"グローバル市場のボラティリティ急騰
世界的株価急落の背景"

ティー・ロウ・プライス

サマリー

  • 金利上昇、割高なバリュエーション、景気減速などへの懸念から、世界の主要株価 指数は軒並み大きく下落しています。
  • 今回の世界的株安の主な理由は、米連邦準備理事会(FRB)が引き続き短期金利 を引き上げるとの見方が強まる一方、米中貿易摩擦の継続が市場に大きな不安を 生んでいることです。
  • 世界的に株価が大きく下げ、ボラティリティが急騰しましたが、世界の株式市場を取 り巻く環境は引き続き全般に良好です。

金利上昇、貿易摩擦、割高なバリュエー ション、景気減速などの懸念から、世界 の主要株価指数は軒並み大きく下落し ています。今回の下げがいつまで続くの か、あるいはどのくらいの規模になるの かはまだ分かりませんが、市場は現在、 とりあえず戻り歩調にあります。しかし、 投資家は今回のボラティリティ急騰の原 因を探ろうとしており、それが今後さらに 厳しい局面を迎える前兆なのではないか と危惧しています。

 

米国大型株式戦略ポートフォリオ・マネ ジャーのJeff Rottinghausは、「米国株式 市場を最高値まで押し上げた追い風のい くつかは来年にかけて逆風となる可能性 がある。投資をサポートする環境は今後 も続くと思われるが、難易度が高まる可 能性がある」と語ります。

 

世界的に株価が大きく下げ、ボラティリ ティが急騰しましたが、世界の株式市場 を取り巻く環境は全般になお良好です。 2018年は米景気や米企業の業績が非常 に好調ですが、一部の銘柄はバリュエー ションが引き続き高く、景気も金利上昇や 減税効果の剥落に伴い減速しそうです。

 

日本や多くの欧州諸国では金利やインフ レはまだ非常に低く、これらの国では株 式バリュエーションは魅力的で、企業の 利益成長も続きそうです。新興国株は今 年に入って大きくアンダーパフォームして いますが、そのファンダメンタルなバリュ エーションは米国など大半の先進国市 場に比べて魅力的です。

 

利上げやインフレへの懸念

今回の世界的株安の主な理由は、FRB  が引き続き短期金利を引き上げるとの 見方が強まり、それに伴って米長期金利 が急上昇したことです。米政府が財政赤 字穴埋めのため国債を引き続き大量発 行している時、FRBが量的緩和を巻き戻 す過程でバランスシートを縮小している ことも米長期金利を押し上げています。

 

FRBの利上げ継続観測が強まっている のは、足元のインフレがなお落ち着いて いても、米景気が好調で、雇用が増え、 賃金の伸びが加速し、インフレ懸念が高 まっているからです。関税引き上げに伴 う輸入品価格の上昇も物価に上昇圧力 をかける可能性があります。

 

インフレが上昇すると、FRBが景気過熱を 防ぐため短期金利を引き上げる可能性が 高まります。短期金利が上昇すると、借入 コストが高くなり、消費者や企業の購買意 欲や設備投資意欲が削がれ、その場合、 企業の利益率が圧迫され、景気の足取り が鈍る可能性があります。

 

FRBの予想では利上げは2018年にあと1  回、2019年に3回となっています。当社の チーフ米国エコノミスト、Alan Levenson  は現在、FRBがもう少し積極的になり、今 年12月と来年には四半期に1回ずつの計5回の利上げを行うと予想しています。

 

債券グローバル運用チーム・メンバーの Quentin Fitzsimmonsは、「今は市場心理 が非常に重要だと思う。過去10年はFRB  が助けに来てくれると考えられてきたが、 現在はFRBが助けることはできず、市場 がすぐに安定しないリスクが懸念されて いる。この意味では、市場は短期の経済 指標に非常に敏感に反応するだろう」と 指摘します。

 

貿易面の緊張は和らいでいない

貿易を巡る米中間の緊張が続いているこ とが市場を大変不安にしています。両国 は互いに相手国からの幅広い輸入品に 制裁関税を発動し、対象を拡大すると威 嚇し合っており、緊張がすぐに和らぐ兆し は見られません。

 

米大手企業、特に製造業は過去10年に わたり広範なグローバル・サプライチェー ンを構築し、世界中の低コスト生産拠点 に依存してきました。グローバル資本財 株式戦略ポートフォリオ・マネジャーの Peter Batesは、「関税引き上げによる部 品コストの上昇は長期的にインフレを押 し上げる可能性がある。しかし、企業は 最終的に新しいルールの下で利益を最 大化する術を学ぶだろう」と語ります。

 

米国大型コア・グロース株式戦略ポート フォリオ・マネジャーのLarry Pugliaは、欧 州連合(EU)やメキシコ、カナダとの貿易 交渉の進展に注目しています。「より公正 な交易条件の追求は望ましいことだが、 それは必然的に一定のリスクを伴う。これ らの問題の解決を前提に投資判断を行う のは時期尚早だろう。我々は今、最終的 にどのような影響が及ぶのか状況を精査 している」(Puglia)。

 

