T. Rowe Price

2019年5 月 / INVESTMENT INSIGHTS

より良く、より早く、より安く

AIとビッグデータが生み出すクラウド時代の新たな投資機会

主なポイント

  • 当社のファンダメンタル・リサーチは開発の初期段階にあるクラウド・ソフトウェアの発掘に寄与し、それにより我々は早くから有望銘柄に投資することができた。
  • クラウドの利用が企業の様々な業務に広がるにつれ、新たな投資機会が生まれている。
  • しかし、大手クラウド・プロバイダーの多くはバリュエーションが割高なため、慎重な銘柄選択の重要性が高まっている。

インターネットの先駆者として知られるMarc Andreessen氏が「ソフトウェアが世界を食い尽くしている」と言ったのは2011年のことですが、その食欲はいまだ衰える兆しが見られません。IT調査会社Gartnerによると、エンタープライズ(法人向け)・ソフトウェアへの投資は過去2年に年率約10%も伸びており、他のあらゆるカテゴリーのテクノロジー関連投資を2022年まで上回り続ける見通しです。

エンタープライズ・ソフトウェアの中ではクラウド分野が最も伸びています。近年はインターネット上で提供されるソフトウェア・サービスが凄まじい勢いで伸びており、新たなデータ処理ワークロード(作業負荷)の大半は現在、クラウド上で構築、運営されていると推測されます。旧来型システムの再構築に伴い、将来的にはクラウドがすべての既存ワークロードの大半を占めるようになるでしょう。

グローバル・テクノロジー株式運用戦略では、過去10年にわたりクラウドに注目しており、今では業界を支配するようになった数社のクラウド・ソフトウェア企業に早い段階から投資してきました。バリュエーションが極端に割高になった一部の銘柄についてはポジションを減らしましたが、企業に新たなサービスを提供し始めているクラウドは、引き続き有望な投資分野であると考えています。

クラウド・ソフトウェアのユーザー利便性

クラウドの持続するポテンシャルを理解してもらうため、それがユーザーに提供するメリットを以下にまとめました。

  • 経費削減: クラウドを使う企業は「場所をとる」ハードウェアへの投資を計画する必要もないし、サーバーのメンテナンスやたまにしか発生しない問題解決のため大勢のITスタッフを抱える必要もありません。クラウドベースのプロバイダーは、多くの利用者の間でそうしたコストをはるかに効率的に分担してもらうことができます。
  • 参入障壁の引き下げ: 経費があまりかからないため、あらゆる規模の企業がクラウドベースのソフトウェアにアクセスできます。スタートアップ企業も今はAmazon Web Services、MicrosoftのAzureなどから必要なコンピューティング・インフラを借りることができます。小さな会社は巨大企業向けの製品ではなく、サブスクリプション契約に基づき料金を支払い、格段に優れた必要なソフトを利用することができます。
  • 継続的なアップデート: クラウド・ソフトウェアが使い勝手の良い理由の一つは、それが顧客の意見などに基づき常に改良される点です。規制の変更や状況の変化も製品に即時反映することができます。ソフトウェア修正プログラムやセキュリティ・アップデートもすぐインストールできるため、利用者は何もする必要がありません。

 


クラウドはプロバイダーにも便利なビジネスモデル


クラウドが顧客に提供する価値は別として、クラウドベースのビジネスモデルはソフトウェア・プロバイダーにも大きなメリットがあります。永久ライセンスではなく、サブスクリプションから収益を得る企業は安定した収入源を確保することができるため、浮き沈みの激しいソフトウェア業界特有のサイクルを脱することができます。

クラウド・ソフトウェアの使い勝手の良さは、巨額の広告宣伝費を使わなくても、口コミによって伝わり、幅広い普及につながっています。最近はIT部門を通さずソフトウェアのユーザーが買い手になるケースが増えています。クラウドは販売費がはるかに安く、技術者などサポート・スタッフを設置や保守のため顧客のオフィスに派遣する必要があった場合に比べると、特にそうです。IBMが市場を支配していた10年前、同社は大勢の現場スタッフを抱えていました。これに比べ、現在のクラウド・プロバイダーははるかに身軽です。
 

当運用では現在データ分析に特化するクラウドベースの企業に関心がある...

