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2019年6 月 / グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境(2019年5月)

1. 市場テーマ

「FRBプット」をとりあえず確認

世界の中央銀行が低インフレと成長鈍化に対応する中、米連邦準備理事会(FRB)がハト派姿勢を一段と強め、米株式市場はこれを好感し歴代有数の急反発となりました。しかし、5月に入ると、楽観視されていた米中貿易協議の合意が遠のき、金融市場は大荒れの展開となりました。株式市場は急落し、債券市場ではFRBが2020年末までに約3回の利下げを行うシナリオが急速に織り込まれました。FRBは利上げを長期間停止した後に利下げに転じるのが通例で、今回、利下げがあれば、これほど急激な方向転換は本格的な景気後退局面以外ではほとんど見られませんでした。パウエルFRB議長が「景気拡大を持続させるため適切に行動する」と最近発言したことから、早期利下げ観測がさらに強まりました。米中貿易交渉の行方は予断を許しませんが、市場はひとまず「事態が悪化すれば、FRBが対策を講じる」と考えるようになりました。

テクノロジー企業は貿易戦争の渦中に

テクノロジー企業は自ら米中貿易戦争の渦中にあることを改めて認識しています。知的財産権、技術の強制移転、重大技術が争点となっているだけでなく、貿易戦争のエスカレートは、企業センチメントやテクノロジー企業のサプライチェーンにもすぐ影響します。世界経済の先行きが怪しくなり、企業景況感も悪化しているため、設備投資が実際に予想を下回る可能性があり、特に、昨年好調だったクラウド・コンピューティング分野はその可能性が高そうです。また、米国による中国Huaweiに対する米国製ハイテク部品の禁輸措置や、中国によるレアアース輸出規制の検討などの関税以外の米中の攻防はテクノロジー分野の投資家にとってもう一つのリスクです。問題は、これが趨勢的変化の中で確立されたテクノロジー企業のビジネスモデルにとっては一時的な後退なのか、それとも業界の長期ダイナミクスが根本的に変わろうとしているのかということです。


親EU派の退潮が鮮明に

5月末に行われた欧州議会選挙では、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党などの欧州連合(EU)懐疑派が大きく勢力を伸ばす一方、中道政党など親EU派は大敗を喫しました。その背景には、貿易自由化や製造業の海外移転によって生じた経済格差に従来の社会政策では対処できず、大衆の不満が強まっていたことがあります。イタリアの選挙結果は、連立政権の一角を占める極右政党「同盟」による財政拡張の動きを強めると思われる一方、フランスの結果はマクロン大統領の改革路線が支持されていないことを示しています。英国ではEU離脱を目指す新党「ブレグジット党 」が第1党に躍進する一方、与党・保守党が第4位に甘んじる結果となり、その影響が懸念されます。残念ながら、米国や中国の政治的不透明感から逃れて安全な逃避先を探そうとする投資家にとって欧州も安心できる場所にはなりそうにありません。


 

2. 各国・地域の経済環境

 ポジティブ
ネガティブ
米国
  • FRBのハト派姿勢と物価安定
  • 健全な個人消費、好調な雇用、賃金の改善
  • 金利低下を受け、住宅部門が持ち直し
  • 長期的優位性を有する企業(クラウド・コンピューテ ィング、ネット通販など)の割合が他の国より多い
  • 政治的不透明感と貿易摩擦
  • 大型減税効果の剥落に伴う成長鈍化
  • 設備投資の鈍化と企業景況感の悪化
  • 景気サイクル終盤の懸念: 労働需給の逼迫、賃金の上昇、利益率の頭打ち
  • 目先の収益期待が低下
  • 高水準の企業および政府債務
欧州
  • 金融政策が引き続き非常に緩和的
  • 中国の景気刺激策の恩恵を間接的に受ける
  • 景気安定の兆しが見られる
  • ユーロ圏経済は低迷しているが、欧州中央銀行(ECB)の対応余地は限られる
  • 輸出は弱く、貿易問題や中国経済の行方に左右される
  • 銀行セクターは厳しい状況が続いている
  • 欧州議会選挙でEU懐疑派が勢力を伸ばし、今後の議会運営が難しくなる
中国
  • 景気刺激策の効果はまだ見られず、景気下支えのためにさらなる措置が取られる可能性がある
  • 人民元安は目先的に鈍る見込みで、特に、1ドル=7元の大台に達すると、その可能性が高い
  • 企業収益が改善する一方、バリュエーションは引き続き魅力的。5月以降は投資資金の流入が鈍っている
  • 米中貿易交渉に関する不透明感が大きなリスク。市場はまだ近い将来の合意成立を予想しているが、最終的には楽観的過ぎる可能性がある
  • 企業や消費者の景況感は貿易交渉を巡る不透明感の影響を受ける
  • コモディティや食品価格の上昇によるインフレ・リスクから利回りに一段の上昇圧力がかかる
日本
  • 景気失速により成長期待が大きく低下し、ポジティブ・サプライズが生じる可能性も
  • 財政刺激策が景気を支える可能性がある一方、日本銀行は緩和継続に引き続きコミット
  • 日本株は割安感が強い。一方、自社株買いや自己資本利益率(ROE)を通じたガバナンス改善は引き続き過小評価されている
  • 外需の好転待ちが続く中、景気の足取りは依然弱く、特に製造業は弱さが目立つ
  • 日銀は超緩和政策の継続にコミットしているが、景気が急激に悪化した場合、追加緩和の余地はあまりない
  • 世界的にリスク回避傾向が急に強まると、円高になる可能性がある
オーストラリア
  • 5月の総選挙は与党・保守連合が予想外の勝利を収め、政治的不透明感が払拭された。今後は税金還付や、金融システム安定化政策の緩和が予想される
  • オーストラリア準備銀行(RBA)は利下げの準備が整っている様子で、 今年1回以上の利下げが次第に市場のコンセンサスになりつつある
  • 豪ドル安が外需主導セクターを下支えている
     
  • 株式市場が金融危機後のピークに迫る一方、企業業績は金融危機以降で最も悪く、利益率に対する下押し圧力が強まっている
  • 最近の物価上昇はファンダメンタルズとは関係がない。株式市場ではポジションの巻き戻しリスクがある
  • 住宅市場縮小の影響はまだ消費者心理に表れていない
新興国
  • インフレは(上昇ながら)沈静、FRBのハト派転換によって新興国の中銀には金融を緩和できる柔軟性が生まれた
  • 中国の景気刺激策の恩恵を受ける
  • 株式のバリュエーションは先進国に比べると魅力的
  • テクノロジー・セクターの重要性が高まり、コモディティ・サイクルの影響を受けにくくなった
  • 輸出主導の経済は貿易摩擦激化による悪影響を受けやすい
  • トルコ、アルゼンチン、ブラジルなどの国では不安定な状態が続く可能性がある
  • 中国経済の長期成長軌道には依然逆風が吹いている
  • 中国の景気刺激策はより慎重なもので、国内に重点
  • 新興国通貨は再び下押し圧力を受けている

 

3. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング(2019年5月31日時点)

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