割高なバリュエーションが株式のリスク

米国株、特に大型グロース株は株価が 高水準で推移してきました。 株式市場が 2009年3月の底から10年余りも上昇し、経 済成長率も企業収益の伸びも長年ずっと 強かったことを考えると、このような高い バリュエーションは現在の良好なファンダ メンタルズが予見し得る将来において続く ことを織り込んでいるかもしれません。そ の場合、景気見通しの悪化を示唆するよ うな材料に市場が敏感に反応することも 考えられます。

 

米国株の上昇を牽引してきたFAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)の下落が相場全体の下げを増幅した 面もあります。それ以外に、電気自動車 のTeslaやAlibaba、Tencentなど中国IT大 手も高値から大きく反落しています。 これ らの銘柄の多くはファンダメンタルズが依 然良好なようですが、それでも株価が下 落するのは珍しいことではありません。

 

ダイバーシファイド中型グロース株式戦 略および節税株式戦略ポートフォリオ・マ ネジャーのDon Petersは、「今回の急落 は全般にテクノロジー・セクターやインターネット企業によって主導された。率直 に言って、相場のリード役だった株価上昇率がトップクラスのこれら高モメンタム 株が調整を迎えるまでにこれほど時間が かかったのは意外だった」と述べます。

 

欧州株のバリュエーションは米国株に比 べやや魅力的ですが、英国株はEU離脱 に伴う不透明感から大半のグローバル株 式市場に対してディスカウント水準で推移 しています。アジア太平洋の先進国市場 では、バリュエーションは全般に米国株に 比べて魅力的ですが、企業業績には引き 続き世界貿易の減速による下振れリスク があります。日本株は特に、相対的な割 安感の強さ、好調な業績、コーポレート・ ガバナンスの着実な改善などがサポート 材料になっています。

 

新興国株は貿易摩擦懸念や通貨安を受 け大幅に下落し、大きくアンダーパフォー ムした結果、バリュエーションは大半の先 進国市場より魅力的です。2018年9月30  日までの6ヶ月間では、MSCI 新興国株式 指数はS&P 500を米ドルベースで約20%アンダーパフォームしました(パフォーマン スはS&P 500の11.41%に対し、MSCI 新興 国株式指数は-8.73%)。

 

世界経済は今のところ堅調

最近の米景気は大変好調で、財政支出、 税制改革、規制緩和が現在の成長加速 の主な原因ですが、昨年の減税のような サイクル終盤の景気刺激は持続不可能 な急成長につながり、景気の過熱を招く 恐れがあります。

 

「米景気は税制改革や規制緩和によって 押し上げられ、好調が続いている。製造 業のデータは過去最高に達し、先行指標 はポジティブで、消費者信頼感は高く、中 小企業の景況感も過去最高水準にある。 しかし、今は景気サイクルの終盤であり、 金融緩和の修正に伴い金利が上昇し、 労働需給が逼迫する中、インフレと労働 コストも上昇している」(Rottinghaus)。

 

欧州経済は鈍化しているものの、なお比 較的安定しています。ただ、景況感指標 は約9ヶ月ぶりの低水準にあります。英経 済は健全な様子で、失業率は低く、賃金 は順調に伸びており、労働市場のスラック(需給の緩み)も限定的です。

 

アジア太平洋地域の貿易依存度の高い 国の経済は健全ですが、世界経済の減 速に伴い鈍化しています。日本経済は上 振れしましたが、最近の天災の影響で足 取りが鈍る可能性があります。オーストラ リア経済は引き続き軟調に推移しており、 住宅市場の行方が特に懸念されます。

 

新興国では、中国経済の勢いが衰えてい ますが、政策当局は引き続き緩和的な措 置で対応すると思われます。他の新興国 は金利が上昇傾向をたどっており、中央 銀行が金融政策を引き締めているため、 成長率は鈍化する見込みです。最近は 石油の世界的ベンチマークのブレント原 油が1バレル80ドルを突破し、4年ぶりの 高値をつけており、トルコやインドなどの 主な石油輸入国には原油高も痛手です。

 

今後の展開は

株価が大きく下がると、常に不安を誘いま すが、時折の乱高下は想定内です。注目すべきは、株価が急落し、ボラティリ ティが急騰しましたが、世界の株式市 場を取り巻く環境は引き続き全般に 良好であることです。

 

今回の急落が短期的なものなのか、 それともより深刻な事態に発展するの か正確に予測することはできません。 しかも、市場のタイミングを見計らうこ

 

とはプロにとっても至難の業です。市場の タイミングを計ることに失敗すると、2つの 点で長期パフォーマンスの悪化につなが ります。第1に、損失が出ている資産を売 却、換金すると、損失が実際に確定され てしまいます。第2に、市場が底入れ反転 した時、少なくとも上昇幅の一部を見逃し てしまうことになります。

 

「経済や資本市場の環境は近年より良 好だが、投資家は株式市場の好パフォ ーマンスが永遠に続くと考えるべきでは ない。ここ数年のパフォーマンスが非常 に良かっただけに、今後数年は株式の リターンが下がってもおかしくない。それ でも、株式は長期のキャピタルゲインを 求める投資家にとっては引き続き最善 の選択である」(Peters)。

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