 

クラウド関連の投資機会を探して

ティー・ロウ・プライスでは、ソフトウェア業界を根底から覆し、それによって勝者と敗者を生み出すクラウドのポテンシャルを以前から評価してきました。当社のファンダメンタル・リサーチ・チームは早い段階からクラウドの持つパワーに注目しており、アナリストは幅広い業界でそれが導入される様子を目撃してきました。実際、ティー・ロウ・プライスでは経費削減や業務効率改善のため、自らのテクノロジー業務の多くの部分をクラウドに移管しています。

顧客関係管理(CRM)ソフトウェア大手のSalesforce.comは、クラウドの黎明期から関連サービスを提供してきた会社の一つです。当社グローバル・テクノロジー株式運用戦略では、Salesforceが新規株式公開(IPO)をした2004年に投資を開始し、それ以降も同社に対してアクティブな投資を継続してきました。その時価総額は2019年3月31日時点で約1,200億ドルと、時価総額ベースで最大のクラウド・プロバイダーとなりました。

Salesforce以前のCRMソフトは、ほとんどが顧客連絡先のカスタマイズされたデータベースを膨大な費用をかけて会社のサーバーにインストールする時代遅れのものでした。Salesforceはクラウドとサブスクリプション型モデルを活用することで、顧客情報をマーケティングや在庫管理など組織の多くの部分と結び付けるダイナミックなシステムを構築することができました。

我々は2012年10月のWorkdayのIPOにも参加しました。クラウドを通じ人事管理(HR)サポートを提供する同社は多くの点において、SalesforceがCRMソフトで起こしたのと同じイノベーションをHRソフトにもたらし、組織内でバラバラだった業務プロセスのデジタル化、組織化、統合に寄与しました。同社のソフトウェアはHRプロセス(例えば、給与事務) を売上管理などの財務情報と統合します。


次の注目分野: クラウドベースのAIが爆破的に増えるデータの管理に寄与

SalesforceやWorkdayなどの会社は、人工知能(AI)のパワー拡大というテクノロジーにおけるもう一つの大きなトレンドにも乗っています。例えば、Workdayは何百万人もの従業員データを処理した経験が有るため、その新アプリ「People Analytics」は問題のある分野と好調な分野の両方を経営陣が特定するのに役立ちます。また、Salesforceは「アインシュタインAI」を発表しました。これを使えば、ユーザーは不払いとなる可能性の高い請求書をタイムリーに分析することができます。

当運用では、企業の集めるデータ量が飛躍的に増えている現在、極めて重要な分野となったデータ分析に特化するクラウドベースの企業に関心があり、マシンデータ分析最大手のSplunkに2012年のIPO以降、定期的に投資しています。同社の分析プラットフォームは企業が従業員データやインターネット・プロトコル(IP)ログ・ファイルの指数化、問い合わせ、分析を迅速に行えるようにします。これらの情報はセキュリティ上とても重要なだけでなく、ビジネス分析においても貴重な役割を果たします。例えば、豪華客船運行会社のCarnival Cruisesは、船内施設がどのように使われているか知るため、乗船客に渡されたウェアラブル端末を通じて収集されたデータをモニターするのにSplunkのプラットフォームを使っています。

DATAはTableau Softwareのティッカー・シンボルであり、それは高度なグラフィックスやダッシュボードを通じて膨大かつ多様なデータの分析を可能にする同社の使命を表しています。Tableauのシンプルなインターフェースと革新的な視覚化技術は専門家以外にもその場で分析を行うことを可能にし、IT部門にずっと独占されてきたビジネス情報の「民主化」に貢献しました。我々は2013年のIPO以降、Tableauに断続的に投資しており、同社が永久ライセンスへの依存から脱却し、サブスクリプション型モデルに最近移行したことを高く評価しています。

 

...我々は特にソフトウェア開発業者のワークフローを調整するために設計されたクラウド・サービスに関心がある

 

