きは世界金融危機によって加速されました。このシフトは、より持続可能な長期の成長を達成することが目的であり、こうした構造転換が続く間は成長率がさらに鈍化しそうです。
 

債務の累積

経済の構造転換プロセスの一環として、中国政府は外需の減少を穴埋めするため巨額の国内投資プログラムに乗り出し、その大半は債務によってファイナンスされました。この結果、中国の債務は対GDP比約250%へ急拡大し、持続性や潜在的リスクに対する懸念が強まりました。政府は最近、債務の膨張に歯止めを掛けるべく行動を起こし、金融市場に大きな混乱をもたらさずに少なくとも増加ペースを止めることに成功しました。まだやるべきことはありますが、これまで一定の進展が見られました。

人口動態の変化

人口動態の変化も中国にとって構造的な逆風となっています。同国は生産年齢人口(15-64歳)が2012年頃から減り始める一方、従属人口比率(15-64歳の人口に対する65歳以上の人口の割合)は上昇し始めました。生産年齢人口の減少はまだ比較的緩やかですが、今後数十年で加速すると予想されます。

改革に対するコミットメント

習近平国家主席が統制経済から脱し、中国経済の改革にどこまで本気で取り組んでいるのか疑問視する声が強まっています。例えば、国有企業の統合は統制経済色の根強さを物語っています。国有企業は効率性や収益力が低い傾向があるため、経済内におけるその圧倒的影響力の高まりは経済成長の足を引っ張る恐れがあります。逆に、中国はイノベーションや新技術の開発に力を入れており、この政策は最終的に中所得国から高所得国へのシフトを後押しすることになるでしょう。
 

中国の「ボンド・コネクト」は大きな進展

グローバル債券市場における最近の主な動きは、中国が国内債券市場を海外投資家に開放したことです。従来は、厳しい資本規制や割当制のため中国債券市場へアクセスすることは非常に困難でした。しかし、2017年に「ボンド・コネクト」と呼ばれる中国債券市場 に対する投資スキームが新たに導入され、海外投資家は国内債券市場に投資できるようになりました。それに伴い中国は2019年4月にブルームバーグ・バークレイズ・ グローバル総合債券インデックスに組み入れられました。中国の債券は20ヶ月かけて徐々に組み入れられ、最終的に組入れが完了すると同インデックスの6%を占めることになるでしょう。

一方、2019年9月にはJPモルガンがその現地通貨建てエマージング債券インデックスに中国を組み入れる計画を発表しました。中国債券は10%を上限として10ヶ月かけて 段階的に組み入れられます。中国の国内債券市場全体は13兆ドルに迫り、組入れ完了時点ではユーロ建て債券にほぼ匹敵する規模となる見込みです。

 


社債市場について

Sheldon Chan, アジア社債運用戦略ポートフォリオ・マネジャー

アジア社債市場の急成長
アジア社債市場はこの10年で驚くべき成長を遂げています。このユニバースは2010年以降、年15%のペースで成長しており、現在の発行残高は1兆ドルを上回る規模となっています1 。しかも、我々は今後もこの2ケタ成長が楽々と持続できると考えています。アジア企業にとって米ドル債はなお全体の資金調達のごく一部であるため、企業が資金調達源の多様化を進めると、社債発行額は引き続き増加する可能性があります。
アジア社債市場の発行体は広範かつ多様で、新発債は今後も強い需要が見込まれます。中国などアジア主要国の貯蓄率の高さが同地域におけるインカム型商品に対するパワフルな構造的需要を生んでいます。実際、アジアでは社債保有の約88%が現地投資家によるものです2

ファンダメンタルズは改善している

米中貿易戦争を巡る不透明感や世界経済へのその影響が懸念されますが、アジア地域はまだ世界的に見ても高い経済成長と若年人口の伸びを誇っています。中国の経済的影響は顕著で、今後も続くと予想されます。中国政府は輸出主導の成長への依存度を減らす一方で、外貨準備を増やし、市場の透明性を高めるべく懸命に取り組んでいます。

アジア諸国のファンダメンタルズはこの10年、着実に改善しており、主要国は揃って投資適格級の格付けを取得するまでになりました。また、近年は債務圧縮政策や規制強化の影響で新たな規律が生まれ、その結果、クオリティの低い企業は市場からの退場を迫られています。 これらはいずれもアジア社債にとって長期的な安定と成長への良い前兆です。

財務の健全性が引き続きカギを握る

社債投資家にとって一番大事なことはバランスシートの健全性であり、多くのアジア企業はこの点が特に優れています。例えば、中国のインターネット企業の多くは手元資金が潤沢で、健全なバランスシートを誇っています。これらの企業の財務力の強さがその社債を潜在的に魅力的なものにする一方、対照的に株式市場はこれらの企業の業績が過去1年不安定だったため、健全性は劣るかもしれません。
 

魅力的なリスク/リターン特性

アジア社債は長年にわたり魅力的なリスク調整後リターンを記録しています。アジア社債のベンチマークであるJPモルガン・アジア社債ダイバーシファイド・インデックスの平均格付けはBBB+で、その30%は先進国企業が発行したものです。アジア社債はボラティリティが米投資適格社債と同程度でも、長期リ ターンがそれより高いことは特筆すべきです。

