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2019年3月 / Investment Insights

ゴルディロックスとクマ(適温相場と弱気相場)— イノベーション、創造的破壊、好循環の終焉

ゴルディロックスとクマ(適温相場と弱気相場)—イノベーション、創造的破壊、好循環の終焉 「変革の波に乗る」ことがかつてないほど重要になってきた

現在は低成長、低インフレ、強力な創造的破壊の時代であり、これが常に頭から離れません。それはこの時代の投資家にとって何を意味するのでしょうか?  これについては以前にも述べたように、フットボールの結果をハーフタイムで予測するようなものだと思います。これらの現象の多くは既に起きており、私にとって最終的に重要なのは資本収益率が改善している企業に投資することです。そうすることで顧客のために良い運用成績を達成できると確信しています。

ゴルディロックス- 流動性/クレジットの自己強化的サイクル

私は学校で「インフレとは過剰なマネーが希少な商品を追い求めることである」と学びました。だとしたら、マネーがこれだけ世の中に溢れている今日、インフレになっていないのはなぜでしょうか?

それは自己強化的な流動性/クレジット「バブル」の最中であることが一因だと思います。なぜなら、流動性が様々なセクターにおけるテクノロジー関連の資金調達を円滑にし、生産能力の増強を促しているからです。生産能力拡大はデフレもしくはゼロインフレを意味し、これが金利低下の流れを強め、流動性やクレジットへのアクセス拡大につながっています。

極端に低い資本コストと時代の転機をもたらす技術革新が結びつき、前代未聞のイノベーションと創造的破壊を資金面から後押ししていると言えます。つまり、潤沢な流動性がなければ、創造的破壊の進展にはもっと時間がかかったということです。

このイノベーションと創造的破壊はある意味、信じられないスピードで進んでいますが、その結果は不均等かつ意図せざるものです。資金が不足から潤沢へシフトしてからかなり時間が経ち、これは大変良いことのように聞こえますが、潤沢な資金が意味するのは、名目GDP の成長ではなく、それは「低インフレ」または「ゼロインフレ」 を示唆しています。

史上稀に見るユニークな時代に我々は生きている。テクノロジーがあらゆるセクターで生産能力増強を促している

- David Eiswert

電気自動車と快適な暮らし-至る所で創造的破壊が起きている

Teslaはそれを象徴する最たる例です。長期的に電気自動車の時代が来るのは間違いありませんが、潤沢な流動性は、米10年国債利回りが5%だったら起こり得なかったスピードでイノベーションと創造的破壊を加速しています。

そうした金利環境だったら、Teslaは今のような形では存在し得なかったでしょう。しかし、弱気派の願いとは裏腹に、Tesla は低利の資金を容易に調達できる時代に存在しています(個人的に、私は同社のモデル3に乗っており、内燃エンジン車に戻ることはおそらくないでしょう)。

Teslaが設備投資を行い、イノベーションを進めるにつれ、その結果、他の自動車メーカーも投資を加速せざるを得なくなるでしょう。これは、電気自動車が一足飛びに普及し、電気自動車の時代を到来させるという同社CEOの Elon Musk氏の目標が達成されることを意味します。

流動性が世界中のイノベーション企業に好循環をもたらしています。現在は、eコマース、SNS、クラウド・コンピューティング分野の企業が巨額資金を調達でき、民間投資(特に早期投資)にとっての黄金時代であり、創造的破壊や関連投資の黄金時代とも言えます。

では、具体例を見てみましょう。Allbirds は、羊毛、木、サトウキビなどから作ったスニーカーを販売する環境にやさしい持続可能企業として知られています。上部がウールの靴も見た目には普通の靴と大差ありませんが、Allbirdsの成功は広告、販売、ITにおける根本的な破壊的変化と消費者嗜好の変化によるものです。木を原料にした靴をインターネットを通じ消費者に直接販売するチャネルは15年前にはありませんでしたが、今はそれが可能です。

Teslaの場合と同様、資金調達がAllbirds に破壊的なプラットフォームの構築を可能にしただけでなく、Nikeなど既存プレーヤーも同じプラットフォームへの投資を加速せざるを得なくなっています。

Kraft Heinzも苦境にあります。豆製品、ケチャップ、マスタードなどで独占的地位を占める同社はかつて高配当銘柄として人気を集めましたが、今は創造的破壊に翻弄されています。ただ、Nikeと違い、同社は消費者と繋がるイノベーションを根本的に欠いているため、かなり厳しい状況にあります。EA Sports と Activision はEpic Gamesの無料オンラインゲーム「Fortnite」がもたらす真の脅威を理解できませんでした。電子たばこメーカーの JUULは、喫煙とたばこメーカーの株価に破壊的な打撃を与えている電子たばこと健康志向の恩恵を受けています。

