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2019年3月 / インサイト

米国地方債市場におけるアクティブ運用の優位性

米国地方債市場におけるアクティブ運用の優位性 クレジット・リサーチとトレーディング戦略がパフォーマンスに好影響

主なポイント

  • 米国地方債インデックスは50,000以上の銘柄で構成されており、地方債市場においてパッシブ運用がうまく機能するのは難しいと思われます。
  • まだ米国地方債市場のごく一部ですが、ベンチマークの特性を複製しようとする上場投信信託(ETF)などのパッシブ運用商品が2018年は急激に増えました。
  • 当社は、クレジット・リサーチと効率的なトレーディングを市場全般に駆使するアクティブ運用ポートフォリオの方が投資家の期待に応えられると考えています。

米国地方債市場ではパッシブ運用商品は株式や課税債など他の投資分野ほど人気はありませんが、2018年はパッシブ地方債ファンドへの投資が急激に増えました。パッシブ地方債ファンドへの資金フローは地方債市場全体への流入額の28%を占め、3年前の約19%から高まっています。3兆8,000億ドルの米国地方債市場の中でパッシブ商品は310億ドルとまだごく一部ですが、2015年の90億ドルから3倍以上増えています1。さらに、最近は地方債ETFの人気が高まっており、2018年10-12月期は取引高が前期比80%増と大きく伸びました2。


パッシブ商品は米国地方債に投資する低コストのアプローチを提供しますが、それはリスクと一見分かりにくい機会コストも伴い、手数料が安くても超過リターンが保証されるわけではありません。ティー・ロウ・プライスは、高いリスク調整後利回りを追求するアクティブなクレジット・リサーチと、慎重な流動性管理、効率的なトレーディング戦略が我々に、パッシブ運用を上回るパフォーマンスを上げる米国地方債ポートフォリオを構築する能力を与え、アクティブ・アプローチのコストを正当化すると考えています。

もちろん、ポートフォリオ・マネジャーのセクター配分や銘柄選択がうまく行かない場合は、アクティブ運用戦略のパフォーマンスはベンチマークを下回ることになり、投資期間が短い場合は、特にその可能性が高いと思います。

図表1: 米国地方債ファンドとそのベンチマーク
アクティブ運用ファンドは期間が長いほど好成績を残している
2018年12月31日時点

過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありません。

出所: ブルームバーグ・インデックス・サービシズ・リミテッド、モーニングスター、分析はティー・ロウ・プライス。

平均リターンは、モーニングスターの各カテゴリーのすべてのアクティブ運用ファンドの報酬控除後リターンに基づきます。5年と10年のリターンは年率です。著作権はモーニングスター・インクに帰属します。本資料に掲載されている情報は、(1)モーニングスターまたはそのコンテンツ提供者に帰属し、(2) 許可なく複

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すべての地方債が等しく作られているわけではない

米国地方債市場は非常に細分化されており、複雑で、投資適格地方債の広範なベンチマークであるブルームバーグ・バークレイズ米国地方債インデックスは54,000近い銘柄で構成されています。地方債のデフォルト率は引き続き非常に低い水準にありますが、クレジットの質は金融危機前とは大きく様変わりしました。2008年までは米国地方債市場では70%近くがAAA格付けでしたが、2018年末時点ではその比率が約15%まで低下しています。このように状況が大きく変わったため、セクター配分と銘柄選択がかつてないほど大切になっており、ファンダメンタルなクレジット・リサーチを行う能力が、投資家の目標を達成する地方債ポートフォリオを構築する上で極めて重要な役割を果たす可能性があります。

州及び地方自治体の一般財源保証債(GO債)が地方債インデックスの28%を占め、それに連動するパッシブ商品でも同じような割合となっています。しかし、地方政府の課税権を担保とするこうした債券は、慎重なアプローチが求められる市場の分野です。多くの地方政府が年金積立不足や退職者用健康保健負担などに苦しんでおり、金融危機時の損失に起因する資金不足、不十分な年金拠出、非現実的なリターン予測など色々と問題があり、今後数年のうちに財政がさらに逼迫する可能性があります。

大きな債務を抱える州や市が発行したGO債が米国地方債インデックスのかなりの部分を占め、信用面で様々な問題がある発行体も含まれます。例えば、2018年末時点で、全米で一番格付けが低いイリノイ州が発行した債券は地方債インデックスの1%強を占めます。大規模な年金積立不足に直面する恐れがあるペンシルベニア州やコネチカット州が保証した債券も同インデックスで上位のシェアを占めます。カリフォルニア州(シェア約3.7%)とニューヨーク州(1.5%)もインデックスの上位発行体ですが、ともに健全な財務体質を維持しています。それでも天災や政局混乱などの要因が発行体に悪影響を及ぼす可能性があるため、投資家は一つの州や市が発行したGO債がポートフォリオの大きな部分を占めることによる地理的リスクを認識すべきです。

多くのGO債発行体が直面する厳しい信用状況の結果、ティー・ロウ・プライスの米国地方債ポートフォリオではGO債を大幅なアンダーウェイトにし、レベニュー債(事業目的別歳入債券)を同程度オーバーウェイトにするポジションを維持しています。これは長期的に市場に織り込まれると予想される年金リスクをより軽減するためのものです。レベニュー債は通常、州や地方自治体のGO債より高い利回りも提供します。当社は、レベニュー債の中でも高いリスク調整後リターンを提供するヘルスケアなどのセグメントでオーバーウェイトのポジションを維持しています。