クラウドベースのAIはサイバーセキ ュリティ分野でもカギを握る

クラウドベースのAIはサイバーセキュリティ分野でますます大きな役割を担いそうです。観測筋の多くは犯罪者や敵対国がシステムに侵入する新たな手段としてAIを使うことを心配していますが、その一方で、サイバーセキュリティ企業も新たな防衛技術を開発するためAIを活用し始めています。マシン・ラーニング(機械学習)を使うことにより、クラウドベースのサイバーセキュリティ企業はシステムへのアクセスを試みようとする特異なパターンを特定することができます。それは「シグネチャー」として知られる過去のマルウェア(悪意のあるソフトウェア)や不正アクセスの特徴的パターンには依存せず、システムに別々に侵入したマルウェアを後で部品のように組み立てる時間差攻撃のような新手の攻撃も特定できるパワフルな技術です。

特に、このようなシステムで使われるデータセットが大きければ大きいほど、そしてシステムで行う分析が多ければ多いほど、機械学習プログラムの精度は高まります。これは、多くの多様なコンピューター・ネットワークの防衛を担うサイバーセキュリティ企業にとって大きな武器となるかもしれません。

クラウド型セキュリティ会社のProofpointはサイバー攻撃を阻止するため膨大なデータを使用し、まだ多くのセキュリティ侵害の原因となっている巧妙なeメール「フィッシング」攻撃を防ぐことに注力しています。同社は機械学習を使うことで、マルウェアを植え込もうとする試みや他のセキュリティ侵害を阻止するため、怪しいウェブサイトやeメール・パターンを特定します。データが企業のファイアウォールを越えて移動するようになり、今後数年はサイバーセキュリティがクラウドの開発で最も急成長する分野の一つになると考えています。


ディベロッパーの台頭

あらゆる種類の企業がソフトウェア会社になっているクラウド時代は、ディベロッパーが台頭する時代でもあります。米労働省によると、アプリケーション・ソフト開発業者の数は2026年までの10年間で3分の1近く増える見通しで、建築サービス、機械卸売り、映画製作など様々な業界にわたり急成長が予想されます。

我々は最近、特にソフトウェア開発業者のワークフローを調整するため設計されたクラウド・サービスに関心があります。 当運用ではオーストラリアのソフトウェア会社Atlassianに早い段階から投資しています。同社の「Jira」は、プロジェクト開発の負担を軽減することで、プログラマーにとってスタンダードなワークフロー・プラットフォームとなりました。例えば、開発チームは頻繁な会議やeメールではなく、Jira を使って仕事の割り振り、進捗状況の追跡、承認の対処などを行えます。同社は特に口コミによるマーケティングに優れており、伝統的な販売員のコストを抑えることができます。
 

アクティブ・アプローチの価値

クラウド・ソフトウェアの急成長は近年市場の関心を集めており、トップ企業の巨大なポテンシャルはしばしばその株価に完全に反映されました。当運用では、たとえ長期ポテンシャルが大きくても、バリュエーションが極端に高い場合は、一部売却や全売却も厭いませんでした。逆に、テクノロジー株全般や市場全体が急落する局面は有望銘柄を買い増す好機と捉えてきました。同じく、予想を下回る四半期決算やその他一時的要因により株価が下がる場合も、そのビジネスがファンダメンタル的に引き続き健全であれば、投資機会を創出する可能性があります。最後に、我々はクラウドが企業のビジネスのやり方を根本的かつ継続的に変え、それにより勝者と敗者が生まれることにも留意しています。当社のファンダメンタル・リサーチとアクティブ・アプローチは、クラウドを最大限に活用している企業の発掘だけでなく、旧来型システムに依存する足取りの鈍い企業の回避にも役立ってきました。結局、創造的破壊をもたらす企業の発掘とそれに翻弄される企業の回避が今後数年はテクノロジー株の投資において極めて重要になりそうです。

 

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インクおよびその関係会社が情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライスの書面による同意のない限り他に転載することはできません。

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当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.242%(消費税8%込み、10%への変更後は1.265%)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ ロウ・プライス・グループ・インクの商標または登録商標です。

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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第3043号

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