これらの力がすべてまとまると、投資で言うところの株式特性や「ファクター」に大きな影響を及ぼします。創造的破壊が創造的破壊を生み、個々のファクターが多くの人の予想もしない形で作用する結果となっています。このため、後ろではなく前を向いて行動することが大切です。

プラットフォーム-新たな時代

この投資の時代が破壊的プラットフォームの成熟と規模を加速させ、それが多くのビジネスモデルに本当にネガティブな価格下押し圧力をかけています。これは一時的現象と言う声もありますが、既存企業がトップに返り咲く唯一の方法は、時間を巻き戻し、業界の販売、マーケティング、流通を再び独占するために必要な投資を行うことだと思います。しかしInstagramやFacebookでのヴィーガン(完全菜食主義者)食材のマーケティングに苦しむKraft Heinzや、Allbirdsの攻勢を受けるNikeは、それに対抗するため莫大な資金を注ぎ込まなければならないでしょう。

この投資の時代が破壊的プラットフォームの成熟と規模を加速させ、それが多くのビジネスモデルに本当にネガティブな価格下押し圧力をかけている

- David Eiswert

現在は流動性が溢れ、簡単に資金調達できることが生産能力増強の扉を開き、多くのセクターで価格下押し圧力がか かっています。流動性が引き続き流れ込む中、企業は資金確保することができ、それと同じくらい重要なテクノロジー面の基盤を構築することができます。企業はeコマースやSNSを通じ、商品やサービスをかつてない方法で世界中に提供できるようになりました。

この現象の影響を受けている業界は枚挙に暇がなく、創造的破壊は本物です。また、それはこれまで起きたことがないため、モデル化が難しい現象です。変化に関する知見や、それが業界や個別銘柄に何を意味するのか想像することが投資家にできる防御手段です。現在、様々な業界において勝者と敗者の明暗が鮮明になっているため、こうした変革の波に乗ることがかつてないほど重要になっています。

図表1: 新技術の普及とネットワーク接続性が創造的破壊を加速
2015年12月31日時点

出所: 世界銀行、マッキンゼー

上記の情報は説明のみが目的で、投資助言や特定証券の推奨を目的としたものではありません。上記の銘柄は実際に購入、売却、推奨されたものとは限らず、過去に利益をもたらしたか、将来的にもたらすと想定すべきではありません。ここに示された登録商標はそれぞれの所有者の資産です。ティー・ロウ・プライスはこれら商標所有者の承認、出資を受けておらず、その関連会社でもありません。

生産性の問題-より効率的になったか測定する術がない

一般に注目される経済成長率も、過去10年の大半における生産性の伸び悩みの影響を受けています。これが多くのエコノミストや中央銀行首脳を長年悩ましていますが、変革や創造的破壊が顕著なこの時代では生産性の伸びを正確に測定できないことが一因のようです。

エネルギー業界を例にとってみましょう。当社のエネルギー・チームは、新たなテクノロジーが設備投資1ドル当たりの石油生産量で見た生産性を高めていると考えています。確かに、これは生産性の面では進歩と言えます。しかし、設備投資やイノベーションによって設備投資1単位当たりの収益が増えているわけではありません。なぜなら、イノベーションやそれがもたらす生産能力の増強が石油の増産につながり、石油価格に下押し圧力がかかっているためです。かつては石油供給のピークアウトが心配されていましたが、技術革新によりこの10年で状況が一変し、現在はむしろ供給が過剰気味です。Amazon Web Services(AWS)は業界こそ違いますが、同じような影響を及ぼしています。AWSはIT効率の劇的改善をもたらしていますが、その過程で業界が縮小し、デフレ圧力が広がっています。

iPhonesの登場、Netflix、自動運転車、遺伝子科学、シェール革命などのイノベーションにより、昔より暮らしやすくなったと思いますが、GDPで見た場合、必ずしもそうとは言えません。

結局、様々なセクターにまたがる創造的破壊とそれがもたらす供給拡大がゼロインフレの世界をもたらしており、このサイクルが今後どう進展するのか、これまでの常識では予測できません。