多くの地方政府が金融危機時の損失に起因する資金不足に苦しんでおり、不十分な年金拠出や非現実的なリ ターン予測など 色々と問題を抱えている

プエルトリコ債の教訓

米国の自治領であるプエルトリコは多くの点でユニークな状況にありますが、インデックスに連動させようとするポートフォリオに潜むリスクを浮き彫りにしました。2012年半ば時点で、プエルトリコ債は投資適格地方債インデックスの約4%を占めていました。従って、当時、パッシブ・ポートフォリオに投資していた人は、同じようなポジションを持っていたことになります。2012年に財政問題が表面化し、プエルトリコ債はインデックスをアンダーパフォームし、2014年にはそのGO債は投機的等級まで格下げされました。アクティブ運用マネジャーの中にもプエルトリコ債に大きく投資していた向きもありましたが、同自治領の苦難の歴史は、パッシブ運用で必ずしも高クオリティもしくは低リスクのポートフォリオを簡単に構築できるわけではないことを示しています。ちなみに、ティー・ロウ・プライスでは、2012年にプエルトリコ関連債が米国地方債全体への投資に占める割合を1.12%とインデックスに対し大幅なアンダーウェイトに抑えていました。そして、投資適格債ポートフォリオでは2013年末までにプエルトリコ関連債をほぼすべて売却しました。

トレーダーは流動性の低いセクターにも対応できる

銘柄選択の重要性とは別に、投資家はトレーディングがアクティブ運用ポートフォリオに寄与できる部分にも注目する必要があります。パッシブ地方債ポートフォリオでは、償還期限リスクや金利リスクなどインデックスの主要特性に合わせるためサンプリング戦略を採用します。しかし、地方債の多くは発行残高が少なく、あまり取引されないため、パッシブ・ファンドは市場で最も流動性の低いセクターをオーバーウェイトに、流動性制約に直面するセグメントをアンダーウェイトにする傾向があります。

例えば、ヘルスケア・セクターは地方債インデックスの約9%を占めますが、その多くは発行額が少なく、トレーディングが難しいため、パッシブ・ファンドの中には同セクターの銘柄をほとんど保有しないか、全く保有しないものもあります。一方、アクティブ運用のトレーダーは証券が手に入る分だけ少しずつポジションを積み上げていきます。

アクティブ運用では税金効率が重要

トレーディングに対するアクティブ・アプローチは、ポートフォリオの税金効率を高めることができる可能性もあります。パッシブ運用ポートフォリオは通常、ポートフォリオの資金流出入に伴い売買が必要な時しかトレードしません。これは一部の資産についてコストを節約し、税金効率を高めることができる半面、多くの投資家が課税対象利益を回避することを優先する米国地方債市場においてそれが最適なアプローチかどうかについては多少疑問があります。アクティブ運用ファンドでは、ポートフォリオ・マネジャーは下落局面で債券を売却し、将来の利益と相殺するために使う損失を計上することができます。

市場の急落はアクティブ運用には好機

投資家が留意すべきもう一つの点は、米国地方債市場のパフォーマンスは他の一部の資産クラスより需給に左右されやすく、しかも市場の規制によってディーラーが必要とされる時に地方債市場に流動性を供給する能力が低下するにつれて需給要因の影響が強まっていることです。この結果、アクティブ運用ファンドは、需給の不均衡によって生じる市場の歪みに乗じることができます。

例えば、市場急落時にアクティブ運用のポートフォリオ・マネジャーは、利回りは低いものの流動性が高い事前借換債を売却し、相対的に割安なハイイールド地方債を購入することができます。一方、パッシブ・ポートフォリオはそうした状況に乗じる能力が制限される可能性があります。

結局、当社はアクティブ運用は米国地方債市場において魅力的なリスク調整後利回りを追求する投資家に多くのメリットを提供すると考えています。厳格なボトムアップの銘柄選択に基づくリスクを意識したポートフォリオ構築に、慎重な流動性管理と効率的なトレーディング戦略を組み合わせれば、ベンチマークを長期的にアウトパフォームできると確信しています。

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主なリスク - 本資料で紹介する運用戦略に大きく関連するリスクは以下の通りです。

一般的なポートフォリオ・リスク。

キャピタル・リスク -  投資金額は変動し、元本は保証されません。ポートフォリオの基準通貨と申し込み通貨が異なる場合、投資金額は為替レートの変動による影響 を受けます。

カウンターパーティ・リスク - ポートフォリオ取引の相手方企業が、義務を履行しない場合があります。

地理的集中リスク   ポートフォリオが特定の地域にその資産の大部分を投資する場合、そのパフォーマンスはその地域で生じる事象の影響をより大きく受けることになります。

ヘッジ・リスク  -  ヘッジを通して特定のリスクを軽減または排除しようとする試みが、意図したとおりに機能しない場合があります。

投資ポートフォリオ・リスク  -   ポートフォリオに投資する場合は、市場に直接投資する場合とは異なる特定のリスクが生じます。

運用リスク -  運用会社または運用会社が指名する者にとって、あるポートフォリオに対する義務と他の運用ポートフォリオに対する義務とが時として相反する場合があります(ただし、このような場合はすべてのポートフォリオが公正に取り扱われます)。

オペレーショナル・リスク -  オペレーション上の失敗によって、ポートフォリオ運営における混乱や金銭的損失が生じる可能性があります。

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・インターナショナル・リミテッドが情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライスジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライス・インターナショナル・リミテッドの書面 による同意のない限り他に転載することはできません。

投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.242%(消費税8%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。

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電話番号 03-6758-3820(代表)

金融商品取引業者関東財務局長(金商)第3043号

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