現在、我々はアジアの投資適格社債が有望と考え、アジアのハイイールド債についても比較的質の高い銘柄を中心に保有しています。米中貿易戦争の長期化と広範な景気減速の脅威からハイイールド債のスプレッドは引き続き高い水準にとどまりそうです。とはいえ、中国のハイイールド債は不動産や消費関連セクターの一部に魅力的な収益機会があると考えています。ただ、勝者となる銘柄を選ぶにはボトムアップのファンダ メンタル分析が何より大切です。

 

株式市場について

Eric Moffett, アジア・オポチュニティーズ株式運用戦略ポートフォリオ・マネジャー

中国の国内株式市場— 規模が大きく、 多様で、非効率

株式市場の観点から、中国A株市場がエキサイティングな長期の投資機会を提供することは確かです。中国の国内株式市場は個人投資家が圧倒的に多いため、依然として非常に非効率で、他の国に比べて外国人保有比率が極端に低いのが特徴です。例えば、中国A株の外国人保有比率はわずか3%程度であるのに対し、台湾やシンガポールなど他のアジア諸国はその比率が40%弱となっています(図表1)。


 

過去5年、中国のグローバル投資家は総じてグロース株、特に有名なテクノロジー/インターネット企業にターゲットを絞ってきましたが、最近はテクノロジー分野以外にも物色の対象を広げ始めています。例えば、消費関連分野などが海外資金を引き寄せています。外国人投資家の関心や投資が引き続き高まる中で、これは長期リターンを下支えるだけでなく、市場の規制や透明性の向上にもつながるでしょう。

GDP成長は大切だが、家計所得の伸びはもっと大切

世界中の関心が減速する中国のGDP成 長率に集まる一方、多くの中国企業にとってより重要なのは家計の富の成長です。中国の家計所得は引き続き増えており、特に労働者階級の間では年率10%前後の高い伸びです(図表2)。これには人口動態と政策という2つの理由があります。前者に関しては、中国の生産年齢人口が減少する中、労働者の価格決定力が高まり、賃金上昇圧力の高まりにつながっています。

政策面では、中国政府が過去10年、労働者に毎年、大幅な賃上げを提供することを優先しています。そうすることで、政府は実質的に何億人もの家計をサポートしており、中国の消費ブームを演出しています。

この意味で、中国の消費ストーリーは引き続き世界で最もエキサイティングなテーマの一つであり、今後何十年も続く可能性があります。より多くの中国の家計が西側諸国のように自動車、電化製品、化粧品、保険を購入し、外食、旅行、娯楽にお金を使っています。中国の消費者はより質の高い商品をますます求めるようになっており、「商品の高級化」も大きなテーマです。

バリューチェーンの高度化

また、中国はバリューチェーンを高度化し、低コストの輸出品生産から着実に脱却しようとしています。賃金上昇は、中国は安い労働力の供給元として競争力を失いつつあり、高い技術を必要としない製造拠点の一部から徐々に 撤退することを意味します。また、中国はモバイル決済処理、人工知能、ロボティクス、5Gテクノロジーなどの分野の研究開発に巨費を投じています。もはや単純に他国の技術をより安くコピーすることには満足せず、中国政府はイノベーションを将来の経済戦略の中核と位置付けています。そうした投資が実を結び、中国企業はトップのグローバル企業の一部から市場シェアを奪い始めています。顔認証や音声認証などの最先端分野では、中国はすでに確固たる地位を築いています。



目先の逆風は交渉による解決が望まれる

とはいえ、米中貿易協議の決裂は目先的には明らかな逆風で、早期解決は当面難しそうです。しかし、こうした不透明感の強い状況で、中国株のバリュエーションは過去1年で大きく低下し、危機時のレベルにあります。一部企業は明らかにPER(株価収益率)の低下が妥当ですが、多くのクオリティ企業も一蓮托生に売られました。現地投資家のセンチメントが現在ほど弱気に傾いているのは珍しく、これは短期的には市場の不透明感を生む一方、大きく売り込まれた優良企業を割安に購入する好機を提供します。

結論

中国の成長ストーリーは確立されています。世界のGDPに占めるシェアが引き続き大きい一方、経済は世界のどの国よりも高い成長を続けています。こうしたトレンドは中間層の着実な成長、堅調な内需、世界政治における同地域の影響増大などによって支えられています。米中貿易紛争の継続が目先的に不透明感を生んでいます。貿易戦争の長期化はどちらの国にも長期的な利益になりませんが、早期解決も期待しづらい状況です。とはいえ、米大統領選が来年に迫り、トランプ大統領は2020年11月にかけて景気に大きな悪影響を及ぼすような政策には配慮するでしょう。

一方、中国政府にも必要に応じて発動できる景気刺激策が残っています。実際、中国経済は政府が何らかの刺激策を講じる水準まで鈍化しているようです。そして、そのポジティブな影響は製造業の一部ですでに感じられています。

中国のポジティブな投資テーマは相変わらず健在です。中国の金融市場を支えるファンダメンタルズは引き続き大変良好で、外国人投資家はまだ中国における巨大かつ多様な投資機会 群の表面を引っかいているだけです。

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