再び財政刺激策主導の時代に

この時代の一つの帰結は、政府が財政刺激策により低成長を打開しようとすることだと思います。景気サイクルが成熟し、株式は強気相場が10年を越えましたが、過去10年は中国や米国の景気対策が頻繁に実施されました。そうした刺激策は債務主導で成長率を一時的に大きく高めることができ、債務返済コストが低い限り、これは持続可能です。しかし、こうした世界では必然的に不均衡が拡大し、リスクが生じるでしょう。これが今起きていることです。

その結果、ベア(弱気相場)が最終的に戻ってくるため、刺激策の効果が次第に薄れることを認識することが大切です。財政刺激策によっても経済の中期軌道は変わりませんが、短期的には景気拡大とその反動が生じ、こうした景気の波がデータとセンチメントの両方に影響します。今サイクルはこれが短期資産の価格を左右する重要な要因となっています。近年は金融市場の変動がかつてないほど激しく、パニックまたはモメンタム・ボタン(あるいはその両方)が押されると、プログラムに基づいて機械的に売買するクオンツ・ファンドが市場の振れを増幅しています。これは株式の所有形態と経済の進化が同時に起きているためだと思います。

知的財産・富の集中とポピュリズムの台頭

テクノロジーによって人々の暮らし向きが良くなっているのなら、どうして大衆の不満が強まっているのでしょうか? その背景には、以下のような理由があると思われます。

  1. こうした変革は個人レベルで消化され、その後すぐに「当たり前」と思われるようになります。飛行機に乗ると所要時間の短さに驚かされるものの、そのありがたみをすぐ忘れ、機内食のまずさに文句を言うのと似ています。
  2. 破壊的なプラットフォームに富が集中します。この意味でシリコンバレー、ロンドン、上海は突出した「勝ち組」で、「豊かさ」が際立ちます。欧州が犯した大きな過ちは、Google、Facebook、Amazon など米国の巨大プラットフォーム企業が海外で確固たる地位を築くことを許したことです。中国はその点ではより賢明で、これらの企業の進出を阻み、国内企業の育成に努めました。
  3. 労働組合の力が強い旧来型の企業は創造的破壊に翻弄されています。労働者にとっては賃金の伸び悩みや購買力の低下による痛みが広範囲に及んでおり、暮らしが楽になったのはほんの一握りです。

クマが家に帰り、ゴルディロックスと遭遇する時?

多くの投資家は成長率とインフレが再び高まると強気姿勢になるべきタイミングとずっとみなしてきましたが、我々は弱気相場に転じるきっかけはインフレと金利の上昇だと考えています。流動性供給の巻き戻しや、債務返済コストの上昇がその引き金になると思います。童話「ゴルディロックスと3匹のクマ」のように、散歩から帰ったクマが、留守中にその熱過ぎず冷た過ぎないスープを飲んだ少女ゴルディロックスと遭遇する(適温相場に終止符が打たれる)不幸な結末になる可能性があります。ただ、大きな問題は、インフレと金利が平均に回帰しているかどうかです。

デフレ圧力の強さ—それは投資家に何を意味するのか?

考慮すべき8つのファクター。

  1. 今は低成長、低インフレ、低金利の時代で、こうしたトレンドの底流には構造的な要因があり、我々はこの状況が今後も続くと考えています。
  2. 成長率とインフレが高まると、好循環が崩れる恐れがあります。
  3. 業界再編は、現在および将来の環境に対する自然な反応です。
  4. ポピュリズム、規制強化、社会的反抗は当面、投資をする上で警戒すべき要因です。
  5. 10年前は銀行が批判されましたが、政府と社会は新たな標的にシフトしており、テクノロジー企業はその社会的重要性を自覚する必要があります。
  6. 先進国の銀行はまだ激流に翻弄されており、銘柄選別が極めて重要です。
  7. 平均回帰については慎重に検討すべきです。業界構造が新たな独占企業による創造的破壊の影響を受けていることには注意が必要です。
  8. 価格決定力があり、資本収益率が改善している企業に投資することがアルファ獲得において極めて重要です。

リターンが低下している企業への投資には非常に慎重

- David Eiswert

最後に

世界は進歩していますが、趨勢的変化と創造的破壊のこの時代は、アクティブ・アプローチを必要とする新たなリスクや投資機会があります。当運用は最高の投資機会を捉えるためボトムアップの銘柄選択に注力していきますが、新たな創造的破壊が待ち受けていると思われるため、前述のような大局観を踏まえて思慮深く行動する必要があると思います。

201903-792905

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